「し」漢方処方

#滋陰丸《証治準縄》《中薬臨床応用》
「亀板(炙)120g、黄柏60g、知母60g、鎖陽30g、枸杞子30g、五味子30g、乾姜15g」作末し酒で小豆大の丸剤。毎回9gづつ塩湯で服用。
◎腎陽虚によって生じた四肢の筋萎縮。
◎抹消性運動麻痺で下肢の筋肉が萎縮。
◎末梢神経炎
◎脊髄神経根炎
◎小児麻痺後遺症
    
 

#滋陰九宝《外科正宗》《古今方彙》
「川芎・当帰・白芍薬・生地黄・黄連・括楼根・知母・黄柏・大黄(蜜)各2銭」水煎。
◎懸雍にて厚味膏梁(美食のこと)、瘟熱結腫し、小水渋滞し、大便秘結し、内熱にて口乾し、煩渇して冷を飲むものを治す。

#滋陰健脾湯《万病回春》《古今方彙》
「当帰・茯苓・陳皮(塩水洗)各1銭、白朮1洗半、生地黄・白芍薬(酒)各8分、人参・茯神・麦門冬・遠志各7分、川芎5分、半夏7分、甘草(炙)4分、生姜、大棗」水煎早晩に服す。
◎気血虚損し痰ありて眩暈を作す仙剤なり。


#滋陰降火丸《東醫寶鑑》
「熟地黄2両、黄柏1両半、知母・枸杞子・蓮肉・茯神・人参各1両」作末し地黄を酒で蒸して膏を作り、梧子大の丸剤。白湯で100丸飲む。
◎陰虚の症を治す。



#滋陰降火湯[1-1]《万病回春》《勿誤薬室方函口訣》
「当帰1銭2分、芍薬1銭3分、天門冬・白朮各1銭、地黄9分、陳皮7分、黄柏5分、知母5分、甘草5分、姜棗」水煎。
◎陰虚火動発熱し、咳嗽、吐痰、喘息、盗汗、口乾するを治す。


#滋陰降火湯[1-2]《万病回春》《古今方彙》
「当帰(酒)1銭2分、白芍薬1銭3分、熟地黄・天門冬・麦門冬・白朮各1銭、生地黄8分、陳皮7分、黄柏(蜜炙)・知母各5分、甘草(炙)5分、生姜、大棗」水煎し服するに臨み「竹瀝、童便、姜汁(少許)」入れる。

◎陰虚火動、発熱咳嗽、吐痰喘急、盗汗口乾を治す。「六味丸」と相兼ね之を服す。大いに虚を補う。

◎午後より夜に至り嗽多き者は陰虚に属するなり、黄昏(たそがれ)に嗽多き者は火気浮かぶなり。少しく涼薬を加えよ。火嗽の者は声ありて痰少なく面赤く身熱して脉数なり。乾咳嗽し痰無き者は是れ痰欝して火邪肺にありて治し難し。労嗽の者は盗汗、痰多く寒熱をなし、脉数大にして力無し。此等の症は皆酒色にて内傷られ、陰虚の致す所なり。竝(ナラ)んで此湯に宜し。

◎骨蒸労熱の者は陰虚火動なり。+「地骨皮・柴胡」
もし数剤を服して熱退かざれば+[黒乾姜」
◎盗汗止まざる者は気血衰えるなり:+「黄蓍・酸棗仁」
◎痰火咳嗽、気急短を生じるには:+「桑白皮・紫紫苑・黄芩・竹瀝」
◎咳嗽痰中に血を帯びる者:+「黄芩・牡丹皮・阿膠・山梔子・紫苑・犀角竹瀝」
◎乾咳、燥痰無く、及び喉痛み瘡を生じ声唖する者:「黄芩括楼仁貝母五味子桑白皮紫苑山梔子」
◎咳嗽痰多く、津液痰を生じ、血を生ぜざる:+「貝母款冬花桑白皮」
◎痰火熱を作し、煩躁安んぜず、気は火に髄って升る、並びに痰火にて怔忡嘈雑するには:+「酸棗仁黄芩黄連竹茹竹瀝辰砂」
◎血虚し、脚腿枯れて細く、力無く痿弱の者:+「黄蓍牛膝防已杜仲」−「天門冬」
◎小便淋瀝する:「車前子瞿麦萆薢牛膝蓄山梔子」
◎陰虚火動、小腹痛む者:「+茴香木香-麦門冬」
◎「+川芎乾姜-麦門冬」=「補陰瀉心湯」《雑著》


#滋陰降火湯[1-3]《東醫寶鑑》
「白芍1銭3分、当帰1銭2分、熟地黄・天門冬・麦門冬・白朮各1銭、生地黄(酒炒)8分、陳皮7分、知母・黄柏(蜜炒)・炙甘草各5分、生姜3片、大棗2枚」水煎服。
◎腎水不足・陰虚・火動を治す。
◎陰虚火動により寝汗をかき、午後に発熱して咳嗽し、痰が多く、血を喀・唾吐 し、食欲なく、肌肉がやせ、労瘵になろうとする者。


#滋陰降火湯[1-4]《万病回春》 《漢方治療の実際》
「当帰・芍薬・地黄・天門冬・麦門冬・陳皮各2.5、朮3、知母・黄柏・甘草各1.5」
    


#滋陰降火湯[1-5]《万病回春》《漢方後世要方解説》
「白朮3、当帰・芍薬・地黄・麦門冬・天門冬・陳皮各2.5、知母・黄柏・甘草・大棗・生姜各1」
竹瀝・童便・姜汁入れて服す(省略するもよい)。
◎陰虚火動、発熱、咳嗽、吐痰、喘急、盗汗、口乾を治す。

◎此方六味丸と相兼ねてこれを服す。大いに虚労を補う。神効あり。
◎陰虚火動、咳嗽、吐痰、皮膚浅黒く、大便硬く、此を聴診して乾性「ラ」音のもの之を主る《矢数有道》

◎此方は腎水虚乏により、肝火、命門火妄動し、脾肺を薫灼するのを消炎滋潤するを以て目的とする。即ち人体根元の元気たる腎水虚乏し、消耗熱のため津液虚耗せるを潤して解熱せしめるものである。肺結核には屡々用いられるが、熱状旺盛にして発汗咳嗽喀痰多く、下痢し易き開放性のものには多く禁忌である。皮膚浅黒く、大便硬く、食思良好、粘痰あって乾性「ラ」音の者によく奏功する。増殖型のものによい。

◎八珍湯の加減方です。
「生地黄・知母・黄柏」=命門の火を清涼す。
「天門冬・麦門冬」=肺を潤す。
「当帰・芍薬・熟地黄」=肝火を瀉す。
「朮・陳皮・甘草・大棗」=脾胃を調和する。
「童便」=12歳以下の健康男子の尿を用いる。血熱を冷まし久瘧を治す。




#滋陰降火湯[1-6]《万病回春》《龍野ー漢方処方集》
「当帰4.5g、芍薬5.0g、熟地黄・天門冬・麦門冬・白朮各3.5g、乾地黄2.0g、陳皮2.5g、黄柏・知母・甘草各2.0g」
◎陰虚火動(発熱、咳嗽、喀痰多く、午後から夜にかけて熱発多く、顔面も紅潮し、唇赤く小便も赤茶色に着色する。結核の末期症状)して而して喘し、心の脉数なる者を治す。
◎陰虚火動し発熱咳嗽、吐痰喘急、盗汗口乾。
◎喉痛喉瘡。
    

★適応症及び病名(滋陰降火湯)
[1]遺精

[2]陰虚火動:
☆腎経が陰虚火動するを治す。《古今方彙》
☆喘して心の脈数:+「紫蘇子・沈香・杏仁・桑白皮・竹瀝」

[3]咳血:
☆(咳と同時に血を吐く。肺からの出血)

[4]喀血:
☆(鮮紅色・気泡を含む)

[5]喀痰:
☆(痰稠痰・量少ない)

[6]乾性水泡音(ラ音):
☆皮膚浅黒く、大便硬く粘痰乾性ラッセルの者。

[7]乾性肋膜炎:
☆乾性胸膜炎《矢数道明》

[8]気鬱による咳:
☆(顔面紅潮・痰少ない)
☆痰に熱を帯び煩躁不安、或いは胸騒ぎ嘈雑する者:+「酸棗仁6.0g、黄連・黄芩・竹茹各2.0g、竹瀝・辰砂各1.0g」。

[9]気管支炎:
☆急性・慢性《矢数道明》

[10]気管支拡張症

[11]吃逆:
☆陰火上升して啘を発するを治す:「砂仁・茴香・沈香・木香・山梔子・柿蔕・辰砂」《古今方彙》

[12]胸部煩悶

[13]口渇

[14]口乾

[15]呼吸促迫:
☆(呼気が多く、吸気が少ない)
☆咳嗽喀痰呼吸促迫する者:

[16]嗄声

[17]失語症(失声)

[18]失禁:
☆虚熱にて尿多き者を治す「+山梔子(炒)・梔子仁-五味子」

[19]シェーグレン症候群
☆口渇、口乾があり、皮膚が枯燥し、疲労しやすく、手足の煩熱などがあるものに用いる(漢方診療医典)

[19]消化不良

[20]小便閉:
☆陰虚火動、小便通ぜざるを治す:「猪苓、沢瀉、木通、牛膝」
☆虚証の人で小便不利する:+「猪苓・牛膝各3.0g、沢瀉・木通各4.0g」。

[21]小便淋瀝:
☆腎結核の一症《矢数道明》

[22]上逆

[23]食欲不振

[24]神経衰弱

[25]津液不足

[26]心悸亢進

[27]心煩

[28]腎盂炎(急・慢性)
☆腎盂炎・腎膀胱結核の初期に著効《矢数道明》
☆亜急性のもので、熱が続き、口渇、自汗、臍上の動悸亢進があり、尿の混濁がひどい者によい(漢方診療医典)

[29]腎臓結核

[30]性的神経衰弱

[31]精力減退:(房事過多による)
☆早老期の生殖器障害《矢数有道》

[32]せき:
☆この方に用いる咳嗽は、力があって強く、痰は少ない。喀血の傾向があり、口が乾く、《衆方規矩》には、午後になって咳嗽の出る者に良いとしているが、必ずしもこれにかかわる必要はない。しかし、本方証の患者には、夜、床についてから、ひどく咳の出る者がある。《大塚敬節》
☆激しい乾咳:+「桑白皮・黄芩各3.0g、紫菀2.5g、竹瀝1.0g」
☆咳嗽喀痰中に血を交る者:
「黄芩牡丹皮・阿膠・紫菀各3.0g、山梔子2.0g、犀角・竹瀝各1.0g

☆乾咳及び喉痛瘡を出し声が出ない者:
「黄芩・貝母・桑白皮各2.5g、五味子・紫菀・山梔子・瓜蔞仁各2.0g」。
☆[労咳、骨蒸熱、疲労、自汗]=「黄蓍鼈甲散」
☆[久痰、咽喉乾燥、大逆上気、咳嗽、顔面紅潮]=「麦門冬湯」

☆17歳女性。平常健康な娘であったが、最近咳が出るようになり、胸も少し痛むが大して気にもしないでいたと云う。然し身体がだるいので静養のつもりで網島温泉に行き、却って具合が悪いと云って来院する。
診ると肥った女で、色は黒いが血色は良く、ニコニコしていて一寸病人には見えない。ところが脈を診ると、130~140あり、手は熱くないが脇の下は熱い。そこで体温を計ってみると39.4℃ある。自分では寒気はするが熱感はないと云う。聴診すると聴診器の当て具合でラッセルが聴こえたり聴こえなかったりする。便秘していて背にヘルペスがある。私は肺炎と診断して小柴胡湯を与えた。然し翌日診ると薬効はない。咳は多くなり、胸苦しく脈を診ると強い滑脈を帯びてきた。呼吸困難が激しくなってきたので柴陥湯を与えた。
その翌日は熱は38.4℃が最高で呼吸はやや楽になったが、咳はますます激しい。聴診すると呼気延長が強くなり、気管支音を思わせるような荒い呼吸音が聴える。更に柴陥湯を続けると翌日熱は少し下がったが、脈は140で熱の割に数して悪い徴候である。依然として呼吸困難にも変化がないので竹葉石膏湯に代えてみる。2日続けると今度は舌が黒くなり、脈は120くらいになり、全体の様子は悪化してきた。そこで私はこれは唯の肺炎ではなく結核性のものだと思うようになり、結核の肺炎型とみて、直ちに滋陰降火湯を与えた。これにて翌日はあれほど劇しかった咳が嘘のようにほとんど止まった。2日経って診てみると脈は100になり、その他の病状も順調に良くなり本方を続けて12日目には起きられるようになった。患者は調子が良くなったので、田舎へ帰ると云ったが、病気の性質上なお3ヶ月は服薬を要する事を告げてさしあたり1週間分の薬を持たせ帰った。併しそれきり服薬を怠ってしまった。後で聞いた話であるが、約1ヶ月ほどして又悪くなり、田舎の医者にかかっている中に結核性脳膜炎を併発して、1ヶ月位で死んだと云う。《矢数有道》

[33]舌質 <紅・乾燥>

[34]舌苔 <微白苔>

[35]喘息:
☆動くと出る。安静時に出ない。

[36]唾血:(唾液・痰に鮮血がまじる)

 

[37]だるい:
☆.血虚し下肢筋萎縮し無力な者:「黄蓍2.0g、牛膝・防已・杜仲各3.0g天門冬」。
[38]痰が出る:
☆濃厚な喀痰(粘痰)。
☆(粘痰・痰に血が混じる)
☆吐血した後に痰を見るを治す。これ陰虚火動なり。《古今方彙》
☆[稀薄な痰、咳嗽、自汗、皮膚青白い]=「参苓白朮散」
[39]潮熱:
☆陰虚火動、潮熱する者を治す。
[40]手足の冷え
[41]盗汗
[42]糖尿病:
☆糖尿病に肺結核を併発した者で、皮膚浅黒く、大便秘結し、呼吸に乾性ラ音がある者。
☆下消渇の症を治す《医学入門》:「滋陰降火湯白朮・括楼根・山梔子・粉葛・烏梅、黄連倍加・知母倍加、白芍薬」
[43]熱感
[44]のぼせ
[45]肺結核:
☆咳嗽、発汗ない者《矢数道明》
☆増殖性によい。《矢数道明》
☆熱状旺盛にして発汗咳嗽喀痰多く、下痢し易き開放性のものには多く禁忌である。《矢数道明》
☆皮膚が枯燥し、便秘傾向の肺尖カタル《矢数道明》
☆17歳男性。最近母親と妹が肺結核で死亡している。発病は3ヶ月前。職工であるので工場医の治療を受けていたが、咳嗽がどうしても除れぬ。皮膚の色ドス黒きが特徴として目立つ。時々血痰が出る。微熱、食欲可。脈はやや緊数。腹筋少しく拘攣、大便は硬い。両肺全面に乾性ラ音を聴く。これに始め四物解毒湯桃仁牡丹皮陳皮半夏茯苓五味子麦門冬桑白皮を与えた。1週間の容体は比較的良好。更に前方を続けてみる。その後良くない。だんだん悪くなる。母も死んでいるので、これも駄目かと悲観したくなってきた。この時脳裡をかすめたのが滋陰降火湯である。こんな者に与えたらどうか。冒険的にやってみる。予想外の反応で、嘘のように具合が良くなる。滋陰降火湯を飲みだしてから約1年、風邪ひとつ引かない。1日も臥床することなく、4月に再び工場に勤めるようになった。《矢数有道》
[46]発熱(午後から夜半にかけて)
☆消耗性の高熱が出る。
☆[発熱、咳嗽、往来寒熱、胸腹痛、上衝、心煩]=「柴胡桂枝乾姜湯」     

[47]膝に力が入らない
[48]鼻乾(血虚で虚火上昇のため)
[49]微熱
[50]皮膚枯燥(皮膚浅黒い)
[51]疲労倦怠:
☆[虚労、咳逆、心悸亢進、脈結代]=「炙甘草湯」
[52]貧血
[53]ふらつき
[54]不眠
[55]便秘
[56]ほてり
[57]膀胱尿道炎:
☆痩せた人が濁尿、血尿を患う:「滋陰降火湯芍薬 白朮3.0g、山梔子・萹蓄各2.0g」。
☆煩渇して飲むこと多く小便脂の如き者:「滋陰降火湯芍薬・天花粉・白朮各3.0g、葛根4.0g、山梔子・黄連・烏梅各1.5g」。
[58]慢性気管支炎:
☆昼間より夜間に、激しい空咳。
☆皮膚浅黒く、便が秘結がちの老人が多い。
☆タンが多く出るときには使用不可。
[59]夢精:
☆夢精遺精の者:
「山薬4.0g、牡蠣・杜仲・牛膝・破故紙各3.0g、天門冬」。
[60]目が赤い
[61]肋膜炎


#滋陰降火湯[2]《寿世保元》
「当帰・川芎・知母・黄柏・天花粉各1匁、芍薬1匁2分、地黄1匁5分、桔梗・甘草各3分」
右9味、竹瀝を入れ、温服す。
◎虚火上升し、喉痛、并びに喉内瘡を生ずるを治す。
◎此方は虚火上炎して喉瘡を生ずる者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎肺痿の末証、陰火喉癬と称する者、一旦は効あれども全治すること能わず。
◎舌疳:「+甘露飲」
◎哮喘:《高階枳園》
<1>脈数、陰虚火動に属する者:滋陰降火湯[1]
<2>脈実なる者:「承気湯」
◎口腫:《先哲医話》



#滋陰地黄丸[1-1]《李東垣》
「熟地黄・生地黄・柴胡・黄芩・当帰・天門冬・地骨皮・五味子・黄連・人 参・甘草・枳穀」
◎気血衰弱・心火旺盛にして、瞳孔散大・物をみてもはっきり見えない。

 

#滋陰地黄丸[1-2]《東醫寶鑑》
「熟地黄1両、柴胡8銭、生乾地黄(酒焙)7銭半、当帰身(酒洗)・黄芩各5銭、天門冬・地骨皮・黄連各3銭、人参・枳殻甘草(炙)各2銭」蜜で緑豆大の丸剤。毎回100丸茶清で飲む。

#滋陰地黄湯《万病回春》《古今方彙》
「山薬・山茱萸・当帰・川芎各8分、牡丹皮・遠志・茯苓・黄柏(酒)・菖蒲根・知母・沢瀉各6分、熟地黄1銭6分」水煎。or蜜丸。
◎右耳聾する者は色欲が相火を動かしたるなり。

#滋陰地黄湯《万病回春》《東醫寶鑑》
「熟地黄1銭半、山薬・山茱萸・当帰・川芎・白芍各8分、牡丹皮・沢瀉・白茯苓・石菖蒲・遠志・知母・黄柏(黄酒炒)各6分」水煎し、空腹時に服用。
◎色欲におぼれ右耳聾になろうとする者。
◎大病後の耳聾。


#滋陰至宝湯[1-1]《万病回春》《松田邦男ー解説》
「当帰(酒洗)・白朮(藘を去る)・白芍薬(酒炒)・白茯苓(藘を去る)・陳皮・貝母(去心)・香附子(童便炒)・地骨皮(去骨)・知母(生)・麦門冬(去心)各8分、薄荷・柴胡(酒炒)・甘草各2分」剉作1剤。生姜(煨)3片を入れ水煎し温服。
◎婦人の諸虚百損、五労七傷、経脈調わず、肢体羸痩するを治す。
◎専ら経水を調え、血脈を滋し、虚労を補い、元気を扶け、脾胃を健やかにし、心肺を養い、咽喉を潤し、頭目を清し、心慌を定め、神魄を安んじ、潮熱を退け、骨蒸を除き、喘嗽を止め、痰涎を化し、盗汗を収め、泄瀉を住め、鬱気を開き、胸膈を利し、腹痛を療し、煩渇を解し、寒熱を散じ、大いに奇効あり。


#滋陰至宝湯[1-2]《古今医鑑》《勿誤薬室方函口訣》
「逍遥散陳皮・知母・貝母・香附子・地骨皮・麦門冬」
◎婦人の諸虚百損、五労七傷して、経脈調わず、肢体羸痩するを治す。
◎この薬、専ら血脈を滋し、潮熱を退け、大いに奇効あり。


#滋陰至宝湯[1-3]《漢方治療の実際》
「当帰・芍薬・白朮・茯苓・陳皮・知母・香附子・地骨皮・麦門冬各3、貝母・薄荷・柴胡・甘草各1」
◎男よりも婦人に多く用いられる《大塚敬節》
◎類似処方→参照「味麦益気湯」

★滋陰至宝湯(咳嗽、痰<痰稠>出しにくい、口渇、のぼせ、手掌のほてり、午後の潮熱、舌質紅、脈弦細数)
    

適応症及び病名(滋陰至宝湯)
[1]咳嗽

[2]気管支炎(慢性)

[3]気管支拡張症

[4]月経異常

[5]下痢傾向

[6]口渇

[7]食欲不振

[8]心下痞

[9]舌質 <紅>

[10]舌苔 <無苔~微白苔>

[11]痰が出る:
☆(稀薄で多量の痰)

[12]脱力感       

[13]盗汗

[14]熱感

[15]のぼせ

[16]肺結核:
☆肺結核が長引き、熱はさほどなく、咳はいつまでも止まらず、息が苦しく、食が進まず、貧血して血色のすぐれない者に用いている《大塚敬節》
☆43歳女性。20年前より肺結核に罹り、いまだに全治しない。主訴は頑固な咳嗽で、時に喘鳴を伴うこともある。体温は、あまり高くならないが、疲れるので、ほとんど床に就いている。食欲もあまりなく、軟便で下痢しやすい、月経は不順で、年に3、4回あるという。皮はガサガサして枯燥の状があり、血色もよくない。脈は沈小で力がないが、あまり速くない。腹を診ると、一体に弾力に乏しく、臍上で動悸を触れる。
私はこれに滋陰至宝湯を与えたが、これを飲むと何となく気分が良いという。私の経験では、すぐに著効はなくても気分が良いという時は、この薬が効いている証拠である。そこでこれを2ヶ月ほど飲むと、体重が2kgほど増し、咳嗽も減じ、食が進むようになった。しかし時々憂鬱な気分になることがあるから、気分を引き立てる薬がほしいという。私は、薬を加減しておくとウソを言って、この方を続けた。すると、半年ほどたつと、仕事がしてみたいということになり、電車で来院した。私は、人が違うのではないかと思った。血色も良くなり、生き生きとしている。咳はまだ朝少し出るが、ほとんど気にならないという。この患者は、まだ服薬中であるが、初診時よりも体重は5kを増し、腹力もついてきた。《大塚敬節》

[17]肺気腫

[18]微熱(午後から)

[19]疲労倦怠

[20]ほてり(手掌・足心)

[21]慢性気管支炎:
☆衰弱がひどく気力衰え、息切れして食欲無く、寝汗がでる者。
☆咳はひどくない。

[22]慢性呼吸器疾患(老人・虚弱者)
☆男女とも、衰弱して、痩せている患者で、慢性の咳が出て、熱が出たり、盗汗が出たりする者に良い《大塚敬節》

[23]脈弦細数

[24]羸痩



#滋陰清胃丸《東醫寶鑑》
「石膏(煆醋淬)1両、当帰(酒洗)・生地黄(酒洗)・梔子(塩水炒)・牡丹皮各1両、黄連(酒炒)・知母・葛根・防風・各7銭、升麻・白芷・各5銭、生甘草節4銭」作末し蒸餅で緑豆大の丸剤。米飲で100丸呑む。
◎陽明経血熱による、上下の歯床の腫れ・痛み・赤くただれて浮く者。

滋陰清胃湯

#滋陰清火散《寿世保元》《古今方彙》
「当帰、生地黄、熟地黄、黄柏(酒)、知母、黄芩、黄連、木通、桑白皮」水煎。
◎淋瀝疼痛、兼ねて紅淋を治す。

#滋陰清火湯《寿世保元》《古今方彙》
「熟地黄・山薬・黄柏(蜜)知母・天門冬・玄参・山茱萸・茯苓・牡丹皮・沢瀉・麦門冬・甘草各1銭、桔梗2銭」水煎。
◎喉痺にて腫痛し、声は唖して出でず、飲食は下らず、陰虚して相火(肝腎の火)上炎し、咳嗽痰涎、潮熱虚労等の症を治す。


#滋陰清化膏《東醫寶鑑》
「地黄(生)・熟地黄・天門冬・麦門冬各2両、黄柏(塩酒炒)1両半、白茯苓・山薬・枸杞子・白芍薬(酒炒)・知母(塩酒炒)・玄参・薏苡仁(炒)各1両、五味子7銭、甘草(生)」作末し梧子大の丸剤。毎回1丸を空腹時に飲む。
◎咳を止め、痰火を降ろす。

#滋陰清膈湯《医学統旨》《古今方彙》
「黄連解毒湯生地黄・当帰・芍薬・甘草・童便・竹瀝」煎服。
◎陰火上衝し、或いは胃火大盛し食入らず、脉洪数の者を治す。

#滋陰清臓湯《済世全書》《古今方彙》
「当帰、生地黄、白芍薬、枳殻、黄連、槐花、地楡、防風、甘草」水煎。
◎大便下血、腸風下血するを治す。

#滋陰大補丸《東醫寶鑑》
「熟地黄2両、牛膝・山薬各1両半、杜仲・巴戟・山茱萸・肉蓯蓉・五味子・白茯苓・茴香・遠志各1両、石菖蒲・枸杞子各5銭」作末し棗肉を蒸して蜜を入れ、梧子大の丸剤。塩湯or温酒で70~90丸飲む。
◎虚労を治し、心・腎を補う。

#滋陰脾湯《東醫寶鑑》
「白朮1銭半、陳皮(塩水洗)・半夏(製)・白茯苓各1銭、当帰・白芍薬・生乾地黄各7分、人参・白茯神・麦門冬・遠志(製)各5分、川芎・甘草各3分、姜3、棗2」水煎服。
◎仕事するとき落ち着かず、めまいする者。



滋陰通耳湯

#滋陰内托散《外科正宗》《古今方彙》
「当帰・川芎・白芍薬・熟地黄・黄蓍・皀角刺・沢瀉・穿山甲各5分」水煎、食前に温服。
◎膿瘍已に成り腫れて痛み、発熱するを治す。之を服して膿あれば即ち穿潰すべし。


#滋陰寧心湯《東醫寶鑑》
「当帰・川芎・白芍・熟地黄・人参・茯神・白朮・遠志・天南星各1銭、酸棗仁(炒)・甘草各5、黄連(酒炒)4分、生姜3片」水煎温服。
◎癲疾と不時の昏倒。痰が胸につまったとき。

 

#滋陰寧神湯《医学入門》《古今方彙》
「当帰・川芎・白芍薬・熟地黄・人参・茯神・白朮・遠志各1銭、酸棗仁・甘草各5分、黄連(酒)4分、生姜」煎じ温服。
◎時ならずして暈倒して搐搦、痰壅がるを治す。
◎痰あれば:「天南星」《古今方彙》

 

滋陰八物湯《外科正宗》《古今方彙》
「川芎・当帰・赤芍薬・生地黄・牡丹皮・括楼根・甘草(節)各1銭、沢瀉5分、燈心草」煎服。
◎懸雍の初起の状は蓮子の如く、紅赤漸く腫れ悠々として痛みを作す者を治す。
◎便秘するには:「大黄(蜜炒)1銭」

 

#滋陰八味丸《張景岳》
「知蘗六味丸《丹渓心法》」に同じ。




#滋陰百補丸《東醫寶鑑》
「熟地黄4両、当帰・菟絲子各2両、知母(塩水炒)・黄柏(塩水炒)・山薬・甘菊・楮実子・杜仲(炒)各1両、青塩5銭、沈香2銭半」作末し酒糊で梧子大の丸剤。塩湯で70丸飲む。
◎虚労を治し、血気を補い、陰を滋養する。

#滋陰明目丸《中医雑誌1958年10月号》
「党参・人参・枸杞子・当帰・炒生地黄・土茯苓・兎絲子各40g、焦三仙48g、 制大黄80g、血丹参24g、紫油桂・肉蓯蓉・沙苑子・赤芍・楮実子・炒棗仁 ・柏子仁・天門冬・寸冬・茯神・枳穀・檳榔・欝金・黄蓍・石菖蒲・杭菊 花・蔓荊子・甘草各20g、塩知母・塩黄柏各16g、広陳皮・朱砂・川芎・青葙子・草決明各12g、養肝散400g以上を作末し、蜜で練って丸とし(12gの丸剤)、毎服半分ないし1丸。」



#滋陰明目湯[1-1]《万病回春》
=「腎気明目湯」
「当帰・川芎・白芍・生地熟地以上培用、桔梗・人参・山梔子・黄連・白芷・蔓荊子・菊花・甘草以上減半」剉作細茶一撮燈心一
熱甚加竜胆草柴胡 腎虚加黄柏知母 風熱壅盛加防風荊芥 風熱紅腫加連翹黄芩


#滋陰明目湯[1-2]《万病回春》《龍野ー漢方処方集》
「当帰・川芎・乾地黄・芍薬各4.0 桔梗・人参・山梔子・黄連・白芷・蔓荊子・菊花・甘草各2.0 燈心草1.0」
◎血少なく眼痛する者
◎久病で気力衰え眼精疲労する者
◎閃視、或いは内障の者。



#滋陰養栄湯《東醫寶鑑》
「当帰2銭、人参・地黄(生)各1銭半、麦門冬・白芍薬・知母・黄柏(蜜炒)各1銭、甘草5分、五味子15粒」剉作、水煎服。
◎消渇で津液がなくなり、口が乾き、咽喉が乾く症。

滋栄散

#滋栄調中湯《万病回春》《古今方彙》
「陳皮(塩製)8分、半夏・白芍薬・黄芩(酒)・木瓜(塩)・牛膝・黄柏(酒)各7分、知母(酒)・羗活各6分、桂枝3分、防風、川芎(塩湯浸)各5分、当帰・白朮・茯苓各1銭、生姜」水煎。
◎臂痛み及び腰酸き或いは時ありて痛みを作すを治す。

 

#滋栄養衛湯《済世全書》《古今方彙》
「白朮(麩炒)・山薬・白芍薬(酒)・当帰・黄蓍各1銭、人参8分、益智仁・山茱萸各7分、甘草(炙)4分、酸棗仁7分」水煎温服。
◎身体虚羸し、夜は当に遺溺失禁するを治す。


滋血潤腸湯《医学統旨》《古今方彙》
「当帰3銭、芍薬・地黄各1銭半、紅花・枳実・大黄各1銭、韮汁」
◎血枯、及び死血、膈に在り、飲食下らず、大便結燥するを治す。
◎此方は膈噎の瘀血に属する者に用ゆれども、総て瘀血血の胸腹に在る者に運用すべし。《勿誤薬室方函口訣》

 

#滋血湯《医学入門》《古今方彙》
「馬鞭草・荊芥各8分、牡丹皮2分、肉桂・赤芍薬・川芎・当帰・枳殻各4分、烏梅1個」膵炎温服。
◎血熱気虚にて経候調わず、血は四肢に聚まり、在り右派浮腫を為し、肌体発熱し労瘵と為るを疑うを治す。宜しく此薬にて滋養し之を通利すべし。


#滋血百補丸《東醫寶鑑》
「熟地黄・菟絲子各4両、当帰・杜仲(酒炒)各2両、知母・黄柏各1両、沈香5銭」作末し酒糊で梧子大の丸剤。塩湯で70丸飲む。
◎虚労を治し、血気を補い、陰を滋養する。

    
#滋潤湯[1-1]《万病回春》《松田ー回春解説》
「当帰・枳殻(去穰)・厚朴(去皮)・檳榔・生地黄・大黄・杏仁(去皮)・火麻仁各1銭、熟地黄・羗活各7分、紅花3分」剉作1剤。水煎し空心に温服する。
◎風、臓に中たる者は、多くは九竅に滞る。唇緩まり、失音、耳聾、鼻塞、目瞽(=盲人)、二便閉渋するは裡に在りと為す。この方に宜し。
それ半身不随、口眼喎斜、語言蹇渋し、或いは癱瘓して伸びず、或いは舌強ばって語らず、痰涎壅盛し、人事不省、牙関緊急す。これ皆臓に中たるなり。
若し大便閉結せば、先ず滋潤湯を服し、後、愈風湯を服して調理す。
◎風、中って臓に在り、大便閉結するを治す。


#滋潤湯[1-2]《万病回春》《東醫寶鑑》
「当帰・地黄(生)・枳殻・厚朴・檳榔・大黄・麻子仁・杏仁各1銭、羗活7分、紅花(酒焙)3分」水煎服。
◎風が臓に入って、二便が閉渋の者。
◎中風臓に在りて大便閉結するを治す。《古今方彙》

#滋腎丸《東醫寶鑑》
「黄柏(酒洗)・知母(酒洗)各1両、肉桂半銭」作末し水で梧子大の丸剤。空腹時に白湯で100丸飲む。
◎渇かずに小便がつまったとき。



#滋腎散《万病回春》《古今方彙》
「萆薢・麦門冬・黄柏(酒)・菟絲子(酒)・遠志・五味子各等分、竹葉、燈心草」水煎。
◎小便白濁初起、或いは半月の者を治す。

 

#滋腎地黄湯《済世全書》《古今方彙》
「天門冬・麦門冬・生地黄・白芍薬(酒)・熟地黄・当帰・知母(蜜炒)・黄柏(蜜炒)・白朮・茯苓・山薬・沢瀉・牡丹皮・山茱萸・甘草(炙)」水煎。
◎陰虚火動を治す。
◎熱熱には:「柴胡・地骨皮」
◎陰虚火動、潮熱退かざる:「六七歳の童便白きもの1盞」

 

#滋腎通関丸《蘭室秘蔵》
「黄柏、知母、肉桂」

 

#滋腎通耳湯《万病回春》《古今方彙》
「黄柏(酒)・黄芩(酒)・知母(酒)・生地黄・白芍薬・当帰・川芎・柴胡・白芷・香附子各等分」水煎。
◎腎虚して聾し而して耳鳴するを治す。

#滋腎通耳湯《万病回春》《東醫寶鑑》
「当帰・川芎・白芍・生乾地黄(酒炒)各1銭、知母(炒黄)・黄柏(炒黄)・黄芩(酒炒)・柴胡・白芷・香附子各7分」空腹時に水煎服。
◎腎弱・耳鳴りで、つんぼになろうとする者。
◎慢性腎炎:萎縮腎のために起きる耳鳴り
◎耳鳴り

 

滋腎通耳湯《漢方治療の実際》
「当帰・川芎・芍薬・知母・地黄・黄柏・黄芩・柴胡・白芷・香附子各2.5」




#滋腎明目湯[1-1]《万病回春》《東醫寶鑑》
「当帰・川芎・白芍薬・地黄(生)・熟地黄各1銭、人参・桔梗・梔子・黄連・白芷・蔓荊子・甘菊・甘草各5分、細茶・燈心各一握り」水煎服。
◎神を労して腎虚し血少なく眼痛み昏暗するを治す。《古今方彙》
◎熱甚だしければ:「竜胆・柴胡」
◎腎虚には:「黄柏・知母」
◎風熱壅盛する:「防風・荊芥」
◎風熱にて紅腫するには:「連翹・黄芩」

 

#滋腎明目湯[1-2]《漢方治療の実際》
=「滋気明目湯」に同じ。
「当帰・川芎・地黄・芍薬各3、桔梗・人参・梔子・黄連・白芷・蔓荊子・菊花・甘草・細茶各1.5」

◎私は古方家が八味丸を用いるような場合に主としてこの方を用いる《大塚敬節》

◎浅田宗伯は滋腎明目湯を用いるような場合に腎気明目湯《万病回春》を用いている。滋腎明目湯とは大同小異で、宗伯によれば“この方は内障眼の主方である。内障に気虚の者と。血虚によるものがあり、血虚によるものはこの方を用い、気虚のものには益気聡明湯を用いる。気虚の重い者には医王湯+防風+蔓荊子+白豆蔲を用い、血虚の重症には十全大補湯+沈香+白豆蔲+附子とする”と述べている《大塚敬節》


滋腎明目湯[1-3]《万病回春》
適応症及び病名(滋腎明目湯)
[1]視力が低下:
☆51歳、血色の悪い男性。昭和26頃より眼が良く見えなくなり、某大学の眼科で梅毒性のものだと診断せられ、熱療法をしてもらったところ、かえって悪化し、最近は、やっと明暗を弁じる程度で、室内を歩くにも、他人の手を借りなければ歩行が出来ないという。この日も婦人が手を引いて、診察室に入って来た。脈は弦で腹診すると、臍上で動悸を触れる。その他に著しい特徴はない。大便は1日1行。ときどき頭痛が来る。足は冷える。
私は眼科を専攻した事がないので、この患者の眼底の所見を診断することは出来なかったし、また治す自信もなかった。しかし《衆方規矩》に滋腎明目湯という処方があって、“眼久しく昏暗なるを治する の主方なり”とあるによって、これを用いることにした。なおこれより数年前、盲目の1少女にこの方を与えて、やや視力の回復したこともあったので、万一を僥倖したのであった。
ところが1ヶ月ほどたって再来した患者は、何だか少し良いようだと云う。そこで続けて前方を1ヶ月分ずつ投薬したが、5月下旬には障子の桟が見えるようになり、10月には一人で電車に乗って来院出来る程になった。この頃から仕事も少しずつ出来るようになり、約2年ほど服薬を続け、視力が0.3まで回復した。《大塚敬節》
☆62歳男性。
初診昭和36年9/20。約1年前、左の視力が衰え、次いで右も悪くなり、医師の治療を受けている中に、左右とも全く視力を失い、辛うじて、夜と昼の区別が出来る程度の盲目になった。目下高血圧から来る眼底出血という診断のもとに、内科医の注射を受けているということであった。
患者はやや肥満しているが、胸脇苦満はない。血圧144-86。
私は眼底出血という診断に疑問を持ち、伊藤清夫氏に相談したところ、診察の結果、眼底には全く異常なく、それよりも、もっと深いところに病気があるのだろうということであった。
そこで、この患者に滋腎明目湯を与えた。すると1ヶ月分飲んだら、何となく眼が明るくなったといい、翌年の3月には遠くの方が見えるようになった。《大塚敬節》



#地黄飲子《劉河間》
「熟地黄・巴戟・山茱萸・肉蓯蓉・附子・生姜・薄荷・大棗・官桂・石斛・茯苓・石菖蒲・遠志・麦門冬・五味子」
◎中風で、唖になり言葉が出ず、歩くことができない。


#地黄飲子《劉河間》《東醫寶鑑》
「熟地黄・巴戟・山茱萸・肉蓯蓉・石斛・遠志・五味子・白茯苓・麦門冬各1銭、附子(炮)・肉桂・石菖蒲各5分」剉作1貼し、姜3、棗2、薄荷少々入れて水煎し空腹時に服用。




#地黄粥《東醫寶鑑》
「地黄(生)」米半升に漬けて煮た後、3回晒し、磁器に水1杯煮たところへ、先の晒したのを1合入れて粥を作って食べる。
◎寝て起きたとき、目が赤く腫れ、すこしたつと無くなる者。


#地黄元《東醫寶鑑》
「熟地黄1両半、黄連・決明子各1両、防風・甘菊・羗活・桂心・朱砂・没薬各5銭」作末し、梧子大の蜜丸。空腹時に50~70丸飲む。
◎ながく視つづけて目が弱くなった者。


#地黄膏《東醫寶鑑》
「地黄(生)1合の汁を絞り、「黄連1両、黄柏・寒水石各5銭」を作末し、以上を混ぜて餅を作って塗る。
◎目に打撲傷を受けた者。


#地黄散[1-1]《証治準縄》
「生地黄・熟地黄・当帰・大黄各30g、穀精草・黄連・白蒺藜・防風・木通・烏犀角・玄参・羗活・木賊草・蝉退・粉草各20g」以上を作末し、毎服2g、豚肝または洋肝を煮た汁で、食遠に調服する。


#地黄散[1-2]《東醫寶鑑》
「熟地黄・当帰各5銭、生乾地黄・木通・甘草各3銭、黄連・大黄・防風・羗活・犀角屑・蝉退・木賊・穀精草・玄参・白蒺藜各2銭」作末し毎回2銭を羊肝湯で1日3回、食後服用。
◎熱と目が赤く腫れて痛い者を治す。
◎白膜が瞳にかぶさって失明する恐れがある者。
◎小児の瘡疹余毒が目に入ったとき。


#地黄散[2]《東醫寶鑑》
「地黄(生)1両、赤芍薬・当帰・甘草各5銭」剉作し、5銭づつ水煎服。
◎混晴を治す。



#地黄湯《東醫寶鑑》
「磁石(淬末)2両、生乾地黄(酒洗)1両半、枳穀・羗活・桑白皮・防風・黄芩・木通各1両、甘草5銭」細末にし毎回4銭を水煎し、1日2回服用。
◎腎経熱で右耳が聞こえず、いつも心中安らかでなく、耳鳴りがして疼痛する者。


#地黄通経丸《東醫寶鑑》
「熟地黄2両、虻虫(炒)・水蛭と糯米を同時に炒って米を除く・桃仁各50」作末し、梧子大の蜜丸。空腹時に温酒で70~80丸飲む。
◎血瘀で、臍下に塊が出来て痛む者。


#地骨皮枳殻散《医類元戎》《古今方彙》
「秦芁鼈甲散枳殻・桃柳枝頭-青蒿」


#地骨皮散[1]《東醫寶鑑》
「知母・半夏・柴胡・人参・地骨皮・赤茯苓・甘草各3分」作末し、姜3片を入れ、水煎服。
◎虚熱を治す。


#地骨皮散[2]《東醫寶鑑》
「石膏2銭、柴胡・黄芩・知母・生地黄各1銭、羗活・麻黄各7分、地骨皮・赤茯苓各5分、姜3」水煎服。
◎血熱と陽毒の火が盛んで、全身に熱がある者。


#地骨皮散[3]《東醫寶鑑》
「地骨皮・秦艽・柴胡・知母・当帰・鼈甲(醋炙)各1銭、川芎・甘草各5分」を剉作1貼し、桃・柳枝各7分、姜3、烏梅1個を入れ煎服。
◎骨蒸の熱を治す。


#地骨皮湯《小児薬証直訣》《中薬臨床応用》
「地骨皮・知母・銀柴胡・太子参・黄芩各9g、赤茯苓12g、別甲(先煮)18g」
◎発汗をともなう骨蒸潮熱。


#地芝丸《東醫寶鑑》
「熟地黄・天門冬各4両、枳穀・甘菊各2両」作末し、梧子大の蜜丸。空腹時に100丸飲む。
◎遠視を治す。




#地膚子湯[1]《東醫寶鑑》
「地膚子・車前子各1銭半、知母・黄芩・枳穀・赤茯苓・白芍各1銭、升麻・通草・甘草各7分」水煎服。
◎子淋を治す。

#地膚子湯[2]《東醫寶鑑》
「地膚子1銭、知母・黄芩・猪苓・瞿麦・枳実・升麻・通草・冬葵子・海藻各7分」剉作し空腹時に水煎服。
◎下焦に熱結して小便不通。
◎女人の房労後、小便不通・脈少には、猪腎半隻を入れ煎服。

#地楡外用剤《中薬臨床応用》
「地楡漆大姑・黄柏」各等量を作末し、少量の竜脳を加えよく攪拌し、さらに落花生油を加え20%の糊剤とし、加熱煮沸後、外用する。      



#地楡煎《中薬臨床応用》
「地楡(炒)12g、鮮地黄12g、白芍薬6g、牡丹皮6g、山梔子(炒)9g、荊芥炭3g、黄連3g、木香1.5g(後下)」水煎服。
◎慢性の膿血下痢
◎血便
◎大腸炎
    


#地竜飲《東醫寶鑑》
「生地黄3条(熟して細研)・姜汁・薄荷汁・生蜜」水で調下。
◎瘴瘧で、大熱があり煩躁する者。



#地竜散[1]《証治準縄》《中薬臨床応用》
「地竜・肉桂・蘇木各2.5g、麻黄2g、黄柏・当帰尾・甘草各5g、桃仁9個」水煎服。
◎打撲による疼痛
◎内出血
◎腰背部損傷の疼痛

#地竜散[2]《東醫寶鑑》
「羗活2銭、独活・黄柏(塩酒炒)・甘草各1銭、蘇木6分、麻黄5分、地竜 ・中桂各4分、当帰梢2分、桃仁6箇」水煎服用。
◎瘀血が太陽経にあって腰脊が痛む。

#地竜湯《中薬臨床応用》
「地竜9g、全蝎3g、金銀花12g、連翹9g、釣藤鈎9g」水煎服。
◎高熱、煩躁、痙攣。

#地蓮湯《中薬臨床応用》
「地胆頭30g、穿心蓮30g、崩大碗90g」水煎服。
◎上気道炎
◎気管支炎
◎肺炎

#資寿解語湯《医学入門》《古今方彙》
「附子・防風・天麻・酸棗仁各3分、官桂・羚羊角各7分半、羗活・甘草各5分」

#資生湯《医学衷中参西録》
「山薬、玄参、白朮、牛蒡子、鶏内金」


#紫円[1-1]《東洞家塾方》
=「紫圓」
「代赭石・赤石脂・巴豆各2銭、杏仁4銭」
 右4味、まず杵きて2味を末と為し、別に巴豆を研り杏仁の中に入れ合して治め緑豆大の丸剤。病証の浅深を量り之を服す。1~2より1浅に至るを度となす。若し、差えざる者あるときは毎日之を服す。或いは5丸、或いは10丸。若し赤石脂なきときは則ち塩蔵の鉄粉を以て之に代える。
[塩蔵鉄粉を製する法]
「上鉄屑2銭、食塩2分」を攪て之を貯え密器に封蔵し10日を置きて諸々を床下より地上に取り出し之を研り水飛し、晒し乾燥して以て赤石脂に代える。
◎胸腹の結毒、或いは腹満し大便難く水毒ある者を治す。



#紫円[1-2]《東洞家塾方》
「巴豆(去殻)・赤石脂・代赭石各4.0、杏仁8.0」
右四味、先ず赤石脂、代赭石を細末とし、巴豆、杏仁を研りて末に合し、糊にて小粒の丸と為し、温湯を以て、1回0.4~1.5を服用する。小児は年齢に応じて減量する。
◎胸腹の結毒、或いは腹満して大便せず、或いは水気有る者を治す。千金方に曰く、紫円は療せざる所無し。下すと雖も人を虚せず。《古方兼用丸散方》

#紫円[1-3]《春林軒丸散方》
「代赭石4.0、巴豆(去殻)2.5、赤石脂・杏仁各2.0」
◎心痛(=胃痛)、腹痛、大便通ぜず、或いは痢疾、熱病、或いは食滞、所謂痛風、卒中風、中暑、驚風、癩、胎毒、黴毒、発狂の類、心胸に迫る者を治す。
◎此方、大人の黴毒性諸証、小児の消化不良に因する諸疾患等に用ふれば、能く奇効を奏べし。然れどもその作用の峻烈なるを以て、体質薄弱の者、或いは虚候を帯びぶる者には特にその投与を慎まざる可らず。


#紫円[1-4]《漢方治療の実際》
「代赭石・赤石脂・巴豆各4、杏仁8」以上の4味を末とし、米糊で丸とする。1回1を頓服。

適応症及び病名(しえん)
[1]鼻炎
☆幼児の胎毒のある鼻閉塞に本方を与えて、胎毒を下す時は軽快することがある(漢方診療医典)
[2]便秘:
☆至急に排便を必要とする時に、頓服として用いる。《大塚敬節》
☆備急円より作用が緩和で、乳幼児にも用いることが出来る《大塚敬節》

☆先年、自分の藩士に、大便が通じない時に、好んで紫円を用いたものがあった。ある日、例によって、これを用いたが効がないので、増量して1匁を用いたがなお通ぜず、だんだん増して、2匁、3匁、4匁、5匁としたが、便は通ぜず、ついに悶乱して死んだことがある。その証もないのに、紫円のような激しい下剤を濫用するのは、恐ろしいことである《山田業広》



#紫雲膏《華岡青州》《漢方治療の実際》
=華岡青州が明代の陳実効著《外科正宗》(1617)にある「当帰潤肌膏」を改良して案出したとされる。
「ゴマ油1000、当帰・紫根各100、黄蠟380、豚脂25」
先ずゴマ油を煮て、黄蠟・豚脂を入れて溶かし、次に当帰を入れ、終わりに紫根を入れ、鮮明な紫赤色になったら布で濾す。冷えるの随って、かたまるが、しばらく攪拌しながら、冷えるのを待つと、粘稠な良いものになる。紫根を入れる時の温度は140℃ぐらいが良い。なお黄蠟は夏は多くし、冬は減ずる。


#紫雲膏《華岡青州》《龍野ー漢方処方集》
=「潤肌膏」
「胡麻油1000g、黄蠟380g、豚指25g、当帰・紫根各100g」
胡麻油を煮て黄蠟・豚指を加えて溶かし、いったん鍋を火から下ろし当帰を入れて狐色になったら網ですくい上げ、又火にかけて熱し、再び鍋を火から下ろして紫根を入れ、程良い紫赤色が出たら紫根をすくい上げ、布で濾し放置して冷やす。
◎虚証・貧血性・乾燥性の外傷や皮膚病。
    

適応症及び病名(紫雲膏)
[1]あかぎれ
[2]あせも
[3]アトピー性皮膚炎(外用)
[4]イボ
[5]打ち身(打撲傷):
☆塗布する《大塚敬節》
[6]外傷:
☆擦過傷
☆スキーで転倒して、顔の皮をすりむいた者に用いて、忽ち治った。《大塚敬節》
[7]潰瘍
[8]かぶれ
[9]切り傷(切創):
☆塗ると、化膿を予防し、速に治癒する。《大塚敬節》
[10]痔核(外用)
[11]痔瘻
[12]しもやけ
[13]ただれ
[14]凍傷:
☆夜間、寝る前に患部に、よくすりこんでおくと良い。《大塚敬節》
[15]肉芽形成不全:
☆下腿潰瘍などで肉芽の発生状況のよくないものに用いると、治癒を促進する《大塚敬節》
[16]ひび
[17]水虫
[18]火傷(ヤケド):
☆軽いものはこれを塗るだけで良い《大塚敬節》
[19]雪やけ
[20]癰の目


#紫根牡蠣湯《漢方治療の実際》
「当帰5、芍薬・川芎・紫根各3、大黄・忍冬各1.5、升麻・黄蓍各2、牡蠣4、甘草1」



#紫蘇散《証治準縄》
「杏仁、紫蘇葉、桑白皮、檳榔子、茯苓、木通、甘草、紫苑、前胡、百合、生姜」


#四陰煎《景岳全書》
「地黄23匁、麦門冬・芍薬・百合・沙参各2匁、甘草・茯苓各1匁半」
◎これ保肺清金の剤なり。陰虚老損し、相火熾盛、津枯煩渇、咳嗽吐衂、多熱などの証を治す。
◎此方、はるかに「滋陰降下湯」の上に出ず《高階枳園》
◎此方は《景岳全書》に新方なれども、陰虚火動の症には滋陰降下湯より効あり。滋陰降下湯は理屈はつめども寒凉に過ぎて、保肺清金の力反って劣れり。《勿誤薬室方函口訣》
◎此症にして虚弱、浮熱、汗出者:「二加竜骨湯」

#四烏賊骨一蘆茹丸《黄帝内経素問》
「茜草、烏賊骨」

#四烏賊骨一蘆茹丸加味《中薬臨床応用》
「烏賊骨12g、茜草根3g、黄蓍9g、党参9g、当帰9g、熟地黄9g、川芎9g、白芍薬12g」水煎服。
◎血虚による無月経。


#四海舒欝丸《瘍医大全》《中薬臨床応用》
「海蛤粉6g、海帯60g、海藻60g、烏賊骨60g、昆布60g、青木香15g、陳皮6g」細末にし蜜丸。毎日2回9gづつ服用。
◎甲状腺ガン。



#四逆散[1-1]《傷寒論》
「甘草(炙)、枳実(破水漬炙乾)、柴胡、芍薬」
右四味、各十分、擣篩、白飲和服方寸匕、日三服。欬者、加五味子、乾姜各五分、主下利。悸者、加桂枝五分、小便不利者、加茯苓五分、腹中痛者、加附子一枚、炮令坼。泄利下重者、先以水五升、煮薤白三升、煮取三升、去滓、以散三方寸匕、内湯中、煮取一升半、分温再服。
◎少陰病、四逆、其人或欬、或悸、或小便不利、或腹中痛、或泄利下重者、四逆散主之。



#四逆散[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「柴胡5g、白芍薬9g、枳実5g、甘草(炙)3g」水煎服。
◎肝気欝結による腹痛。


#四逆散[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「柴胡5、枳実2、芍薬4、甘草1.5」
◎参照→理気平肝散《医学統旨》
◎四逆=四肢温和でないこと。
◎此方は大柴胡湯の変方にして、少陰の熱厥を治するのみならず、傷寒に癇を兼ねること甚だしく、譫語、煩躁し、噦逆を発するなどの証に特験あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎邪を疎き、気を通ずるを以て主と為す。《浅田宗伯》
◎その腹形、専ら心下及び両脇下に強く聚り、その凝り胸中にも及ぶくらいにて、拘急は強けれども熱実は少なき故、大黄・黄芩を用いず、ただ心下両脇を緩め和ぐることを主とするなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎《和田東郭》多年此方を、疫症(流行病)及び雑病に用いて種々の異証を治する。
◎「陽気内鬱して四肢厥逆および肝脾調和せず、胃腹痛み、腰だるく帯下多し」
◎《藤田謙造》
「その証は、ほぼ柴胡桂枝乾姜湯に似ていて、積気や気病、または心身の過労などから起こる者に多い。それ故に急病で悶え苦しむ者や慢性病でひどく衰弱した者に用いることは稀で、病勢があまり激しくはないが、いつまでも治らず、医者が治療に困るような者に、戸崎先生はこの方を用いて、奇効を得られたことが度々あった。
その症状は肩背が強ばったり、腰が痛んだり、脇腹が痛んだり、頭が痛んだり、食が進まなかったり、大便は秘結したり、下痢したり、小便の出が悪かったりする。又、気持に張りが無く、気分が欝滞して動作が物憂く、万事を苦労にし。或いは物事を憂慮して止まず、ややもすれば悲愁し、夜は夢をみて気持ちよく眠らず。或いは物毎に好悪があり。また心中がむしゃくしゃして安定しない。なお体がだるかったり、筋肉がつれたりする。またいつも季肋部のあたりに重滞感があり、この部の痛むこともある。それにいろいろと工夫をこらしたり考え事をすると、その度に必ず季肋のあたりが、縮じまりふさがるように覚え。或いは1、2町も歩くと季肋下から脇下にかけて、激しい時は呼吸にもさわるから、この部を手でジッと押さえている。以上挙げたような症状の他にもなお種々の徴候があって、全部を挙げることは難しいが、これらの中の2、3の症状があって、前に述べた腹候があれば、四逆散のよく治するところである。」《大塚敬節》
◎四逆散は柴胡を主薬とする点では、大柴胡湯や小柴胡湯と同列に並ぶものであるが、枳実と芍薬が配剤されているので、大柴胡湯に近く、しかも大黄が無いので、大柴胡湯ほど実証には用いない。しかし腹証上では、みずおちが詰まった様に硬く、胸脇苦満もあり、腹直筋が突っ張っていることが多い。この点では柴胡桂枝湯にも似ている《大塚敬節》
◎四逆散は陽気を疎通することや、裏を和する効能を持っているので、経を伝わった熱邪が鬱して伸びることができなくなったために引き起こされた疾患にも使用することが出来る。
    

【腹証】
《大塚敬節》
“胸脇苦満、心下痞硬の程度が軽く、腹直筋は硬く緊張して、臍傍にまで及んでいる”
“季肋下に緊張、抵抗があって、腹直筋を季肋下から臍傍にかけて、硬く触れる”




適応症及び病名(四逆散)
[1]アレルギー鼻炎
[2]朝のこわばり
[3]頭のふらつき
[4]イライラ
[5]インポテンツ:
☆(精神性)
☆遺精:肝積に因る者は、左の腹拘攣、あるいは左右ともの拘攣する者、又痞塊ある者なり。「四逆散」の類にて遺精自ずから止むなり。四逆散の症は脈数疾なり。
[6]胃ケイレン
[7]胃液分泌過多症
[8]胃潰瘍:
☆単独でH2ブロッカーと同等の効力。
☆81歳、男性。胃潰瘍患者に四逆散、ファモチジン、酸化マグネシウムの併用療法を行った。約8週間後の瘢痕化を認めた。それは現代医学の抗潰瘍剤を多剤併用した治癒期間の平均とほぼ同じである。胃潰瘍の治療には四逆散を昼間投与し、就寝時のみH2ブロッカーを投与することが望ましい。日経メディカル1990.4.10別冊
☆内視鏡で胃・十二指腸潰瘍と診断した症例のうち、ヘリコバクターピロリ(Hp)陽性の症例に、オメプラゾールと漢方薬or生薬の併用療法を行った結果、四逆散、オメプラゾールの併用療法を行った、39才の男性胃潰瘍患者では、治療開始6週間後の潰瘍の瘢痕化とHpの除去に成功した。第46回日本東洋医学会学術講演要旨集41.1983
[9]胃酸過多症
[10]胃腸炎(急・慢性)
[11]胃腸神経症
[12]胃痛:
☆ストレスや精神的緊張からキリキリ痛む者に。
☆心胃刺痛、憎寒壮熱、口乾煩躁し、臥せず、時に痛み時に止むを治す:「黄芩・黄連・梔子・竹茹」=「清膈散」《万病回春》
[13]遺精
[14]飲癖(いんぺき)=胃内停水が常時あるもの。
☆「呉茱萸・茯苓」
[15]往来寒熱
[16]悪心
[17]怒りっぽい(多怒)
[18]驚きやすい(易驚)
[19]咳嗽
[20]肩こり(肩背強急)
①胸脇苦満。
②腹直筋攣急。
③神経過敏、精神内欝。
④四肢冷<微>。
[21]肩関節周囲炎
[22]過敏性大腸症候群
☆ケイレン性便秘型には、á四逆散《中医処方解説》
☆痛まない下痢には、á甘草瀉心湯《中医処方解説》
☆冷えによる者には、á桂枝加芍薬湯or当帰建中湯 
[23]肝炎(急・慢性)
[24]肝硬変
[25]癇癪もち:        
[26]感染症
[27]癇癖(かんぺき)=神経過敏で時に引きつけ、ケイレンを起こす。
☆「釣藤鈎・黄連・羚羊角」
[28]癇厥(=癇の発作に気の上逆を兼ねる)
☆いわゆる癇厥、胸脇攣急、朝に劇しく暮れに安く、病態不定なる者を治す《傷寒論識》
☆熱厥、癇厥、左積有る者:「黄連・羚羊角」《方読便覧》
[29]気管支炎(急・慢性)
☆気管支「カタール」にして、僅かに胸脇苦満があり、腹攣急し、咳嗽によって疼痛し、食欲及び二便に甚だしき異常無き証。《奥田謙蔵》
[30]気管支喘息
[31]逆流性食道炎
☆黄連・黄芩・山梔子・大黄・金銀花・連翹《中医処方解説》
[32]急性伝染病
[33]胸脇苦満 :<左右>
☆胸腹部につまったような感じがして、重苦しい。
[34]胸脇部の疼痛
[35]緊張しやすい(表情が堅い)
[36]筋肉攣縮
[37]口が苦い(口苦)
[38]口がねばる(口粘)
[39]結核性腹膜炎
[40]月経困難
[41]月経周期が一定しない
[42]月経前緊張症(月経前期症候群)
[43]月経時に乳房が脹って痛い
[44]月経痛
[45]月経不順
[46]下痢:
☆(裏急後重・手足の冷え)
☆下痢と便秘を繰り返す。
☆下痢と便秘が交互にくる、スッキリ出ない。
☆下痢の後、精神欝塞し、少しく心煩ありて身体倦怠を覚え、腹痛し、四肢微冷に、尿量減少し、なお大便滑利し、その脈沈小にして力ある証。《奥田謙蔵》
☆下痢累日止まず、胸腹不微満し、四肢微厥し、熱性症候緒しからざる証。《奥田謙蔵》
☆虚羸にして気逆し、熱候無くして下痢し、胸脇苦満し、或いは微痛し、手足寒冷にして、その脈沈緊なる証。《奥田謙蔵》
☆熱候なく、頭重して足冷え、心煩し、腹痛し、食欲に著変無く、脈少しく弦、下痢の傾向ある証《奥田謙蔵》
☆痢疾、累日下痢止まず、胸脇苦満し、心下痞塞し、腹中結実して痛み、裏急後重する者を治す。《類聚方広義》
☆泄利下重する者:薤白9.0gを水200ccで120ccまで煮て滓を去り、四逆散末2.0gを入れて煮直し60ccに煮詰め2回に分服。《龍野ー漢方処方集》
[47]痃癖(げんぺき)
[48]口乾
[49]高血圧症
[50]更年期障害
[51]しもやけ
[52]痔核
[53]子宮ガン
[54]歯根炎
[55]四肢逆冷
[56]四肢拘急
[57]十二指腸潰瘍
[58]食道ケイレン:
☆食道狭窄様疾患にして、嚥下障碍を発すれば胸内苦悶及び短気を現し、腹満し、腹攣急し、四肢微冷に、脈虚大ある等の者には、証に由り本方に「梔子厚朴湯」を合方する。《奥田謙蔵》
[59]食欲不振
[60]情緒不安定
[61]腎炎
[62]神経質
[63]神経性胃炎
[64]神経過敏:
☆癇が高ぶる者の諸症状に応用できる。
[65]心悸亢進
[66]心下部疼痛
[67]心下痞鞕(軽)
[68]心臓神経症
[69]心煩
[70]小便不利:
☆小便不利する者:「茯苓前の半量」。《龍野ー漢方処方集》
[71]頭痛
[72]精神分裂病
[73]精力減退
[74]舌質 <紅><やや乾燥>
[75]舌苔 <無苔~微白苔~黄>
[76]喘息:
☆咳して下痢する者:「五味子・乾姜各前の半量」《龍野ー漢方処方集》
[77]疝(せん):
☆「牡蛎・茯苓・小連翹」《本朝経験》
☆疝痛「茴香・茯苓」
☆寒疝を治するに「芍甘黄辛附湯」及び「附子建中湯」を用い、熱疝を治するに「四逆散茴香茯苓」及び「大柴胡湯茴香甘草」を用いて、咄嗟に奏功す。《橘窓書影》
[78]早漏
[79]大腸炎
[80]ため息が多い

[81]胆石症:
☆胆石患者で、体力が衰えて、大柴胡湯を用いることが出来ない者に:「土別甲・茯苓」=解労散として用いる。《大塚敬節》
[82]胆道感染症
[83]胆道ジスキネジーbiliary dyskinesia(胆道機能不全)
[84]胆嚢炎
[85]血の道症
[86]蓄膿症:(腹直筋攣急する者)
☆28歳男性。半年ほど前から、副鼻洞炎の治療を続けているが良くならないので、1ヶ月ほど前に、鼻中隔彎曲症の手術を受けた。
主訴は、7、8年前よりの後頭痛で、鼻汁が多くて、ノドの方へも流れる。その鼻汁に時々血が混じっている。不眠がある。大便は1日1行。腹診すると、左右の季肋下より臍傍にかけて腹直筋が棒のように硬い。私はこれに四逆散茯苓辛夷薏苡仁を与えた。
これを呑むと、頭が軽くなり、睡眠がとれるようになった。引き続き3ヶ月ほど服用し、風邪でも引かなければ、鼻もつまらず、鼻汁も流れるようなことがなくなり、服薬を中止した。《大塚敬節》
[87]中風:
[88]腸炎・腸カタル    

[89]直腸炎

[90]直腸潰瘍
[91]テンカン
[92]手足が冷える(厥冷)
[93]手のひら(足の裏)に汗をかく(冷や汗)
[94]乳ガン
[95]乳房が張って痛む
[96]任脈陥没:(心下~臍の間で)
[97]任脈拘急:(心下~臍の間で)
[98]ネフローゼ
[99]肺結核
[100]排便してもあとに残る(後重)
[101]半身不随
[102]反芻症
[103]ヒステリー
[104]疲労倦怠
[105]頻尿
[106]副鼻腔炎
☆大柴胡湯の腹証に似て、心下部が堅く緊張しているが、それほど充実していないものに茯苓、辛夷、薏苡仁(漢方診療医典)
[106]ふけ
[107]不安感
☆悸する者:「桂枝前の半量」《龍野ー漢方処方集》
[108]不定期熱
[109]副睾丸炎
[110]腹直筋攣急 <><左右>
[111]腹痛(腹中痛):
☆「附子」《方読便覧》
☆腹中痛む者:「附子(炮)1枚or白川附子0.5」《龍野ー漢方処方集》
☆胃に水飲を蓄えて腹痛嘔吐する者:「呉茱萸・茯苓」《浅田宗伯》
☆胆嚢が十二指腸に癒着しているために右脇下にひきつれる様な痛みを訴える者に:「土別甲・茯苓」《大塚敬節》
[112]腹部膨満感(腹が張る)

[113]澼嚢(へきのう)=胃内停水から嘔吐を繰り返す病。

☆「+呉茱萸・牡蛎」=蔓倩湯(まんせいとう) 《原南陽》
[114]片頭痛
[115]扁桃肥大
[116]便が: <細い・きれぎれ> 
[117]便秘:
☆便秘と下痢を繰り返す
☆寒邪、熱に変じ、裏に伝えて腹痛し、便秘して厥する者を治す。《明医指掌》
[118]膀胱神経症
☆膀胱機能の異常に:「+烏薬」。《中医処方解説》
[119]マラリヤ
[120]麻痺
[121]慢性胃腸炎:
☆胸脇苦満があり、腹直筋が緊張し、手足が冷える、神経過敏な者。
[122]慢性副鼻腔炎
[123]胸苦しい
[124]胸のつかえ
[125]胸やけ
[126]無月経
[127]ゆううつ
☆抑鬱気分
☆気分が欝滞して何となくひきたたない傾向がある《大塚敬節》
[128]幽門ケイレン
[129]流感
[130]肋膜炎
[131]肋間神経痛
  

■薬理作用■:
①胃の攻撃因子を抑制する:
<1>胃液分泌を抑制
<2>胃酸分泌を抑制
<3>ペプシンの分泌を抑制

②胃の防御因子を増強する:
・胃粘膜中の糖タンパク分泌を促進する。
③ストレスによる急性胃粘膜病変を抑制する
④活性酸素消去作用がある:
・胃粘膜障害の発生を防ぐ
⑤プロトンポンプ活性を抑制する:
・胃液分泌を抑制する。


#四逆湯[1-1]《傷寒論》
「甘草(炙)2両、乾姜1両半、附子(生用去皮破8片)1枚」右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾姜三両。
◎傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微悪寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾姜湯與之、以復其陽。若厥愈足温者、更作芍薬甘草湯與之、其脚即伸。若胃氣不和譫語者、少與調胃承氣湯、若重発汗、復加焼針者、四逆湯主之。
◎病発熱、頭痛、脉反沈、若不差、身體疼痛、當救其裏。
◎脉浮而遅、表熱裏寒、下利清穀者、四逆湯主之。
◎少陰病、脉沈者、急温之、宜四逆湯。
◎大汗出、熱不去、内拘急、四肢疼、又下利厥逆而悪寒者、四逆湯主之。
◎吐利汗出、発熱悪寒、四肢拘急、手足厥冷者、四逆湯主之。
◎下利腹脹満、身體疼痛者、先温其裏、乃攻其表、温裏宜四逆湯、攻宜桂枝湯。
◎嘔而脉弱、小便復利、身有微熱、見厥者、難治、四逆湯主之。


#四逆湯[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「熟附子片15g、乾姜6g、甘草(炙)6g」水煎服。
◎ショックの重症
◎虚脱の重症



#四逆湯[1-3]《傷寒論》
「附子、乾姜、甘草(炙)」
◎証(四肢拘急、厥逆)《薬徴》
◎本草は乾姜をもって大熱となす。是(ここ)において世医は皆謂ふ、四逆湯の方中、姜附は熱薬なり。故に能く厥冷を温むと。非なり。按ずるに、厥冷は毒の急迫なり。故に甘草を以て君となし、姜附を以て佐となす。その姜附を用ふるものは、水毒を逐ふを以てなり。何ぞ熱之れあらん。《薬徴》
◎四肢厥逆し、身体疼痛、下利清穀、或いは小便清利なる者を治す。《吉益東洞》
◎按ずるに、此れ甘草君薬也。《吉益東洞》
◎此方は陰症正面の治方にて、四肢厥逆、下利清穀などが目的なり。《勿誤薬室方函口訣》
      


四逆湯[1-4]《傷寒論》
「甘草乾姜湯+附子」
◎激しい下痢に嘔吐を伴ない手足の厥冷する者に用いる《大塚敬節》
    

適応症及び病名(四逆湯)
[1]汗が出る:
☆発汗して後、自汗出出、虚熱在り、腹筋攣急するも、之を按ずるに軟弱、其の脈虚なる証《奥田謙蔵》
[2]嘔吐:
☆呉茱萸湯の嘔吐と区別する必要がある。四逆湯証は下痢を主とし、呉茱萸湯証では下痢を伴うことがあっても、嘔吐が主である。《大塚敬節》
[3]かぜ:
☆傷寒の陰証、脣青く面黒く、身背強ばり痛み、四肢厥冷し、及び諸虚沈寒を治す《医林集要》
☆1男子、32歳。3日前感冒気味で床についた。体温は38℃余り、悪寒がした。医師は感冒と診断して、薬をくれたが、翌日は40℃近くまで体温がのぼった。そこで医師は何か重い病気かも知れないから、他の医師に相談してくれということになり、私がまねかれた。その日も体温は40℃近くあったが、患者の訴えは、ただ何となくからだが重いと云うだけで、これといって、愁訴がない。便通は昨日来ないという。尿をみると清澄であまり着色していない。悪寒もほとんど無いが、足を握ってみると冷たい。その他には所見がない。
私はこれに四逆湯を与えた。なぜか、この患者の体温は40℃になっ ているのに、熱のための愁訴がない。脈も熱の高いのに比較し遅である。    舌も湿っている。尿も熱のある時のように着色していない。足が冷たい。これらは明らかに裏寒の状である。それにこの患者は発病前、数日間は無理をして徹夜に近い仕事をしてひどく疲れていた。
これらの点を考え合わせて四逆湯を与えた。1時間ほどたつと、体温は40℃を越したが、それから2時間後には軽い発汗があり、次第に体温は降下をはじめ、その夜は37℃となり、翌朝は37、5℃となり、四逆湯2日分で平熱となった。《大塚敬節》
☆四逆湯を用いるような熱には、熱に連れ合わない矛盾した症状がある点に注意してほしい。《大塚敬節》
☆四逆湯を用いるような患者で、煩躁が激しい者には茯苓四逆湯を用いる《大塚敬節》
[4]吃逆:
☆重症の赤痢で、吃逆を発する者用いて効をとることがある《大塚敬節》
☆大病中の噦逆に四逆湯証多し、痢疾、噦を発し、蛔を吐する者は四逆湯によろし。《有持桂里》
[5]急性胃腸炎
☆はげしい急性の吐瀉病で、大量の水分が、上下に出て、急に水分が失われたために、手足は冷たくなり、手足の筋肉がひきつれ、脈は微弱となり、重篤な症状を呈した者に用いる。
幼児、老人などにみられることが多い。また下痢に、激しい、ひきつれるような、絞るような腹痛を伴うころがある(漢方診療医典)
[3]ケイレン:
☆五臓中寒して口噤み、四肢強直し、失音不語、或いは卒然として暈悶し手足厥冷する者を治す《厳氏済生方》
[4]下痢:
☆完穀下痢を発し、熱候なく、所謂虚寒の証《奥田謙蔵》
☆《陳念祖》曰く、虚寒、下利渇せず、口中和し、脈遅小にして無力、或いは手足冷え、腹痛んで、善く按ずるは、虚寒の症と為す。四逆湯に非ざれば不可なり。もし腹痛して下利重滞する者は再び芍薬を加う。《雑病翼方》
☆慢性の下痢に用いることは少なく、急性の吐瀉病に用いる機会がある。疫痢・急性胃腸炎などで、下痢が激しく一般状態が重篤な時に用いる。手足は割礼四逆湯、脈は微弱で、顔面は葱白、大便は下痢し、或いは失禁するというような時に用いる。
一般状態がさらに重篤であれば「通脈四逆湯」を用い、煩躁状態がひどい時は「茯苓四逆湯」を用いる。《大塚敬節》       
[5]コレラ:
☆「コレラ」様疾患にして、水瀉すること度なく、なお虚熱ありて汗出で、言語不明、精神朦朧、その脈微なる証《奥田謙蔵》
☆「コレラ」様疾患にして、下利頻々、汗出でて悪寒し、語言明瞭を欠き、手足厥冷し、その脈沈にして力なき証《奥田謙蔵》
[6]臓結:
☆臓結、もと痞積あり、痛み陰筋に引く者を治す:「呉茱萸・桂枝」
[7]手足が冷たい:
☆手足厥冷し、自汗出で、胸内苦悶あり、或いは痛み、或いは化膿。小柴胡湯、その脈細なる証《奥田謙蔵》
☆冷汗流れて煩躁激しい者:「人参茯苓」=茯苓四逆湯
[8]吐瀉:
☆吐瀉し、手足厥冷し、脈細にして、吃逆を発する証《奥田謙蔵》
☆霍乱、振寒を発する者は陽気復するの候、佳兆と為す。もし虚人振慄に堪えざる者は四逆湯に宜し。《先哲医話》
☆《傷寒論》には“大いに汗しもしくは大いに下利して厥冷する者は、四逆湯これを主る”といい、また“吐利、汗出で、発熱、悪寒、四肢拘急、手足厥冷のものは四逆湯これを主る”とあり、康平傷寒論では四逆湯が回逆湯となっている。厥逆を回復せしめる湯という意味であろう。そこで急性の吐瀉病で手足の厥冷する者に用いる機会がある。《大塚敬節》
☆急性吐瀉病で、一般状態が悪く、脈も弱く、予後の気ずかわれるような者によい。《大塚敬節》
[9]日射病:
☆中暍(チュウエツ、日射病)、吐瀉、手足厥冷する者に2途あり。《先哲医話》
    ①四逆湯
    ②白虎湯
[10]慢性胃腸炎:
☆慢性胃腸「カタール」等にして、久しきを経るも治せず、脈弱にして四肢厥冷を発する証《奥田謙蔵》
[11]やせる:
☆虚羸して逆上感あり、下利頻々、汗出でて四肢冷え、語言明瞭を欠き、その脈微なる証《奥田謙蔵》



 
#四逆湯[2]《備急千金要方》
「四逆加人参湯《傷寒論》」に同じ。
◎多寒、手足厥冷、脈絶ゆるを治す。
◎吐下して、汗出で、小便復利す、或いは下利清穀、裏寒外熱、脈微、絶せんと欲す、或いは発熱悪寒し、四肢拘急、手足厥するを治す。《雑病翼方》


#四逆加人参湯《傷寒論》
「甘草(炙)2両、附子1枚、乾姜1両半、人参1両」

◎悪寒、脉微而復利、利止、亡血也、四逆加人参湯主之。
「脉微」=脈はやっとかすかに触れる程度
「復利」=また下痢をする。


#四逆加人参湯《傷寒論》《漢方治療の実際》
「四逆湯+人参2」


#四逆加人参湯《傷寒論》
「附子、乾姜、人参、甘草」
◎四逆散の証にして心下痞硬する者を治す《吉益東洞》
四逆加人参湯はその証具らざるなり。悪寒・脈微にして復利すろ。是れ四逆湯の主るところにして、人参の証を見ざるなり。此の方、人参を加ふること僅か1両と雖も、見証なければ則ち何そ以て之を加えん。是れ心下の病証を脱するや明らかなり。《薬徴》
◎此方は亡血、亡津液を目的とす。《勿誤薬室方函口訣》

◎後世にては参附と一つかみに云えども、仲景、
「陰虚」には附子を主とし、
「陽虚」には人参を主とす。
後世にて云はば、人参は脾胃に入り脾元の気を温養し、附子は下元に入りて命門火の源を壮するとの相違あって、格別のものと心得べし。《勿誤薬室方函口訣》
    

◎四逆湯を応用すべき諸病にして、脱汗止み、舌色煤煙の如くにして湿潤し、薬汁、食餌共に咽を下利難く、心下痞鞕し、腹皮虚張する証《奥田謙蔵》

適応症及び病名(四逆加人参湯)
[1]陰症発斑:
☆身冷え、脈無く、斑黒く、昏沈し、厥冷、人事を知らざる者、宜しく之を服すべし。
[2]悪寒:
☆悪寒し、脈微にして復た利し、飲食すること能はず、その人疲労して、必ず蜷臥する者は、四逆加人参湯之を主どる《医聖方格》
[3]乾嘔:
☆煩躁し、冷水を欲する者は「乾姜・炙甘草各1銭半、附子5銭、人参2銭半」を以て冷水中に投じて冷やし服用する。《雑病翼方》
[4]霍乱:
☆転筋肉し、冷汗出でて嘔呃する者を治す。《雑病翼方》
☆吐瀉の後、著しく水分を失へる証《奥田謙蔵》
[5]吃逆:
☆産後の吃逆は悪候なり。気門に灸し四逆加人参湯を服するによろし。《医療手引草》
[5]出血:
☆吐血・子宮出血・腸出血等が突然に起こって、しかもその量が多くて、 脈が緩弱または微弱であればこの方を用いる。ところが出血が多いのに、脈が滑数であったり、洪大であれば、予後は悪い。《大塚敬節》
☆子宮よりの出血がひどくて、手足が厥冷し、冷汗が流れるものには、四逆湯または四逆加人参湯が良い。《後藤艮山》
☆産後のひどい子宮出血《和田東郭》
[6]冷や汗:
☆傷寒の陰証、身涼しく、額上、手背に冷汗有るを治す《衛生宝鑑補遺》
[7]めまい:
☆脱血過多にして、眩暈を発し、或いは暈倒する等の証《奥田謙蔵》



#四君子湯[1-1]《和剤局方》
「人参、白朮、茯苓、甘草」
「理中湯-乾姜+茯苓」
「理中湯」=「人参・白朮・甘草(炙)・乾姜」

◎栄衛気虚・臓腑虚弱・心腹脹満・全く食を思わず・腸鳴・泄瀉・嘔吐・噦逆するを治す。
◎此方は気虚を主とす。故に一切脾胃の元気虚して諸症を見はす者、此方に加減斟酌して療すべし。《勿誤薬室方函口訣》

◎気虚といえども、参附と組み合わせ用いる証とはよほど相違あり。
◎此方は、ただ胃口に飲を蓄ふる故、胃中の陽気分布し難く、飲食これに因って進まず、胃口日々に塞がり、胸膈虚痞、痰嗽呑酸などを発するなり。


#四君子湯[1-2]《和剤局方》《中薬臨床応用》
⇒「益気湯」
「党参12g、白朮12g、茯苓12g、甘草(炙)6g」水煎服。
◎脾胃気虚
◎消化吸収機能低下
◎身体衰弱



#四君子湯[1-3]《東醫寶鑑》
「人参(去蘆)・白茯苓・白朮・炙甘草各1銭2分半」水煎服。
◎真気の虚弱・気短・小心に。



#四君子湯[2-1]《和剤局方》《古今方彙》
「人参・白朮・茯苓各2銭、甘草(炙)1銭、生姜、大棗」水煎。
◎脾胃虚弱、飲食少しく思い、或いは大便実せず、体痩せ、面黄、或いは胸膈虚痞し、痰嗽呑酸、或いは脾胃虚弱、しばしば溏痢を患う等の症を治す。《薛立斎》
◎「+陳皮」=「異功散」
◎此方は胃中の蓄飲を消導し、消化吸収の機能を促進せしめる能がある。全身栄養衰え、弛緩性体質、貧血し、疲労感強く、食欲不振、胃口塞って、心下に痞え、嘔吐、腹鳴、下痢などするものに用いる。人参湯は本方に寒の加わったものである。口訣集に「面目萎白」「言語軽微」「四肢無力」「脈来ること弱」等を目標とする。四味は中焦の気を補い、不偏、不倚、君子中和の徳があるとて四君子湯と名づけた。《漢方後世要方解説》

「人参」=寒温大いに元気を補い、脾胃を増す。君薬となす。
「白朮」=苦温、脾を燥す(脾は湿を悪む)気を補う。臣薬。
「茯苓」=甘淡、脾中の湿熱を滲す。佐薬とす。
「甘草」=甘平にして使薬とす。



#四君子湯[2-2]《和剤局方》《龍野ー漢方処方集》
「茯苓4.0g、白朮・人参各3.0g、甘草・大棗・生姜各2.0g」




#四君子湯[2-3]《漢方治療の実際》
「人参・白朮・茯苓各4、甘草・生姜・大棗各1.5」

=「人参湯+茯苓大棗生姜-乾姜」《大塚敬節》
◎胃腸無力、心腹脹満、食欲不振、腸鳴下痢、嘔吐吃逆する者。
◎脾衰肺損、食欲不振、体痩面黄、皮膚にシワ多く抜け毛多き者。

◎《療治茶談》で、出血がひどくて、唇の色が白くなるほどに貧血している者には、陰を補う当帰・川芎・芍薬・地黄の入った四物湯のようなものを用いないで、陽を補う人参・茯苓・朮・甘草の入った四君子湯を用いるが良いと述べているのは、注目に値する。《大塚敬節》
   

適応症及び病名(四君子湯)
[1]味がない
[2]息切れ
[3]胃アトニー
[4]胃下垂
[5]胃・十二指腸潰瘍:
 ☆《大塚敬節》
“50歳あまりの男子で、2ヶ月ほど前から胃潰瘍の診断で治療を受けているが、いまだに少量ずつの出血が止まず、食欲もなく、次第に体力も衰え、歩行にも困難を感じるようになった。私が往診した時は、顔は青ざめ、下肢には浮腫が有り、舌は米粥を塗ったように白く、脈は遅弱で、1分間に52至という状態である。腹部は軟弱で陥没し、臍部で動悸をふれる。腹部には自発痛はないが、心下部にやや抵抗があり、軽い圧痛がある。大便は3日~4日に自然便があり、軟い。肉眼では、それとは見えないが、潜血を証明する。5月だというのに、足が冷たく湯たんぽを入れている。起きあがろうとすると、めまいがくる。
こんな状態だから、私は胃ガンを疑った。そして予後を心配しながら、四君子湯を与えた。ところが、ころを飲み始めると、食欲が出る、浮腫が去る。元気が出る。出血もなくなる。そして2ヶ月後には外来として電車で1時間あまりのところから通院出来るようになった”
[6]胃内停水
[7]胃腸炎(急・慢性)
[8]胃腸に力がない:
☆(気虚による胃腸虚弱)
☆諸病衰弱期、食欲不振、腹虚満、嘔吐など《矢数道明》
☆胃弱でも、顔色赤い者。本方を服して上衝気味の者は不可《矢数道明》
[9]遺尿:
☆虚弱体質者、貧血、冷え症の者《矢数道明》
[10]悪寒
[11]嘔吐:
☆辛熱の剤を服し、而して嘔吐噎膈する者、或いは耗気の剤を服し、大便燥結する者を治す:「+当帰・川芎」《薛立斎》
☆困倦無力で食べるとすぐ吐き、腹痛は軽い者:「+木香・縮砂・蓮肉・陳糯米」作末し砂糖水で調服。
[12]顔色わるい:
☆面色痿白、言語軽微、四肢無力、脈来ること弱なる者、此方をつかさどる《名医方考》
☆《療治茶談》“四君子湯を用いる大事の口訣が1つある。唇の色に血色の少ない時は四君子湯の正面の証であると思うがよい。これは痔や下血の病人を診るときの口訣である。補中益気湯は手足倦怠の1つを目的にとり、四君子湯は面色の痿黄と唇の血色の少ないとの2つを目的にとっている。これが益気湯と四君子湯との区別である。益気湯でも顔色の痿 黄が全くない訳ではない。四君子湯でも手足の倦怠が全くない訳ではないけれども、ただ口訣は10に10はなれず、動かない証だけを目的にするのである。これはまた口訣を学ぶ1つの心得である。”《大塚敬節》
[13]過敏性腸症候群
[14]気力がない(気力減退)
[15]口数が少ない
[16]下血:
☆悲傷して胞(子宮)絡(シバ)り、而して血が下崩(大量出血のこと)するを治す。:「+柴胡・梔子・升麻」《薛立斎》       
☆上下出血甚だしければ、此方を与うること勿れ《名医方考》
[16]下痢<傾向>
 ☆軟便~水様便
 ☆腹鳴下痢
[17]元気がない
[18]言語が不明瞭       
[19]口渇:
☆《陳念祖》曰く、一婦人有り、産後一年、口渇止まず。服薬効かず、予、「四君子湯麦門冬・烏梅・乾姜」蜜で弾子大の丸剤。それを口の中で溶かしながら服用させる。3日にして知り、10日にして全癒す。方中の妙は白朮の苦燥、乾姜の辛熱、に在り、所以に胃気を鼓舞してその水液を升すなり。《雑病翼方》
☆《薛氏》曰く、弄舌、渇を作し、冷を畏れるは胃経の虚熱なり。四君子湯に宜し。《方読便覧》
[20]口唇蒼白:
☆諸出血唇色白き者《漢方後世要方解説》
[21]声に力がない(言語無力)
[22]呼吸が浅い
[23]産後の浮腫
[24]嗜臥
[25]自汗
[26]四肢が重だるい
[27]痔出血(虚証):
☆老人、虚人の甚だしい痔出血。《漢方後世要方解説》
☆私は《療治茶談》の説を守って、痔出血が永く続いて、貧血し、動悸、息切れ、めまいを訴え、唇の色が白くなっている者に四君子湯を用いたが効無く、四物湯と苓桂朮甘湯との合方である聯珠飲を用いて著効を得たことがある。しかしまた四物湯を用いて止まらない痔出血に四君子湯+黄蓍白扁豆を用いて効をとることがある。陰陽虚実の鑑別は微妙であり、判断に迷うことがある。《大塚敬節》
☆方考に曰く、年高く気弱く、痔血止まざる者、此方之を主る。誤って痔を攻めるの薬を服し、血大いに下って虚脱する者もまた之を主る。《積山遺言》
[28]痔瘻:
☆肛門潰爛して膿血を出す者:「+黄蓍・槐角」
 exM氏痔を患う多年、肛門潰爛し、時に膿血を出し、臭比なし。面色萎黄、肢体倦怠、諸薬無効なり。四君子湯+黄蓍+槐角を以て100余剤与え服し、全く癒える。《方読便覧》
☆肛門潰爛して痛ある者:「+黄蓍建中湯白扁豆・縮砂・人参」
☆腸風下血、腸胃中に水飲ある者:「+黄蓍・白扁豆」
[29]小便淋瀝:
☆冷淋にて諸薬の効かざる者:「猪苓・沢瀉・木通」《寿世保元》
[29]小児の疾患:
 ☆嘔吐
 ☆小児の五軟
 ☆消化不良
 ☆吐乳
  ☆小児のはしか
  ☆小児の発熱
☆面色萎黄、眼胞微腫し、渇を作して飲食少しく思い、腹中に一塊ありて或いは移動し、小便澄白、大便実せざるを治す:「+梔子・蕪蔞仁肥児丸」《古今方彙》
[35]上腹部振水音
[36]食後、眠くなる
[37]食欲不振:
☆火逆して上を衝き食入るを得ざる者を治す:「+山梔子・黄連」《薛立斎》
☆脾胃虚弱(消化力が弱い)、飲食進み難きを第一の標的として用ゆるべし 《和田東郭》
☆食欲がない。食べると胃にもたれる。腹にも脈にも力がない。血色もすぐれない。手足が冷え、言語にも力が入らない。吐いたり下痢したりすることもある。こんな場合に用いる《大塚敬節》
☆生後3ヶ月の男児。2週間ほど前から乳を呑まなくなり、だんだん痩せてくるという。小児科の先生はどこも悪いところはないというが、このままでは心配だからといって診を乞うた。
腹診すると、乳児の腹にしては小さく、ことに臍下は陥没して力がない。下痢も嘔吐も無いが、私はこれに四君子湯を与えた。これをサジ(匙)にすくって、少しずつ呑ましたが、喜んで呑むと言う。2、3日たつと食欲が出たのか、乳をぐんぐん呑むようになった。《大塚敬節》
[38]心悸亢進
[39]頭頂部が軟らかく、弾力がない
[40]舌質<淡白><胖大>
[41]舌苔<微白苔><湿潤>
[42]全身の無力感:
☆面色痿白、言語軽微、四肢無力、脉来たること虚弱の者は此方主どる《医方考》
[43]手足がふにゃふにゃ(手足痿弱)
☆手足痿弱は脾胃の元気が衰えたため《矢数道明》
[44]疲れやすい
[45]低タンパク血症
[46]糖尿病:
☆糖尿で疲労倦怠する。
☆病気が進行して、衰弱が甚だしく、食欲もなく、貧血し、下肢に浮腫がみられ、脈も微弱となった者に用いる(漢方診療医典)
[47]吐血:(陰虚火動による)
“《名医方考》に、上も下も出血がひどければ四物湯を与えてはならないと述べている。四君子湯は春と夏のようなものである。天地の間で万物を生ずるは春と夏である。また万物を枯らすのは秋と冬である。これは天地陰陽の常道である。諸種の出血で、唇の色を診て痿白ならば四君子湯を用いるがよい”
[48]夏バテ
[49]脳血管障害後の養生に使用する。
[50]はしか
[51]半身不随:
☆なかなか治らず衰弱を来す者《矢数道明》
[52]脾胃気虚
[53]冷え症:
[54]疲労倦怠:
☆糖尿病で疲れる者。
☆病中・病後のつかれ・だるさ
[55]貧血:
☆出血で唇の色がないほど貧血した者《矢数道明》
☆気力が衰微に、地黄・当帰・川芎・芍薬などの入った補血剤を用いることが出来ない者に用いる《大塚敬節》
☆この方は胃腸の機能を盛んにして、消化力を助けて気力を益す効があるので、胃潰瘍・胃ガンなどで、気力が衰えて、貧血の甚だしくなっている者に用いる機会がある。《大塚敬節》
[56]腹部軟弱
[57]腹鳴
[58]浮腫<軽度>
☆15歳の少女。平素から身体が弱く顔色も悪い。痩せている。発病は1ヶ月前で、時々負うとがあり、食が進まず、疲れて元気がない。脈は微弱で、手足が冷える。心下部に振水音を証明する。大便は1日1行。
異常の所見から「人参湯」を与えることにした。2、3日飲むと嘔吐が止み、食が進むようになった。ところが5日目頃から全身に浮腫が現れ、眠れなくなった。そこで、人参湯中の乾姜を生姜に代え、これに茯苓を加えた。すなわち四君子湯の意である。これを数日飲むと、1日10数回の排尿があり、浮腫が去り、以上の症状はすっかり消え去った。《大塚敬節》
[59]慢性下痢:
[60]味覚低下
[61]無気力
[62]めまい(目眩)     
☆肥った人:「+倍蜜・黄蓍(炙)・半夏・陳皮・川芎・荊芥」
[63]痩せて顔色が悪い
[64]横になりたい



四香散《東醫寶鑑》
「木香・沈香・乳香・甘草各2銭半、川芎・胡椒・陳皮・人参・白礬各5銭、桂心・乾姜・縮砂・茴香各1両、大茄焙5両」細末にし毎回2銭を陳米飲で調下する。
◎脾気・血気・血蠱・気蠱・水蠱・石蠱で腫脹の激しい者を治す。

#四合湯《東醫寶鑑》
「陳皮・半夏各1銭半、厚朴・枳穀・赤茯苓・紫蘇葉・香附子・欝金各7分、甘草5分、生姜5片」水煎服。
◎痰積・気滞・腹痛。


四子調中湯[1]《万病回春》《東醫寶鑑》
      「半夏2銭、桃仁1銭半、香附子・枳実・括蔞仁・蘇子(炒)・白芥子(炒)各1       銭、黄連・姜汁(炒7分)・青皮・沈香・白茯苓・木通・芒硝各5分」剉作       し、1貼を水煎し芒硝を入れ、空腹時に服用。
◎反胃による痰。大小便とも難渋の者。


四子調中湯[2]《万病回春》《古今方彙》
「青皮・陳皮・沈香・芒硝各5分、枳実・香附子・括楼仁・茯苓・木通各1銭、半夏1銭、黄連(姜)7分、紫蘇子・桃仁・白芥子各1銭半、生姜」水煎し稍熱し服用。
◎反胃にて小便赤く、大便閉じ及び痰気壅盛の者を治す。

#四汁飲《中薬臨床応用》
「西瓜汁・梨汁・鮮地黄汁・蔗汁」適量混和して飲用。
 ◎暑熱による脱水。


#四生飲《婦人大全良方》
「側柏葉、生地黄、荷葉、葉」


四生丸[1-1]《和剤局方》
「生地黄・生荷葉・生艾葉・生側柏葉」各等分。
◎衂血・吐血に。 

四生丸[1-2]《東醫寶鑑》
「生荷葉・生艾葉・生側柏葉・生地黄葉」各等分に搗いて卵大の丸剤。1丸づつ水1杯で呑む。
◎衂血・吐血。

四生丸[1-3]《婦人大全良方》《中薬臨床応用》
「側柏葉(生)9g、葉(生)9g、荷葉(生)9g、生地黄9g」水煎服。
◎熱証の内出血
◎鮮紅色の出血、口乾、咽燥、脈弦数。
◎止血後は服用をやめ、長期間服用すべきでない。


四生丸[2]《東醫寶鑑》
「黒丑頭末・大黄・皀角各2両、朴硝5銭」を作末し、水で梧子大の丸剤。白湯で30丸呑む。
◎一切の積熱を治す。


#四生散《東醫寶鑑》
白・黄蓍・独活・白附子」各等分に作末し、毎回2銭を薄荷酒で調下する。
◎腎臓風による脚の瘡癬。耳鳴り。

#四将軍飲《東醫寶鑑》
「附子(炮)1両、訶子(煨って核を去る)4個、陳皮4個、炙甘草4分」を1貼づつ分作し、毎貼に姜・棗各7枚を入れ、水煎服。
◎諸瘧により人事不省の者。

#四獣飲《東醫寶鑑》
「人参・白朮・白茯苓・陳皮・半夏・草果・甘草・烏梅・生姜・大棗各1銭を剉作し、1貼に塩少々入れて混ぜ、皮紙で薬をくるんで水に漬け弱火で焼いて熱くなったら取り出し、水煎服。
◎七情の聚痰。五臓の気虚による瘧。

四獣飲湯《易簡方》《古今方彙》
「人参・白朮・茯苓・橘紅・半夏・草果・烏梅・甘草各等分、生姜、大棗」水煎。
◎五臓の気虚し、しばしば怒りを節せず、陰陽相勝を致し、結聚、涎飲、衛気と相搏ち、発して瘧疾となるを治す。びに諸瘧を治す。


#四獣補中益気湯《寿世保元》《古今方彙》
「人参・白朮・茯苓・橘紅・半夏・草果・烏梅・甘草各等分、生姜、大棗」水煎。
◎五臓の気虚し、しばしば怒りを節せず、陰陽相勝を致し、結聚、涎飲、衛気と相搏ち、発して瘧疾となるを治す。
◎ならびに諸瘧を治す。


四汁膏《東醫寶鑑》
「雪梨汁・藕汁・生蘿葡汁・生薄荷汁を等分に糖屑を入れて混ぜ、とろ火で焼いて膏を作り、1匙づつ食べる。
◎咳を止め、痰をなくす。



#四順飲《張氏医通》
「当帰、芍薬、大黄、甘草」各等分。
(一名:清涼飲子《和剤局方》)
◎血熱、便秘、脈実なるものを治す。
◎此方は血熱ありて便秘する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎老人血燥の便秘、痔家湿熱の便秘によく応じるなり。
◎腸胃燥熱、下血する者を治す:「地黄」


#四順清涼飲[1-1]《外科正宗》《古今方彙》
「連翹・赤芍薬・羗活・防風・当帰・山梔子・甘草各1銭、大黄2銭、燈心草」水煎。
◎湯発(熱湯による火傷)、火焼にて熱極まり毒逼りて裏に入り或いは涼水を汲む所を被りて火毒内攻し、煩躁を致生し、内熱口乾し、大便秘実する者を治す。



#四順清涼飲[1-2]《外科正宗》《漢方治療の実際》
「連翹4、芍薬・防風各3、羗活2、当帰5、梔子・甘草・大黄各1.5」


#四順清涼飲[1-3]《外科正宗》
「連翹・芍薬・羗活・防風・当帰・梔子・甘草各1匁、大黄2匁」
◎湯が飛びはね、火焼、熱極逼し、毒裏に入り、或いは外、凉水の汲む所を被り、毒内攻し、煩躁を生ずるを致し、内熱口乾、大便泌実する者を治す。

◎此方は、湯火傷の内攻して、実熱ありて煩躁、便秘する者に用いる。《勿誤薬室方函口訣》

適応症及び病名(四順清涼飲)
■カミナリに感電:
☆夏の日、2人の者が連れだって歩いていた。途中で雷雨にあってので、走って帰ろうとしたところ、稲妻を見ると、その場に卒倒してしまった。しばらくたって、小便が出そうになって、眼がさめたところ、腰が抜けて立てない。耳も聞こえない。体中が杖で殴られたように痛い。そこで、はじめて、カミナリに打たれたことを知り、友達を呼んだところ、地に伏したままで返事がない。よく見ると、毛髪が焼け縮れて死んでいた。そこで大変驚き、人に頼んで、駕籠で帰って治を予に乞うた。診てみるに、脈が浮緊で、悪寒、発熱し、胸で動悸がして安眠が出来ない。舌に白苔があて、のどが渇く、雷は右のこめかみのあたりを打って、胸脇から下腹に抜け、肛門と陰嚢の間を通り、左の股から委中穴の通りを下り、踵まで、焦げて黒色に変じ、惞熱腫痛(炎症があって腫れて痛む)を起こし、頭髪、陰毛ともに焦げて縮まり、火焼とちっとも違わない。うたれた通りは、着物も股引きもタテに裂けていた。翌日になると、焼けた後が全部水疱になり、皮膚が脱落し膿が流れるようになった。しかし日を経るに従って、痛みも減じ、熱もとれて思ったより速く治った。治療は最初から四順清涼飲を用い、中黄膏、白雲膏を塗った。《有持桂里》
■火傷(やけど):
☆たいていは「桂枝加竜骨牡蛎湯」及び「救逆湯」にて宜しけれども、実熱の症には四順清涼飲《外科正宗》適当とす。《勿誤薬室方函口訣》
☆湯火傷は、救逆湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、四順清涼飲の3方ですむものである。証に随って撰用するのがよい。そのうち、動悸もあり、物に驚きやすい状があれば、救逆湯、柴胡加竜骨牡蛎湯の方を用い、それらの状のない時は清涼飲を用い、外から胡瓜の汁を塗るとよい。
救逆湯、柴胡加竜骨牡蛎湯の2方は、火傷、湯發、或いは灸にあてられた者にも用いる。そのうち柴胡加竜骨牡蛎湯は胸脇にかかる気味がある。さて救逆湯の方論には、火逆に用いてあるけれども、いま試みてみるに、柴胡加竜骨牡蛎湯の方がよく効くものである。それ故に湯火傷の類には、たいていは柴胡加竜骨牡蛎湯を用いる。
また灸に当てられて、ひどい場合は、発熱、悪寒、喘急して横に臥することの出来ないほどのこともある。それらにも皆柴胡加竜骨牡蛎湯がよい。清涼飲も良く効く方である。熱湯を頭からかぶって、熱が激しく出た後で、痛みの出るものなどにはこの方がよい。《有持桂里》
■痔瘻:
☆痔瘻を治し、腫疼を消す。《聖済総録》



#四順清凉飲[2]《東醫寶鑑》
=「清凉飲子」
「大黄(蒸)・当帰・炙甘草・赤芍各1銭2分半・薄荷10葉」水煎服。
◎血熱を治す。

#四順湯《備急千金要方》
「四逆加人参湯《傷寒論》」に同じ。
◎霍乱:転筋肉し、冷汗出でて嘔呃する者を治す。《雑病翼方》


#四順湯《聖済総録》
「貝母・桔梗・紫菀各1両、甘草半両」
右4味、或いは咳嗽甚だしきは「+杏仁」《勿誤薬室方函口訣》
◎肺癰、膿を吐し、五心煩熱、壅悶、咳嗽するを治す。
◎此方は肺癰、咳嗽に効あり。
◎主治の如く五心煩熱、壅悶する者:「+葦茎湯」《勿誤薬室方函口訣》
◎此方は肺癰のみならず、咳嗽声唖の者に用いて効あり。



#四順理中丸(一名四順元)《東醫寶鑑》
「理中湯の甘草を倍増し作末して、梧子大の蜜丸。」

#四順理中湯(一名四順湯)《東醫寶鑑》
「理中湯の甘草を倍にして使う。」
◎腹痛・自利を治す。

#四神丸[1-1]《証治準縄》
「破故紙 五味子 肉豆蔲 呉茱萸 大棗 生姜」
◎脾腎虚寒し、五更泄瀉。

#四神丸[1-2]《東醫寶鑑》
「破故紙(酒浸炒)4両、肉豆蔲(煨)・五味子(炒)各2両、呉茱萸(炮) 1両、生姜8両、大棗100枚」を一緒に煮て、姜を去り大棗を取って梧子大の丸剤。空腹時に塩湯で30~50丸飲む。
◎脾腎虚の泄痢。晨泄の長くなる者。

#四神丸[1-3]《内科摘要》《中薬臨床応用》
「補骨脂120g、五味子90g、肉豆蔲60g、呉茱萸30g、生姜120g、大棗80g」丸剤にし毎回6~9g、湯で服用。
◎五更瀉
◎腎陽虚による慢性下痢
◎腸結核
◎慢性結腸炎


#四神丸[2]《東醫寶鑑》
「呉茱萸(半分は酒浸・半分は醋浸し焙乾)・畢澄茄・青木香各5銭、香附子(大)1両を作末、糊で梧子大の丸剤。塩湯で70~80丸呑む。
◎冷疝の腰痛。

#四神丸[3]《東醫寶鑑》
「香附米8両を酒・醋・塩水・童便にそれぞれ浸して、2両だけ3日たったらすくい出して炒り、蒼朮4両を水浸し、牡蛎粉(炒)・縮砂(炒)・樗根白皮(蜜水炒)各2両」作末し、黄米飯で梧子大の丸剤。50~70丸酒で飲む。
◎白帯を治す。

#四神散[1]《霊苑》
「当帰、芍薬、川芎、乾姜」
◎血気、心腹刺痛、及び産後、瘀血消せず、積聚散せず、塊を作し腹中切痛する者を治す。《雑病翼方》
◎按ずるに産婦は中気多く虚、行血し能わず、血ここに凝滞して腹痛を為す者、此湯最も効あり。


#四神散[2]《東醫寶鑑》
「甘菊・当帰・旋覆花・荊芥穂各7分」作末し、毎回2銭を葱白3寸・茶末1銭を煎じた水で調服する。
◎婦人の血風眩暈・頭痛を治す。

#四神丹《東醫寶鑑》
「雄黄・雌黄・硫黄・朱砂各1両を細末にして磁器のなかに入れ、塩泥で固く封をし、弱火で1~2時間、再び細末にし糯米糊で豆粒大の丸剤。毎回1丸、空腹時に呑む。
◎陽気が衰え、精髄が傷耗した者。

#四製香附丸《東醫寶鑑》
「香附米1斤を四製に分け、1つは塩水に姜汁を加えて煎じ少し炒って降痰し、もう1つは米醋に漬けて煎じて少し炒って補血し、1つは山梔仁4両と同時に炒って梔子は捨て欝を晴らし、1つは童便で洗って炒らず降火する。以上4つの材料を作末し、再び川芎・当帰各2両を同時に作末して酒麺糊で梧子大の丸剤。毎回50~70丸飲む。
◎月経の不調を治し、経脈を調和させる。

#四製蒼柏丸《東醫寶鑑》
「黄柏2斤を乳汁・童便・米泔に浸したもの8両、酥炙したもの8両を各13 回浸炙し、蒼朮8両を川椒・破故紙・五味子・川芎・でそれぞれ炒って、2両づつにし、炒薬は捨て、黄柏と蒼朮だけを取って作末し、梧子大の蜜丸。朝は酒・昼は茶・夜は白湯で30~50丸呑む。
◎湿熱で脚膝が痿弱した者。

#四製白朮散《東醫寶鑑》
「白朮4両を切って4包をつくり、黄蓍・石斛・牡蛎・小麦麩各2両を一緒に炒って、白朮が黄色になったら、白朮だけ取り出し、作末し毎回3銭を、栗飲で調服。
◎盗汗を治す。

#四聖丸《東醫寶鑑》
「全蝎(炒)1両、胡椒・木香・青皮(去白)各2銭半」を作末し、飯で梧子大の丸剤。姜橘湯で5~7丸呑む。
◎小児の心腹が虚脹した。


#四柱散《東醫寶鑑》
「木香・白茯苓・人参・附子(炮)各1銭2分半、生姜3、大棗2、塩少々」水煎服。
◎臓が冷え、腹痛・下痢・耳鳴りする者。


#四白丹《東醫寶鑑》
「甜竹葉3両、白芷1両、白朮・縮砂・白茯苓・香附子・防風・川芎・人参・甘草各5銭、羗活・独活・薄荷各2銭、細辛・知母・各2銭、藿香・白檀各1銭半、竜脳・牛黄各半銭、麝香1字」作末し1両を10丸に蜜丸。就寝時に1丸を細嚼して、愈風湯で送下。
◎中風の昏冒。
◎肺気をきれいにし魄魂を調養する。
       

#四七湯《和剤局方》
半夏厚朴湯《金匱要略》に同じ。」
「紫蘇葉2両、厚朴3両、茯苓4両、半夏5両」
上を㕮咀咀して毎服4銭、水1半、生姜7片、大棗1個、煎じて6分に至り、滓を去り熱服す。時候に拘わらず。
◎喜・怒・悲・思・憂・恐・驚の気、結びて痰涎と成るを治す。状は破絮(はじよ)(古綿)の如く、或いは梅核の如く、咽喉の間に有り、喀(は)けども出ず、咽(の)めども下らず、これ七気の為す所なり。或いは中脘痞満、気は舒快せず、或いは痰涎壅盛、上気喘急、或いは痰飲中結に因りて、嘔逆悪心、並に宜しく之を服すべし

四七湯《易簡方論》《勿誤薬室方函》
「半夏厚朴湯《金匱要略》に同じ。」
◎七気鬱滞して、病となる者を治して極めて効あり。
◎妊娠3ヶ月、悪阻病気となり、鬱・瘡を生ずるを治す。
◎七情気鬱、呼吸気促、而して痰声無き者を治す。《医学入門》

 


四七《易簡方論》《古今方彙》
「半夏5銭、茯苓4銭、紫蘇葉2銭、厚朴3銭、生姜、大棗」煎服。
◎七情の気結んで痰涎をなし、状は破絮の如く、或いは梅核の如く、咽喉の間に在り、喀けども出でず、嚥めども下らず、此れ七気のなす所なり。或いは中脘痞満、気は舒快せず、或いは痰涎壅盛、上気喘急、或いは痰飲により嘔逆悪心するを治す。


#四七湯《証治準縄》《勿誤薬室方函》
「半夏厚朴湯《金匱要略》に同じ。
◎咽喉中に痰涎あり、上気喘逆する者を治す。

#四七湯《瑞竹堂経験方》
「半夏厚朴湯《金匱要略》甘草・香附子・琥珀」
◎婦人、小便不順し、甚だしきは陰戸疼痛するを治す。


#四七湯《東醫寶鑑》
「半夏(製)2銭、赤茯苓1銭6分、厚朴(製)1銭2分、紫蘇葉8分、生姜7斤、大棗2枚」煎服。
◎七気が凝結して、痰が古綿又は梅核みたいになって、吐いても吐けず、飲み込んでも飲めず、胸膈が痰涎でふさがった者。
       

#四磨飲《厳氏済生方》
「人参 檳榔 沈香 烏薬」
◎七情傷寒・上気喘息・胸腹満痛。

四磨湯[1-1]《厳氏済生方》《東醫寶鑑》
「人参・檳榔・沈香・烏薬」等分に水でよく洗って1杯の7分ぐらい取って3~5回煎じて、温服。
「沈香四磨湯木香人参」
◎七情が欝結し上気・喘急する者。
◎七情傷寒、上気喘息、妨悶し、食せざるを治す。《脚気提要》

四磨湯[1-2]《東醫寶鑑》
「檳榔・沈香・木香・烏薬」各等分。それぞれ水洗し、3~5回煎じ、空腹時に温服。
◎《古今方彙》には、食後に服用。
◎気滞と便秘。



#四味茴香散《東醫寶鑑》
「烏薬(酒浸の一夜焙ったもの)・茴香・青皮各1両」を作末し毎回2銭半を、発作の起きたとき熱酒で調下する。
◎陰嚢・陰茎の痛みの激しいとき。俗に小腸気を治す。

#四味烏沈湯《医学入門》《古今方彙》
「烏薬・香附子・砂仁・沈香各等分、生姜」煎服。
◎心脾刺痛するを治す。

#四味藿香湯《東醫寶鑑》
「藿香・人参・橘皮・半夏各2銭、生姜3片」水煎服。
◎胃虚・嘔吐で粥・薬を受け付けない者。

#四味茱連湯《東醫寶鑑》
「半夏1両、陳皮5銭、黄連1両、呉茱萸1銭、桃仁24粒」を作末し、神麹糊で緑豆大の丸剤。姜湯で100丸呑む。
◎痰火が瘀血を帯びて呑酸になる者。

四味湯《東醫寶鑑》
      「当帰・延胡索・血竭・没薬各1銭を作末し、童便で煎服。
    ◎産後の血暈を治す。


四味人参湯《保命大全》
      「乾姜黄連黄芩人参湯《傷寒論》」に同じ。
◎傷寒脈遅、胃冷嘔吐するを治す

四味腸癰湯《済世薬室》
腸癰湯《集験方》に同じ。


四妙枳穀丸《東醫寶鑑》
      「枳穀を米をといた水に漬け、中身は捨て切って4両を4つに分け、1分は       蒼朮と水で煎じ乾燥して炒り、黄色くなったら蒼朮を捨て、1分は蘿葡子1       両と水で煎じ、前述と同様に蘿葡子を捨て、1分は茴香、1分は乾漆を前       述と同様処理する。別に香附子(醋浸炒)2両、三稜・莪朮各2両を童便に       漬けて一晩おき、次に日皮を剥いて巴豆30粒と煎じて乾燥して炒り、黄       色くなったら巴豆は捨て、作末して前に炒った蒼朮・蘿葡子・茴香・乾漆       を煎じて汁を取り、好醋1椀と煎じ、麺糊で梧子大の丸剤。米飲で70~90       丸呑む。
    ◎気血がたまり、脹満・積聚を治す。


四妙固真丹《東醫寶鑑》
      「蒼朮1片を切って四分し、1つは茴香・青塩各1両と同じく炒って、2つ       めは川椒・破故紙各1両と炒り、又1つは薬酒醋で炒るが、朮が黄色にな       るまでにして朮だけを取って末にし、薬酒醋で糊梧子大の丸剤。空腹時に       30~50丸呑む。男子は酒で女子は醋で飲む。
    ◎遺精・白濁・五淋・七疝・婦人の崩帯。


四妙散《東醫寶鑑》
      「威霊仙(酒蒸)5銭、羊角灰・蒼耳子各1銭半、白芥子1銭」を作末し、       毎回1銭を姜湯で送下する。
      <別法>蒼耳子を蒼朮に代える。
    ◎痛風が走注する者。


四妙川練丸《東醫寶鑑》
      「川練肉1斤を4分して、1分は麩1合・斑猫49枚と炒り、1分は麩1合・       巴戟1両と炒り、1分は麩1合・巴豆49枚と炒り、1分は塩1合・茴香と       炒り、麩が黄色になったら、同時に炒った薬は捨て、川練肉に再び木香・       破故紙(炒)各1両を加えて作末し、酒糊で梧子大の丸剤。塩湯で1日3回       服用。
◎疝気・腫痛。


 四妙勇安湯《験方新編》《中薬臨床応用》
      「玄参90g、当帰60g、金銀花90g、甘草30g」水煎し3回に分服。
       下痢などの副作用が出るときは、黄蓍、白朮を加える。
    ◎血栓性動脈炎
    ◎チアノーゼ

 四明飲《万病回春》《古今方彙》
      「大黄、葛花、沢瀉、石決明」水煎。
    ◎外障(眼瞼結膜、涙器、眼球結膜、角膜等の眼病をさす)及び
    ◎一切の眼目腫痛、翳障するを治す。

四物安神湯《東醫寶鑑》
      「当帰・白芍・生地黄・熟地黄・人参・白朮・茯神・酸棗仁(炒)・黄連(炒)       ・山梔子(炒)・麦門冬・竹茹各7分、辰砂(細末)5分、大棗2枚、炒米       一握り、烏梅1個」水煎し、辰砂を少し混ぜて飲む。
◎怔忡・跳動を治す。


 四物安神湯《万病回春》《古今方彙》
      「当帰、白芍薬(酒)、生地黄、熟地黄、人参、白朮、茯神、酸棗仁、黄連(姜)、       山梔子、麦門冬、竹茹、烏梅1個、辰砂(服するの臨み入れる)、大棗、炒       米」水煎。
◎心中に血養無く、故に怔忡を作すを治す。


四物五子元《東醫寶鑑》
      「当帰・白芍・川芎・熟地黄・枸杞子・覆盆子・地膚子・兎絲子・車前子各       等分」作末し、梧子大の蜜丸。空腹時に塩湯で50~70丸呑む。
◎眼昏を治す。

四物調経湯


四物湯合猪苓湯《漢方治療の実際》
「当帰・川芎・芍薬・地黄各3、猪苓・茯苓・沢瀉・滑石・阿膠各4」


四物湯[1-1]《和剤局方》《古今方彙》      

「白芍薬2銭、川芎1銭半、当帰・熟地黄各2銭」水煎。
◎肝腎の血が虚して発熱し、或いは寒熱往来し、或いは日発熱し、頭目清からず、或いは煩躁して寝られず、胸膈脹を作し、脇痛を作すを治す《薛立斎》

四物湯[1-2]《和剤局方》《中薬臨床応用》
「熟地黄12g、当帰12g、白芍薬9g、川芎5g」水煎服。
◎補血の力を増強するときは、熟地黄、当帰を増量し、
◎活血の効能を強めるときは、当帰、川芎を増量する。
◎血虚に。

四物湯[1-3]《東醫寶鑑》
「熟地黄・白芍・川芎・当帰各1銭2分半」水煎服。
◎血病に。



四物湯[1-4]《和剤局方》《古今方彙》
「当帰(酒炒)、川芎、白芍薬(酒)、熟地黄(酒蒸)」各等分。水煎。
◎一切血虚及び婦人経病を治す。
◎栄衛を調益し、気血を滋養して、衝任虚損し、月水調わず、臍腹㽲痛し、妊娠宿冷、将理(てあて)宜しきを失し、胎動不安、血下りて止まず、及び産後虚に乗じ、風寒内を搏ち、悪露下らず、瘕聚を結生し、少腹堅痛し、時に寒熱を作すを治す。《婦人門》

◎経水①:将に来らんとして痛みを作す者は血実、気滞なり。或いは心腹腰に連なりて痛みを作すには[乾地黄]を用い、「+黄連・香附子・桃仁・紅花・延胡索・牡丹皮・莪朮・青皮」を用いる。《済世全書》
◎経水②:期を過ぎて来らず痛みを作す者は血虚にして寒あり。:「+桃仁・紅花・香附子・肉桂・莪朮・蘇木・木通・甘草」
◎経水③:期に先んじて来る者は血虚にして熱あり、[乾地黄]を用い、「黄芩・香附子・黄連・阿膠・艾葉・黄柏・知母・甘草」
◎経水④:期を過ぎて来り、紫黒にして塊をなす者は気鬱、血滞なり、[生地黄]を用い、「+桃仁・紅花・牡丹皮・青皮・香附子・延胡索・甘草」
◎経水⑤:去ること多くして久しく止まず、腫満を発する者は是れ脾経の血虚なり。「+白朮・茯苓・砂仁・大腹皮・木香・陳皮・厚朴・紫蘇子・猪苓・木通・香附子・延胡索・牛膝・甘草」
◎経水⑥:月久しく行らず、腫を発する者は是れ瘀血が脾経に滲入するなり。「-地黄、+桃仁・紅花・牡丹皮・乾姜・肉桂・厚朴・枳殻・木香・香附子・牛膝・延胡索」
◎経水⑦:期に先んじて至り、血は紫にして塊あり、腰腹痛み、手足は冷えて痺れ、口乾頭眩するには[生地黄]を用い、「+黄芩・荊芥・香附子・小茴香・延胡索・続断・杜仲・地楡・甘草」
◎経水⑧:行りて後に痛みを作す者は気血の虚なり、「+四君子湯乾姜」
◎経水⑨:期を過ごして来たり、色淡き者は痰多きなり。「+陳皮・半夏・茯苓・甘草・生姜」
◎経水⑩:適適来たり、適適断つ、或いは寒熱往来するには、先づ「小柴胡湯」を服して後に、此湯を用いる。
◎経水⑪:肥白の人、期を過ごす者は是れ痰なり、「二陳湯」を用い、「+天南星・蒼朮・滑石・川芎・当帰・香附子」
◎経水⑫:過多にして久しく止まざる者は血崩(子宮出血の甚だしいもの)となる。[生地黄]を用い、「+白朮・黄芩・阿膠・茯苓・山梔子・地楡・荊芥・香附子・甘草」
◎経水⑬:過多なるには、「+黄芩・白朮」
◎経水⑭:渋少なるには、「+葵花・紅花」

◎経を錯(みだ)して口鼻に妄行する者は是れ火が血を載せ気が上がるの乱なり。[生地黄]を用い、「+黄芩・梔子・牡丹皮・犀角・茯苓・麦門冬・陳皮」
◎妊娠、胎動不安、下血止まざるには、「+艾葉・阿膠・黄芩」

◎産後血痢にて腹痛するには、「+槐花・黄連・罌栗殻」
◎産後悪露通ぜざるには、「+桃仁・蘇木・牛膝」
◎血臓(子宮)虚冷し、崩中(子宮の不正出血のこと)にて血を去ること過多なるには、「+阿膠・艾葉」

◎血崩には、「+生地黄・蒲黄」or「+阿膠・艾葉・黄芩」
◎赤白帯下には、「+香附子・白芷」

◎血痢には、「+阿膠・黄連」
◎中湿にて身重くして無力、身涼しく微汗あるには、「+白朮・茯苓」

◎筋骨肢節疼み、及び頭疼み憎寒するには、「+羗活・防風・藁本・細辛」
◎臍中虚冷し、腹疼み、腰背の間痛むには、「+延胡索・川楝子」

◎血熱相搏ち、舌乾き口渇きには、「+括楼根・麦門冬」
◎腑臓秘渋するには、「+大黄・桃仁」
◎虚損にて不眠には、「+竹葉・酸棗仁」

◎目暴(にわか)に赤く翳(かげ)りを作して疼むには、「+羗活・防風・防已・竜胆」
◎熱に因りて風を生じるには、「+川芎・柴胡」


 四物湯《漢方治療の実際》
「当帰・川芎・芍薬・地黄各3」
    

四物湯[1-5]《和剤局方》
「芎帰湯《備急千金要方》+白芍薬・熟地黄」
 「芎帰湯」=「川芎・当帰」

◎栄衛を調益し、気血を滋養し、衝任虚損、月水不調を治す。
◎此方は血道を滑かにするの手段なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎それ故、血虚は勿論、瘀血、血塊の類、臍腹に滞積して、種々の害を為す者に用ゆるれば、たとえば戸障子の開閉にきしむ者に上下の溝へ油を塗る如く、活血して通利すを付くるり。一概に血虚を補う者とするは非なり。《勿誤薬室方函口訣》

◎《和田東郭》の説に、任脈動悸を発し、水分穴にあたりて動築最も劇しき者は、肝虚の症に疑い無し、肝虚すれば腎も倶に虚して、男女に限らず必ず此処の動築劇しくなる者なり、是即ち「地黄」を用いゆる標的とす。世医多く此の標的を知らず、妄りに地黄を用いる、故に効を得ずと。亦以て此方の要訣とすべし。《勿誤薬室方函口訣》

◎《女科百病問答補遺》に云う、婦人多く血に病み、而して七情六淫の邪、ひとたび血と搏つに遇えば、即ち病、変証多端、亦識るの易からず、その人、痴の如く、狂の如く、或いは大便黒く、或いは痛所有り、脈渋、数、弦、結、牢、沈、革、伏なり。皆瘀血の証なり。凡そ一証を見わせば即ち血の治を以てす。     《雑病翼方》
◎四物湯は一慨に云うときは肝を緩むる剤と心得ふべし。しかし、四物のみにては霊活なし。膠艾湯を始め、後世に至り種々加減して用いる処に妙用あり。《勿誤堂一夕話》

◎此方は金匱芎帰膠艾湯の変方であって、即ち同方より阿膠、艾葉、甘草を去ったものである。本方は婦人の聖薬とせられ、貧血を補い、血行をよくし、陳旧瘀血を去り、血熱を冷まして所謂婦人血の道と称する神経症状を鎮静する能がある。転じて妊娠、産後、月経異常等広く婦人科疾患に応用される。この方は《勿誤薬室方函口訣》にいう如く、血道を滑らかにし、戸障子の開閉に溝に油を塗る如く活血して通利をたすける意味がある。《漢方後世要方解説》

*「当帰」=辛苦甘温は心脾に入りて血を生ず。君薬となす。
*「地黄」=心腎に入りて血を滋す。臣薬となす。
*「芍薬」=酸寒は肝脾に入りて、陰を斂めて佐薬となす。
*「川芎」=辛温は肝心包に入りて、血をめぐらし、使薬となす。
    

★適応症及び病名(四物湯)
[1]足(脚)の腫痛
[2]遺精
[3]陰戸がはれる:
☆陰戸腫痛するを治す:「+山梔子・牡丹皮・柴胡・竜胆」《薛立斎》
[4]運動麻痺:
☆手足屈伸すべからざる者:「+萆薢・桂枝」《方読便覧》
☆腫気残りて麻痺疼痛する:「+蒼朮・木瓜・薏苡仁」《勿誤薬室方函口訣》
☆血虚して中風で右手足が不仁する:「+釣藤鈎・竹瀝・姜汁」《薛立斎》
[5]栄養失調
  ☆顔色が悪い
[6]かかとが痛い:
☆足跟痛は痰有り、血熱有り。血熱は「+黄柏、知母、牛膝」
☆脚跟痛で血熱に依る者:「+黄柏、知母、牛膝」《万病回春》
[7]過少月経
[8]過短月経
[9]下肢の運動麻痺
[10]下腹部堅痛
[11]脚気:
☆動悸甚だしき者、四物湯或いは効あり。蓋し水分の動を以て標準と為す《和田東郭》
☆諸瘍内攻及び脚気上冲に、木瓜、呉茱萸、犀角を与え無効の者、「+黄柏・山梔子」or「+浮萍」能く之を治す。蓋し水湿を制せずして血虚を治む。是れ最上乗の法なり。《和田東郭》
☆《医学心悟》曰く、脚気、湿熱を離れず、また両足忽然として枯細する者有り、俗に乾脚気と名づく。これ風燥の症なり。「+牛膝・木瓜」之を主る。今、腫気を帯ぶる者は「+木瓜・蒼朮・薏苡仁」、更に佳なり。《脚気提要》
☆血脚気(婦人の脚気):「+蒼朮・木瓜・薏苡仁」《済世薬室》
☆脚気、心の冲する者を治す:「+黄柏」《万病回春》
☆両膝痛み腫れ、脚脛枯れて細き者は鶴膝風と名づく:「黄蓍・人参・白朮・附子・牛膝・杜仲・防風・羗活・甘草」《万病回春》
[12]感情不安定
[13]眼疾患
[14]乾嗽
[15]乾燥性の皮膚病:
 ☆かゆみがあれば:「当帰飲子」を考える《中医処方解説》
[16]基礎体温が低い
[17]稀少月経
[18]稀発月経
[19]気ちがい:
☆婦人、癲疾、歌唱し、不時に垣根をこえ屋上に上る者は、営血迷心          なり。名付けて血狂症という。:「桂枝・乾姜・紅花・大黄」《本           朝経験》
[20]脇痛:
☆(鈍痛がつづく)
☆左脇下逆槍痛甚だしく、諸薬を与えて無効なる者、水分の動あれば則ち地黄剤を与えて効あり。《和田東郭》
[21]筋肉攣縮(筋肉のケイレン):
☆足が攣痛する:「薏苡仁・忍冬、甘草、沈香」《方読便覧》
[22]口が乾く:
 ☆口乾き煩渇:「麦門冬6.0g、葛根4.0g、烏梅2.0g」。
[23]下疳:
☆腫痛、発熱、血虚に:「柴胡・山梔子」
[24]月経異常:
☆周期が延長、
☆月経前に痛む者。心腹から腰に連り痛む者:
「乾地黄を用い、黄連・青皮各2.0g、香附子4.0g、桃仁・延胡索 ・牡丹皮・莪朮各2.5g、紅花1.5g。」
☆月経期を過ぎても月経が起こらず、痛みをなす者:
 「桃仁・肉桂・木通各2.0g、紅花・甘草各1.5g、香附子4.0g、莪 朮・蘇木・木通各2.5g。」
☆月経の時期が過ぎてから月経が起こり紫黒の塊が出る者:
「地黄(生)6.0gを用い、桃仁・牡丹皮・延胡索各3.0g、紅花1.5g、青皮2.5g、甘草1.5g、香附子6.0g。」 
☆月経が起こったり止んだり、久しく止まず浮腫を発する者:
「白朮・陳皮・厚朴・猪苓・木通・牛膝各3.0g、香附子・茯苓・ 木通各4.0g、縮砂・大腹皮・蘇子・延胡索各2.5g、木香・甘草各 1.5g。」
☆月経久しく来たらず、浮腫する者:
「地黄、桃仁・牡丹皮・牛膝・延胡索各3.0g、乾姜・桂皮・厚朴・枳殻各2.0g、紅花・木香各1.5g、香附子4.0g。」
☆月経が来る時期より早く起こり色が紫黒で塊があり、腰腹痛手足冷痺し、口乾き頭眩する者:
「乾地黄を使い。香附子4.0g、黄芩・延胡索・続断・杜仲・地楡・荊芥各2.0g、小茴香・甘草各1.5g。」
☆月経がすんで後痛む者:「四君子湯乾姜2.5g。」
☆月経が時期を過ぎて起こり色が淡い者:
「陳皮・半夏・茯苓各3.0g、生姜2.0g、甘草1.5g。」
☆月経過多には:「黄芩2.0g、白朮3.0g。」
☆月経過多で久しく止まらない者:
]「乾地黄を用い。茯苓・香附子各4.0g、白朮・黄芩・地楡・各2.5g、 阿膠・山梔子・荊芥各2.0g、甘草1.0g。」
☆月経寡少には:「葵花・紅花各2.0g」。
☆月経過少(量が少ない)
☆月経に塊があって、色が変わらない:「香附子・延胡索・枳殻・陳皮」
☆月経の色が紫色:「防風・白芷・荊芥」
☆月経が黒豆汁のよう:「黄芩・黄連」
☆月経のとき腹痛する:「清熱調血湯延胡索・苦練根・莪朮・香附子・桃仁・紅花・黄連」
[25]月経不順:     
☆処女の月経不順:「莪朮・桃仁・延胡索・紅花(酒焙)」
☆赤白帯下には:「香附子4.0g、白芷2.5g。」
☆妊娠胎動不安、下血止まざる者:「葉・阿膠・黄芩各2.0g。」
☆子宮虚冷、出血過多には:「阿膠・葉各3.0g。」
☆月経紫色:「防風・白芷・荊芥」。
☆月経黒・黒紫色で、塊あり:「黄芩・黄連・香附子」。
☆月経塊あり、色不変:「香附子・延胡索・枳殻・陳皮」。
☆月経時に腹痛あり:
「延胡索・苦練根・莪朮・香附子・桃仁・紅花・黄連」。
☆処女の月経不順:
「莪朮・桃仁・牡丹皮・延胡索・紅花(酒焙)」。
[26]血尿
☆血尿には:「五苓散」
   [27]<すべての>血病
         ☆飲食を思わない:「縮砂2.0g、白豆蔲・蓮肉各3.0g」。
[28]下痢(裏急後重はない)
[29]高血圧
[30]恍惚状態:
☆心気不足、恍惚:「遠志・山楂子各3.0g、辰砂0.5g」。
[31]骨蒸
[32]口内炎
[33]更年期障害
[34]交腸:
☆交腸とは大小便位を易えて、而して冷熱不調、陰陽不順に由り、気下に乱るるなり。「四物湯5銭、益元湯2銭半」酒水にて各1銭煎服。《方読便覧》
☆《朱丹渓》云う、一人酒を嗜み、痛飲酔わず、忽ち糟粕前竅より出で、尿溺後竅より出ず。脈沈なり。「海金砂、木香、檳榔、木通、桃仁」を与え8貼にして安し。《方読便覧》
[35]臍上動悸(臍の上で動悸する)
[36]産後の諸病:
        ☆血脚気(産後に起こる下肢の運動麻痺)      
☆産後の痿躄:「亀板3.0、石決明3.0」《矢数道明》
☆産後の脚弱
☆産後の下痢
☆産後の後陣痛
☆産後腹痛し、之を按じて反って痛まざるはこれ血虚なり、「人参・白朮・茯苓」《万病回春》
☆産後の子宮出血(血崩)
☆産後の頭痛
☆産後の舌爛《矢数道明》
☆産後の脱肛
☆産後に悪血尽きず、昼は則ち明了、暮れば則ち譫語し、寒熱して鬼を見るが如し:「柴胡」《寿世保元》
[37]しびれ感
[38]子癇 eclampsia(しかん)
[39]子宮出血:
☆肝経の火にて血下るを治す:「柴胡・梔子・茯苓・白朮」《薛立斎》
   [40]子宮発育不全
   [41]四肢の知覚麻痺:
☆婦人臂痛、又癱瘓(ナンタン、運動麻痺)を治す:「紅花」
[42]痔出血:
   (排便の前に鮮紅色の出血)
☆内熱痔瘻、下血する者:「黄柏、黄芩、槐花」《方読便覧》
[43]出血:
☆胃潰瘍の出血:
「小柴胡湯or黄連解毒湯or三黄瀉心湯or四逆散・解労散。」
☆鬱血による出血:「桂枝茯苓丸。or桃紅四物湯を考える。」
☆緊張・イライラで出血:「柴胡・白芍薬。」
☆鼻血には:「側柏葉3.0g。」
☆冷えて出血:「乾姜・附子。」
☆不安・抑鬱で出血:「紫蘇葉・薄荷・香附子」
☆《名医方考》に云う、上下出血、はなはだ多ければ則ち「四物湯」を与う勿れ。瘀血、癘毒亦禁ずる所に在り。而して今加うるに黄連解毒湯          を以てし、温清始めて適宜とす。《雑病翼方》
    [44]消渇
[45]消化不良
[46]嗜眠
[47]視力障害:
☆疹後、毒気、眼を攻め、翳膜の生ずるを治す「荊芥」《方読便覧》
☆目、暴に赤起し、雲翳、疼痛忍ぶべからざる者を治す:「羗活、防風、竜胆、防已」= 四物竜胆湯《済世抜粋方》
[48]小児のはしか
[49]小便頻数
[50]小便不通:
☆老年で小便通ぜざる者を治す、本方に黄蓍を加え「通関丸」を送下する。《万病回春》
[51]自律神経失調症
[52]心悸亢進
[53]神経過敏
[54]神経衰弱
[55]腎膀胱結核:
☆「猪苓湯」《大塚敬節》
☆H婦人は尿意の頻数と排尿痛があったので、婦人科の先生にかかった。ところが数ヶ月たっても一向に良くならなかったので、転医した。ここでも膀胱炎ということで、ウロトンビンやペニシリンを用いたが良くならない。
この婦人は平素は肥満していたが、久しぶりに逢ってみると、見る影もなく痩せ、手を握っただけでも体温は38℃あると思われた。のどの渇きがひどく、水っぽいものばかり欲しく、食欲はほとんど無い。尿は15~20分に1行という状態で、しかも排尿時に疼痛があり、ときどき血尿も出ると云う。
腹診してみると、左腎はかなり腫脹して、この部に圧痛がある。いうまでもなく腎結核を疑うべき所見である。そこですぐ某大学病院で精細な検査を受けることを勧め、腎結核であろうことを告げる。果たして私の診断が的中し、右腎はほとんど、その機能を停止するほどに病巣は拡大し、レ線により尿管がわずかに糸のように見られた。腹診で右腎の肥大を証明出来なかったのは、病勢があまりに進行していたためであったことが、この写真によって分かった。ところが左腎もまたかなり侵されているので、手術は不可能であるし、予後は不良であろうということが、その病院の診断であった。
私もレ線の写真を見るに及んで、これではとても助かるまいと考えた。しかし最善を尽くしてみようと思い、四物湯猪苓湯を内服せしめる一方、ストレプトマイシンの注射を併用することにした。
1ヶ月ほどたつと、患者は排尿時の疼痛を忘れるようになった。腰はまだ痛むという。体温もまだ時々38℃ぐらいにのぼる。3ヶ月ほ どたつと、もう寝ているのはイヤだというほど元気になった。肉眼では尿が透明に見えるようになた。半年後には、軽い洗濯まで始めたが、だんだん肉付きがよくなり、10日分の薬を1ヶ月もかかって飲むようになった。
この婦人は、その後すっかり健康を回復し、臨床的には何の異常も発見出来ないほど頑丈になってしまった。《大塚敬節》
[55]頭冒感:
☆血虚頭痛:「黄柏、知母、蔓荊子、細辛」《方読便覧》
[56]せき(陰虚による喘急)
[57]舌質 <淡紅>
[58]切迫流産
[59]背中が痛い
[60]全身麻痺
[61]帯下:
☆常服すれば帯下を生ぜず:「甘草、黄蓍、桂枝、白朮、柴胡、阿膠」《雑病翼方》
☆赤白帯下:「五霊脂・荊芥(炒)」《方読便覧》
[62]大便下血
[63]脱肛:
☆産後、用力はなはだ過ぎ、陰門突出するを治す《雑病翼方》
 [64]脱力感
[65]知覚麻痺
[66]膣直腸瘻
 [67]血の道症:
☆貧血を補い、血行を良くし、神経症を鎮静させる。
        ☆脈腹軟弱で皮膚がカサカサする者。
☆婦人血脈不調、往来寒熱、状労倦の如きを治す。《本事続集》
☆調経:「莎草・茯苓」《方読便覧》
[68]腸風
 [69]痛風:
☆一婦人、脚疼み、冷をおそれ、夜劇しく日中軽き者を治す《朱丹渓》
[70]爪がもろい(爪の色も悪い)
[71]手足が冷たい
[72]手足煩熱
[73]鉄欠乏性貧血
[74]転筋:
☆霍乱後の転筋。
☆脚気にて転筋する者:「黄芩(酒)・紅花」《万病回春》
[75]糖尿病:
☆三消にて血虚に属して津液を生ぜざる者:加減して用いる《万病回春》
[76]動悸:
☆臍上で動悸。
[77]動脈硬化症
[78]乳腺炎:
☆乳腫は気滞と為す。乳汁通ぜざる者「王不留行、穿山甲」《先哲医話》
 [79]尿道直腸瘻
[80]尿の赤白濁
[81]尿の淋滴
[82]脳溢血
[83]肺痿
[84]肺結核
[85]肺脹
  [86]排尿痛(排尿後に疼痛)
    [87]はしか
[88]発熱:
 ☆昼静かにして夜熱する者、血分に熱あるなり:「知母・黄柏・黄連・山梔子・牡丹皮・柴胡」《万病回春》
        ☆昼夜ともに発熱する者、気血の分に熱あるなり:「小柴胡湯黄連         ・山梔子」《万病回春》
☆痩せて水分が少ない(=陰虚の)人発熱:「知母・黄柏。」
☆結核性消耗熱:「地骨皮・知母・柴胡各4.0g、黄芩2.5g。」
☆筋骨肢節疼痛及び頭痛悪寒には:「羗活・防風各3.0g、藁本・細辛         各2.5g」。
☆夜の潮熱:「黄連・胡黄連各等分」=四物二連湯
[89]発疹:
☆足のすね・すねの内側。
[90]皮膚枯燥:
☆皮膚がカサカサ・潤いがない。
☆乾性陰症の皮膚病《矢数道明》
[91]皮膚掻痒症:
☆皮膚の上を虫がはっている感じ。
☆血燥の者《矢数道明》
[92]疲労倦怠
[93]貧血
☆貧血を治し、止血の効もあるが、貧血が強度で、胃腸障害があって、下痢したり、吐いたりする者には用いないほうがよい(漢方診療医典)
 [94]不安感:
☆何事も不安で怖い・驚きやすくビクビクする。
    [95]不安神経症
    [96]不妊症:
         ☆婦人肥えて不妊は「地黄香附子、半夏、貝母」に宜し。
          痩せて不妊の者「八珍湯」に宜し《雑病翼方》
     [97]不眠:
      ☆発熱心煩不眠:「黄連・山梔子各2.0g」。
      ☆虚損不眠:「竹葉・人参各2.0g、酸棗仁4.0g」。
    [98]腹痛:
☆大腹痛、建中湯を服して無効なる者、水分の動を認める者:
          「甘草莎草」=莎湯《和田東郭》
    [99]腹部軟弱
    [100]偏頭痛
   [101]扁桃炎(虚証)
     [102]便秘:
       ☆大便秘渋する:「大黄2.0g、桃仁4.0g」。
    [103]膀胱直腸瘻
     [104]麻疹:
         ☆麻疹前後に熱に潮ありて退かざる等の症を治す。《寿世保元》
          ①渇を発する:「麦門冬・犀角汁」
          ②嗽には:「括楼仁」
          ③痰あれば:「貝母・陳皮」
          ④患部が紅紫乾燥して暗晦:「生地黄を使い紅花・黄芩
     [105]慢性肝炎:
         ☆肝臓の肥大があり、疲労倦怠、食欲不振を訴え、大便秘結する者:
          「茵蒿湯」。
         ☆口が渇き、尿が出にくい者。腹水、黄疸がある者:「茵五苓散」     [106]夢泄:
☆夢精、精滑にて肝腎の虚熱に属する者を治す:「柴胡・山梔子・          山茱萸・山薬」《薛立斎》
     [107]無気力
     [108]無月経
     [109]胸焼け:
         ☆思慮して血虚を致すを以て五更時に嘈雑する者を治す:「香附子          ・山梔子・黄連・知母」《済世全書》
    [110]目がかすむ
    [111]目が疲れる
    [112]目の乾燥感
     [113]めまい
       ☆頭眩には:「木香1.5g、細辛3.0g」。
     [114]癰疽:
         ☆陰嚢に出来る癰を治す。
    [115]腰痛症:
          ☆痛みがひどく、腰が伸ばせない者。
          ☆「二陳湯」(食積腰痛)
          ☆臍中虚冷、腹中腰間痛には:「延胡索・川楝子各3.0g。」
          ☆一婦人、脚疼み、冷を怕れ、夜激しく日中軽き者を治す:「川芎          黄芩、黄柏、白朮、蒼朮、陳皮、牛膝、甘草」《朱丹渓》
     [116]流注:
          ☆敗液の流注を治す「乳香、没薬、牡丹皮、白芷、甘草」
         ☆便秘する者:「桃核承気湯」《方読便覧》
[117]歴節:
☆血分に属するもの:「厚朴、莎草、甘草、紅花、独活」
          その一等激しき者:「桂枝茯苓丸附子」or「桃核承気湯附子」
        《橘窓書影》





四物湯[2]《外台秘要方》
「桔梗湯《傷寒論》紫苑・麦門冬」
       桔梗湯⇒「桔梗・甘草」
    ◎にわかに暴咳・吐乳・嘔逆して、昼夜休めない者。
    ◎此方は、小児暴に咳嗽を発し、声唖、息むを得ざる者を主とす。《勿誤薬室方     函口訣》
◎頓嗽の激症、哮喘の急症に用いて効あり。
    ◎大人一時に咳嗽、声唖する者に宜し。
    ◎肺痿の声唖には験なし。


四物加三味


四物坎丸《東醫寶鑑》
      「熟地黄3両、生地黄1両半を酒につけて、搗いて膏をつくり、当帰2両、       白芍1両半を酒で炒ったもの、知母1両、黄柏2両の塩酒浸炒、槐子各1       両同炒、連翹6銭を作末し、梧子大の蜜丸。7日間晒して乾燥、毎回50       ~60丸を温酒又は白湯で呑む。
◎毛を黒くする。

 四物消風散加減《中薬臨床応用》
      「生地黄9g、当帰9g、川芎3g、赤芍薬9g、蝉退6g、白鮮皮6g、路路通9g」       水煎服。
    ◎ジンマシン
    ◎風疹

四物調経湯《東醫寶鑑》
      「香附子(醋炒)1銭、当帰・川芎・白芍(酒炒)・柴胡・黄芩・枳穀各7分、 熟地黄・陳皮・白朮・三稜(醋炒)・莪朮(醋炒)・白芷・茴香(塩水炒)・       延胡索各5分、青皮・縮砂・紅花・甘草各3分、生姜3片、葱白3茎」水       煎服。  
◎月経が止まり、塊があって、痛む者。

 四物調経湯《万病回春》《古今方彙》
      「加減四物湯《調経門》肉桂、紅花」
    ◎婦女経閉し、積塊ある者を治す。

四物二連湯《東醫寶鑑》
      「四物湯黄連・胡黄連各等分」
    ◎夜の潮熱。

四物竜胆湯《済世抜粋方》《勿誤薬室方函口訣》
      「四逆散羗活、防風、竜胆、防已」
      「当帰・川芎・芍薬・地黄各5匁、羗活3匁、竜胆・防風・防已各2匁」
    ◎目、暴発を治す。
    ◎此方、目、風寒に侵され、血熱沸鬱して痛み、甚だしき者を治す。
    ◎風眼、「紫円」などにて快下の後、血脈赤渋、開くこと能わざる者を治す。《勿     誤薬室方函口訣》
    ◎目、暴に赤起し、雲翳、疼痛忍ぶべからざる者を治す《方読便覧》


四物竜胆湯《済世抜粋方》《東醫寶鑑》
      「川芎・当帰・赤芍・生乾地黄各1銭3分、羗活・防風各8分、草竜胆・防       已各6分」水煎服。
    ◎目が赤く腫れて痛み、雲が出来る者。

四物竜胆湯《医学入門》《古今方彙》
      「当帰・川芎・赤芍薬・生地黄各1銭、防風6分、竜胆・防已各4分」水煎       温服。
◎目赤く暴(にわか)に雲翳を発し、痛忍ぶべからざる者を治す。

 四妙丸《丹渓心法》《中薬臨床応用》
      「蒼朮、黄柏、牛膝、薏苡仁(生)」各等量。作末し水で練って丸剤。1回6       ~9g服用。
    ◎寒性膿瘍
    ◎下肢が脹って痛む
    ◎力が入らない

 四妙勇安湯《験方新編》《中薬臨床応用》
      「当帰60g、金銀花90g、甘草30g」水煎し、3回に分服。
    ◎血栓性動脈炎

 四葉参湯《中薬臨床応用》
      「四葉参30g、磁石15g、丹参9g、野菊花9g、鶏血藤12g、半楓荷30g」水      煎服。
    ◎高血圧で気血両虚。


四苓散[1-1]《温疫論》《勿誤薬室方函口訣》
      「五苓散肉桂」
    ◎煩渇思飲を治す。
    ◎酌量して之を与える。もし引過多なれば自ずから水心下に停まるを覚ゆ。
    ◎此方は能く雀目を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎雀目を治す:[蒼朮]
    ◎腸胃の間、水気ありて熱下痢する者に:「車前子」効あり。
    ◎火酒毒に中るを治す。兼ねて熱痢疾を治す:「乾葛黄連甘草」《嬰童類萃》or     「乾葛黄連黄柏」《張氏医通》
    ◎面瘡久しく癒えず、常ライ病の如く、清上の諸剤無効の者は湿気上逆の致す所     なり:「四物湯知母黄柏」
    ◎痘疹後、浮腫し、胃気復せざるを治す:「車前子木通連翹」《方読便覧》
    ◎瀉して黄赤稠粒、小水短するを治す:「木通滑石」《麻疹精要》
    ◎雀目を治ししばしば効あり。雀目多く疳に属す。:「漢蒼朮」
    ◎晩盲を治す:「蒼朮夏枯草」《眼目提要》
     

 四苓散[1-2]《東醫寶鑑》
      「五苓散肉桂」
◎腹痛で水を吐き、腸が鳴る :[木通・滑石・黄芩・梔子]

四苓散[1-3]《名医指掌》《中薬臨床応用》
      「茯苓12g、沢瀉6g、猪苓9g、白朮9g」水煎服。
    ◎腎炎
    ◎脚気の浮腫


四苓解毒湯《嬰童類萃》


四苓五皮湯《東醫寶鑑》
      「桑白皮・陳皮・地骨皮・茯苓皮・生姜皮・大腹皮・蒼朮・白朮・           沢瀉・猪苓・青皮・車前子(炒)各1銭」水煎服。
◎浮腫の通治薬。


 四苓湯《漢方治療の実際》
      「沢瀉・茯苓・朮・猪苓各4」


四霊散《東醫寶鑑》
      「人参蘆2銭、赤小豆・甘草各1銭半、風蒂1銭」作末し、毎回1~2銭を       薺菜汁で調下。
◎吐剤の軽剤。


子芩丸《東醫寶鑑》
      「黄芩4両を切って醋浸し、透き通った紙にくるんで煨ること7回、当帰(酒       洗)・香附米(醋炒)各2両」作末し、醋糊で梧子大の丸剤。空腹時に50~70       丸飲む。
◎閉経後に、月経が出だし、又止まらない者。

 子芩散《東醫寶鑑》
      「黄蓍1両、白芍・黄芩・人参・白茯苓・麦門冬・桔梗・生地黄各5          銭を粗く末にし、先に竹葉一握り・小麦70粒・姜3を入れ、水3杯         で1杯半まで煎じから、薬末3銭を入れ再煎し7分ぐらいになった          ら滓を捨て、温服。
    ◎心肺をすっきりさせ、労熱を治す。

 子淋散《寿世保元》《古今方彙》
      「麦門冬、赤茯苓、大腹皮、木通、甘草」水煎
    ◎子淋の者は妊娠して小便渋痛し、頻数するなり。之を治す。



自然銅銭


 紫苑丸《沈氏尊生書》
      「紫苑、五味子」


紫苑散《証治準縄》
「紫苑・人参各4g、茯苓・知母・桔梗各6g、阿膠4g(蛤粉で炒る)、川貝母4.8g       (心を去る)、五味子15粒、甘草2g(炙)」

 紫菀散《医学入門》《東醫寶鑑》
      「紫菀・知母・貝母各1銭半、人参・桔梗・赤茯苓各1銭、阿膠珠・甘草各5       分、五味子30粒、姜3片」水煎服。
    ◎肺痿で膿血を唾く。
    ◎虚労にて咳嗽し膿血を見て肺痿肺癰に変ずるを治す。《古今方彙》

紫菀耳湯《東醫寶鑑》
      「紫菀茸・経霜桑葉・款冬花・百合・杏仁・阿膠珠・貝母・蒲黄(炒)・半夏       各1銭、犀角・人参・甘草各5分・姜5」水煎服。
◎過食による邪熱が肺を犯し、咳でのどがかゆく、痰が多く・喘急し、         背骨が痛む。

紫菀湯[1]《東醫寶鑑》
      「紫菀・天門冬各2銭、桔梗1銭半、杏仁・桑白皮・甘草各1銭を剉作1貼       し、竹茹を卵大ぐらい入れ、水で煎じて滓を去り蜜半匙を入れ再煎し温服。
◎妊婦の咳嗽。

紫菀湯[2]《東醫寶鑑》
      「紫菀茸・白芷・人参・黄蓍・地骨皮・杏仁・桑白皮・甘草各1銭、姜3片、       棗2枚」水煎服。
◎肩背が重く、くしゃみ・咳喘し、血便する者。


 紫菀湯[3]《王海蔵方》《中薬臨床応用》
      「紫菀(炙)9g、黄芩5g、天門冬9g、桑白皮9g、杏仁6g、桔梗6g、阿膠珠6g       (溶解)、川貝母6g、知母6g、党参6g、五味子12粒、甘草1.5g」水煎服。
    ◎陰虚の慢性咳嗽
    ◎膿血を喀出。

紫河車丸《東醫寶鑑》
      「紫河車(焙乾燥)1貝、鼈甲(醋炙)5銭、桔梗・胡黄連・大黄・苦参・知母       ・貝母・敗鼓皮心・人中白各2銭半、草竜胆・甘草各2銭、犀角・莪朮・       芒硝各1銭半、辰砂2両」作末し、梧子大の蜜丸。辰砂で衣をつけ温酒で20       ~30丸飲む。腸熱には食前、膈熱には食後に服用。
◎伝尸・労を治す。2ヶ月で全治し、軽症は1ヶ月で治る。
    ◎腸熱には食前、膈熱には食後服用

 紫河車丹《東醫寶鑑》
=「混元丹」
      「紫河車・人参各1両半、熟地黄・当帰・白朮・茯神各1両、木香・白茯苓       各5銭、乳香・没薬各4銭、朱砂2銭、麝香2分」作末し酒糊で梧子大の       丸剤。人参湯で50丸飲む。
    ◎虚労・痩せ・痰嗽・鬼を治す。

紫金丸《東醫寶鑑》
      「五霊脂・蒲黄(炒)」各等分を作末し、醋を混ぜて煎じ膏をつくって桜桃大       の丸剤。毎回2丸を童便・温酒各半杯で調下する。
    ◎産後の児枕臍腹痛を治す。


紫金散
「紫金皮・骨砕補・生蒲黄・牡丹皮・当帰尾・紅花・川芎・川続断・虫・単桃仁・乳香・没薬各40g」 細末にして、毎服4ないし12g、朝晩2回、熱い陳酒で冲服する。」

紫金錠
◎鬼邪を感じて鬼胎をなした者。

紫金錠《外科正宗》《中薬臨床応用》【中成薬】
⇒「玉枢丹」
「山慈姑・紅芽大戟・五倍子・麝香・千金子」糯米(もちごめ)で錠剤とし、外用する。
◎癰・・
◎耳下腺炎
 

紫金錠子《東醫寶鑑》
=「万病解毒丸丹」
◎伝尸と労を治す。

紫金丹[1]《瘍科綱要》
「紫金藤⇒降香200g 乳香・没薬(油を去る)各80g、血竭・五倍子(炒ってまるめる)各60g。以上の薬を細末にして混和し、薬末40gごとに梅片12gを加え、密閉保存する。古ければいっそうよい。」

紫金丹[2]《普済本事方》
「白砒石2g、淡豆8g」を混和し、つきこねて、麻の実大の丸に作り、就寝時に5~10丸を冷茶で服用。

紫金丹[3]《東醫寶鑑》
「信砒末1銭、淡豆をよく搗いて1両、精猪肉を細切り4両」以上3つを混ぜて3分し、紙筋を入れた粘土でくるみ、焼いて土が乾いたら、又炭火で焼き、青い煙が出たら止め、地べたに置いて一晩おき、火毒を抜いた後、中の薬末を取り出して作末し、緑豆大の丸剤。食後に冷水茶で大人20丸・子供9丸服用。
◎哮喘で寝られないのが、3年も続く。

紫根牡蛎湯[1-1]《黴癘新書》
「当帰、芍薬、川芎、大黄、升麻、牡蛎、黄蓍、甘草、忍冬、紫根」
◎楊梅瘡毒、痼疾沈痾、無名の頑瘡、及び痒瘡険悪の証を治す。
◎此方は水戸西山公の蔵方にして、楊梅瘡、その他無名の悪瘡に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎《工藤球卿》は痔痛、痘疹に宜しく、又、乳岩、肺癰、腸癰を治すと云う。

紫根牡蛎湯[1-2]《黴癘新書》《漢方後世要方解説》
「当帰5、芍薬3、川芎3、大黄0.5~2、升麻1、牡蠣4、黄蓍2、甘草1、忍冬2、紫根3~4」
◎楊梅新書には、梅毒性の皮疹、慢性痼疾、頑固な皮膚病を治すとある。
◎《勿誤薬室方函口訣》には乳ガン、肺癰、腸癰を治すとある。高橋道史氏は乳ガンの初期にこの方に「起廃丸」を兼用して偉効があったと発表している。

「紫根」=血熱毒を涼し、頑癬悪瘡を治す
「忍冬」=熱を清し毒を療す、諸悪瘡を治す。
「升麻」=熱毒を消し、諸悪瘡を治す。
「牡蠣」=堅きを軟らげ、瘡を治す。
「黄蓍」=諸瘡の聖薬、血を生じ、肌を生じ排膿強壮の効あり。
「当帰、芍薬、川芎」=補血強壮。

◎この方は水戸西山公の創方だと云われ、片倉鶴陵の《黴癘新書》や浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》に、その応用目標が記載せられている。《大塚敬節》
◎高橋道史 漢方の臨床誌第1巻第3号
「紫根牡蠣湯を、ここ2、3年の中に34名に服薬せしめた結果、その運用如何によっては好成績を得るものと確信したので、ここに報告することにした、
紫根牡蠣湯は黴癘新書によると、楊梅瘡毒、痼疾沈痾、無名の頑瘡及び痒瘡険悪の症を治す《勿誤薬室方函口訣》。また工藤球郷は乳ガン、肺ガン、肺癰、腸癰を治すという。また痔痛、痘疹にも用いたいう。
「楊梅瘡」とは富士川游著、日本医学史によれば世俗唐瘡(ドクガサガ)というものなり。また天疱瘡と名付けたるものあり、或いは綿花瘡と名付けたるものあり、また気腫ともいうと。いずれにしても楊梅瘡は現代医学では梅毒性のものであることは確実で、しかも第2期が第3期でゴム腫とか扁平コンジロームのようなものである。痼疾沈痾は長引いた病気で悪性の腫瘍の類らしい。肺癰は洋医学の肺壊疽のようなもので、腸癰はすなわち盲腸炎と見ればよい」
    

適応症及び病名 (しこんぼれいとう)
[1]悪瘡痒瘍:
☆紫根を多量に使用すること《高橋道史》
[2]頸部リンパ腺腫:
☆頭症に《矢数道明》
[3]黒色肉腫:
☆28歳の職人で、一見したところ、栄養血色共に悪くない。
この患者は某国立病院に入院中、ひそかに病院を抜け出して、当院に治療を求めた。
患者の語るところによれば、昭和33年2月に左大腿の後面に、イボ様のものが出来て、外科医に切除してもらった。ところが、35年2月にまた梅干し大の腫瘤が出来たので、それも手術で摘出した。その時に、これは悪性のものだと云われた。ところが、昭和36年になって、前に手術したところに、大きな腫瘤が出来たので、某国立病院に入院して、5月24日に手術をして、ボール大のもの6個を摘出した。そして精密な検査の結果、黒肉腫と診断され、不治である旨を宣告されたという。
私にも治す自身はない。黒肉腫が治った例は、まだ一度も報告されたことがないほど予後の悪い病気である。しかし、駄目だといって突き放すのもあまりに無情である。そこでとにかく紫根牡蠣湯の大黄を除いて与えた。すると、食欲が出て、血色が良くなったので、治るかも知れないといって、どんどん服用を続けた。
7月中旬になって、親類の老人が訪ねてきて、驚きましたという。どうしたと尋ねると、先生、治りましたよという。その後左の腋下のリンパ腺が腫れたので、これを切除して調べたところ、ガン細胞を発見しない、血液を調べても、ガン細胞を発見しない。、局所の所見も全治のように見える。このままで良くなれば、珍しい例だと、先生は云っている。        しかし先生には、漢方の薬を飲ませていることを話していないので、先生はどうして良くなったか不思議だと驚いていると云う。ところが、8月の末に、私が今まで用いていた中国産の上等の紫根が品切れになってしまった。そこで2ヶ月ほど紫根牡蠣湯を用いることが出来なかった。するとい12月になって、また前に手術したところに小さい腫瘤が出来たといって来院した。その頃、私の手許に日本産であまりよくない紫根があったので、これを用いて、紫根牡蠣湯をこしらえて与えた。ところ がそのまま患者は来院しない。
私はもっと引き続いて良い紫根を用いて治療していたら、全治したではなかったかと残念である。
紫根という薬物は面白い作用のあるものらしい。私は目下、白血病の少年に、帰脾湯+紫根という薬方を用いているが、この頃、未熟細胞が消失し、経過が頗る良好であるという。《大塚敬節》
[2]ゴム腫
[3]腸腫瘍
[4]乳ガン:
☆当帰・川芎・芍薬等を同分量にしてもよいが、紫根・牡蠣・升麻等は多量にする必要がある。《高橋道史》
☆48歳、未産婦。生来頑健、家族にも遺伝的疾患が認められない。昨年8月頃、左側乳房に胡桃大の硬結を認めたが、自覚的には何等の苦痛がなかったので、約1ヶ月間はそのまま放置していたが、たまたま某新聞紙上にて乳ガンの記事を見てから球に不安になり、市内某病院にて診察の結果、乳ガンと診断され直ちに入院手術を勧められた。しかし本人は元来手術を好まないので、当院の門を叩いた。
初診時、自覚的には患部の重圧感、時として疼痛あり、その他肩背拘急、頭痛を訴えた。
 診するに、顔貌はやや憂心の色があったが、体躯は皮下脂肪に富み、健康そのものの様であった。血圧は120-90。肩背拘急甚だしい。乳房は視診にては患部は健側に比較して大同小異で、一見してほとんど目に留まらない位である。尿は清澄で、蛋白は陰性である。触診するにウズラ卵大の硬結1個と、更にその近くにそれよりもやや小さい塊とを認め、 圧痛がある。共に限局性で、移動性せはなく、癒着性のものであって、周囲には浸潤性の増殖を起こしていない。これらを総合して乳ガンを疑わざるを得ないのである。しかし腋のリンパ腺までは転移していない。乳ガンには硬性ガンと髄様ガンとがあるが、このものは前者であって、後者よりはるかに多い疾患である。腹部は一般には脂肪に富み、病的変化は認められない。食欲は普通で、大便は秘結する。
治療、工藤球郷の説によって、紫根牡蠣湯を投薬し、他には兼用として、起癈丸20粒を1日1回投与する。
私は乳ガンも子宮ガンも、また胃ガンも起癈丸を使用している。但し子宮筋腫には消石大円を使用している。この2方を10日分づつ投薬すること2ヶ月で気分大いにすぐれ、肩背拘急、頭痛も全く治し、患部の疼痛も軽減したのであった。しかるに晩秋から初冬、初冬から寒に入るに及んで、東北地方、ことに山形の酷寒のためか、はたまた病症の半価したためか、その硬結は更に増大し、先の2個の塊は癒合して鶏卵大の塊となり、かつ膨隆し、疼痛も加わり、食事も不振にて病症に呻吟する ようになった。
ある日、主人が来て、患者は憂心煩悶、転々反則、一睡もせずと、その病変を訴えた。そしてこのまま服薬すべきか、あるいは断固として外科手術をすべきかとの質問である。
私はこの時、これはおそらく寒冷のためで一時的のものであるからと思ったので、本人の意志に従って、もう少し継続されてはどうかと云うと主人も納得して帰っていった。こうして10日目毎に必ず主人自ら薬をとりに来たのであった。陽春、本人が喜色満面、元気溌剌として来院する。診するに腫れ物も減少し圧痛もさまで感じない。前途に漸く光明を見るようになったと喜んでいた。
服薬以来、今日で約1ヶ月。病症は一進一退だが、追々良好な経過を辿りつつある。すなわち腫れ物は尚存在するも大きさは豌豆大よりもやや小さくなり、自覚的には何等の苦痛も感じない。強圧すれば鈍痛がある位で、元気大いに振るい、今後全治するまで服薬を継続するという。果たして全快するや否やは今後の経過を見なければ断言は出来ないが、とにかく紫根牡蠣湯の乳ガンに対して薬効のあることを認識したのである。《高橋道史》
☆69歳、未亡人、経産4回。
若年の頃は虚弱であったが、更年期より健康体となった。ただ10年前に扁桃腺炎から腎臓炎になり、入院して扁桃腺を手術したという。
今年2月頃、右側乳房に小塊を認め乳ガンを憂いて来院す。
初診。老年のためか、皮下脂肪は貧弱で、視診では患部は不明であったが、触診でその結節を直ちに確認された。自覚的には何等の苦痛がないという。ただ生来非常な便秘で、常に下剤を服用していると云う。症候として、乳房の他は病的変化を認めない。血圧は160-90。右側乳房に大豆大の硬結を触知する。扁平でその表面は陥没している。癒着性で移動しない。乳ガンを疑って、紫根牡蠣湯の紫根。大黄ともに4.0gで服薬する。
 6ヶ月後、結節は小豆大になり、病気も意識しなくなったという。便通もあり、食事もまた旺盛である。《高橋道史》

[5]乳腺症
[6]肺壊疽
[7]皮膚疾患:
☆頑固な皮膚疾患
☆梅毒性
[8]扁平コンジローム


紫珠湯《中薬臨床応用》
「紫珠草15g、仙鶴草15g、側柏葉12g、旱蓮草12g」水煎服。
◎出血

紫参湯《金匱要略》

紫石英散《証治準縄》《中薬臨床応用》
「紫石英30g、茯神。麦門冬・党参・酸棗仁・遠志・黄芩・当帰各2g、羚羊角屑・防風・黄蓍各15g、甘草(炙)7.5g」粗末にし毎回15gに「生姜15g、大棗6g」を加え水煎して服用。
◎驚きやすい
◎動悸、頻脈
◎意識もうろう
◎精神不安


紫雪《東醫寶鑑》
「黄金10両、寒水石・石膏各4両8銭、玄参1両6銭、犀角・羚羊角各1両、甘草8銭、升麻6銭、沈香・木香各5銭」水5升に黄金と2石を煎じて3升になったら諸薬を入れ、再び煎じて1升になったら滓は捨て、芒硝3両2銭を入れ、又弱火で煎じ、柳の枝でかき混ぜ、固まろうとしたら磁盆に入れ、再び朱砂・麝香末各3銭を入れ急いでかき回し、冷えたら固まって紫雪となる。毎回1銭を少しづつ呑む。
◎一切の積熱と口瘡・熱毒を治す。

紫雪丹[1-1]《和剤局方》
「黄芩・寒水石・石膏・滑石・磁石・升麻・玄参・甘草・犀角・羚羊角・麝香・沈香・木香・丁香・朴硝・硝石・辰砂」
◎熱邪内陥し、意識混迷し、狂気・うわごとをいい、熱甚だしくもだえ、舌は赤く苔なく、四肢が冷える者。

紫雪丹[1-2]《和剤局方》
「羚羊角、犀角、朴硝、朱砂、硝石、磁石、寒水石、滑石、石膏、沈香、木香、麝香、升麻、甘草」

紫雪丹[2]【中成薬】
「羚羊角屑、犀角屑、麝香、沈香、玄参、升麻、丁香、甘草(炙)、朴硝、硝石、金箔」大人は朝夕1.5~3gづつ水で服用。小児は減量。
◎高熱、意識障害、痙攣。

紫蘇飲[1-1]《本事方》
[紫蘇1銭、大腹皮・芍薬各半両、当帰1銭、川芎・橘皮・人参各半両、甘草1銭」
◎妊娠・胎気不和・懐胎近上し、脹満疼痛する。これを子懸という。兼ねて臨産 驚恐し、気結連日いえざるを治す。《雑病翼方》

紫蘇飲[1-2]《本事方》
「紫蘇茎汁40g、当帰30g、川芎・白芍・人参・大腹皮・陳皮各20g、甘草10g」以上を細かく刻み3回に分けて服用。毎回水1盃半に生姜4片・葱白7寸を用い7分まで煎じ、滓を去り空腹時に服用。

紫蘇飲[1-3]《東醫寶鑑》
「紫蘇葉2銭半、人参・大腹皮・川芎・陳皮・白芍・当帰各1銭、甘草5分」を剉作1貼し、「姜4片・葱白3茎」を入れ、水煎服。
◎子懸で出産のとき驚いて難産する者。

紫蘇飲[1-4]《産経》
「当帰・川芎・芍薬・人参・紫蘇葉・橘皮・大腹皮・甘草」
「紫蘇和気飲莎草人参」

紫蘇飲[1-5]《本事方》《古今方彙》
「紫蘇葉・芍薬・川芎・大腹皮・当帰・陳皮各1両、人参・甘草各半両、生姜、葱白」煎服。
◎胎気和せずして上に湊り、心腹腸満して疼痛す。之を子懸と謂う。及び産に臨み驚恐して気結びて連日下らざるを治す。



紫蘇飲子《東醫寶鑑》
「紫蘇葉・桑白皮・杏仁・青皮・五味子・麻黄・陳皮・甘草各1銭、人参・ 半夏各6分、姜3片」水煎服。
◎脾・肺が虚寒して、咳・痰が盛んな者。

紫蘇烏薬湯《万病回春》《古今方彙》
「紫蘇葉、烏薬、枳殻、柴胡、前胡、防風、羗活、独活、川芎、芍薬、茯苓、大腹皮、甘草」各等分。水煎、食後服用。
◎瘰癧で先に結核より起こる者を治す。

紫蘇香附湯《万病回春》《古今方彙》
「紫蘇葉、香附子、青皮、烏薬、半夏、厚朴、桔梗、茯苓、柴胡、防風、羗活、甘草」各等分。水煎食後服用。
◎瘰癧で先づ右辺より起こる者を治す。

紫蘇厚朴湯《万病回春》《古今方彙》
「紫蘇葉、厚朴、等位、羗活、枳殻、桔梗、前胡、防風、川芎、芍薬、紫蘇子、甘草、蘿葡子」各等分。水煎、食後服用。
◎瘰癧が先づ左辺より起こる者を治す。


紫蘇子杏桑湯《漢方治療の実際》
「蘇子・厚朴・半夏・柴胡各4、甘草1.5、当帰・橘皮・桂枝・杏仁各3、桑白皮4」


紫蘇子湯《備急千金要方》《勿誤薬室方函口訣》
「蘇子1升、厚朴2両、半夏1升、柴胡1両、甘草1両、当帰1両、橘皮3両、桂枝2両」
◎脚弱上気を治す。
◎此方は脚弱上気を治する方なれども、今の脚気には効少なし。
◎上気:今の喘息のことにて、虚気亢ぶりて喘息する者に効あり。故に後世にて足冷喘息を目的として用いる。
◎足冷:耳鳴、鼻衂、歯揺、口中腐爛、咳血、水腫、喘満などの症、足冷の候あれば必ず効あり。
◎《易簡方》に、下元虚冷尊年気虚之人、元有上壅之患、服補薬不得者、用之立効、とあり、此の意、脚気に用いるも、又雑病に用いるも、よき口訣と知るべし。
◎虚陽上攻し、気升降せず、上盛下虚、痰喘壅塞し、喘息、短気咳嗽する者を治す。《和剤局方》
◎《一抱子》曰く、此方の虚陽は陽気の疲れたる虚陽にして陰分の虚火に非ず、上盛下虚とは虚陽の升り浮くを云う。下虚とは陰虚の義に非ずと、実に然り。
◎喘促:《婦人良方》曰く、上盛下虚して喘促する者《雑病翼方》
◎脚気:
☆上攻し、水腫上部に聚まる者を治す。《雑病翼方》
☆《三因極一病証方論》陰陽交錯し、清濁不分、上重下虚、中満喘息、嘔吐、自汗し、また起律無きを治す。
◎《医学統旨》に云う、風行き、水動き、気行り、血流る。衂を治する者は則ち、血薬以て衂を治するを知り、気降れば則ち血経に帰るを知らず。古人血薬中に必ず気薬を一二味を加う所以なり。


紫蘇半夏湯《東醫寶鑑》
「桑白皮2銭、杏仁1銭半、半夏・陳皮・紫蘇葉・五味子・紫菀各1銭、姜3片」水煎服。
◎喘嗽・痰盛・往来寒熱。

紫蘇連翹湯《万病回春》《古今方彙》
「紫蘇葉、連翹、桔梗、枳殻、防風、柴胡、羗活、独活、白芷、当帰、川芎、芍薬、甘草」各等分。水煎、食後服用。
◎瘰癧が先づ項後より起こる者を治す。

紫蘇和気飲[1-1]《済生全書》
「当帰、芍薬、川芎、莎草、橘皮、蘇葉、大腹皮、甘草」
「香蘇散四物湯地黄大腹皮」
◎子懸とは心胃張痛するなり、兼ねて胎気不和(妊娠のよる体調不良)、心腹痛、疼痛、及び胎前諸疾を治す。
◎此方は、妊娠気満、飲食消化する能わず、或いは胎気不和なる者を治す。《勿誤薬室方函口訣》 (気満=ガスが溜まる)
◎方意は半夏厚朴湯の症に和血を兼たる者と心得べし。《勿誤薬室方函口訣》

紫蘇和気飲[1-2]《済生全書》《古今方彙》
「紫蘇飲《本事方》人参香附子」

紫蘇和気飲[1-3]《本事方》
「当帰・川芎・芍薬・人参・紫蘇・陳皮・大腹皮各1.5、甘草・生姜各0.8」

紫蘇和気飲[1-4]《本事方》《古今方彙》
「当帰、川芎、白芍薬(酒)、人参、紫蘇葉、陳皮、大腹皮、甘草、生姜」水煎。
◎子懸(妊娠のために平素の胃疾患が増悪して心部に疼痛を訴えるもの)の者は心胃脹痛するなり。
◎兼ねて胎気和せず、心腹腸満して疼痛するを治す。
◎及び胎前の諸疾を治す。
◎本は「紫蘇飲」と名づく。
◎咳嗽には:「枳殻・桑白皮」
◎熱には:「黄芩」
◎泄瀉には:「白朮・茯苓」
◎感冒には:「羗活・麻黄」
◎傷食には:「山楂子・香附子」
◎気脳みには:「香附子・烏薬」



紫草紅花飲《中薬臨床応用》
「紫根6g、番紅花1g、西河柳6g、連翹9g、金銀花9g、大青葉9g、紫花地丁9g、淡竹葉9g、浙貝母9g、甘草3g」水煎服。
◎水痘
◎麻疹


紫草茸湯《中薬臨床応用》
「紫草茸12g、葛根9g、升麻6g、絲瓜絡9g、金銀花9g、桔梗6g、佩蘭9g、川芎1.5g」水煎服。
◎麻疹。

紫草木通湯[1-1]《医学入門》《東醫寶鑑》
「紫草茸・木通・人参・赤茯苓・糯米各4分、甘草2分」水煎服。
◎尿渋。

紫草木通湯[1-2]《医学入門》《古今方彙》
「紫草・木通・人参・茯苓・糯米各4分、甘草2分」水煎温服。
◎痘出でて快からざる者を治す。
◎大便利する者:「紫草木香」

紫草木香湯《医学入門》《古今方彙》
「紫草・木香・人参・白朮・茯苓・甘草各4分、糯米30粒」水煎温服。
◎痘出でて快からず、大便泄利するを治す。蓋し紫草は能く大便を利す。故に木香・白朮を用い之を佐く。
◎或いは隠れ或いは見われる者には:「香」

紫霜丸《東醫寶鑑》
「代赭石(醋で7回濾す)・赤石脂各1両、巴豆(皮油を去る)30粒、杏仁(皮尖を去る)50個。先に杏仁と巴豆霜に2石末を入れて混ぜ、搗いて膏になったら蜜を少し入れて貯蔵し、1ヶ月以内の乳児には麻子仁大1粒、100日の乳児には小豆大のもを食べさせる。
◎食癇と食積・痰癖があって、吐乳する。

紫石寒食散《金匱要略》
「紫石英・白石英・赤石脂・鍾乳・括蔞根・防風・桔梗・文蛤・鬼臼各十匁、太一餘糧十分焼、乾薑・附子(炮)去皮・桂枝(去皮)各四分」
右十三味、杵為散、酒服方寸匕。
◎治傷寒令愈不復。

紫沈丸《東醫寶鑑》
「陳皮5銭、半夏(麹)・代赭石・縮砂・烏梅肉各3銭、丁香・檳榔各2銭、沈香・木香・杏仁・白朮各1銭、白豆蔲・巴豆霜各5分を作末し、醋糊で黍米大の丸剤。毎回50丸を姜湯で服用。
◎吐いて痛む者。




梔薑飲《東醫寶鑑》
「山梔子15枚」を炒って水1杯で煎じ、6分ぐらいになると姜汁3匙を入れて、又煎じて熱いときに服用。
◎胃熱作痛を治す。

梔姜丸


梔子乾姜湯《傷寒論》
「梔子(擘)14個、乾姜2両」
=《楊氏家蔵方》は「二気散」と名付けて噎膈に用いる《勿誤薬室方函口訣》
◎心中微煩する者を治す《方極》
◎病人、下利し、身熱去らず、微煩し、或いは嘔する者は、梔子乾姜湯之を主どる《医聖方格》

★適応症及び病名(ししかんきょうとう)
[1]吐瀉:
☆吐瀉の後、なお熱感有り、ただ腹中のみ寒冷を覚え、身体倦怠し頭重く、その脈緩弱なる証《奥田謙蔵》
[2]不眠:
☆心煩ありて眠るを得ず、尿利減少し、時に嘔し、その脈緩弱なる証《奥田謙蔵》
[3]胸苦しい:
☆微熱あるもその脈弱、心煩《傷寒論》、或いは胸部微痛し、大便滑痢し、尿利渋滞し、食欲に異常なき証《奥田謙蔵》
☆四肢の熱感有り、胸部に欝塞の感あり、尿利減少し、食思なく、脈浮虚なる証《奥田謙蔵》
☆汗下の後、熱感なお去らず、心煩ありて脈浮弱なる証《奥田謙蔵》
     



梔子甘草豉湯[1-1]《傷寒論》
「梔子(擘)14個、甘草(炙)2両、香豉(綿嚢)4合」


梔子甘草豉湯[1-2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
      「梔子豉湯甘草1.5」
    ◎梔子豉湯証にして、急迫する者を治す《方極附言》
☆梔子甘草豉湯・梔子生姜豉湯、是れ梔子豉湯加味の方なり。故に毎章の首(はじめ)に冠するに若の字を以てす。心中懊して少気の者は、梔子甘草豉湯。心中懊して嘔する者は、梔子生姜豉湯。《薬徴》
[少気]=浅表呼吸。浅井固お灸をしてフッ飼う息を吸い込むことができない。


梔子甘草豉湯[1-3]《傷寒論》
    ★適応症及び病名(五十音順)
     [1]嚥下困難:
        ☆梔子豉湯の条文にヒントを得て、食道炎で嚥下困難を起こしている者         に用いて著効を得た《大塚敬節》
[2]胸痛:
        ☆急性肺炎で起きた呼吸浅表を伴う胸痛に用いる《大塚敬節》
     [3]滞頤(タイイ):
        ☆滞頤の症、慎独老人が三黄瀉心湯がよしと云へり、やはり心胸へ迫る         気味あり、如何となれば潤はしても、ひたもの乾燥し、心悪しき故、         自ら急迫する気味あり。因州広瀬氏、かくの如き児、1日大いに発熱         し甚だ近づくべかりざりし程の熱勢なりしが、ふと相考へて梔子甘草         豉を用ひたるに、雪に湯をそそぐが如くにして遂に全く治したり。《老         医口訣》
     [4]胸苦しい:
        ☆胸中欝悶し、呼吸促迫し、時に緩急あり、二便に異常なく、その脈微         緩なる証《奥田謙蔵》
        ☆汗下の後、脈緩弱にして胸中に苦悩あり、飢ゆると雖も、食欲起こら         ず、腹軟弱にして時に痛む証《奥田謙蔵》
     [5]弄舌(ロウゼツ):
        ☆口の周りをなめる者に《古家方則》
        


 梔子甘連湯《漢方治療の実際》
      「梔子3、甘草4、黄連1」
    ★適応症及び病名(五十音順)
胃潰瘍:
        ☆胃潰瘍で、はげしい胸腹痛を訴える者に用いる《大塚敬節》



 梔子枳実芍薬湯《漢方治療の実際》
      「梔子3、枳実2、芍薬4」
    ★適応症及び病名(五十音順)
     唾石:
        ☆患者は埼玉県某町の八百屋の女主人。しばらく前から、舌の下が小さ         く膨らんでいたが、数日前から急に大きくなって、だんだん痛みがひ         どく、口をつむることが出来ないという。外科医には手術しなければ         治らないと云われた。診ると舌下腺の唾石である。そこで、排膿散の         桔梗の代わりに梔子を用い、梔子枳実芍薬湯という処方をつくって与         えた。以前の唾石の患者の時には、唾石というハッキリした診断がつ         かなかったので、消炎のつもりで。梔子に甘草を入れて与えたが、唾         石ならば、枳実と芍薬を入れた方がよかろうと考えたからである。と         ころがこの患者も、翌日になって、ソラマメ大の唾石を自然に排出し         て治ってしまった《大塚敬節》


梔子金花湯《傷寒翼方》
      「黄連解毒湯大黄」
    ◎裏実は当に攻下すべし。



梔子厚朴湯[1-1]《傷寒論》
「梔子(擘)14個、厚朴(炙去皮)4両、枳実(水浸炙令黄)4枚」
◎心煩は、当に虚煩と做して看るべし、腹満も亦実満に非ず《尾台榕堂》
     (做=サク、作に同じ)
◎胸腹煩満する者を治す《方極》
◎熱病、心下堅く、腹微満し、煩して起臥安からざる者は、梔子厚朴湯之を主どる。《医聖方格》


梔子厚朴湯[1-2]《東醫寶鑑》
「梔子1銭半、厚朴3銭、枳実2銭」水煎服。
◎傷寒で下痢した後心煩し、腹が張って、寝ても起きても気分が悪い者。

★適応症:(ししこうぼくとう)

[腹がはる]

 


☆熱性症候劇しからずして心煩あり、頭のみ汗出で、腹満し、食欲なく、輾転反側する証《奥田謙蔵》
☆脈浮に、胸腹微満して心煩し、腹部の按擦を好む証《奥田謙蔵》
☆胸中閉塞の感あり、或いは痛み、腹満あるも、時々増減あり、脈候に著変なき証《奥田謙蔵》





梔子豉湯[1-1]《傷寒論》
「梔子(擘)14個、香豉(綿嚢)4合」
       右二味、以水四升、洗煮梔子、得二升半、内豉、煮取一升半、去滓、分為       二服、温進一服、得吐者、止後服。
    ◎発刊後、水薬不得入口、為逆。若更発汗、吐下後、虚煩不得眠、若劇者、必反     復倒、心中懊、梔子豉湯主之。若少氣者、梔子甘草豉湯主之、若嘔者、梔     子生姜湯主之。
◎陽明病、下之、其外有熱、手足温、不結胸、心中懊、飢不能食、但頭汗出者、屬梔子湯證。43
<辨発汗吐下後病脉證并治第二十二>


 梔子湯[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
      「山梔子9g、淡豆9g」水煎服。
    ◎熱病後の虚煩不眠。

 梔子湯[1-3]《東醫寶鑑》
      「梔子7個、半合剉作し、水2杯に、先に梔子を煎じて1杯に成っ          たらを入れ、再煎し温服。吐いたら止め、吐かなかったら再び           服用。」
    ◎心中懊の主治剤。





 梔子湯[1-4]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
      「山梔子1.4g、香6.5g」水160ccを以て梔子を100ccまで煮詰め、          香を加えて煮直して60ccに煮詰め2回に分服。
    ◎梔子湯の方后に一服して吐を得れば后服を止むの七字あり、世医遂に誤って     以て吐剤と為す。不稽の甚だし、為則之を試すに特に心中懊を治すのみ、未     だ嘗て必ずとせず、若し或いは瞑眩に因て吐す者は諸方皆然り、特に梔子湯     みにあらざるなり。張思聰曰く、旧本に一服して吐を得ば後服を止むの七字有     り、此れ瓜蒂散中に香あるに因ると、而して此に於て誤伝なり。此の説も亦     未だ精覈(セイカク)せざるなり。枳実梔子湯、梔子大黄湯皆香ありと雖も吐     を得る云々の語なし、要は皆転訛(テンカ)のみ、其の若し嘔する者は梔子生姜     湯之を主ると謂うを観れば、則ち其の吐剤に非らざること自ら明白なり。《重     校薬徴》
    ◎虚煩して眠られず。
    ◎心中懊、胸中ふさがり、心中結痛、煩熱、頭汗出る者。
    ◎出血。
    「梔子」:つかむような痛みに用いる鎮痛剤。
         梔子は好んで胸部に働く作用がある《大塚敬節》
    「香」:胸苦しい時に用いる消炎性健胃剤。
    ◎心中熱して、懊する者を治す《方極附言》
    ◎此方は、梔子、香の2味のみ、然れども之をその症に施せば、その効響くが     如し。親から之を病者に試むるに非ずんば、焉んぞ能くその功を知らんや《尾      台榕堂》
    ◎目標:
      “心中懊する者”“胸中塞がる者”“心中結痛する者”に用いる。
      “心中結痛とは、むすぼれ痛むということで、梔子はつかむように痛むとい       う処へも用いる。”
  【腹証】
   《腹診配剤録》
     “心中苦煩して眠ることを得ず、或いは心下痞満して痛む。然れども之を按ず      れば力無し”


 梔子湯[1-5]《漢方治療の実際》
      「梔子3、香4」
    ★適応症及び病名
     [1]イライラ
     [2]息切れ
     [3]胃炎
     [4]胃潰瘍
     [5]胃酸過多症
     [6]胃酸欠乏症
     [7]胃痛
     [8]咽喉炎
☆あつい餅を急いで食べたために食道炎となり、嚥下時に激しい疼痛を訴えたことがあった。そのときに傷寒論の梔子湯の条下に“胸中ふさがる者”または“心中結痛する者”に、梔子湯を用いるのを思い出し、これを試用せんんとしたが、香が手元に無かったので、山梔子に甘草を入れて、煎じてのんだところ、1服で著効を得たことがあった。(漢方診療医典)
     [9]黄疸(小便赤い)
    [10]喀血
    [11]乾癬
    [12]局所の熱感
    [13]狭心症
    [14]胸痛:
         ☆熱性症候なく、胸部支痛して煩悶し、その脈遅なる証《奥田謙蔵》
         ☆21歳の女性。急に激しく胸が痛み、言葉を発することが出来ず、          堪えられないほどである。そこで胸痛のある時に用いる処方を用い          たが効をみず、梔子湯を用いたところ、1服で痛みが止んだ《長          沙腹診考》
    [15]胸中のふさがり:
         ☆胸中塞がるとは、胸のつまること。《大塚敬節》
         ☆気鬱して煩悶し、食を欲せず、其の脈弦細なる証《奥田謙蔵》
         ☆大病差えて後、食し已って胸中微煩し、昏沈する者《類聚方集覧》
    [16]胸中煩熱(胸があつ苦しい)
    [17]高血圧症
    [18]口苦
    [19]口内炎
    [20]紅斑(かゆみが強い)
    [21]歯根炎(出血が気になる)
    [22]歯根出血
    [23]痔出血(熱感があり、出血が気になる)
    [24]湿疹
    [25]食道炎
    [26]食道ガン
    [27]食道狭窄症
    [28]食欲不振
    [29]自律神経失調症
    [30]神経衰弱
    [31]心下部疼痛
   [32]心臓病
    [33]心中懊:
         ☆心中懊とは、胸の中が何とも形容出来ないように、もやもやとし          て気持が悪くサッパリしない状のこと。《大塚敬節》
   [34]心煩:
         ☆下後、腹部軟弱となれるも、微熱去らず、呼吸促迫し、心煩、苦悩          し、その脈弦にして遅なる証《奥田謙蔵》
   [35]ジンマシン(かゆくて眠れない)
    [36]性的神経衰弱
    [37]舌炎
    [38]舌出血
    [39]舌質 <紅><やや乾燥>
    [40]舌苔 <微白~微黄>
    [41]痒性皮膚疾患
[42]唾石
     [43]帯状疱疹
     [44]血の道症
     [45]手足のほてり(気になって、眠れない)
    [46]凍傷
    [47]吐血(出血が気になる)
    [49]熱病
     [50]ノイローゼ(夜間に増悪)
    [51]のぼせ
    [52]肺炎
    [53]肺結核
    [54]煩熱:
         ☆汗下の後、なお微熱有り、脈緩にして数、胸中満悶を覚える証《奥          田謙蔵》
     [55]微熱
    [56]不安感(夜間に)
    [57]不眠症:
         ☆睡眠し難く、或いは睡眠すれば夢多く、飢ゆると雖も、然かも食味          無く、漸く疲労に陥らんとする証。《奥田謙蔵》
[58]腹部軟弱無力
     ☆腹直筋の緊張はない。
     [59]腹満:
         ☆汗下の後、腹虚満し、脈微浮にして心煩有り、二便に異常なき証《奥          田謙蔵》
         ☆霍乱、吐下の後、心腹煩満するを治す《肘後百一方》
    [60]扁桃炎
    [61]胸やけ
    [62]メッケル憩室炎


    



梔子生姜湯[1-1]《傷寒論》
「梔子(擘)14個、生姜5両、香(綿嚢)4合」




梔子生姜湯[1-2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
      「梔子湯生姜4」
    ◎梔子湯証にして、嘔する者を治す《方極附言》
    ★適応症及び病名
      胸痛:
        ☆熱性症候なくして、脈緩弱、胸中痛みて背部に徹し、或いは悪心し、         或いは嘔吐する証《奥田謙蔵》
      吐き気:
        ☆汗下の後、微熱未だ去らず、或いは悪心し、或いは乾嘔を発する証《奥         田謙蔵》
      不眠:
        ☆虚煩して眠ること得ず、若し劇しき者は、必ず反復転倒し、心中懊         す。梔子湯之を主どる。若し微煩して止まず、更に少気する者は、         梔子甘草湯之を主どる。もし嘔する者は、梔子生姜湯之を主どる。         《医聖方格》


梔子仁丸《東醫寶鑑》
      「山梔子(老)末・黄蝋」等分に熔化して、弾子大の丸剤。茶清で噛           んで呑み下し、熱物を避けると半月目に効あり。
◎酒査鼻。


 梔子清肝湯《外科枢要》《古今方彙》
    =「柴胡梔子散」
      「柴胡・山梔子・牡丹皮各1銭、茯苓・川芎・芍薬・当帰・牛蒡子各7分、       甘草5分」水煎。
◎三焦及び足の少陽経の風熱で耳内に痒を作し、瘡を生じ、或いは水を出し、疼     痛し、或いは胸乳間に痛みをなし、或いは寒熱往来するを治す。



梔子大黄湯[1-1]《傷寒論》
「梔子14枚、大黄1両、枳実5枚、1升」
    ◎酒黄疸、心中懊、或熱痛、梔子大黄湯主之。

梔子大黄湯[1-2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
    =「枳実梔子大黄湯」
      「梔子2、大黄1、枳実3、香10」




梔子大青湯[1-1]《東醫寶鑑》
      「山梔子・大青・黄芩各1銭半、升麻1銭、杏仁8分、葱白3茎」水煎          服。
◎妊婦の傷寒、発斑の黒い色に変ずる者。

 梔子大青湯[1-2]《東醫寶鑑》
      「黄芩・山梔子・升麻各2両、大青葉・杏仁各5分、葱白3茎」水煎服。
    ◎妊婦が熱病で斑を発する。

梔子竹茹湯《東醫寶鑑》
      「梔子(炒)3銭、陳皮2銭、青竹1銭半」剉作し、1貼を水煎し姜汁を         混ぜて飲む。
    ◎胃熱による悪心・乾嘔の止まらない者。

 梔子湯《蘇沈内翰良方》
      「梔子、附子,薤白」同煎する。
      =古梔附湯《医学正伝》と名付け、饑病を治す。
    ◎胸痺切痛を治す。
    ◎《朱丹渓》曰く、烏頭外束の寒を治し、梔子内鬱の熱を治す。則ち内熱外寒の     理、昭然なり。況や二物皆下焦の薬、梔子烏頭の引く所、則ち勢の下ること急     速に、胃中に少緩するを容(ユル)さず。《雑病翼方》

梔子蘗皮湯[1-1]《傷寒論》
    =「梔子柏皮湯」
「肥梔子(擘)15個、甘草(炙)1両、黄柏2両」
    ◎傷寒身黄発熱、梔子蘗皮湯主之。

 梔子柏皮湯 《漢方治療の実際》
      「梔子3、甘草1、黄柏2」


 梔子柏皮湯[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
      「山梔子6g、黄柏6g、甘草3g」水煎服。
◎黄連解毒湯黄芩黄連甘草《大塚敬節》
    ◎全身の黄染、発熱、頭汗
    ★適応症及び病名(梔子柏皮湯)
     アトピー性皮膚炎:
カユミを抑え、好酸球が減少(富田・富山医薬大学助手)
     [1]黄疸:
        ☆一身黄み、発熱し、心煩する者を治す《方極附言》
        ☆熱病、身黄み、発熱し、微煩する者は、梔子蘗皮湯之を主どる《医聖         方格》
        ☆黄疸等にして、発熱し、煩悶する証《奥田謙蔵》
        ☆黄疸があっても、腹証上、腹満や胸脇苦満もなく、悪心、嘔吐、口渇、         尿の不利も無い者に用いる《大塚敬節》
        ☆《大塚敬節》
        “28歳男子。やや痩せ型、10日ほど前から、軽微の黄疸となったが、         食欲、大小便ともに、ほとんど異常がないという。腹診しても、特に         変わったとことはない、口渇も、嘔吐もない。そこでこの方を与えた         ところ、7日間の服用で、黄疸は全く消失した”
        ☆是は黄疸で熱の強い者に用いる。この場合に便秘しておれば、先ず茵         蒿湯を用い、その後で、この方を用いる。もし心胸にかかって便秘         しておれば梔子大黄湯を用いる。およそ黄疸は多かれ少なかれ心胸に         かかる者であるが、梔子大黄湯は専ら心胸にかかる。茵蒿湯も心胸         にかかるけれども、梔子大黄湯ほど心胸に専らかかるものではない。         およそ黄疸になろうとする者は、発黄前から胸が気持ち悪いものであ         る。それ故、熱があって、胸の気持の悪いときは、いつでも黄疸に意         をそそぐがよい。梔子大黄湯は、心中懊あるいは熱痛が目標である         《有持桂里》
     [2]脚気
     [3]眼瞼炎:
        ☆胞瞼糜爛、痒痛し、及び痘瘡落痂以後、眼なお開かざる者には、枯礬         少許を加へて之を洗う。《類聚方広義》
     [4]肝斑
     [5]胸中煩悶:
        ☆発汗の後、微熱なお去らず、胸中欝塞の感ありて煩悶し、頭のみ汗出         で、尿黄色を呈する証《奥田謙蔵》
     [6]結膜炎
     [7]口渇
     [8]虹彩炎
     [9]肛門掻痒症
     [10]黒皮症
     湿疹:
        ☆23歳の女性。患者がいうには、昨年も今頃一度診察していただき、         7日分の薬をもらいましたが、全部を飲み終わらないうちに治ってし         まって、そのままになっていましたが、今年もまた同じように眼瞼の         周囲が痒くてたまらず、掻いているとこんなになりましたと。
みると、左右の眼瞼の周囲が少し赤味を帯びて、黒く隈取っている。         指頭を患部にふれてみると、少し熱感がある。大小便その他には異常         がない。
さて、昨年は何を用いたか?とカルテをみると、梔子柏皮湯となっ         ている。そこでまた同じ処方を7日間与えたが、そのまま治ってしま         った、《大塚敬節》
     [11]ジンマシン(身黄、発熱、腹満なし)
    [12]腎炎
    [13]頭汗
    [14]舌質 <紅>
    [15]舌苔 <黄苔>
    [16]胆石症
    [17]発熱:
         ☆蒸々として発熱し、衂血を発する証《奥田謙蔵》
         ☆1婦人、故なくして下肢の1部分に熱感があり、火が燃えているよ          うだと云う。掌をあててみると、熱感を覚え、その部分が少し発赤          している。よって身熱と診断して、この方を与えたところ、数日の          のち熱感は拭(ぬぐ)うように消失した。漢方でいう熱とは、必ずしも体温          の上昇を必要とせず、熱感だけのものでも、これを熱とする場合が          ある。《大塚敬節》
     [18]鼻血:
         ☆小児の衂血を治す《証治準縄》
     煩熱:
         ☆梔子の入った処方には、煩熱や身熱を治する効がある《大塚敬節》
         ☆体温の上昇はなくとも、熱感のある者に用いてよい。この熱感は局          所的なものでも、全身的なものでもよい《大塚敬節》
    [19]皮膚炎
[20]皮膚掻痒症
     [21]浮腫
[22]腹部膨満
[23]目が充血:
         ☆眼球黄赤、熱痛甚だしきを洗えば、効あり。《類聚方広義》

 

梔枳家湯《東醫寶鑑》
      「梔子・枳実各2銭、香5銭」水煎服。
◎労復の発熱に、微熱が出ると治る。

梔湯《東醫寶鑑》
      「大梔子4枚、豆6銭を水煎服すると止まる。又梔は苦寒の時、          酸漿を少し入れて胸中の邪を吐出させる。梔子は元来吐剤でない           が、これは邪気が上にあると抗拒し、体に合わず、上より吐かせ           邪気を出るようにしたもの。
◎胸膈に痰が壅寒し、燥を発したとき。


梔萸丸《東醫寶鑑》
      「山梔子(炒焦)1両半、呉茱萸・香附子各2銭半」を作末し、川椒          大の丸剤。生姜・生地黄で煎じた湯で20~30丸呑む。
    ◎気実心痛で抑えると痛みがひどくなる者。


梔附湯《東醫寶鑑》
      「山梔子49枚を半分にして焼いて、大附子(炮)1個を切って2銭」          水1杯・酒半杯で7分まで煎じ、滓を去り塩を少々入れて温服。
◎寒疝による腹痛と、小腸・膀胱の刺痛を止める。

絲瓜散[1]《東醫寶鑑》
      「絲瓜絡1枚・連皮を焼いたもの」作末し、2銭を酒で空腹時に服用。
◎五色痢と、酒痢の血便・腸痛を治す。

 絲瓜散[2]《東醫寶鑑》
 「露1~2回受けた絲瓜根を取って洗い、10日間夜露を受けさせて、         陰干しにし毎回1回に、3銭づつ切って散を作り、水煎して滓を去          り香油を少し垂らして服用。
    ◎腸風・臓毒・痔瘻・脱肛。

 資寿解語湯《東醫寶鑑》
      「羚羊角・桂皮各1銭、羗活・甘草各7分半、防風・附子(炮)・酸棗          仁・天麻各5分」剉作1貼し水煎し「竹瀝5匙、姜汁1匙」入れて調         服する。
    ◎風が心脾に入って話せない。

 児軽散《中薬臨床応用》
      「阿仙薬9g、海粉6g、竜脳1g、竜骨9g」作末し水で練って塗布。
    ◎分泌物が多い湿疹
    ◎皮膚潰瘍

 竺黄湯《中薬臨床応用》
      「天竺黄6g、白殭蚕3g、菖蒲2.5g、法半夏5g、胆南星2.5g、天花粉9g、川       貝母5g、釣藤鈎9g、知母6g」水煎服。
    ◎小児の熱性ケイレン
    ◎意識障害で咳嗽、呼吸促迫
    ◎粘稠な痰

思仙続断苑《普済本事方》


衂血一方《済世全書》《古今方彙》
「升麻・白芍薬・牡丹皮各5分、生地黄2両半、黄芩・柏葉・荊芥各5銭」水煎。
◎衂血止まざるを治す。


七気消聚散《医学統旨》
「莎草1匁半、青皮・莪朮・三稜・枳実・木香・縮砂各1匁、厚朴・橘皮各1匁2分、甘草」
◎蠱脹、積聚に因り、相攻め、或いは疼み、或いは腫るを治す。
◎此方と「分消湯」と伯仲の薬なり。但し蠱脹の疼痛ある者には此方効ありとす。《勿誤薬室方函口訣》


七気湯[1]《岡本玄治》
「莪朮・青皮・三稜・木香・桂枝・莎草・良姜・橘皮・川芎」
◎虫積、臍下痛み、足冷ゆるを治す。

◎此方は玄治翁の《燈火集》に、大七気湯に加減して婦人臍下痛に経験せり。
◎証に臨んで運用するときは、虫積のみならず、諸積痛に験あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎積少腹にあり、奔上して心に至り、上下時無く、賁豚の走るが如し。飢ゆれば見われ、飽すれば減ず。臍下痛、気屈して、手冷え、口乾、目眩し、久しけれ ば則ち骨痿す。此方に宜し。《雑病翼方》


七気湯[2]《外台秘要方》
「桂枝・黄芩・桔梗各2両、人参・芍薬・地黄・半夏各3両、枳実5枚、呉茱萸7合、橘皮・乾姜・甘草各3両」
◎寒気、熱気、憂気、労気、愁気、或いは飲食膈気を為し、或いは労気、内傷、気衰少力を療す。
◎此方は労気、内傷よりして飲食胸膈に阻格(はばまれる)し、或いは寒熱ありて気衰少力者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎憂、労、寒、熱、愁、思、及び飲食隔塞し、虚労内傷、五蔵絶傷、奔気する能わず、心中悸動、不安を療す。《雑病翼方》


七気湯[3]《備急千金要方》
「七気湯《外台秘要方》-桂枝桔梗括蔞根・蜀椒」

七気湯[4-1]《東醫寶鑑》
「半夏3銭、人参・肉桂・甘草(炙)各7分、生姜3片」水煎服。
◎七情が心腹に欝結して痛む者。

     
七気湯[4-2]《古今方彙》
「半夏2銭半、人参・肉桂・甘草各5部、生姜」水煎。
◎七情の傷るる所及び労役飲食節せず、満悶短気するを治す。
◎心腹刺痛する:「+延胡索+乳香」=「加味七気湯」
◎婦人には:「+川芎+当帰」


七気湯[4-3]《漢方治療の実際》       「半夏5、人参・桂枝各3、甘草2、生姜4」
◎気鬱を開くために設けられた薬方《大塚敬節》
    

適応症及び病名(七気湯)
[1]嚥下困難:
☆気鬱からくる嚥下困難に用いる《大塚敬節》
☆飲食が隔気をなすというものの用いて効がある。その症は隔のように飲食物が時々胸につまって、背を叩かないと下りないというものである。しかし隔のように是非とも吐くという程ではないが、とかく飲食が下りにくく、食事するたびに苦しみ、いろいろ処方を用いても治らないという者に、この方を用いると効がある。《梧竹楼方函口訣》



七賢散[1-1]《外科正宗》
「茯苓・山茱萸・山薬・牡丹・地黄・人参各1銭、黄蓍2銭」
◎主として腸癰潰後、疼痛、淋瀝已まず、或いは精神減少、飲食無味、面色萎黄、自汗盗汗、睡臥不安を治す。
◎「六味地黄丸-沢瀉+人参黄蓍」《勿誤薬室方函口訣》
◎腸癰潰後の滋補のみならず、諸瘡瘍に運用すべし。場合によりては「十全大補湯」より効あり。
◎余又、傷寒差後、下元虚憊の者に与えて験を得たり。
◎老人気血衰弱し、背に発し、渇止まざる者、宜しく服すべし。《雑病翼方》


七賢散[1-2]《外科正宗》《漢方治療の実際》
「茯苓6、地黄5、山薬・牡丹皮各3、山茱萸・人参・黄蓍各2」


七夏豆根湯《中薬臨床応用》
「七葉一枝花豆頭30g、夏枯草30g、山豆根30g」水煎服。
◎肺ガン




七生丸《東醫寶鑑》
「川芎・川烏・草烏・天南星・半夏・白芷・石膏」を各等分にし、細辛・全蝎を加え各半分づつ減らして細末にし、韭葉の自然汁で梧子大の丸剤。生葱をかじった後、茶清で7~9丸づつ呑む。
◎男女の頭風と一切の頭痛。

 

七生湯《東醫寶鑑》
「生地黄・生荷葉・生藕節・生韭薬・生茅根各1両、生姜5銭を搗いて自然汁1合を取り、濃くした京墨汁と混ぜて調服する。」
◎血が口鼻からあふれ出し、諸薬無効の者。


七製香附丸《東醫寶鑑》
「香附米14両を7包に分け、1包は当帰2両と酒浸し、2包は莪朮2両と童便に浸し、5包は川芎・延胡索各1両と水浸し、6包は三稜・柴胡各1両と醋浸し、7包は紅花・烏梅各1両と塩水に浸す。以上の材料を、春には5日、秋には7日、冬には10日間乾かし、香附だけ除いて作末し、それぞれ浸した薬水に又浸して、糊で梧子大の丸剤。就寝時に酒で80丸飲む。
◎月経不調による病気を治す。

七成湯《温疫論》
「人参・附子・茯苓各1銭、五味子8分、甘草5分、破故紙3銭」
◎病癒える後、脈遅細にして弱、黎明に至る毎に、或いは夜半の後に、便ち泄瀉を作す者を治す。
◎此方は《呉氏》専ら五更瀉に用いれども、総じて老人脾腎の虚よりして下痢、足脛微腫をなす者に効あり。    
◎「五更瀉」:たぶん疝に属するものにて、大抵真武湯にて治するなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎按ずるに五更瀉は、独り腎虚の一端のみならず、酒積、食積、寒疝、みな此の病を作す。概して温腎を与うはその治に非ず。《雑病翼方》
◎雑病の泄瀉を治して効あり《方読便覧》
◎泄瀉癒ゆるの後、脈遅細にして弱く、夜半、黎明に至って瀉する者、これ命門、直陽の不足なり。「七成湯」或いは「参苓白朮散」これを主るに宜し。又、実に属する者有り、「大黄丸」の類に宜し。《先哲医話》



七宣丸《東醫寶鑑》
「大黄1両、木香・檳榔・訶子皮各5銭、桃仁12」作末し、梧子大の蜜丸。 温水で50丸飲む。
◎熱が胃腸にとまって、大便が詰まる者。
 
七仙丹《東醫寶鑑》
「何首烏(9回蒸9回乾燥)4両、人参・生乾地黄(酒洗)・熟地黄・麦門冬・白茯苓・茴香(炒)各2両」作末し蜜で弾子大の丸剤。毎回1丸、酒or塩湯で噛み下す。
◎心腎を補い、美顔・髪黒。

七棗湯《医方考》《古今方彙》
「附子、大棗」水煎温服。
◎瘧の発する時に独り寒く熱無き者は脉遅なり。名づけて牝瘧と曰う。


七珍散


七転霊応丹《東醫寶鑑》
      「妙応丸-使君子」
◎諸般の血積を治す。

七度煎《勿誤薬室方函》
「黄蓍・地黄・杜仲・茯苓・川芎・大黄・防風・牛膝・黒丑・檳榔・甘草・山紫玉屑・土茯苓」
◎下部の痼毒は「七度煎」に宜し。
(→大百中飲《本朝経験》)

七灰散《婦人大全良方》
「蓮房殻・罌栗殻・蟹殻・益母草・旱蓮草・藕節・棕毛灰各等分を、存性するように(外側を黒く、内側を黄色になる様に)焼いて作末して、空腹時に酢湯で12gを服用。」

 

七宝飲《外台秘要方》
「常山、厚朴、陳皮、青皮、甘草、檳榔子、草果仁」

七宝飲《中薬臨床応用》
「常山9g、檳榔子9g、鼈甲9g、烏梅3g、大棗9g、甘草9g、生姜9g」水煎服。
◎瘧疾。

七宝飲《医学正伝》《古今方彙》
「常山1銭、厚朴・陳皮・草果・檳榔子・青皮・甘草各半銭、生姜」煎じ酒(少許)入れて、一宿を露し発するに臨み、五更に温服す。
◎瘧疾を発散して、病勢少しく衰え而して之を用いて之を截る。
「+知母、蒼朮、鼈甲、烏梅」=「常山七宝飲」

 

七宝丸《東洞家塾方》
=「七寶丸」
「牛膝・軽粉各2銭、土茯苓1銭、大黄8分、丁字5分」
右5味、合して杵き篩い、末となして緑豆大の糊丸。1日8分分けて2服す。毎に4分を服す。朝夕白湯にて之を服す。凡そ6日、又、7日詰朝後方を服す。
「巴豆・丁字各2分5厘、大黄4分」
右3味まず丁字、大黄を杵きて末と為し、別に巴豆を研りて中に入れ合し治めて、緑豆大の糊丸。凡そ前方を服すること6日、乃ち7日に至りて詰朝此方を服す。1服1銭、白湯にて之を下す。
 (後方は丁字をもって、軽粉の毒を取るため)

[丁字を製する法]
丁字1銭、粳米7粒を内れ別に研る。悉く細末となす。然からざるときは、粘貼して末すること能わず。
    

七宝丸=「前七宝丸」と「後七宝丸」及び「続七宝丸」を用いる。


七宝散《東醫寶鑑》
「猪牙皀角1銭、全蝎(毒を去る)10箇、硼砂・雄黄・白礬・胆礬各1銭」細末にし喉中に吹き入れるとすぐ治る。
◎喉閉・単蛾・隻蛾を治す。

七宝丹《吉益東洞》《勿誤薬室方函》
「牛膝・軽粉各2銭、鷄舌香5銭、遺糧1銭半、大黄8銭」
◎瘡毒痼疾、骨節疼痛する者を治す。

 

七宝美髯丹《邵応節方》
「何首烏、白茯苓、牛膝、当帰、枸杞子、菟絲子、補骨脂」


七味鷓鴣菜湯《浅田家方》
「黄連・桂枝・半夏・大黄・鷓鴣菜・甘草・乾姜」
◎嘔吐、腹痛、蛔に属する者を治す。
◎此症は回虫にて嘔吐、腹痛する者を治す。
◎「椒梅瀉心湯」と類方なれども、彼は安蚘を主とし、此れは殺蛔を主とするなり。
◎胃実の嘔吐、長虫諸般蟯癖通治の方なり。按ずるに鷓胡菜は殺虫の聖剤と為す。而して之を服す者、まま、嘔を発し、嚥む能わず。余聞く、安房の《尾崎玄昌》、かって一児の蚘病を治す。その証、煩渇、水を飲まんと欲し、心痛嘔吐、最も甚だし。而して児、湯薬を悪み、強いて之を与えれば則ち嘔吐益々加う。玄昌、鷓胡菜を以て水侵半時ばかり、菜を去って之を服せしむ。児素より冷を欲す。     頓服数椀して嘔収まり、蚘安し。《傷寒翼方》

七味清脾湯《三因極一病証方論》《古今方彙》
「厚朴4両、青皮・半夏・良姜・烏梅各2両、草果1両、甘草(炙)半両、生姜、大棗」水煎。
◎脾瘧、食瘧、嘔吐腹痛等の症を治す。

七味疝気方《勿誤薬室方函》
「桂枝・桃仁・延胡索・木通・烏薬・牡丹皮・牽牛子」

七味葱白散《東醫寶鑑》
「葱白連根3葵、乾葛・麦門冬・熟地黄各3銭、香豉半合、生姜(切)1合」剉作1貼し、甘爛水4升で煎じて1/3ぐらいになったら滓を去り、2回に分けて服用。
◎労復と食復を治す。


七味蒼柏散《医学入門》《東醫寶鑑》
 「蒼朮・黄柏・杜仲・破故紙・川芎・当帰・白朮各1銭」水煎し空腹時に服用。
◎湿熱腰痛で軽い者。
◎湿熱にて腰痛し動止滞り、重くして転側する能わざるを治す。《古今方彙》

七味調気湯《中薬臨床応用》
「青皮6g、香附子3g、木香1.5g(後下)、藿香3g、烏薬3g、縮砂3g、甘草3g」水煎服。
◎胸脇部が脹って痛む

 七味白朮散(慢性の下痢・消化不良)


七味白朮湯《小児薬証直訣》
 =「銭氏白朮散」
「人参・茯苓・白朮・藿香各5分、葛根1銭、木香・甘草各5分」
◎脾胃、久虚し、嘔吐、泄瀉、乳食進まざるを治す。
◎霍乱及び一切の吐瀉、煩渇気弱、妊娠の霍乱を治す。《古今方彙》
◎中気虧損して津液不足し肌熱怠惰、舌乾口燥、冷を飲むを喜ばず、或いは吐瀉の後に渇を作す者を治す。《医方考》
◎瘧久しく癒えず、発したる後に口乾き倦甚だしき者を治す:「+麦門冬+五味子」《薛立斎》。煎じ与えて恣に飲み、再発し稍可なれば乃ち「補中益気湯+茯苓+半夏」を用い而して癒ゆ。《古今方彙》
◎口舌に瘡を生じ、口乾し湯を飲み食せざるを治す。《薛立斎》
◎此方の趣意は四君子湯にて、脾胃の虚を補い、藿香、木香にて脾気の眠りを醒まし、葛根にて陽明の熱を清解し、渇を止め、下利をとどむと云う手段なり。 《勿誤薬室方函口訣》
◎葛根を陽明の薬とすること古意に非ず。吾が門にては唯、葛芩連湯の虚候に渉る者、此方を与えて的効あり。
◎泄利、附子剤を与えて止まざる者、「銭氏白朮散」奏功す。《先哲医話》
◎胸癉多く虚に属す。消渇病多く此証を兼ね、食物ひとえに甘きを覚ゆる者なり。     《先哲医話》
◎嘔吐・泄瀉・乳食進まざる者。



七物降下湯《修琴堂》
「四物湯+釣藤鈎4、黄蓍3、黄柏2」
 ◎目標:補気益気、熄風。
 =《大塚敬節》が創作し、馬場辰二氏が命名した処方。
「51歳の頃から、時々めまいをしたり、午後になると吐息が出たり、のぼせて頭痛がするようになった。秋になると腰が痛くなって、寝返りが困難となり、朝起きて靴下をはくのにも苦しむほどになった。(中略)翌年の3/23日の雨の日だった。どうも眼がよく見えない。おかしいいなあと思ったが、曇っているからだろうと、まだ呑気に構えていた。3/31日の朝であった。寝床で、額の字を見ようとしたところ、どうも変だ。右眼をつむってみると、ほとんど見えない。これはおかしいぞと思ったが、まだ眼底出血だとは気づかない。しかし気になるので、近所の眼科で診てもらったところ、ひどい眼底出血だとのことであった。しかも出血は相当前から続いていたらしく、一部は結締織化しているということであった。すべては手遅れで、視力は回復すべくもなく加速度で悪化し、2ヶ月後には明暗すら弁ずることが出来ない状態となった。
その頃私ののんだ処方は、八味丸、黄連解毒湯、抑肝散、炙甘草湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、解労散などであったが、病勢を少しも緩めることは出来なかった。そこで色々と考えた末に、私の作った処方が「四物湯+釣藤鈎+黄蓍+黄柏」であった。
これを用い始めたのが、5/30であった。この日の血圧は140-90であった。すると6/3には126-80、6/4には136-86、6/6には120-80という風で、最高は120内外、最低は80内外となった。そのことを馬場辰二先生に話したところ、その処方に七物降下湯という名をつけてくださった。
ところが6月の末に税務署員が見舞いに来た。私は驚いた。「先生がご病気だということを聞いてお見舞いに参りました。今年は所得税を免税にしますから、どうぞ落ち着いて十分に御養生してください」という。私は妙な複雑な心理状態になった。私はいよいよ駄目だなあと、ため息が出た。税務署には、私の右眼もやがて失明して盲目になるということが伝えられていたが、私には本当のことが語られていなかったのであった。7月の暑い日であった。  どっと衂血が出始め、それが、口からも鼻からも、ほとばしる。ものを言うことも出来ないほどである。黄連解毒湯を飲んだが、ますます出血はひどくなる。とうとう耳鼻科の先生にタンポンしてもらって、やっと止血した。2、3日たつと、右の足がシビレてきた。いよいよ脳出血の前兆かと思うと感慨無量である。私は悩んだ。しかしその頃の血圧は最高120内外で最低は80内外であった。私は自分で一番良いと進ずる養生をしてみよう。それで悪くなれば、運命とあきらめるより外にない。そう決心すると心が軽くなった。
それからやがて10年になる。」《大塚敬節》

適応症及び病名(七物降下湯)
[1]IgA腎症
☆体力やや虚弱で、最低血圧の高い者に用いる(漢方診療医典)
[2]頭のふらつき
[2]顔色が悪い
[3]眼底出血
[4]筋肉がひきつる(攣縮)
[5]肩背強急
[6]高血圧:
☆最低血圧(拡張期血圧)が高い者。
☆疲れやすくて、最低血圧が高い者《大塚敬節》
☆57歳の男性。頭が重く、血圧は168-100であり、尿中にズルフォでタンパク(+)であったが、これを用いて1ヶ月後には、150内外-90内外となり、2ヶ月後にはタンパクは陰性となり、血圧も140内外-80内外となった。《大塚敬節》
☆「+杜仲3.0」=「八物降下湯」
[7]更年期障害
[9]しびれ感(シビレ・筋肉のひきつり)
[10]自律神経失調症状
[11]腎性高血圧症:
☆腎炎のために高血圧症。
☆尿中のタンパクを証明し、腎硬化症の疑いがある者
[12]頭重
[13]頭痛
[14]舌質 <淡白>
[15]血の道症
[16]手足がしびれる
[17]手足がふるえる
[18]糖尿病性腎症
☆体力やや虚弱で、最低血圧の高い者に用いる(漢方診療医典)
[18]動脈硬化症
[19]尿量多い(多尿)
[20]ネフローゼ
☆体力やや虚弱で、最低血圧の高い者に用いる(漢方診療医典)
[21]のぼせ
[22]皮膚に艶がない(皮膚枯燥)
[23]疲労倦怠
[24]頻尿
[25]ふらつき
[26]ほてり
[27]本態性高血圧症
[28]慢性腎炎
☆体力やや虚弱で、最低血圧の高い者に用いる(漢方診療医典)
[29]耳鳴り
[30]めまい(目眩)


七物厚朴湯《東醫寶鑑》
「厚朴3銭、枳実1銭半、大黄・甘草各1銭、桂心5分」剉作1貼し、「姜5、棗2」を入れ水煎服。
◎熱脹を治す。


七葉一枝花湯《中薬臨床応用》
「七葉一枝花9g、金銀花9g、白菊花9g、麦門冬6g、青木香3g(後下)」水煎服。
◎流行性脳炎
◎日本脳炎
◎流行性耳下腺炎
◎マラリア
◎小児の高熱
◎日射病
◎熱射病
◎意識障害を伴う痙攣



七厘散[1-1]《良方集腋方》
「乳香、没薬、辰砂、血竭、紅花、孩児茶、麝香、氷片」

七里散[1-2]《傷科補要》
「乳香・没薬・紅花・朱砂各600g、血竭512g、当帰80g、孩児茶(⇒阿仙薬)72g、 麝香48g、冰片8g。以上を細末にして、熱い陳酒で、2ないし4g冲服。外用には、酒で調製する。」


七厘散[1-3]《良方集腋方》《中薬臨床応用》【中成薬】
「血竭・紅花・阿仙薬・朱砂・乳香・没薬・麝香」
◎打撲捻挫によいる胸腹部の疼痛、出血。


止渇湯


止痙散《河北人民出版社》
「全蠍・蜈蚣」を細末にする。
◎流行性乙型脳炎云々。


止血散《東醫寶鑑》
「胡桃仁・破故紙(炒)・槐花(炒)各3両半、皀角(刺焼灰)2両」作末し、温酒で2銭調下。
◎腸風が糞前にあるのは肝・腎の血で、糞後にあるのは心・肺の血である。

止衂散《三因極一病証方論》《古今方彙》
 「黄蓍6銭、赤茯苓・白芍薬各3銭、当帰・生地黄・阿膠各3銭」細末にし、「黄蓍湯」を煎じ調下する。
◎積怒は肝を傷り、積憂は肺を傷り、煩思は脾を傷り、失志は腎を傷り、慕喜は心を傷り、発して鼻衂を為すを治す。
◎又、気鬱して衂を発するを治す。

止喘元《東醫寶鑑》
「蓽撥・胡椒・人参・胡桃肉」各等分に作末し、1両を3丸に蜜丸。毎回1丸を温水で呑む。
◎冷喘を治す。

止嗽散[1-1]《医学心悟》
「荊芥・紫苑(蒸す)・百前(蒸す)・桔梗(炒る)・ 百部(蒸す)、陳皮(水で洗って白を去る)、甘草(炒る)」以上を細末にして混和し、毎服、生姜湯で飲む。

止嗽散[1-2]《医学心悟》《中薬臨床応用》
「紫菀9g、荊芥6g、百部6g、白前6g、桔梗3g、甘草3g」水煎服。
    ◎慢性咳嗽
    ◎痰が多くてつまる
    ◎喀出してもすっきりしない
    ◎痰に血が混じる


止痛消瘀方《中薬臨床応用》
「白膠香5g(沖服)、北紫草12g、三七末5g(沖服)、金狗脊18g、絡石藤12g、当帰12g、甘草(炙)5g」水煎服。(酒浸しても良い)
    ◎慢性関節リウマチ
    ◎座骨神経痛
    ◎打撲による腫脹疼痛
    ◎月経痛

止痛附子湯《医門秘旨》
「蒼朮・莎草・黄柏・青皮・益智仁・桃仁・延胡索・茴香・附子・甘草」
◎諸疝気を治す。
◎此方は瘀血に属する疝にて、疼痛攻注する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎「八味疝気剤」と表裏の方なり。八味の症にして陰位に属する者に用いる。
◎「通経導滞湯」の症にして陰位にある者に用いる。


止痛散[1]《医宗金鑑》
「川椒12g 苦参・赤芍・鉄綫透骨草各8g、防風・荊芥・当帰・丹参・艾葉・丹参・鶴虱・升麻各4g、甘草3.2g」を作末して布袋にいれ、袋の口を固くしばって、煎じて燻洗する。

止痛散[2]《医方考》《古今方彙》
「白朮、陳皮、青皮、山楂子、神麹、砂仁、麦芽」作末し白湯にて調下する。或いは煎じて服するも亦可なり。
◎小児の腹痛は多く是れ飲食に傷るる所なり。此方に宜し。
    ◎寒あれば:「+呉茱萸」
    ◎熱あれば:「+黄芩」

止麻消痰飲《寿世保元》《古今方彙》
「黄連、半夏、括楼仁、黄芩、茯苓、気胸、枳殻、陳皮、天麻、細辛、天南星、甘草、生姜」水煎。
◎口舌麻木し、涎及び嘴角、頭面も亦麻木し、或いは嘔吐痰涎、或いは頭眩、眼花、悪心し遍身麻木するを治す。
◎血虚には:「+当帰」
◎気虚には:「+人参」

使君子丸[1]《東醫寶鑑》
 「使君子(麺にくるんで煨る、殻を去)1両、訶子(皮半生半煨)・甘草(炙)各5銭、陳皮2銭半」作末し、芡実大の丸剤。毎回1丸を米飲で呑む。
◎冷疳を治す。

使君子丸[2]《医方集解》
「使君子・天南星・檳榔」
◎住血吸虫のため、腹が張り腹痛して、皮膚は黄色になって腫れ、茶米炭土などの異物を喜んで食べる。

使君子散《証治準縄》
「使君子10個(瓦上で炒る)、白蕪荑甘草(胆汁に一昼夜浸す)各0.4g、苦楝子5個(炮じて核を去る) ]以上を末にして、毎服4g清水で煎服。

使檳合剤《中薬臨床応用》
「使君子9g、檳榔子5g」水煎服。
◎児童の回虫駆除

視脹丸
 「商陸、赤小豆、陳皮、木香」


 磁朱丸
◎めまい





磁石羊腎丸《東醫寶鑑》
「磁石()3両と葱白・木通各3両を切って一昼夜水煎し、磁石を取って作末したもの2両、川芎・白朮・川椒・棗肉・防風・白茯苓・細辛・山薬・遠志・川烏・木香・当帰・鹿茸・兎絲子・黄蓍各1両、肉桂6銭半、熟地黄2両、石菖蒲1両半」作末し、羊腎の両対を酒で煮て酒糊で梧子大の丸剤。空腹時に温酒又は塩湯で50丸飲む。
◎諸般の耳聾。

至聖丸《東醫寶鑑》
「木香・厚朴・使君子・陳皮・肉豆蔲各2銭、丁香・丁香各1銭」
を作末し、神麹糊で麻子大の丸剤。米飲で7~15丸呑む。
◎冷疳を治す。

至聖来復丹《東醫寶鑑》
=「正一丹」
「硝石・硫黄各1両」を混ぜて細末にし、容器に入れ柳の枝でかき混ぜながら炒る。あまり炒りすぎると効果がなくなる。そしてもう一度粉砕したものを二気末という。太陰玄精石(粉末)1両、五霊脂(洗い日光で乾燥)・青皮・陳皮(去白)各2両を粉末する。以上を全部混ぜて醋麺糊で豌豆大の丸剤。米飲で30~50丸空腹時に服用。
◎中気・上気・気痛・気鬱に効く。
◎痼冷で心腹が冷痛し、臓腑が虚滑の症、霍乱・吐瀉と脈が細く切れようとするのを治し、
◎栄衛が養われず、心腎が昇降出来ず、上は実、下は虚して気はつまり、痰が厥逆するなどの、一切の危険な症を治す。


至宝三鞭丸【中成薬】
「海狗腎・広狗腎・鹿茸・海馬・蛤蚧・肉蓯蓉・菟絲子・杜仲・巴戟天・破故紙・肉桂・陽起石・覆盆子・沈香・茴香・淫羊藿・山椒、枸杞子・地黄・芍薬・何首烏、人参・黄蓍・白朮・山薬、当帰・山茱萸・桑螵蛸・竜骨・遠志・甘松香・菖蒲・牛膝・牡丹皮・沢瀉・茯苓・黄柏」
◎インポテンス(知的労働者の)・老化現象。

至宝丹[1-1]《和剤局方》
「生烏犀屑(研)、生玳瑁屑(研)、琥珀(研)、朱砂(研りて細かにして水飛す)、雄黄(研りて水飛す)各1両、龍脳(研)、麝香(研)各1分、牛黄(研)半両、安息香1両半(末と為し無灰酒を以て攪て澄まし飛過して砂石を濾し去り浄め数りて1両を約取して慢火に熬りて膏と成す)、銀箔(研)50片、金箔50片1半を衣と為す。
上の生犀、玳瑁を将て細末と為し、余薬を入れて研り匀え、安息香膏を将に重湯に煮て凝成して後に、諸薬の中に入れ和し捜(うご)かし剤と成し、不津器(酒の外面に浸出せざる器物)中に盛り、並に旋圓すること桐子の大の如くし、人参湯を用いて化し下すこと3圓より5圓に至る。又小児の諸癇、急驚心熱、卒中客忤、眠睡するを得ず、煩躁風延(無形の毒気によって起こるよだれ)搐搦を療す。毎2歳児は2圓を服す、人参湯にて化し下す。
◎卒中急風(脳溢血様疾患)にて語らず、中悪気絶、諸物の毒に中り、暗風(卒中風)、中熱(日射病)、疫毒(伝染性熱病)、陰陽の二毒、山嵐瘴気(深山幽谷の伝染性熱病)の毒、蠱毒(毒虫によって引き起こされた病気)、水毒(水分代謝障碍による病気)、産後の血暈、口鼻血出で、悪血心を攻め、煩躁し、気喘吐逆、     難産悶乱、死胎下らざるを療す。已上の諸疾は並(とも)に童子の小便一合、生     姜の自然汁3.5滴を用い、小便の内に入れ温め過ごし化し下す、三圓より五     圓に至りて神効あり。又心肺積熱、伏熱嘔吐、邪気心を攻め、大腸風秘、神魂     恍惚、頭目昏眩、眠睡安からず、唇口乾燥するを療し、傷寒狂語並に皆之を療     す。


至宝丹[1-2]《和剤局方》
「犀角・玳瑁・琥珀・朱砂・雄黄・梅片・麝香・牛黄・安息香・金箔・銀箔」
◎一切の悪気にあたる病で、仮死状態となった者。
◎小児の急なひきつけなど。



 至宝丹[1-3]《東醫寶鑑》
「犀角・朱砂・雄黄・琥珀・玳瑁各1両、牛黄5銭、竜脳・麝香各2銭半、銀箔・金箔各50片(半分はかぶせる)安息香酒で沙土を濾過してきれいなもの1両を熬膏と一緒に作末し、安息香膏に入れて1爾を和匀し、40丸に分作して人参湯で1丸づつ、1日2~3回化下する。
◎卒中風で急にしべられなくなり、人事不省。
◎風が臓に的中し、精神の昏冒する者を治す。

至宝丹[1-4]《和剤局方》【中成薬】
「麝香、犀角、牛黄、玳瑁、竜脳、朱砂、琥珀、雄黄、安息香、銀箔」
    ◎高熱時の意識障害
    ◎痙攣発作
    ◎脳卒中


実腸散[1]《東醫寶鑑》
 「厚朴・肉豆蔲(煨)・訶子皮・縮砂・蒼朮・茯苓各1銭、木香・炙甘草各5分、生姜3、大棗2」煎服。
◎大腸虚熱・腹痛を治す。

実腸散[2]《東醫寶鑑》
「厚朴(姜製)1銭半、肉豆蔲()・訶子(炮)・縮砂(研)・陳皮・蒼朮・赤茯苓各1銭、木香・甘草各5分、姜3片、棗2」水煎服。
    ◎虚冷下痢を治す。


実腸散[3]《東醫寶鑑》
「山薬(炒)1両、黄米(炒)1合」作末し、砂糖調熱湯で薬末を混ぜて飲む。
◎久痢。

実脾飲[1-1]《済世経験良方》
「白朮・茯苓・厚朴・大腹皮・草果仁・木香・木瓜・附子・炮姜・炙甘草」
◎食をいやがり、身重く・肢体浮腫し、口渇せず、大便は実せず、小便不利。

 実脾飲[1-2]《厳氏済生方》《中薬臨床応用》
「熟附子片9g、白朮12g、茯苓9g、厚朴・大腹皮・木瓜・乾姜各6g、草豆蔲・木香・甘草(炙)各3g」
    ◎寒湿の肝硬変で腹水


 実脾飲[2]《東醫寶鑑》
「蒼朮・白朮・厚朴・赤茯苓・猪苓・沢瀉・縮砂・香附子・枳殻・陳皮・大       腹皮・木香各7剉を作分1貼し、燈心1塊を入れ煎じ、滓は捨て、木香汁       で調合して飲む。
◎水腫が膨張する症を治す。


 実脾飲[3-1]《万病回春》《漢方治療の実際》
=「分消湯」
「分消湯の枳実を枳殻に代えたものであるが、枳実と枳殻は区別を要しない       ので、この2方は同じ者である。


 実脾飲[3-2]《万病回春》《古今方彙》
 「分消湯《鼓脹門》+枳実、-枳殻」
◎水腫の者は、宜しく脾を健かにし、湿を去り水を利すべし。
◎気急には:「紫蘇子葶藶子桑白皮、白朮」
◎発熱には:「山梔子黄連、香附子」
◎瀉には:「芍薬(炒)、枳殻」
◎小水通ぜざるには:「木通滑石。白朮」
◎飲食停滞するには:「山楂子神麹、白朮」
◎腰以上腫るるには:「藿香」
◎腰以下腫るるには:「牛膝黄柏、香附子」
◎胸腹腫脹し飽悶するには:「蘿葡子、白朮」
◎悪寒して手足厥冷し脉沈細には:「官桂(少許)」



実脾散[1-1]《東醫寶鑑》
      「厚朴・白朮・木瓜・草果・大腹子・附子(炮)・白茯苓各1銭、木香・乾姜       (炮)・甘草(炙)各5分」剉作1貼し「姜3、棗2」入れて水煎服。
    ◎陰水症で腫になったとき。

実脾散[1-2]《漢方治療の実際》
      「厚朴・白朮・木瓜・草果・大腹皮・茯苓各2、附子0.6、乾姜1、甘草1」



 失笑丸《東醫寶鑑》
=「枳実清痞丸」
「枳実・黄連各5銭、厚朴4銭、半夏麹・人参・白朮各3銭、乾生姜・         白茯苓・麦芽・甘草各2銭」作末し梧子大の丸剤。白湯で100丸、         空腹時に呑む。
    ◎心下が弱って痞となり、右関脈の遅い者。

失笑散[1-1]《和剤局方》
「五霊脂(炒)・蒲黄(炒)」
◎産後の悪露が止まず、心腹疼痛する者。

失笑散[1-2]《和剤局方》《中薬臨床応用》
      「蒲黄(炒)3g、蒲黄(生)3g、五霊脂(炒)6g」水酒各半量で煎じ、短時間沸騰       させて服用。
    ◎産後の悪露が止まず、心腹疼痛する血の者

 失笑散[1-3]《東醫寶鑑》
      「五霊脂・蒲黄(炒)」各等分に作末し、毎回2銭を醋に入れ、膏を作って水       1杯で煎服。
◎産後の児沈・臍腹痛を治す。

 失笑散[1-4]《婦人大全良方》《古今方彙》
      「五霊脂・蒲黄各1銭」醋水にて煎じ、一味五霊脂尤も治すこと妙なり。
    ◎産後悪血上攻し、心腹痛みを作し、或いは牙関緊急するを治す。
    ◎一婦、胞衣出でず、胸腹脹痛し、手敢えて近づけず、滾酒(コンシュ、わかした酒)     を用いて「失笑散」一剤を下して悪露、胞衣並びに下る。




 蒺藜消風散《中薬臨床応用》
 「白蒺藜・荊芥・何首烏・当帰各9g、防風・赤芍各6g、生地黄12g、蝉退       ・川芎・甘草各3g」
◎ジンマシン
    ◎神経性皮膚炎
    ◎風熱による皮膚瘙痒・皮疹。


 漆雄丸《東醫寶鑑》
      「漆(真生)1両」鍋に入れて熔化し、麻布で絞って滓は捨て、又、鍋に入れ       煎じて乾燥、雄黄1両を作末し醋糊で混ぜ梧子大の丸剤。毎回4丸を麦芽       を煎じた水で飲む。
    ◎水蠱を治す。

柿蒂湯[1-1]《厳氏済生方》
      「丁香・柿蔕各1両、生姜5片」
       右3味、一方、「人参」
◎咳逆を治す。
    ◎此方は後世逆(しゃっくり)の主方とす。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎「橘皮竹茹湯」とは寒熱の別あり。
    ◎《中蔵経》傷寒、咳逆し、汁を噎す。「丁香、乾柿蔕、甘草、良姜」作末し、     熱湯で猛点し、熱に乗じて服し、効ありと。按ずるに《易簡方論》《厳氏済生     方》は丁香、柿蔕二味にて逆を治す。《雑病翼方》

 柿蔕湯[1-2]《厳氏済生方》《漢方治療の実際「丁香1、柿蔕5、生姜4」
    

適応症及び病名(柿蔕湯)
[1]しゃっくり:(吃逆)
☆橘皮竹茹湯などを用いて効にない時に用いる《大塚敬節》
       

柿蔕湯[1-3]《易簡方論》
「柿蔕湯《厳氏済生方》半夏」


柿蒂湯《済世経験良方》


鴟頭丸《東醫寶鑑》
「鴟頭1枚、黄丹・皀角(酥炙)各5銭」作末し、糯米糊で緑豆大の丸剤。20 ~30丸温水で服用。
◎癲癇の悪症。
       鴟⇒シと読み、トビのこと。

芷貝散《東醫寶鑑》
      「白芷・貝母」等分に作末し、毎回1銭を酒で調服。
◎乳房の結核を治す。

指迷七気湯[1-1]《仁斎直指方》
=「大七気湯」《厳氏済生方》
 ◎七情相干し、陰陽升降し得ず、気道壅滞し、攻衝し、疼を作すを治す。

指迷七気湯[1-2]《漢方治療の実際》
「三稜・莪朮・青皮・陳皮・藿香・桔梗・桂枝・益智仁・香附子・甘草各1.5、生姜3」
◎この方は気滞がもとで、腹に積聚を生じ、気にしたがって上下すると云う処を目的にして用いる薬である。この症は女子婦人などに多くあるもので、とかく心労し、或いは思うことを成し遂げることが出来ず、積り積もって、ついにこの症となるものである。この症が起るときは、発熱、脈数の状があって、心下へ上衝して痛むこと甚だしく、ことの外悶乱するものである。しばらくして気が下降すれば少しおさまり、何か気に障ることがあると、たちまち発作が起こる。一昼夜に数十度にも及び、気につれて痛が差し引きをすると云うのが、こ     の方の効く目当てである。たいてい、常々も痛はあるけれど気に連れて痛に軽     重のあるは、皆この方の効く症である。その他一切気滞に属して痛む症は、塊     物の有無に拘わらず皆この方がよろしい。
婦人の気病で腹から胸へかけて痛み、或いは腹が張り、或いは大小便が不利     し、大便が快通したら、気持がよくなりそうだと思うような症で、軽いものは     正気天香湯がよく、重ければこの方を用いる。この症は大柴胡湯などで下した     ら治りそうに見えるけれども、大黄を用いると、反って腹痛がひどくなって悪     い。元来、この症は気が自然と塞るによって起こる痛だから、大黄はよくない。      またこの方は気痛に回虫をかねた腹痛にもよい。回虫もよく下る。総て男女     に拘わらず、良く効くけれども、婦人には特別にこの症が多い。《百々漢陰》

指迷七気湯の目:《大塚敬節》
*症状に消長が激しく、朝夕に症状の差が激しい。
*気分によって、忽ち症状が一転する。
*長期に渡って、愁訴に悩みながら、床につききりになることは少なく、危篤状態になったり、死んだりしない。
*絶えず胃腸障害を訴えているのに、比較的栄養も衰えない。
*冷え症が多い。
    

◎鑑別:(指迷七気湯)
★胸脇苦満を訴えているのに、柴胡剤で効の無い者に用いてみる。
★下腹部の抵抗を目標に、駆瘀血剤を与えて無効の者に用いてみる。
★大建中湯証に類似:腹痛が下腹部から突き上げてくると患者が訴え、下痢したり、便秘したりするが、下剤を用いると良くない者に用いる。
    

適応症及び病名(指迷七気湯)
[] 腹痛:
☆腹に塊があり、それが気分の動揺によって上下に動き、大小便ともに快通せず、服が脹って痛む者を治す《大塚敬節》

☆50歳女性。若いときから片頭痛のくせがあった。それに数年前から、時々激しい腹痛を訴えるようになり、医師は胆石による疝痛発作であると診断したという。また風邪を引きやすく、乗り物に酔うクセがある。便秘して、通じが毎日無い。
腹診してみると、右に胸脇苦満があり、左腹下部に圧痛を訴え、臍上で少し動悸を触れる。臍下は脱力して全く力がない。私は一応大柴胡湯を考えたが、何となく腹力が弱いので、柴胡桂枝湯を与えて、経過をみることした。ところが、これを飲むと大便は毎日あるようになったが、左の下腹部が便通のあるたびに痛んでどうも気持ちよくないという。それに腹痛は臍上から、みずおちに向かって、差し込むように痛むというので、試みに指迷七気湯を与えたみた。これを7日分飲むと、気分がとても良く、毎日気持ちの良い通じがあり、腹は全く痛まないと言う。しかも患者を驚かしたことは、他年治らなかった「帯下」がほとんど下りなくなったことである。患者は初診の時、私に帯下の下りることを云うのを忘れていたという。この婦人は婦人科の先生からトリコモナスによる帯下だと診断され、しばらく婦人科に通っていたが、良くならなかったという。《大塚敬節》


指迷茯苓丸《指迷方》
「半夏麹、乳拌茯苓、枳穀(麩炒)、風化硝」


 耳鳴丸【中成薬】
      「六味丸磁石・柴胡」


炙甘草湯[1-1]《傷寒論》
「甘草(炙)4両、生姜(切)3両、人参2両、生地黄1斤、桂枝(去皮)3両、阿膠2両、麦門冬(去心)半升、麻子仁半升、大棗(擘)30枚」
 ◎傷寒脉結代、心動悸、炙甘草湯主之。


炙甘草湯[1-2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「甘草4、生姜・桂枝・麻子仁・大棗・人参各3、地黄・麦門冬各6、阿膠3」


 炙甘草湯[1-3]《傷寒論》《中薬臨床応用》
=「復脈湯」
「甘草(炙)9g、党参9g、阿膠6g(溶解)、生姜9g、桂枝3g、麦門冬9g、麻子仁9g、生地黄15g、大棗10g」水煎服。
 ◎心血虚による不整脈、動悸

  


炙甘草湯[1-4]《傷寒論》《荒木正胤》
「甘草3.0、生姜1.5、桂枝3.5、麻子仁3.0、大棗3.0、人参3.0、地黄6.0、麦門冬6.0、阿膠2.0」
◎心臓部の甚だしい動悸を目標として、息切れ、脈の細数、または結滞、皮膚の枯燥、手足のほてり、便秘の傾向を副目標として、心臓病、末期肺結核、バセドウ病などに用います。
◎下痢するものには、麻子仁を除いて、芍薬4.5、乾生姜2.0を加えて用います。

 

 

 

炙甘草湯[1-5]《傷寒論》
    =「復脈湯」
◎病人、欬逆、上衝し、粘痰に血を帯び、舌上胎無くして乾燥し、心動悸し、或いは咽痛し、或いは脈結代し、或いは心下痞して嘔せんと欲し、或いは疲労する者は、炙甘草湯之を主どる。《医聖方格》

◎按ずるに、建中湯より化して潤剤と為るなり《雑病翼方》
◎按ずるに、滋液を主とし、兼ねて虚熱を制する者なり。《雑病翼方》

◎人参養栄湯や滋陰降下湯は此方より出たるなり《勿誤薬室方函口訣》
◎桂枝去芍薬湯+麦門冬・麻子仁・地黄・人参・阿膠

◎麦門冬~阿膠まで、すべて潤性で補性の薬物
 *「麦門冬」空咳を治す
 *「麻子仁」緩下作用
 *「地黄」 補血作用
 *「人参」 補気作用
 *「阿膠」 鎮静・止血作用

 

★炙甘草湯

(陽虚証、自汗盗汗、疲労<虚労>、呼吸促迫、動悸<腹部大動脈>、臍下不仁、腹部軟弱無力、手足煩熱、脈結代)

 


適応症及び病名(炙甘草湯)
[1]汗をかきやすい
[2]息切れ
[3]息苦しい
[4]黄疸:
☆《大塚敬節》
“患者は49歳の男子で、約1年ほど前から全身特に下肢に浮腫が現れ、疲れやすくなっていたが、それから半年ほどたって、耳鳴・めまい・息切れが起こったので、医師にかかって治療を受けていたが、前記の症状は軽快せず、2ヶ月ほど前から黄疸が現れ、食欲がなくなった。
初診は昭和13年3月24日、その時の症状は、以上の他に腹部膨満、手足の煩熱(煩熱は地黄を用いる目標)、ねむけ、口渇等で、大便は1日1行、小便は一昼夜に4、5行である。腹診するに、肝臓は肥大して、その左下縁は臍上3横指径ぐらいのところまで達している。脈は浮大、舌は紅くて苔はない
以上の経過や症状から、予後は不良に近いものと考えながら、炙甘草湯を与えたところ、不思議と思われるほどに症状が軽快し、息切れ・浮腫・めまい・耳鳴りは去り、黄疸は消え、食欲も出てきた。肝臓も眼に見えて縮小し、5月16日の診察ではふれなくなった”
[5]肩こり:
  ①陽虚証。
  ②自汗盗汗。
  ③疲労<虚労>。
  ④呼吸促迫。
  ⑤腹部大動脈で動悸を覚える。 
[6]癇症
[7]肝臓肥大
[8]冠不全
[9]期外収縮
【EBM】小児の期外収縮
(Evidence)
1件の多施設症例集積研究で、小児の上室期外収縮に対し炙甘草湯は有効率(やや有効以上)70%であった。心室期外収縮に対しては有効率62%だった。
[10]気の上衝<+>
[11]狭心症
[12]虚労
[13]血痰
[14]下痢するとき:-麻子仁芍薬4.5、乾生姜2.0《荒木正胤》
[15]交感神経緊張症
[16]高血圧症(本態性)
[17]甲状腺機能亢進症
☆甲状腺における甲状腺ホルモンの産生が過剰になる病気で、この病気にかかると、甲状腺が腫れ、心臓の鼓動が多くなって、脈拍数は100~150にも達し、ときに結滞し、臍部でも動悸を強く感じるようになる。また、手指がふるえるようになり、汗が出やすくなって、眼球は突出し、疲れやすく、また神経質になって、物事に感動しやすくなる。女性では月経が不順になる。食べても痩せる。
[18]口渇
[19]口唇の乾燥
[20]口内炎:
(虚弱者で飲食不能)
[21]声がれ:
☆動悸がひどくて、声がかれてものを言うことが出来ない者に、炙甘草湯で著効があった。《片倉鶴陵》
[22]呼気が熱い
[23]呼吸促迫:
☆此方能く血を滋養して脈路を潤流す。以て動悸を治するのみならず、人迎穴付近の血脈凝滞して気急促迫する者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
[24]臍下不仁
[25]産褥熱
[26]自汗
[27]歯根炎
[28]歯周炎
[29]失語症
[30]シェーグレン症候群
☆栄養衰え、口乾、皮膚が枯燥し、疲労しやすく、手足の煩熱などがあるものに用いる(漢方診療医典)
[30]心悸亢進:
☆心悸亢進ありて便通不整、脈濇なる証《奥田謙蔵》
☆心悸亢進あり、便秘して上逆し、脈拍時に結滞する証《奥田謙蔵》
☆神経性心悸亢進症。
☆炙甘草湯は陽証で虚証の者に用い、陽証で実証には桃核承気湯を用いる《湯本求真》
☆《傷寒論》ではチフスの回復期に、脈が結代して、動悸がするのは炙甘草湯の主治だといい、《金匱要略》には、《備急千金要方》を引用して、この方は1つに復脈湯ともいい、身体が疲労して体力が不足し、汗が出て、胸苦しく、脈が時々止まって、心臓で動悸を感ずるのを治する。このような患者は平常の様でも、100日もならないうちに危篤に陥ることがあり、急な場合11日位で死ぬこともあると述べている《大塚敬節》
☆目標は脈の結滞と心悸亢進であるが、結滞がなくても、心悸亢進があれば用いて良い。《大塚敬節》
☆バセドウ氏病や心臓病などで。心悸亢進と脈の結滞の有る者に用いている《大塚敬節》
[31]心下痞
[32]心臓神経症
[33]心臓弁膜症
☆ 動悸、息切れ、脈の結滞を目標として用いる。腹証上では、臍部で動悸の亢進がみられる。また高圧と手足の煩熱を訴えるものもある。貧血と皮膚の枯燥も、本方も用いる目標となる。下痢しているもの、下痢気味のものには用いない方がよい。(漢方診療医典)
[34]心内膜炎
[35]腎炎
[36]頭汗
[37]せき:
☆慢性気管支炎・肺気腫などで、息切れして、のどの奥が乾き、タンの切れにくい者。
☆あまり丈夫でなく、臍上で動悸を認める者。
[38]舌炎
[39]舌質<やや紅>
[40]舌苔<無苔><鏡面>
[41]譫妄
[42]タンパク尿
[43]腸チフス
[44]爪反裂
[45]手足煩熱
[46]動悸:<心尖部>
☆心尖・腹部大動脈の動悸亢進。
☆此方は心動悸を目的とす。凡そ心臓の血不足するときは、気管動揺して悸をなし、而して心臓の血動、血脈へ達すること能わず、時として間歇す。故に脈結代するなり。《勿誤薬室方函口訣》
☆人参養栄湯と治を同じくして、
①此方は外邪に因って津液枯稿し腹部動気ある者を主とし、
②養栄湯は、外邪の有無に拘わらず、気血衰弱、動気肉下に在る者を主とす。
☆肺結核で動悸や息切れを訴え、臍上で動悸の亢進している者に、柴胡桂枝乾姜湯を用いて、これらの症状が軽快する者が多い。この証に似て、動悸がことに激しく胸が揺らぐようだなどと言う者に炙甘草湯の証がある。肺結核で脈拍が1分間に120以上もある場合でも動悸を自覚しない場合には、うっかり炙甘草湯は用いられない。          細野史郎氏も炙甘草湯ではこの動悸を感ずるということが大切だといっている。《大塚敬節》
☆精神性の搏動、水分の偏在による搏動ではなく、新陳代謝の亢進による搏動である《矢野敏夫》
[47]糖尿病
[48]動脈硬化
☆本方は動悸の亢進と脈の結滞とを目標にして用いるが、血管滋潤を与えて、血流を調整する効があるので、冠動脈硬化のある者に適する(漢方診療医典)
[49]ネフローゼ
[50]寝汗(ねあせ)
[51]眠りが浅い
[52]ノイローゼ
[53]肺炎
[54]肺結核(末期)
☆肺結核、及びその類証にして、著しき熱発を伴はざる証《奥田謙蔵》
☆骨蒸労嗽、擡肩喘急し、多夢、不寝、自汗、盗汗し、痰中血絲あり寒熱交(コモゴモ)も発し、両頬紅赤にして、巨里の動甚だしく、悪心、潰潰として吐せんと欲する者は、此方に宜し《類聚方広義》 
    (擡=タイ、もたげる)
☆《秋山玄端》は肺痿の主方とする。:「桔梗」
[55]バセドウ病:
☆特に動悸がひどく、からだが揺れるようだという者がある。食欲は旺盛で、口渇があり、多尿・多汗があり熱感を訴え、ことに手足に煩熱のある者が多い。《大塚敬節》
☆顔色が浅黒い者が多い《大塚敬節》
☆38歳の女性。2、3年前より動悸を訴え、医師より脚気と診断され、脚気の手当を受けていたが良くならず、最近になって、甲状腺の肥大に気が付き、某大学病院の診察によりバセドウ氏病と診断せられた。主訴の動悸の他に頭痛・発汗過多・便秘があり、手術を勧められたが、手術をしたくないというので、私に治を乞うた。
患者は背が高く、ヤセ、顔を見ただけで、バセドウ氏病と分かるほど、眼球が突出して光っている。脈は1分間106、時々結滞するが、弦を帯びている。皮膚は油を塗った様に、湿って光り、臍部で動悸が亢進している。口が渇いてよくお茶を飲むと云う。食欲はる。私はこれに炙甘草湯を与えた。これを10日ほど飲むと、胸の動悸があまり気にならなくなり、便通が毎日あるようになった。
炙甘草湯には、麻子仁や地黄が入っているため、これで通じがつくことがある。その代わり下痢している人に用いると、便が出過ぎることがある。この患者は疲れなくなり、気分が良いと云う。しかし甲状腺はやや縮小した程度である。《大塚敬節》
☆男性のバセドウ病には、これで效がないものがあるが、女性では多くの場合奏功する。脈搏も落ち着き、甲状腺の腫れもとれ、眼球も正常になる。1年~3年は連用するのがよい。脈の結滞のない者にも使える(漢方診療医典)
[56]発声困難
[57]煩熱
[58]煩悶
[59]皮膚乾燥(皮膚枯燥)
[60]疲労倦怠感
[61]百日咳
[62]貧血
☆貧血があって脈が結滞して、動悸、息切れを訴えるもの(漢方診療医典)
[63]不安感
[64]不整脈:
☆49歳の男性。かねてから心臓弁膜症があったが、10ヶ月ほど前から浮腫が現れ、耳鳴とめまいを訴えるようになり、最近は心臓肥大し、動悸・息切れがひどくなった。それに疲れやすく、手足に煩熱の状があり、ときどき嘈雑もある。口は乾くが、食欲はない。下腹が張り気味で、大便は1日1行ある。脈は大にして、結滞する。
炙甘草湯八味丸を与える。これを飲み始めて24日目から、浮腫も耳鳴も、めまいもなくなり、肝臓も縮小し、動悸・息切れもになったが、その頃、右の坐骨神経痛が起こった。しかし引き続き前方を与え、通計79日で、自覚的な苦痛がなくなったので服薬を中止した。
この患者には浮腫と肝肥大と口乾を目標にして、木防已湯を用いることも考えたが、脈の結滞する者に木防已湯を与えて失敗したことがあるので、敬遠した。浮腫。手足の煩熱・疲労・口乾などは八味丸証のようである。動悸と脈の結滞は炙甘草湯証のようにもみえる、とにかく地黄を用いる証があると考え兼用した。《大塚敬節》
☆脈の結滞と頻脈を目標とする。腹診すると、臍上で動悸が亢進しているものが多い。発作性頻拍のほか、期外収縮、バセドウ病による頻脈などにも有効である(漢方診療医典)
[65]浮腫:
☆産婦人科医院に入院中の患者から往診を頼まれた。私は医師の徳義上、その病因の院長の許可を得た後でなければ往診しないと拒絶した。ところが、その翌日、院長の了解を得たから来てくれという。 その患者は38歳の婦人で、12日前にこの病院でお産をしたが、経過が思わしくなく、全身に高度の浮腫が現れ、息苦しく、昨夜は一睡も出来なかったという。それに体温は39℃を越し、口渇があって、水を少しずつ飲み続けている。患者は言葉を出すのも苦しい様だし、浮腫のため眼も開かない。舌は乳頭がとれて真っ赤になって乾燥している。こんな状態が4、5日も続き、次第に病状は良くないという。
私は結滞と動悸と舌の状態を考えて炙甘草湯を与えた。地黄を用いる証に、このような舌を呈する者がよくあるからである。この場合ちょっと気がかりになったのは、体温が39℃もあるという点であった。康平傷寒論によると“傷寒解して後、脈結代、心動悸するは炙甘草湯之を主る”とあって、傷寒の熱が下がってのちに、脈の結代と動悸とがある場合に、この方を用いることになっているからである。
ところが、これを飲むとその夕方から気分が良くなり、その夜はひどい発汗とともに、熱が下がりよく眠れた。胸の苦しみも楽になった。3日目に私が往診した時は、浮腫も大部分去り、眼を開けることが出来るようになって、たいへいん気分が良いという。しかし体温はまだ37.5℃あった。この日、院長に会った。「ジギタリスが効きましてね。たいへん良くなりました」というのが院長の挨拶であった。《大塚敬節》
[66]不眠
[67]腹部軟弱無力
68]扁桃炎(飲食不能、虚弱者)
[69]扁桃腫瘍
[70]便が硬い
[71]便秘(老人・虚弱者)
[72]房室ブロック
[73]頬が赤い
[74]慢性下痢
[74]耳鳴り
☆バセドウ病に発する耳鳴に用いることがある。心臓疾患で動悸、結滞のあるものに(漢方診療医典)
[75]脈:
☆結滞(脉結代)
☆脈濇、心悸し、皮膚枯燥し、腹部微急し、虚寒の候なき証《奥田謙蔵》
[76]よだれ[77]流感

    


沙参麦冬飲《温病条弁》
=「沙参麦門冬湯」
「沙参9g、麦門冬6g、玉竹9g、白扁豆(生)6g、桑葉6g、天花粉5g、甘草(生)3g」水煎服。
◎慢性の発熱、咳嗽=「地骨皮3g」
◎慢性の咳嗽(乾咳)
◎老人の慢性気管支炎(乾咳)
◎痰が少ない

 

沙草湯《中薬臨床応用》
「金沙藤30g、甘草梢6g」水煎服。
◎急性尿道炎の排尿痛。


謝道人大黄湯《外台秘要方》
「大黄6分、黄芩3分、芍薬7分、甘草6分、細辛6分」右6味。今茯苓、滑石、車前子を加え、特に効あり。
◎両眼痛を治す。
◎眼目腫れ、また痒痛し、或いは睛腫雲翳を生ずるを療す。
◎此方は天行赤眼、或いは睛腫雲翳を生じ、惞痛する者を治す。
◎数日癒えざる者は、方後の加減、効験あり。《勿誤薬室方函口訣》
[]ブドウ膜炎
☆眼目赤腫疼痛はなはだしく、角膜に雲翳を生ずるときに用いて良い。木通・車前子各2.0を加えるとさらによい(漢方診療医典)


赤小豆湯[1]《済世経験良方》
「赤小豆・当帰・芍薬・商陸・沢瀉・猪苓・連翹・沢漆・桑白皮」

赤小豆湯[2]《山脇東洋》
「赤小豆1合、商陸10分、麻黄・桂枝各9分、反鼻・連翹・大黄各5分、生姜1分」
◎諸瘡。内攻の腫。毒内攻し、気急息迫する者。
◎此方は「麻黄連軺赤小豆湯」と「赤小豆湯」《厳氏済生方》を斟酌して組立し方なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎諸内攻腫を治する捷なり。

赤小豆湯[3]《聖済総録》
「赤小豆・紫蘇葉・桑白皮」生姜水煎。
◎脚気気急、大小便渋通し、身腫・両脚気脹する者。


赤小豆湯《漢方治療の実際》
「赤小豆・当帰・商陸各4、沢瀉・連翹・芍薬・防已・猪苓・沢漆各2、桑白皮1.5」


赤小豆湯[4]《厳氏済生方》《東醫寶鑑》
「赤小豆・猪苓・桑白皮・防已・連翹・沢瀉・当帰・商陸・赤芍薬各1銭」剉作1貼し、姜5片入れ水煎服。
◎年少の人が気血ともに熱があって瘡疥が出、変じて腫満になった者を治す。
    ◎瘡疥が水腫に変じた症。
◎此方は諸瘡瘍より変じて水腫を成す者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎老人、小児、血気薄弱、瘡毒揮発する能わず、内壅して水気に変ずる者に宜し。
もし、血気壮実、毒気内攻して衝心せんと欲する者は、先ず「備急円」を与え、快下の後、 赤小豆湯[2]《山脇東洋》を用いるべし。此方と東洋とは虚実の弁あり。《勿誤薬室方函口訣》

赤石脂丸《漢方治療の実際》
    =「烏頭赤石脂丸」

赤石脂湯《外台秘要方》
「赤石脂・乾姜・附子」
    ◎傷寒、膿血を下す者。

赤石脂湯《華岡青洲方》
「補中益気湯赤石脂」
◎痔疾・蔵毒・脱肛。
◎此方は脱肛及び蔵毒下血に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
 「蔵毒」=先便後血は遠血なり。積久しくして発す。俗にこれを蔵毒という。 《雑病翼方》
◎後世、柴胡、升麻を升提するものとして用ゆれども、その実は、
<1>柴胡は肝経湿熱を解する故、下部の瘡に効あり。
<2>升麻は犀角の代用にする位にて、清粛止血の効あり。
◎此方も《李東垣》の理窟に拘泥せず、升麻、赤石脂にて下部を清粛し、当帰、黄蓍、白朮にて中気を扶助すれば、自然に下陥も防ぐものと心得べし。
◎本方は升麻を大にしないと効果を挙げ難い。《済世薬室》

赤石脂禹余粮湯《傷寒論》
「赤石脂(碎)1斤、太一禹余粮(碎)1斤」

赤石脂禹余粮湯《傷寒論》《中薬臨床応用》
「赤石脂15g、禹余粮15g」水煎し3回に分けて温服。
◎慢性赤痢、下痢
◎機能性子宮出血




赤茯苓散《太平聖恵方》
「大黄牡丹皮湯《金匱要略》赤茯苓」

赭石平肝湯《中薬臨床応用》
「代赭石30g(打砕先煎)、牛膝・竜骨・牡蠣各15g、玄参・白芍各12g、天門冬6g、白蒺藜15g、釣藤鈎24g」水煎服。
◎高血圧でふらつく、目がくらむ、手指がふるえる、煩躁、便秘する者。

鵲石散《本事方》
「甘草・黄連・石膏」
◎甘草黄連石膏湯《吉益東洞》に同じ。
◎傷寒発狂或いは衣を棄て奔走し、垣根をこえ屋に登る者を治す。


錫類散《金匱翼方》
「象牙屑(焙)・真珠・各1.2g、青黛(飛)2.4g、冰片0.12g、壁銭20個、牛黄・人指甲各0.2g]作末。


芍甘黄辛附湯《吉益南涯》
「芍薬甘草湯+大黄附子湯」
    ◎腹中及び手足攣急、偏痛する者を治す。
    ◎南涯の趣意は攣急に偏痛を兼ねたる者に広く用ゆるなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎疝毒より偏処へ流注する者に用いてしばしば効を奏す。《橘窓書影》



芍甘黄辛附湯《漢方治療の実際》
「芍薬・甘草各3、大黄1、細辛2、附子0.5」
◎「大黄附子湯+芍薬甘草湯」《大塚敬節》

 

★適応症及び病名 (芍甘黄辛附湯)
[1]座骨神経痛:
☆足の筋が突っ張るように痛み、大便の通じがあると楽になるというのを目標にする《大塚敬節》
☆浅田宗伯は、腰から腹にかけてひどく痛み、両脚が攣急して起きることも出来ず、夜も昼もうなり通していた者にこの方を与えて2、3日で全治せしめたという《大塚敬節》

[2]胆石の疝痛




芍薬黄連湯《東醫寶鑑》
「白芍・黄連・当帰各2銭半、甘草(炙)1銭、大黄5分、桂心2分半」煎服。
◎大便から出血し、腹痛する者。


芍薬甘草湯[1-1]《傷寒論》
「白芍・甘草(炙)各4両」
以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。


芍薬甘草湯[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「白芍薬12g、甘草12g」水煎服。
    ◎血虚による四肢の筋肉痙攣。
    ◎腓腹筋痙攣。



芍薬甘草湯[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》
      「芍薬・甘草各3」
◎拘攣急迫する者を治す。《吉益東洞》
    ◎此方は脚攣急を治するが主なれども、諸家腹痛及び脚気、両足或いは膝頭痛み     屈伸すべからざる者、その他諸急痛に運用す。《勿誤薬室方函口訣》
◎筋肉の緊張を緩める《大塚敬節》



★適応症及び病名(芍薬甘草湯)
[1]アキレス腱炎
[2]足がケイレン
[3]足がしびれる:
 ☆(ケイレンする、疼痛)
[4]足首の痛み
[5]足に力が入らない
[6]足の親指が痛む:
☆46歳男性。左の足の拇指に劇痛を訴え、その痛がちょうど刀か錐で刺すようで、患者の泣き叫ぶ声は辺りを揺るがすほどであった。しかし何人もの医者があらゆる手を尽くして治療にあたったが、効をみないので、私に診を乞うた。そこで先ず腹を診たところ、腹筋が強く攣急していたので、芍薬甘草湯を与えた。すると1服飲んだだけで、雪に湯を注いだように疼痛が消えて、それきり治ってしまった。(温知医談第32号)
[6]胃ケイレン
[7]胃痛
[8]イレウス
[9]ウイルソン病:=「肝レンズ核変性症」
☆筋の剛強・ケイレン・疼痛:「厚朴」《大塚敬節》
☆《大塚敬節》
“患者は10歳の少年で、1954年8月に発熱し、医師の診察を受けたところ、脾臓が腫れていると言われた。そのとき肝臓の機能障害があり、慢性肝炎と診断された。ところが1955年の7月頃より次第に手足が強直するようになったので、某大学の小児科に入院し、ここでウイルソン氏病と診断せられ、同年12月に退院した。この間病気は少しずつ増悪し、1956年の3月には歩行は全く不能となり言葉を発することも出来なくなった。同年7月には、筋の強直ケイレンがひどく、両脚が腹にふれるほどにひきつけ身體が円く固まって手足は伸びなくなった。そしてこの状態は現在も続いている。なお脾臓は依然として肥大し、左右の腹直筋は棒状になって硬い。
患者は少しの刺激でも、強い筋のケイレンを起こし、はげしい疼痛を訴えるので、そのため安眠が出来ない。そこで1日おきに鎮痛剤 注射をしている。
以上は患者の母親の語るところで、この病状で投薬してくれという。そこで、同年10月15日に、芍薬甘草湯厚朴を与える。芍薬3.0、 甘草1.5、厚朴2.5を1日量とする。これを15日分服用した時の症状は、次の通りである。
①刺激を与えても、強い筋のケイレンが起こらなくなった。
②鎮痛剤の注射が不要になった。
③大小便の量が増した。
④大変おとなしくなって、よく眠れるようになった11月4日。芍薬3.0、甘草2.0、厚朴4.0を1日量とし、20日分与える。
11月24日。母親がこの患者を背負って来院した。いままでは、背負うと疼痛が強くて、背負うことが出来なかった。筋肉のケイレンは、 夜間2回くらいに減じ、尿量はますます多くなり、食が進み、よく眠る。この頃から右側につれて、口外に出すことの出来なかった舌を外に出すことが出来るようになった。この日芍薬5.0、甘草3.0、厚朴4.0を1日量として与えた。
ところが、その後、この患者の消息は不明である。しかし芍薬甘草湯厚朴が何の副作用も伴わずに、筋の剛強、ケイレン、疼痛を緩解せしめて、一般状態を好転せしめるに役立ったと思われる。”
[10]嘔逆
[11]かかとの痛み:(跟痛)

☆「雲州の醫生、求馬は、年二十ばかり。一日、忽ち跟痛を苦しむ。錐刺の如く、刀刮の如く、觸れ近づくべからず。衆醫、能く方を處するものなし。一瘍醫有りて以為(おもえらく)「まさに膿あるべし」と。刀を以て之を劈くも亦効なし。是において、《吉益東洞》先生を迎えて之を診す。腹皮攣急之を按じて弛(ゆる)まず。芍薬甘草湯を為りて之を服せしむ、一服にして痛み已む。」《建珠録》
[12]下肢のケイレン
[13]下肢の無力症
[14]肩こり
①ケイレンする
②突っ張ったように凝る。
[15]嵌頓ヘルニヤ
[16]気管支喘息
[17]脚気:
☆脚を浸して以て脚気の攣痛を治す:「礬石」《温知医談》
[18]脚弱
[19]脚攣急:
☆某、左脚腫痛、攣急屈伸し難く、数ヶ月癒えず、医多く持って風湿とす。余診して曰く、熱無く、病ひとえに筋脈にあり。恐らくは疝毒より流注するものなり。:「大黄附子湯」を服せしめ、「当帰蒸、荷葉、礬石」を以て熨剤とす。《橘窓書影》
[20]客忤(きゃくご)
[21]急性腹症
[22]筋肉痛
☆腹直筋の攣急がなくて、手足の筋肉だけが攣急していることがある    《大塚敬節》
☆関節痛や筋肉痛で、筋の緊張を伴う者に用いられる。鎮痛作用増強のために附子を加えて用いると良い(漢方診療医典)
[23]筋肉リウマチ
[24]筋肉攣縮:
  ☆《大塚敬節》
“1女子、28歳。激しい勤労の後、左脚がひきつれて歩行が困難になった。腹診するに腹直筋も突っ張っている。よって芍薬甘草湯を与えたところ1服で効があり。3日分で全治した。”
  ☆《積山遺言》
 “1小児生まれて3月はなり、左の足が屈したきりで伸びない、その母が強いて之を伸ばそうとすると痛むらしく、ひどく泣きわめく、そこでこれに芍薬甘草湯を与えたところ、4、5貼で、足が自由に屈伸するようになった。”
[25]筋膜性腰痛
[26]ケイレン(平滑筋・骨格筋)
☆ある人力車夫が空腹をこらえて、強いて遠隔地まで走り、家に帰ると同時に倒れて、それきり歩けなくなり、脚がケイレンを起こしてその苦しみは堪えられないという。そこで友人の藪井修庵が芍薬甘草湯を与えたところ、即効を得た。(温知医談第32号)
[27]ケイレン性咳嗽
[28]ケイレン性便秘
[29]こむら返り(腓腸筋ケイレン)
[30]臍腹痛:
☆激しい腹痛発作に頓服として用いる。その目標は腹直筋の拘急にあり、疼痛が手、足にまで及んで、ひきつれる者《大塚敬節》
[31]座骨神経痛
[32]子癇:
☆「乾姜・童便」《先哲医話》
[33]消化管のケイレン性疼痛
[34]小児の嘔吐:
☆胃弱による嘔吐(哺露):「羚羊角紫円」《方読便覧》
[35]小児の客忤
[36]小児の感冒
[37]小児の腹痛
☆小児の中悪(=突然の激しい刺痛)
☆小児の腹痛諸証《奥田謙蔵》
[38]小児の夜泣き:
☆小児、夜啼止まず、腹中攣急甚だしき者も、亦奇効有り《類聚方広義》
☆乳児の夜泣きに用いて、まことに著効のあるもので、服薬したその日から夜泣きの止むことが多い。これを用いて効のない時は、甘麦大棗湯、抑肝散などを用いる《大塚敬節》
[39]食道ケイレン
[40]膵臓炎
[41]舌硬直
[42]喘息
[43]胆石の発作・疼痛
[44]腸疝痛:
[45]腸閉塞症
[46]尿閉
[47]寝違い
[48]パーキンソン病:
☆「+小承気湯」《大塚敬節》
☆《大塚敬節》
“1957年7月30日初診。57歳の農夫。
病歴、患者は生来著患にかかったことなく、元気であったが、約半年ほど前から、めまい・頭痛・不眠・手足のシビレ・肩こりが起こり次第に手が硬くなり、力が入らなくなったので、某国立大学の付属病院で診察を受け、神経症との診断を受けた。ところがその後、歩行困難・手のふるえが起こり、字が書けなくなり、靴のひもも結べなくなったので、上京して、某国立大学の付属病院の神経科で、診察を受け、パーキンソン病と診断さられたが、特別の手当は受けなかった。
現症、栄養は中等度で、骨格のよい男子で、息子に助けられて診察室に入ってきたが、その歩行の格好や全身の姿勢から、一見してパーキンソン氏症候群の印象を与えるほど定型的な外観を呈していた。両手には絶えず振顫があり、手の指は強ばって握ることが出来ない。自分の手でシャツのボタンを外すことが出来ない。項部の筋肉は強ばって動かし難い。脈は浮大で血圧130-86、大便は秘結する。
診断。パーキンソン病。治療は小承気湯を20日分与える。ただしその分量は1日量、厚朴12.0、枳実3.0、大黄1.5。
経過。20日分を服用し終わった時、振顫は著しく減じ、手の指が少し曲がるようになった。そこで、次の20日分は厚朴14.0、枳実3.0、大黄2.5を1日量とした。この20日分を服用し終わった時、患者は1人で来院したが、その時は口のヒモも、自分で解いたり、結んだり出来るし、振顫も左手に少し残っている程度になった。しかし握力は十分に発揮出来ず、力一杯に握れない。この日は前方に更に、芍薬4.0、甘草2.0を加えて、20日分を与える。則ち小承気湯芍薬甘草湯である。これを飲み終わって来院した患者は、先日の薬で大変よく眠れるようになり、便通がとても気持ちよく出るようになったという。しかし左手の振顫とシビレがまだ少しある。けれども鎌を握ってイネを刈ることが出来たと喜ぶ。
1957年の3月には振顫は全くなく、ペンで自分の住所姓名をかくことが出来た。この日の筆跡を発病間もない頃の筆跡に比べると、それよりもよく書けている”
[49]梅毒:
☆黴毒諸薬を服して羸劣、骨節仍痛、攻下すべからざる者を治す:
「茯神」or「虎脛骨」
[50]ひきつけ:
☆驚癇の勁急を治す:「釣藤鈎・羚羊角」《勿誤薬室方函口訣》
[51]腹痛:
☆子宮内膜炎性腹痛等には、証により膠飴を加味す。《奥田謙蔵》
☆腹痛を止めること神の如し。《医学心悟》
①脈遅を寒と為す:「+干姜」
②脈洪を熱と為す:「+黄連」
☆腹直筋の攣急を目標にして、急迫性の激しい腹痛に用いる。その際、疼痛の手足にまで及ぶことがある。又、腹痛を訴えずに、手or足にだけ疼痛が来ることがある。《大塚敬節》
[52]腹直筋の攣急:
☆腹中攣急して痛む者を治す。《類聚方広義》
[53]平滑筋のケイレン性疼痛
[54]便秘:
☆60歳の女性。数年前虫垂炎の手術を受けてから、頑固な便秘を訴えるようになり、医師は手術のあとに癒着が起こったからだと診断して、また手術をした。ところが、その後も便秘は治らず、放置しておけば7日も10日も大便が通ぜず、苦しいので、下剤をかけると猛烈な腹痛が起こり、そのために痙攣を起こしてひきつけることもある。浣腸をしても、腹痛を起こして苦しむという。下剤をかけると死ぬほど苦しいが、それかといって、下剤をかけないと、腹が張って苦しく、食事がとれず、これまた苦しいという。
私はこれに桂枝加芍薬大黄湯を与え、大黄の量を1日0.5とし、これで効がなければ、0.2宛増量することにし、もしこれを呑んで、ひどい腹痛が起こった時には芍薬甘草湯の頓服を用いるよう指示した。ところが、この患者は大黄0.5で便通があり、日によっては、かなり強い腹痛を訴えたが、そのたびに芍薬甘草湯の頓服を用いると、そのまま収まるようになった。そこで患者は安心して、1年あまり、これを飲んでいるうちに、大黄は0.5から0.3と減じ、ついに大黄なしに便通がつくようになり、全快してしまった。
下剤を用いて、下したところ、かえって腹痛がひどくなり足が冷えて冷汗が出て悪寒を伴うようになる者がある。これは誤って虚証 を下したためであるから、芍薬甘草附子湯を用いるがよい。もし悪寒と足冷がなければ芍薬甘草湯でよい。《大塚敬節》
[55]放屁の癖
[56]慢性関節リウマチ
[57]夜驚症
☆夜泣きで腹が痛むのではないかと思うほど泣くものによい。1服で泣き止んで眠ること不思議である(漢方診療医典)
[57]腰痛:
☆筋膜性腰痛。
☆腰背膝脚拘急し、或いは微痛し、或いは歩行し難き等の証《奥田謙蔵》



芍薬甘草附子湯[1-1]《傷寒論》
「芍薬・甘草(炙)各3両、附子1枚(炮去皮破8片)」
◎発汗病不解、反悪寒者、虚故也。芍薬甘草附子湯主之。


芍薬甘草附子湯[1-2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「芍薬4、甘草3、附子0.5」
◎芍薬甘草湯証にして悪寒する者を治す《吉益東洞》
◎其の条に特に悪寒の証を挙ぐ、此れ附子の主る所なり、為則按ずるに其の芍薬を用うる者は拘攣を治するを以てなり。其の甘草を用うる者は毒の急迫を治するを以てなり、然らば則ち拘攣急迫して悪寒する者は此湯之を主る。《重校薬徴》
◎陰病、悪寒して攣急する者は、芍薬甘草附子湯之を主どる《医聖方格》
◎此方は発汗後の悪寒を治するものならず、芍薬甘草湯の症にして陰位に属する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》




★適応症及び病名(芍薬甘草附子湯)
[1]胃ケイレン
[2]ウツ病:
☆大炊相公(宮中の主厨長官)の臣、田太夫は、憂慮過多、久しくして熱鬱を生ず。四肢重惰。志気錯越して居常安からず。灸刺、諸薬、並べて效なし。
《吉益東洞》先生之を診す。芍薬甘草附子湯をつくりて之を飲むこと数十日、更に又、七寶丸をつくりて之を服す。此の如きもの凡六次。       而して全く常に復す。《建珠録》
[3]悪寒:
☆発熱なく、ただ悪寒を覚え、腹痛し、汗出でて心煩する証《奥田謙蔵》
[4]鶴膝風:
☆鶴膝風で手足を綿で包むほどに冷える者に、これ方に伯州散を兼用する《百疢一貫》
 [5]脚気:
☆初め湿脚気(浮腫のある脚気)にかかり、薬を飲んで水気がとれて後、乾脚気となり、両脚が萎縮して力を入れることが出来ず、膝はひきつれて伸ばすことが出来なくなり、諸薬を用いて効のない者には芍薬甘草附子湯を与えて、日光に浴せしむるときは必ず治るものである《内科秘録》
[6]筋肉攣縮:
☆霍乱、転筋を治す《方読便覧》
[7]さむけ(寒気)がする:
☆発汗の後、身体倦怠し、手足に寒冷を覚え、脈微弱なる証《奥田謙蔵》
[8]座骨神経痛:
☆座骨神経痛、及びその類証《奥田謙蔵》
[9]疝:
☆此方に大黄を加えて、芍薬甘草附子大黄湯と名く。寒疝、腹中拘急し、悪寒甚だしく、腰脚攣痛し、睾丸蹋腫し、二便通ぜざる者を治す。奇効あり。《類聚方広義》
[10]胆石症
[11]虫積:
☆虫積の痛を治す:「-附子+草烏」
[12]腸疝痛
[13]痛風:
☆風湿、百節疼痛し、屈伸すべからず、痛む時、汗出ずるを療す:「+川芎」
[14]寝違い
[15]冷える:
☆下部の冷え:
①専ら腰にかかる⇒「苓姜朮甘湯」
②専ら脚にかかる⇒「芍薬甘草附子湯」
*足冷頭痛⇒「半夏白朮天麻湯」
*足冷喘息⇒「紫蘇子湯」
*足冷頭痛・耳鳴⇒「大三五七散」
☆湿毒の後、足大いに冷える者に効あり。餘毒あれば「+伯州散」
[16]疲労:
☆汗出でて、疲労し、腹筋攣急し、或いは痛み、脈微にして沈なる証《奥田謙蔵》
[17]腹痛
[18]麻痺



芍薬散《東醫寶鑑》
「香附子4両を醋2升・塩1両と同時に煮て、乾燥させ肉桂・延胡索(炒)・白芍(酒炒)各1両を作末し、毎回2銭を沸騰湯で調服。
◎婦人に冷え症・脇痛で諸薬無効のとき。

芍薬湯[1-1]《素問病機気宣保命集》《中薬臨床応用》
「白芍薬18g、黄芩9g、黄連5g、大黄6g(後下)、木香6g(後下)、檳榔子6g、当帰9g、肉桂1.5g(服)、甘草12g」水煎服。
◎赤痢の腹痛
◎裏急後重


芍薬湯[1-2]《証治準縄》
「白芍80g(炒)、黄芩(炒)・当帰尾・黄連(炒)20g、大黄・木香・檳榔・甘草(炙)各12g、官桂10g」

 

芍薬湯[1-3]《保命集》
「白芍薬1両、当帰・黄芩・黄連各半両、大黄・甘草(炙)・木香・檳榔各3匁、肉桂1匁半」
「黄芩加半夏湯+木香・檳榔・大黄・黄連・当帰・官桂」
◎下痢・膿血・裏急後重・灼熱感。
◎下利、膿血、裏急後重、腹痛、渇をなし、日夜度無きを治す

芍薬湯[1-4]《東醫寶鑑》
「白芍薬2銭、黄連・条芩・当帰尾各1銭、大黄7分、木香・檳榔・桂心・甘草各5分」水煎服。
◎痢疾で小便が渋く、膿血を下す。


芍薬湯[1-5]《万病回春》《古今方彙》
「芍薬・黄芩・黄連・各2銭、甘草・木香・当帰・枳殻・檳榔子各1銭」水煎。
◎虚弱の人の痢疾初起。

 

芍薬湯[1-6]《漢方治療の実際》
「芍薬4、黄芩・当帰・黄連各2、甘草・木香・枳実・大黄各2、檳榔4」

★適応症及び病名(芍薬湯)
[1]下痢:
☆裏急後重が強くて、下剤を必要とする者に用いる。《大塚敬節》
☆大柴胡湯の時よりも心下痞硬が軽く、腹痛が強い者に良い。《大塚敬節》
[2]赤痢
[3]大腸炎
☆桂枝加芍薬大黄湯証にて、腹部の膨満感が強くて、口渇があり、食欲が無く、熱も高く、粘血便が出るものに用いる。赤痢様の下痢によい(漢方診療医典)




芍薬湯[2]《万病回春》《東醫寶鑑》
「赤芍薬・梔子・黄連・石膏・連翹・薄荷各1銭、甘草5分」水煎服。
◎脾火がおき、口唇に瘡が出来、又沢山食べてもお腹が空く者。

芍薬柏皮丸《東醫寶鑑》
「白芍・黄柏皮各1両、当帰・黄連各5銭」を作末し、水で小豆大の丸剤。温水で30~40丸呑む。
◎湿熱悪痢で膿血を治す。


麝桂保珍膏
「保珍膏麝香」


麝香丸《東醫寶鑑》
「蛇床子・亀骨各3両、石灰木・白芷各2銭半、零陵香・藿香各2銭、丁香・小脳各1銭半、麝香2分半」作末し、蜜丸で1両を30丸に作る。毎回1丸を綿でくるんで陰中に入れる。
◎婦人の陰中が長い間冷え、子が無く。又白帯がおりるとき。

麝香元《東醫寶鑑》
「川烏(大)3個、全蝎21個、地竜(生)5銭、黒豆(生)2銭半、麝香1字」作末し、糯米糊で緑豆大の丸剤。空腹時に温酒で7~10丸を調下。
 汗をかけばすぐ治る。
◎白虎歴節風で疼痛し、遊走して定処がなく、虫が歩くようで、昼は静かだが、夜激しくなる者。


麝香散《東醫寶鑑》
「白礬・白竜骨各3銭、麝香1分半」細末にし、冷水で鼻孔を洗った後、少しずつ注ぎ入れる。又柔らかい湿紙に薬をひたして鼻孔をふさいでおく。
◎衂血がとまらない者。


瀉胃湯[1]《医学入門》《東醫寶鑑》
「大黄2銭半、葛根1銭、桔梗・前胡・杏仁各5分、生姜3片」水煎服。
◎胃熱により、口唇が乾燥して割れ、便秘し(胃熱で口唇が乾き裂かれ、便秘する)、煩渇し、睡りて口涎を流すを治す。《古今方彙》
    

★適応症及び病名 (瀉胃湯)
[]よだれ:
☆熱性のよだれに用いる《大塚敬節》
☆此方は眠っている間に、口によだれを流すと云うのが目的である。1婦人があった。眠るごとによだれを流して止まない。数人の医者に治を乞うたが治らないという。診察してみるに、便秘して、唇が乾燥して裂けている。そこで胃熱によるものと診断して、この方を用いたところ忽ち治った《百々漢陰》


瀉胃湯[2]《万病回春》《東醫寶鑑》
「当帰・川芎・赤芍・生地黄・黄連・山梔子・牡丹皮・防風・荊芥・薄荷・甘草各1銭」水煎し、食遠に頻りに服用。
◎牙痛を治す。

瀉陰火升陽湯《古今方彙》
「羗活・甘草(炙)・黄蓍・蒼朮各1分、升麻8分、柴胡1銭半、人参・黄芩各7分、黄連(酒)・石膏(秋冬は使わない)各5分」水煎温服。
◎肌熱、頭熱、面赤く食少なく、喘咳痰盛、右の関上の脉は緩弱、或いは弦、或いは浮にして数なるを治す。

瀉黄飲子《東醫寶鑑》
「升麻・白芷・枳穀・黄芩・防風・半夏・石斛各1銭、甘草5分、姜5片」水煎服。
◎風熱が脾経にたまって、唇が乾き、裂けて汁が出る者。


瀉黄散[1-1]《万病回春》《古今方彙》
「藿香7分、山梔子1銭、石膏5分、防風4分、甘草7分半」水煎し頻々と服す。
◎小児の木舌(舌炎)ならびに弄舌(舌肥大症)を治す。

瀉黄散[1-2](一名瀉脾散)《東醫寶鑑》
「山梔子1銭半、藿香・甘草各1銭、石膏末8分、防風6分」切って蜜で少し炒って、水煎服。
    ◎脾熱・口瘡・口臭を治す。

瀉黄散[1-3]《銭乙方》
「藿香・山梔子・生石膏・生甘草・防風・竹葉」
◎口乾き、唇かわき、口瘡・口臭ある者。
◎小児は舌をもてあそぶ。

瀉黄散[1-4]《小児薬証直訣》
「甘草(生)90g、防風120g、石膏15g、山梔子3g、藿香21g」蜜と酒で香りがでるまで炒り、細末にし十分混ぜ合わせ、毎回3~6gを水で服用。
◎胃熱のための口内炎


瀉火清肺湯《東醫寶鑑》
「黄芩1銭、山梔子・枳実・桑白皮・杏仁・陳皮・赤茯苓・紫蘇子・麦門冬・貝母各8分、沈香・朱砂(水飛)各5分」剉作1貼し、水煎し朱砂末・竹瀝を入れて調服。
◎火喘を治す。

瀉火補腎丸【中成薬】
「六味丸+知母+黄柏」
◎疲れると顔や手足がほてる人の足腰の無力感・口渇・頻尿。

瀉肝散[1]《銀海精微》            「黒参・大黄・黄芩・知母・桔梗・車前子・羗活・竜胆草・当帰・芒硝」各等分に作末して、煎服。

瀉肝散[2]《東醫寶鑑》
「大黄・甘草各5銭、郁李仁・荊芥穂各2銭半」空腹時に水煎服。
◎烏風の昏暗を治す。

瀉肝散[3]《済世全書》《古今方彙》
「羗活、当帰、山梔子、竜胆、川芎、防風、大黄」水煎。
◎経水断たざるの時適々出痘い逢い、身に壮熱を発し、榛子昏沈、言語狂妄、鬼神を見るが如く衣を尋ね空を撮(つか)む。これ経の行りたるの後に血室空虚となり、天行邪熱が虚に乗じて入りたるなり。此湯に宜し。


瀉血湯[1]《東醫寶鑑》
「生地黄(酒洗)・柴胡各1銭、熟地黄・蒲黄・丹参・当帰(酒洗)・防已(酒洗)・羗活・甘草(炙)各7分、桃仁(泥)3分」水煎服。
◎夜間の発熱を治す。

瀉湿湯《東醫寶鑑》
「白朮(炒)3銭、白芍(炒)2銭、陳皮(炒)1銭半、防風1銭、升麻5分」水煎服。
◎洞泄を治す。

瀉心湯[1]《備急千金要方》
「半夏瀉心湯-大棗橘皮・瓜婁根」
◎卒に大下痢・唇乾・口渇・嘔逆・引飲する者を治す。
◎此方は半夏瀉心湯の症にして、唇乾、口燥、嘔逆、引飲と云うが目的なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎下痢の中に噦逆を発する者に用いて効あり。
    

瀉心湯[2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
=「三黄瀉心湯」参照
「大黄・黄連・黄芩」

瀉心湯[3]《東醫寶鑑》
「黄連」細末にして、2分~1銭を温水で服用。


瀉心導赤散[1-1]《寿世保元》《古今方彙》
「山梔子、黄芩、麦門冬、滑石、人参、犀角、知母、茯苓、黄連(姜汁炒)、甘草、生姜、大棗、燈心草」水煎。服するに臨み新生地黄汁を入れ同服す。
◎傷寒にて心下痛まず、腹中満せず、大便常の如く、身に寒熱無く、漸く変じて神昏(意識が昏迷したはっきりしない)して語らず、或いは夢中独語、一二旬して目赤く、神焦がれ、水を将げて之に与うれば則ち嚥み、与えざれば則ち思わず、形、酔人の如く、医者を識らず、便ち呼びて死症と為るを治す。
◎針灸を以て人を誤まること多し。殊に熱邪が少陰心経に伝入するを知らざるなり。因って火上り、肺に逼(せま)り神昏する所以なり。故に越経症と名づく。



瀉心導赤散[1-2]《寿世保元》
「山梔子・黄芩・麦門冬・知母・黄連・滑石・人参・犀角・茯苓・甘草・地黄」
(一名:「導赤各半湯」《傷寒六書》)

◎傷寒、心下痛まず、腹中満せず、大便常の如く、身寒熱なく、漸く変じて神昏不語、或いは夢中独語一二句、目赤神焦、水をもって之に与うれば則ち嚥し、与えざれば則ち思わず、形酔人の如し。医者は識らず、便ち呼んで死証と為す。もし針灸を以てすれば人を誤る事多し。殊に熱邪、伝えて少陰心経に入るを知らざるなり。火上るに因って肺にせまり、神昏する所以なり、故に越経証と名づく。
◎此方は瀉心湯・黄連解毒湯の変方にして、黄連解毒湯よりは一等熱勢甚だしく精神昏乱すれども、承気湯の如く胃中に邪毒ありて発する熱には非ず。《勿誤薬室方函口訣》
◎後世のいわゆる心包絡、肝胆経などに怫鬱して煩悶する症を治す。
◎「升陽散火湯」と類似の症なれど、升陽散火湯は柴胡湯の位にてややもすれば陰分に陥らんとするの機あり。故に附子を加ふることあり。「瀉心導赤散」はその機無く、ただ体中に偏満したる熱甚だしく、精神之が為に昏憒する者に用いる。 (憒=カイ、心が乱れる)
◎総て虚症の時疫、困睡する症に此方の行く処あり。
◎「人参養栄湯」「陶氏升陽散火湯」の症に比すれば、熱強き者なり。
◎「竹茹温胆湯」の症と紛れ易いけれども、彼は心驚、恍惚、煩熱、不眠を主とし、此方は神昏、不語、或いは夢中独語、形如酔人と云う目的なり。
◎方後の如く生汁を点入するときは特効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎按ずるに、導赤各半湯は「梔子豉湯」「黄連解毒湯」の意にもとづき、而して能く上焦の心包絡の熱を解す。古人称して越経症と為すは是と為す。余毎に、柴胡加竜骨牡蛎湯の証にして虚候ある者に会いて、此方を用ひる。《高階枳園》
◎口内炎

瀉腎湯《東醫寶鑑》
「大黄2銭切って水侵1夜、磁石(砕)1銭6分、石菖蒲・生地黄各1銭、玄参8分、芒硝・赤茯苓・黄芩各6分、甘草4分」水2杯が1杯半になるまで煎じ、大黄を入れて又7分まで煎じて滓を去り、芒硝を入れてかき混ぜ、空腹時に服用。
◎淋で小腹が脹る。

瀉青丸《銭乙方》《東醫寶鑑》
「当帰・草竜胆・川芎・山梔子・大黄(煨)・羗活・防風」各等分。
作末し芡実大に蜜丸。毎回1丸を竹葉湯と糖温水に混ぜて飲む。
◎肝の慢性疾患を治す。

瀉肺湯《儒門事親》《雑病翼方》
「葶藶3両、桑白皮」
「葶藶大棗瀉肺湯-棗+桑白皮」
◎肺癰、喘急して坐臥不安を治す。

瀉白安胃飲《東醫寶鑑》
「蒼朮(炒)・白芍(酒沙)・蓮肉各1銭、白朮7分半、人参・陳皮・白茯苓・ 黄蓍(蜜炒)・当帰(酒洗)各5分、木香・乾姜(炮)・炙甘草各3分」水煎服。
◎白痢を治す。

瀉白散[1]《証治準縄》《方読便解》
「桑白皮・瓜蔞・当帰・貝母・紫菀・桔梗・地骨皮・甘草・生姜」
◎肺癰

瀉白散[2-1]《銭乙方》《小児薬証直訣》
「桑白皮12g、地骨皮9g、生甘草3g、粳米6g」水煎。
◎皮膚蒸熱し、午後4時頃もっともひどく喘嗽し、息がつまる。
◎咳嗽、口乾、黄痰、痰に血が混じる、舌質紅、舌苔黄、脈細数、午後の発熱。《中薬臨床応用》

 

瀉白散[2-2]《万病回春》《古今方彙》
「桑白皮・地骨皮各2銭、甘草1銭、粳米」水煎。
◎肺熱にて口辣(から)きを治す。

瀉白散[3](一名瀉肺散)《東醫寶鑑》
「桑白皮・地骨皮各2銭、甘草1銭」水煎服。又、知母・貝母・桔梗・山梔子・麦門冬・生地黄を加えても良い。
◎肺実を治す。

 

瀉白散[4]《東醫寶鑑》
「桑白皮2銭、桔梗1銭半、地骨皮・炙甘草各1銭、黄芩・麦門冬各5分、五味子15粒、知母7分」を1日2回水煎服。
  酒麺・辛い物・熱い物を避ける。
◎肺熱・喉腥を治す。

瀉白湯[1-1]《東醫寶鑑》
「生地黄2銭、赤茯苓・芒硝各1銭、陳皮・竹茹・黄芩・山梔子・黄柏各5分、生姜3、大棗2」水煎服。
◎大腸実熱・臍腹痛を治す。

瀉白湯[1-2]《医学入門》《古今方彙》
「陳皮・竹茹・黄芩・山梔子・黄柏各5分、芒硝・茯苓各1銭、生地黄3銭、生姜、大棗」煎服。
◎一方に、「白朮、桂心」あり。
◎大腸の実熱にて腹脹りて通ぜず、臍を挟みて痛み、食化せず、喘して久しく立つ能わず、口舌に瘡を生じるを治す。


瀉脾湯《千金翼方》《勿誤薬室方函》
「茯苓4両、厚朴4両、桂枝5両、生姜8両、半夏1升、人参2両、黄芩2両、甘草2両」
◎脾臓、気実し、胸中満し、食する能わず。又冷気脾臓に在り、走って四肢に在り、手足流腫するを主る。亦水気を逐う。
◎栗園先生曰く、此の方は「茯苓飲」の証にして鬱熱ある者を治す。
◎此方は、積気留飲にて胸中満し、不食を治す。けだし中脘結聚するが目的とす。《勿誤薬室方函口訣》
◎四肢之腫とあり、これも中脘凝結より来る水気なり。又、常に厚味肉食の人、肩へ凝り、頭痛逆上して耳鳴り或いは聾する者に効あり。
◎脾労:動悸甚だしく鉄砂の応ぜざる者、此方能く効あり。
◎上逆烈しき者:「石膏」《閑斎》
◎黄胖:「竜骨・牡蛎」《閑斎》

瀉陽補陰湯《東醫寶鑑》
「黄柏(塩水炒)1銭半、天門冬・貝母・黄連(姜汁炒)各1銭、杏仁7分半、知母・生地黄各7分、紫菀・赤芍各6分、天花粉・桔梗・黄芩・当帰・白茯苓各5分、白朮2分半、五味子9枚」削って1貼にし、梅1個・灯心草1撮入れて煎服。
◎過度の酒色による真陰の妄泄、陰虚火動を治す。

謝伝笑止散《東醫寶鑑》
「乳香・没薬・雄黄・胡椒・両頭尖烏薬」各等分に作末し患部にするつけると、つばを吐いてすぐ治る。
◎牙歯痛。


鷓胡菜湯=「三味鷓胡菜湯」
「鷓胡菜8.0、大黄・甘草各1.0~2.0」
右三味、水二合五勺を以て、先ず二味を煮て一合を取り、滓を去り、後、大黄を入れ、再び煮て六勺と為し、滓を去りて一回に服用す。
◎蟲有りて吐下し、諸証を見はす者を治す。《古方兼用丸散方》
◎蚘虫、涎沫を吐し、心痛発作、時有る者を治す。
◎回虫駆除に能く効を奏す《奥田謙蔵》

★適応症及び病名(鷓胡菜湯)

[]盲目:
☆1婦人が眼を患い。赤腫疼痛し、烏睛曇闇した。これを診するに胸脇苦満がある。よって小柴胡湯を与え、方を施すに疼痛が退いた。そのあとで芎黄散を与え、兼ねて一方を点ずるに、赤腫曇闇やや減じ、心下がなお痞硬する。そこで人参湯を与えたが効無く、鷓胡菜湯を用いたところ、回虫が沢山下って治った《上田椿年》



車狗散《東醫寶鑑》
「推車客7・土狗7個」を瓦の上で焼いて作末し、虎目樹皮の東南 向きのものを煎じて、調服する。
男子は、推車の頭、土狗の身をつかい、
女子は、推車の身、土狗の頭をつかう。」
◎大小便の通りの悪い者。

車前飲《東醫寶鑑》
「大黄(煨)・荊芥穂各2銭、悪実・甘草各1銭」水煎服。
◎瞼(まぶた)に栗つぶ状のものが出来る者。

車前散《証治準縄》《東醫寶鑑》
「密蒙花・甘菊・白蒺藜・羗活・草決明・車前子・黄芩・草竜胆・甘草」各等分に作末し毎回2銭を米飲で服用。
◎肝経の熱毒が逆上して瞖が出、涙が多く出る者。
◎角膜混濁
◎角膜血管新生
◎羞明

車前子散《審視瑤函》《中薬臨床応用》
「車前子・密蒙花・羗活・白蒺藜・黄芩・菊花・竜胆・決明子・甘草」各等分に作末し、食後重湯で服用。
    ◎角膜混濁
    ◎角膜血管新生
    ◎羞明
    ◎フリクテン性角膜炎


車前子湯《沈氏尊生書》
「車前子、沢瀉、厚朴」

雀盲散《東醫寶鑑》
「雄の猪肝を竹刀で割って、夜明砂を少し入れて湯がき、水に漬けて7分ぐらいにして取り出し細かく噛んで汁を飲む。」
◎雀目で夜目が効かない者。


蛇床子散《金匱要略》
「蛇床子仁」1味。
末之、以白粉少許、和合相得、如棗大、綿裏内之、自然温。


蛇床子湯《漢方治療の実際》
「蛇床子・当帰・威霊仙・苦参各10」以上を水1000‹に入れて煮て、約700‹とし、汁をとって温湿布または洗滌する。


蛇床子湯《外科正宗》(腎嚢風条)
「蛇床子・当帰・威霊仙・苦参各10g」ガーゼの袋に入れて1000ccの水で煮る。
男子は陰嚢を湿布し、女子の外陰部の瘙痒には腰湯をさせる。
なお内服薬として、竜胆瀉肝湯、当帰飲子、十味敗毒湯などを用いる《大塚敬節》
◎腎嚢風(=インキンタムシ)、湿熱、患をなし、疙瘩(=ブツブツした小さいもの)を患い、痒をなし、之を掻けば疼をなすを治す、洗うによろし。とある《大塚敬節》
◎陰部瘙痒:
☆堪えがたい外陰部の瘙痒には、まことに欲効く。しかし10日以上の連用が必要。
☆《津田玄仙》は《療治茶談》の中で不仁の前陰を洗う薬として、「荊芥・蛇床子・白礬・白芷・防風・絲瓜」の6味を、湯で煎じ、痛む処を洗うが良い。ただれたものに奇効があると述べている《大塚敬節》


蛇床子油膏《中薬臨床応用》
「蛇床子30g、ワセリン70g」
    ◎乳児湿疹
    ◎慢性湿疹の急性発作
    ◎汗疱様白癬のびらん期
    ◎陰嚢湿疹
    ◎外陰部掻痒
    ◎疥癬
    ◎皮膚白癬症
    ◎分泌物が滲出し掻痒する。


蛇胆川貝末《中薬臨床応用》【中成薬】
「蛇胆汁・川貝母」
    ◎熱痰による咳嗽
    ◎痰が多い
    ◎慢性咳嗽



蛇胆陳皮末《中薬臨床応用》【中成薬】
「蛇胆汁・陳皮・地竜皮・朱砂・白殭蚕・琥珀」
    ◎咳嗽、呼吸促迫
    ◎粘稠な痰
    ◎喀出しにくい
    ◎口乾、胸痛



痔薬膏子《東醫寶鑑》
「柴灰淋濃汁3杯を煎じて1杯ぐらいになったら「草烏片・大黄片各2銭」を入れ、弱火で煎じて、半杯ぐらいになったら「甘草1銭」入れて2回ぐらい煮た後、「淨石灰末半匙」を入れ3~5回煮た後、生絹で濾して再び煮て膏を作り、冷めた後「胆礬5分」を細末にして、瓦器に入れて使うたびに「竜脳末少々」入れて混ぜ、少しつ1日1回、重症は3~5回、薬水で洗った塗る。
◎外痔と反花痔、脱肛・腫痛、膿水が止まらないとき。


痔漏一方[1]《薛立斎十六種》《古今方彙》
「四物湯黄芩・黄連・槐花・枳殻」
◎一男子、痔を患う。大便燥結し惞痛して渇を作し、脉数にして之を按じて実なり。

痔漏一方[2]《寿世保元》《古今方彙》
「川芎、白芷、赤芍薬、枳殻、阿膠、莪朮、生地黄、茯神、木通、五霊脂、桃仁、大黄、茯苓、甘草、生姜、蜜」水煎。
◎痔瘻の熱症にて瘀血ありて痛みを作すを治す。



痔漏一方[3]《薛立斎十六種》《古今方彙》
「秦艽防風湯+黄芩+枳殻」
◎一男子痔を患いて漏となり。毎に厠に登れば則ち痛み秦艽防風湯黄芩・枳殻を以て癒える。「四物湯升麻・黄芩・黄連・荊芥・防風」を以て復た作こらず(再発せず)。


痔漏一方[4]《古今方彙》
「秦艽防風湯-大黄+黄蓍・川芎・芍薬」を以て少し癒ゆ。痛み止まれば更に「補中益気湯」20余剤を以てし後に再び脱せず。
◎一男子、痔瘻を患い厠に登る毎に肛門下脱して痛みを作すを治す。

痔漏奇方[1]《曲直瀬道三家方》
「昆布」1味を水煎し、布に包み、たびたび痛処を温める。
◎これは道三家の秘法である。《大塚敬節》

痔漏奇方[2]
「蓮蕋(はすのしべ)・黒丑各15銭、当帰5銭」以上3味を作末し、1回に2銭づつ温酒で呑む。
◎痔瘻が3年も治らないものを治する効がある。《大塚敬節》


首烏延寿片【中成薬】
「何首烏」
◎便秘・動脈硬化・過敏性腸症候群

首烏延寿丹《世補斎医書》
「何首烏、生地黄、牛膝、菟絲子、杜仲、金銀花、桑椹子、女貞子、旱蓮草、桑葉、黒芝麻、豨薟草」

首烏強身庁《中薬制剤手冊》
「何首烏、懐牛膝、生地黄、覆盆子、杜仲、女貞子、桑葉、豨薟草、金桜子、桑椹子、旱蓮草」


狩皮丸《東醫寶鑑》
「槐花・艾葉(炒黄)・枳穀・地楡・当帰・川芎・黄蓍・白芍・白礬枯・貫衆各5銭、猬皮(焼)1両、髪灰3銭、猪蹄甲10枚、皀角(醋炙)1挺」作末し梧子大の蜜丸。空腹時に米飲で50~70丸飲む。
◎痔瘻を治す。



集香散《葉氏録験方》
      「理中丸丁香・木香」
◎心脾疼痛を治す。


集香湯《東醫寶鑑》
「木香・藿香・川芎・赤茯苓・檳榔・枳穀・甘草各3銭、沈香・丁香各2銭、 乳香1銭半、麝香1字」粗末にし、毎回3銭に姜3片、紫蘇葉5葉を入れ水煎服。
◎虚腫を治す。

聚香飲子《医学入門》《古今方彙》
「沈香・乳香・丁香・檀香・藿香各5分延胡索・欝金・川烏頭・桔梗・桂心・甘草各2分、生姜、大棗」煎服。
◎七情の傷る所遂に七疝と成り、心脇に痛みを引き俛仰(ベンギョウ、あおむいたりうつむいたり)すべからざるを治す。


聚香飲子《医学入門》《東醫寶鑑》
「乳香・沈香・白檀香・木香・蘿香・丁香各8分、延胡索・姜黄・烏薬・桔梗・桂心・甘草各4分、姜3、棗2」水煎服。
◎七情に傷ついて疝気になった者。

修肝散《銀海精微》
「山梔子・薄荷・防風・甘草・連翹・大黄・黄芩・蒼朮・羗活・菊花・木賊・赤芍・麻黄」以上各等分を作末し、毎服2g、豚肝または洋肝を煮た汁で食遠に調服。

修肝活血湯《銀海精微》
「当帰・赤芍・生地黄各60g、川芎・羗活各28g黄蓍・防風・黄連・大黄・薄荷・連翹・菊花・白蒺藜各40g。以上16gを、毎服水で煎じ、酒2盃に入れ、温服。」


舟車丸[1-1]《丹渓心法》《中薬臨床応用》
「黒牽牛子(研末)120g、甘遂(裏面煨)・芫花(醋炒)・大戟(醋炒)各30g、大黄60g、青皮・陳皮・木香・檳榔子各15g、軽粉3g」作末し水で丸剤。1回6gを早朝空腹時に湯で服用。
◎水腫。

舟車丸[1-2]《東醫寶鑑》
「黒丑頭末4両、大黄2両、甘遂・大戟・芫花・青皮・陳皮各1両、木香5銭」を作末し、水で梧子大の丸剤。毎回50~60丸、白湯で調下。下痢すると止める。
◎湿熱の盛んなとき。

舟車神祐丸[1]《劉河間》
「黒牽牛子・大黄・甘遂・大戟・橘紅・芫花・青皮・木香・軽粉⇒水銀粉」
◎水腫水脹。形気ともに実して熱象ある者。

舟車神祐丸[2]《東醫寶鑑》
「黒丑頭末4両、大黄2両、甘遂・大戟・芫花(醋炒)各1両、青皮・木香・檳榔各半両、軽粉1銭」を作末し、水で梧子大の丸剤。毎回50~60丸を白湯で調下。下痢すると止める。
◎一切の水湿が大きくなった者。

秋石五精丸《東醫寶鑑》
「蓮肉6両、白茯苓2両、秋石1両、川椒・茴香(並微炒)各5銭」作末し、乳汁で梧子大の丸剤。温酒又は米飲で50~70丸呑む。 
◎虚労の腎虚・陽衰を治す。


秋石元《東醫寶鑑》
「白茯苓1両・桑螵蛸(炙)・鹿角膠(珠)・秋石各5銭」作末し、粞糊で梧子大の丸剤。空腹時に人参湯で50丸飲む。
◎膏淋の黄・赤・白黯の膏と油蜜のような者。


酒蒸黄連丸《東醫寶鑑》
「黄連4両」酒に一晩浸して、晒した後、作末し栗米糊で梧子大の丸剤。米飲で100丸服用。
◎酒毒で熱を出し、血便が出て、肛門まで熱いとき。
◎過飲による腸胃の熱、又は吐血・下血を治す。
◎酒蒸黄連丸、乾葛の煎じ湯で2銭(酒で身体を壊し、朝方必ず下痢)

酒積丸《東醫寶鑑》
「烏梅肉・黄連(酒浸一晩)各1両、半夏(麹)7銭、枳実・縮砂各5銭、木香4銭、杏仁3銭、巴豆霜1銭」作末し、蒸餅で緑豆大の丸剤。白湯で8~10丸呑む。
◎酒積を治す。

酒煮黄連丸(一名小黄竜元)《東醫寶鑑》
「黄連4両を清酒7合に入れて蒸し、酒が乾くまで干し、麺糊で梧子大の丸剤。毎回30丸を熟水で呑むと、胸膈がさわやかになり、渇をおぼえない。
◎伏暑で嘔渇・悪心・暑毒の治らない者。
◎過飲による腸胃の熱を治す。

酒煮当帰丸《東醫寶鑑》
「当帰1両、良姜・炮附子各7銭、茴香5銭」を細切りにし、酒1杯半で煮詰まるまで煎じ、そこに炒黄塩・全猬⇒ハリネズミ各3銭、柴胡2銭、炙甘草・川楝子・丁香・升麻各1銭・延胡索4銭を入れて作末し、酒麺糊で梧子大の丸剤。空腹時に淡醋湯で50~70丸飲む。
◎白帯が流れて止まらず、下は氷のように冷たく、目は青く痩せる者。

茱萸散《東醫寶鑑》
「呉茱萸・地竜」等分に作末し、米醋に生麹を入れて調合して塗る。
◎口瘡・咽痛を治す。

茱萸内消丸《東醫寶鑑》
「山茱萸・呉茱萸・川楝子・馬蘭花・茴香・青香・陳皮・山薬・肉桂各2両、木香1両」作末し酒糊で梧子大の丸剤。50丸を酒で飲む。
◎膀胱腎虚による実疝を治す。

茱萸内消元《東醫寶鑑》
「川練肉1両半、大腹皮・五味子・延胡索・海藻各1両2銭半、桔梗・青皮・山茱萸各1両、木香7銭、茴香・桂心・川烏(炮)・呉茱萸・食茱萸・桃仁各5銭」作末し、酒糊で梧子大の丸剤。温酒で30~50丸呑む。
◎陰瘖が偏大で腎嚢が腫脹し、又は瘡瘍が出て、時々黄色い水が出る。
 
茱萸内滑消丸《東醫寶鑑》
「山茱萸・呉茱萸・川楝子・馬蘭花・陳皮・山薬・肉桂各2両、木香1両」       作末し、酒糊で梧子大の丸剤。50丸、酒で飲む。
◎膀胱腎虚による実疝を治す。

茱萸木瓜湯《証治準縄》《古今方彙》
「呉茱萸1両半、木瓜1両、檳榔子2両、生姜5片」温服。
◎脚気衝心、悶乱して人を識らず、手足の脉絶せんと欲するを治す。

茱連丸[1](一名黄連丸)《東醫寶鑑》
      「呉茱萸・黄連各2両」酒浸3日して、それぞれ焙って乾燥し、別々に醋糊       で梧子大の丸剤。
       赤痢には、黄連丸30粒を、甘草湯で飲み、
白痢には、茱連丸30粒を、乾姜湯で飲み、
       赤白痢には、2つをそれぞれ30粒づつ、甘草乾姜湯で飲む。
    ◎赤白痢を治す。

茱連丸[2](一名咽醋丸)《東醫寶鑑》
      「呉茱萸(温湯洗焙)・陳皮(去白)・黄土(壁土炒)各5銭、黄連(壁土炒)1両、       蒼朮7銭半」作末し、神麹糊で梧子大の丸剤。唾で60~70丸を嚥下させ       る。
    ◎欝積による呑酸・吐酸を治す。

朱子読書丸《東醫寶鑑》
      「茯神・遠志(姜製)各1両、人参・陳皮各7銭、石菖蒲・当帰各5銭、甘       草2銭半」作末し、小麦粉で緑豆大の丸剤。朱砂で衣を付け就寝時に、灯       心草の煎じ湯で50~70丸服用。
◎健忘症を治す。

朱砂安神丸《李東垣》
「朱砂4g(末にし水飛し半分を衣とする)、黄連6g(酒洗)、甘草2g(炙)、生       地黄・当帰頭各4gを末となし、蜜で練って黍米の大きさの丸とし、朱砂       を衣として、毎服10~30丸、就寝前に服用。」
◎心乱れ、煩熱・心悸亢進し、寝ても覚めても不安などの心血虚の証。
★適応症及び病名(朱砂安神丸)
不眠症:
       ☆不安、恐怖、強迫観念があって、驚きやすく、眠れない者。

 

朱砂安心丸《漢方治療の実際》
      「黄連6、鍼砂5、地黄・甘草各3、当帰2.5」以上を作末し米糊で丸とし。       1回2~3を服用。
    ★適応症及び病名(五十音順)
     不眠症:
  ☆安眠の出来ない者に用いる。煎剤に兼用してよい。《大塚敬節》


 朱砂安心湯
    ◎不眠症:
(婦人の失血が多く、心神が不安で眠れない)

朱砂丸《東醫寶鑑》
      「朱砂・天南星・巴豆霜」各等分。作末し糊で黍米大の丸剤。薄荷湯で2~3      丸呑む。
◎幼児が汚物を飲み込んで、吐瀉するとき。

朱砂黄連元《東醫寶鑑》
      「黄連3両、生乾地黄2両、朱砂1両」作末し、梧子大の蜜丸。灯心棗湯で30      ~50丸呑む。
◎醋を食べ過ぎて消渇になった者。

朱砂膏《東醫寶鑑》
      「甘草7銭半、寒水石()・石膏()各5銭、朱砂・硼砂・焔硝各2銭半、      竜脳1字、金箔・銀箔各5片」作末し、麦門冬湯で毎回2銭づつ服用。
◎驚いて熱を出し、混迷不省の者。



朱砂指甲散《東醫寶鑑》
      「朱砂(水飛)・天南星(姜製)・独活各2銭、人の手足の爪甲の焼いた          物6銭」作末し、3貼に分け、熱酒で調下する。
◎破傷風で手足が震えて止まらない者。

 朱砂定驚方《中薬臨床応用》
      「朱砂0.5g(沖服)、天竺黄6g、胆南星1.5g、竹蜂6g、法半夏6g、甘草(炙)3g」      水煎服。
    ◎痙攣発作
    ◎小児の熱性ケイレン

朱砂凉膈丸《東醫寶鑑》
      「黄連・山梔子各1両、人参・赤茯苓各5銭、朱砂3銭、竜脳5分」作末し、       蜜で梧子大の丸剤。熟水で5~7丸、1日に3回。
◎上焦の虚熱と、肺と咽膈に何かがあって、煙が上がるような感           じを治す。
 
朱雀丸《東醫寶鑑》
      「白茯神2両、沈香5銭」作末し、蒸し餅で梧子大の丸剤。
朱砂5銭で衣をつけ、人参湯で50丸服用。
    ◎心神が不安定で、恍惚・健忘・時々跳動する者。 

朱礬散《東醫寶鑑》
「朱砂・白礬枯」各等分。細末にし、口と舌の上に1日3回塗る。
◎鵞口瘡で乳を吸えない。

朱蓬蜜《奥田家方》
「朱砂(=辰砂)1.2、硼砂2.0、竜脳1.0」
右3味、各別に細末、合して散と為し、蜂蜜適宜を混和し、之を患部に塗布する。
◎口内腫痛し、或いは舌、歯等に瘡を生じ、流涎、疼痛甚だしき諸証を治す。

収功万全湯《寿世保元》《古今方彙》
「当帰・黄蓍各1銭半、人参・白朮・茯苓・熟地黄各1銭、川芎・白芍薬(酒)各7分、陳皮・防風各5分、肉桂・白芷・甘草各3分、生姜」水煎。
◎癰疽を治す。
◎潰後に須く当に大いに気血を補い、脾胃を和し、毒を托(ひら)きて外に出すべし。実に切要と為す。
◎右癰疽、潰癰後に肌肉長ぜず合せざる者に宜し。
◎渇を作すには:「麦門冬・五味子」
◎煩躁するには:「生地黄・麦門冬」
◎痰あれば:「半夏」
◎泄瀉には:「厚朴」
◎小便不利には:「沢瀉」
◎怔忡不寐には:「遠志・酸棗仁」
◎胸膈寛かざるには:「厚朴・山楂子」
    

珠黄散《和剤局方》
「牛黄、珍珠」

糯根煎《中薬臨床応用》
「糯米根30g、黄蓍15g、糯米30g」水煎服。
◎タンパク尿。
◎頑固な慢性腎炎。

蓯蓉潤腸湯《中薬臨床応用》
「肉蓯蓉15g、当帰12g、生地黄9g、白芍薬9g、麻子仁9g」水煎服。
◎老人の便秘
◎血虚の便秘


十将軍丸《東醫寶鑑》
「縮砂・檳榔・常山・草果各2両、三稜・莪朮・青皮・陳皮・烏梅・半夏各1両」先に常山と草果を酒・醋各1椀を漬け、一晩置いた後、8味を漬け、日暮れ時に炭火で煎じて作末し、酒醋で梧子大の丸剤。白湯で30~40丸、1日2服、8両になったら止める。
◎久瘧と瘧母を治す。

十疰丸《東醫寶鑑》
「雄黄・巴豆霜各3両、人参・麦門冬・細辛・桔梗・炮附子・皀莢・川椒・甘草各5銭」を作末し、梧子大の蜜丸。温水で5丸を呑む。
◎10種の尸疰と鬼気を治す。

十神丸《補元》


十神湯[1-1]《和剤局方》
「川芎・甘草・麻黄・紫蘇葉・白芷・升麻・陳皮・香附子・赤芍薬各4両、乾葛14両、生姜、葱白」水煎。
◎時令不正(季節不順のこと)、瘟疫妄行し、感冒発熱悪寒、頭疼身痛、咳嗽喘急、或いは疹を出さんと欲す。此薬は陰陽両感を問わず、並びに宜しく之を服すべし。

◎潮熱には:「黄芩・麦門冬」《寿世保元》
◎咳嗽には:「桔梗・桑白皮・半夏」
◎頭痛には:「細辛・石膏・葱白」
◎心胸腸満には:「枳実・白朮」
◎嘔吐には:「丁香・砂仁」
◎鼻衂止まざれば:「烏梅・黄芩」
◎腹痛には:「芍薬(酒)」
◎冷気痛には:「官桂」
◎大便閉には:「大黄・芒硝」
◎痢には:「枳殻・当帰」



十神湯[1-2]《東醫寶鑑》
「香附子・紫蘇葉・升麻・赤芍・麻黄・陳皮・川芎・乾葛・白芷・甘草各1銭」を剉作し、「姜3、葱白2茎」を入れ水煎服。
◎風寒による頭痛・寒熱で汗の無い者。

十神湯[1-3]《東醫寶鑑》
「葛根2銭、赤芍・升麻・白芷・川芎・陳皮・麻黄・紫蘇葉・香附子・甘草各1銭」剉作し、1貼に「姜5片・葱白3茎」を入れ、水煎服。
◎不規則になる瘟疫を治す。

十水丸《東醫寶鑑》
「大戟・葶藶子・甘遂・桑白皮・連翹・芫花・沢瀉・藁本・巴豆・赤小豆」の10種をつかうが、その病勢に合った1味を倍に増量して主薬とし、りを等分に焙って末にし、蜜で梧子大の丸剤。赤茯苓湯で3~5丸を1日2~3回飲む。
◎10種の水気を治す。

十仙湯《寿世保元》《古今方彙》
「柴胡、葛根、玄参、黄連、黄芩、山梔子、陳皮、茯苓、枳殻、生地黄、生姜」水煎。


十全丸《東醫寶鑑》
「陳皮・青皮・莪朮・川芎・五霊脂・白豆蔲・檳榔・蘆薈各5銭、木香・使君子・蝦蟆灰各3銭を作末し、猪胆汁に漬け麻子大の丸剤。米飲で20~30丸調下。
◎丁・哺露・無辜壊症を治す。


十全大補湯[1-1]《和剤局方》《中薬臨床応用》
「当帰9g、川芎6g、白芍薬12g、熟地黄12g、党参9g、白朮(炒)12g、茯苓12g、甘草(炙)5g、黄蓍9g、肉桂1.5g(服)」水煎服。
◎気血両虚。

十全大補湯[1-2]《東醫寶鑑》
「人参・白朮・白茯苓・甘草・熟地黄・白芍・川芎・当帰・黄蓍・肉桂各1 銭を剉作し、1貼に姜3、棗2を入れ、水煎服。
◎虚労による気血両虚を治し、虚労の自汗を治す。

十全大補湯[1-3]《漢方治療の実際》
「人参・黄蓍・白朮・当帰・茯苓・地黄・川芎・芍薬・桂枝各3、甘草1.5」



十全大補湯[1-4]《和剤局方》《龍野ー漢方処方集》
=「黄蓍茯苓湯」《備急千金要方》
「人参・白朮・茯苓・当帰・川芎・熟地黄・芍薬各3.0g、黄蓍・肉桂・大棗各2.0g、甘草1.5g、干姜1.0g」
◎男子婦人諸虚不足、五労七傷、飲食進まず、久病虚損、時に潮熱を発し、気骨脊を攻め、拘急疼痛、夜夢遺精、面色萎黄、脚膝力無く、一切病後、気旧の如からず、憂愁思慮、気血を傷動し、喘嗽中満、脾腎の気弱く、五心煩悶するを治す。此薬性温にして熱せず、気を養い、神を育て、脾を醒まし渇を止め、正を順らし、邪を辟く、脾胃を温煖して、其効具さに述ぶべからず。
◎「八物湯黄蓍・肉桂各1銭」《薛立斎》
◎男子、婦人、諸虚不足、五労七傷、一切の病後、気、旧に如かざるを治す。
◎此方、《和剤局方》の主治によれば、気血虚すと云うが八物湯の目的にして、寒と云うが黄蓍、肉桂の目的なり。又、下元気衰というも肉桂の目的なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎《薛立斎》の主治によれば、黄蓍を用ふるは参蓍に力を合わせて、遺精、白濁、或いは大便滑泄、小便短少、或いは頻数なるを治す。又、九味の薬を引導してそれぞれの病処に達するの意なり。何れも此の意を合点して諸病に運用すべし     《勿誤薬室方函口訣》
◎気血ともに虚した者。
◎発熱悪寒、自汗盗汗、肢体倦怠。
◎頭痛眩暈、口渇。
◎久病虚損、口乾食少、咳、驚悸発熱。
◎寒熱往来、盗汗自汗、夕方発熱、内熱、遺精白濁。
◎両便出血、下腹痛、小便短少、大便乾少。
◎軟便、脱肛、小便頻数。
◎男子婦人諸虚不足、一切病後に気もとの如く回復せざる者。
◎気血倶に虚、発熱悪寒、自汗盗汗、肢躰倦怠、或いは頭痛眩暈、口乾渇を作すを治す。又は久病虚損、口乾食少なく、咳して而して利せず、驚悸発熱、或いは寒熱往来、盗汗自汗、熱内熱、白濁を遺精し、或いは二便血を見わし、小腹痛みを作し小便短少、大便乾、或いは大便滑泄、もう門下遂、小便頻数、陰茎癢痛する等の症を治す。《古今方彙》
◎《漢方後世要方解説》
此方は気血、陰陽、表裏、内外、共に虚したるを大いに補うもので、十全の効ありとの意味にて十全大補湯を名づけた。即ち本方は諸病により全身衰弱甚だしく、貧血、心臓衰弱し、胃腸機能衰え、痩削し、脈腹共に軟弱で、皮膚枯燥し、熱状のないものによい。諸病後、産後、癰疽潰後等に広く用いられる。
◎慢性病、大病後、虚弱人、老人、幼児などで、気力・体力共に衰えた者を目標に用いる《大塚敬節》




★適応症及び病名(十全大補湯)
[1]頭がふらつく
[2]アレルギー性鼻炎
☆全身的に衰弱している傾向があり、顔色も蒼く貧血していて皮膚も枯燥し、気血ともに虚しているという者で、鼻粘膜は乾燥しがちで、しかもクシャミが頻発してアレルギー性鼻炎といわれていたものに本方でよくなったものがある。それほどひどくないときに加味逍遙散で体質が改善されたこともある(漢方診療医典)
[3]遺精:
☆気血虚損して夢精・滑精する。
[4]運動麻痺
[5]栄養失調
[6]カリエス:
☆腸癰等、瘻孔ながく癒えない者《矢数道明》
☆腰椎カリエスに応用《大塚敬節》
[7]ガン(悪性腫瘍)
[8]顔色悪い
[9]肝炎
[10]基礎体温が低い
[11]極度の衰弱:
☆虚労にて諸虚不足、五労七傷、飲食進まず、咳嗽喘急、盗汗潮熱等の症を治す。《済世全書》
[12]強皮症
☆体力が低下し、疲労倦怠、食欲不振、手足の冷え、貧血などがみられる者に用いる(漢方診療医典)
[12]虚弱者の皮膚病
[13]虚熱(午後から日暮れにかけて発熱)
[14]気力がない
[15]瘧疾:
☆長年治らず羸痩する者《矢数道明》
[16]下痢:
☆大便滑利、小便閉渋、或いは肢体漸く腫れ、喘嗽、痰を唾し、脾腎気血倶に虚する者を治す:「四神丸」を送下する《寿世保元》
☆慢性下痢後、栄養衰え、元気の回復しない者《矢数道明》
[17]元気がない
[18]言語不明瞭
[19]声に力が入らない
[20]肛門周囲膿瘍
☆痔瘻を残して排膿が止まず、貧血して全身衰弱の候あるものに用いる。伯州散を兼用する(漢方診療医典)
[20]骨結核:
☆股関節結核に応用《大塚敬節》
[22]骨粗鬆症
☆虚証で疲れやすく、貧血の傾向が強く、食欲不振、体重減少を認め、皮膚が乾燥するものに用いる(漢方診療医典)
[21]産後の疾患:
☆本方の症多い、血振いという類《矢数道明》
☆産後脚気
☆産後の虚労
☆産後の衰弱
☆産後の閉経
☆風に感じ、痙を成し、口噤、角弓反張、汗無き者:「桂枝加葛根湯」
☆汗ある者、柔痙と為す、「桂枝湯括楼根」
☆産後の痙病の虚症:「十全大補湯柴胡、釣藤鈎、括蔞、竹瀝、」姜汁を以てし、如し汗多き者は「附子」《方読便覧》
☆産後戦慄する者、血気新たに虚し、邪気之を襲うなり。先ず荊芥沈香湯を与う。或いは十全大補湯荊芥炮姜を与う。更に虚する者は「附子」。蓋し戦慄、四五発する者は治しガタし。然れども脈緩なる者は癒ゆべく、数なる者は不治と為す。《華岡青州》
☆産後に陰脱(子宮内翻症)にて腫痛し、脈滑数にて膿を作らんと欲するに宜し《婦人大全良方》
[22]自汗
[23]子宮ガン
[24]四肢のしびれ
[25]四肢脱力
[26]四肢の冷え
[27]手術後の衰弱
[28]出産:
☆産門開かざるを治す。《万病回春》
[29]消化不良
[30]小児の頭蓋骨顖門の陥没
[31]小児の頭蓋骨顖門の閉鎖不全
[32]小児麻痺:
☆《大塚敬節》
“埼玉県で3歳の男児を診察した。この子は生後1年ぐらいの頃、小児麻痺にかかり、その後、歩行が出来なくなり、母親はこの患児を背負って、毎日東京の某大学病院に通って、電気治療やマッサージに罹ること約1カ年に及んだが、いまだに一人で立つことすら出来ないという。手は左右とも自由に動くが、足は左右共に痩せて力が無く、事に右側の麻痺がひどい、栄養は衰え血色は悪く、元気がない、その上に遺尿症がある。
こんな症状であったから、私はこれに十全大補湯を1ヶ月分与えた。約1ヶ月後、母親が連れてきた患児をみると、栄養・血色共に見違えるほどに良くなり、ひとりで立つようになった。遺尿症もよくなった。3ヶ月目には、障子や窓につかまって歩くようになった。”
[33]食欲不振:
☆補中益気湯は古人が“脾胃の元気の虚”といった場合に用いる。脾は今日の脾臓を指すのではなく、胃腸の消化を助けるものだとあるから、脾胃の虚は、消化作用の弱い気力のないものを指している。  古人の言葉を借りて云えば、十全大補湯は気血の虚を補い、補中益気湯は気の虚を補うものである。《大塚敬節》
[34]ショックによる出血(目・口・鼻・耳・前陰・後陰)
[35]視力減退
[36]視力障害:
☆(白内障・緑内障・黒内障などによる)
☆内障を治す:「沈香、白豆蔲、附子」《方読便覧》
[37]痔瘻
☆慢性に経過し、稀薄な膿が止まらず、貧血して、著しく全身衰弱の傾向あるものに、+伯州散(漢方診療医典)
[38]腎結核
[39]神経衰弱
[40]心臓疲労
[41]舌質<淡白><胖大>
[42]舌苔<無苔~微白苔><湿潤>
[43]全身衰弱    
[44]帯下:
☆長血、子宮ガン、諸悪性腫瘍《矢数道明》
☆赤白帯下は:「-地黄陳皮、乾姜、半夏」or「+牛皮消」《方読便覧》

煩熱し、小水淋瀝するを治す、「車前子・地骨皮・鹿角・阿膠、桂枝」《寿世保元》
☆産後、流産後など体力・気力ともに衰えた者の帯下に用いる。《大塚敬節》
☆斎藤佐左衛門の妻39歳は、一昨年流産の後、外邪にかかり、それから急に血が下って止まず、ついに帯下の症に変じた。
余が診するに、顔色は灰のようで、脈は沈細数で、舌には白苔があって乾燥し、口渇を訴え、飲食は進まず、呼吸は促迫し、心下はつかえ、下腹部は硬くて膨満し、小便の出は少なく、大便は軟らかく、腰が痛む。帯下は一昼夜に1、2行で、色が黒く、1合~1合6、7勺ほどであるという。
そこで十全大補湯を与えたところ、40日余りで全治した。(佐藤元悦・和漢医林新誌第19号)
[45]脱肛:
☆痔瘻、子宮脱など《矢数道明》
[46]中風:
☆中風にこの方を用いるのは薛已の内科摘要がはじまりである。勿論元気悪く、脈にも腹にも共に力なく熱の少ない者に用いる《梧竹楼方函口訣》
“飛鳥井大納言雅威卿は年50あまり、春2月の始めに感冒にかかって、療をしたが、少しも良くならない。そこで和田泰冲を召した。泰冲は九味の羗活湯を用いところ、1、2日で感冒はよくなった。そこへ余が召され泰冲と一緒になった、診てみると、この人はもとから脱肛があったが、このときも脱肛しておさまらない。そこで余は補中益気湯はどうかと泰冲にはかったところ、泰冲も同意したので、補中益気湯羗活附子防風を与えた。すると2、3日で脱肛がおさまった。つづいて前方を与えたら、半身不随もまた良くなった” 
[47]知覚麻痺
[48]疲れやすい
[49]手足冷たい
[50]盗汗:
☆気血倶に虚して盗汗する者を治す。《寿世保元》
[51]動脈硬化症
☆体力、気力ともに衰え、血色すぐれず皮膚に光沢なく、枯燥の状があり、動作ものうく、記憶力が衰え、俗に言う「もうろく」の状に用いる(漢方診療医典)
[51]乳ガン
☆乳癌、流注、潰膿の後、自汗、盗汗、その他脱状を見わす者:
「附子」《方読便覧》
[52]寝汗(ねあせ)
[53]ノイローゼ(虚弱者の)
[54]肺結核:
☆熱状は著しくなく、咳嗽、湿痰もなく、発汗のひどくない者《矢数道明》
☆皮膚枯燥した者を目的として使う。本方の症は少ない《矢数道明》
[55]白血病
[56]半身不随
[57]冷える
[58]微熱(慢性疾患の)
☆年を経て久しく瘧し、気血ともに虚し、而して三五日に一つ発する者を治す。《寿世保元》
[59]皮膚疾患(虚弱者の)
[60]皮膚につやがない(皮膚枯燥)
[61]疲労倦怠:
☆大病後、体力が回復せず、疲労、倦怠を訴える者《大塚敬節》
[62]病後の衰弱:
[63]貧血
☆栄養不良性貧血。
☆大病後、栄養衰え、皮膚光沢を失って枯燥し、貧血の状ある者に用いる《大塚敬節》
☆全身的に衰弱して貧血し、口内が乾燥する者(漢方診療医典)
[64]腹痛
[65]腹部軟弱
[66]閉経
[67]ベーチェット病
☆比較的体力の低下した者で、温清飲を用いると胃腸障害がみられるものに用いる。四君子湯と四物湯を含む処方である(漢方診療医典)
[67]崩漏:
☆経行過多、血気虚耗、胃気不足し、故に経水妄来するを治す: 「香附子、黄蓍・肉桂」《寿世保元》
[68]麻痺:
☆(気虚・血虚による麻痺)
[69]慢性肝炎
[70]夢精:
☆虚のひどい者《矢数道明》
[71]目がかすむ:
☆久病後、視力減退、健忘の者《矢数道明》
[72]めまい:
☆(老人の、起床してしばらくの間)
☆気血両虚し、而して寒を挟み、頭目眩暈するを治す。もし痰あれば、「陳皮・半夏」《寿世保元》
☆貧血が甚だしくて、めまいする者《大塚敬節》
[73]物忘れ:
☆諸虚にて健忘する者。
[74]やせすぎ(羸痩)
[75]癰疽:
☆癰疽が崩れてきたない。
☆癰疽後を治す。《雑病翼方》
☆潰瘍、発熱し或いは悪寒し或いは痛みをなし、或いは膿多く、或いは膿成りて潰れず、潰れて斂まらざるを治す。
☆気血足らず腫を結びて未だ膿成らざる者:「陳皮・香附子・半夏・連翹」《薛立斎》
☆臀癰、已に潰えたる後に気血虚弱なる者に宜し。
☆潰えて後排膿の止まらない者《矢数道明》
[76]腰痛:
☆大病後に体力が回復しない者に用いて、栄養を良くして元気をつける効があり、大病後の腰痛、骨・関節カリエスに用いられる《大塚敬節》
[77]抑鬱状態
[78]淋疾患:
☆膿淋:「+鹿茸」《雑病翼方》
[79]ルイレキ(瘰癧):
☆潰えて後虚羸、稀膿の止まらない者《矢数道明》
  

【加減方】 
1.咳には、・・・五味子2.0g。
2.汗多き者・・・牡蠣3.0g。
3.気弱気者・・・人参倍加。
4.虚労発熱・・・柴胡4.0g、地骨皮2.5g。
5.肌熱には・・・地骨皮2.5g。
6.不時に熱しor場所一定せずor脚心から起こる者:五味子2.0g、麦門冬6.0g。


十全流気飲《外科正宗》《古今方彙》
「陳皮・茯苓・烏薬・川芎・当帰・芍薬各1銭、香附子8分、青皮6分、甘草5分、木香3分、生姜、大棗」水煎し食遠に服す。
◎憂鬱は肝を傷め、思慮は脾を傷り、脾気行らざるを致し、肉裡に逆して乃ち気を生じ、癭肉瘤皮の色変ぜずして日久しく漸く大なれが宜しく此薬を服すべし。

十全流気飲《外科正宗》《漢方後世要方解説》
「陳皮・茯苓・烏薬・川芎・当帰・芍薬各3.0、香附子2.0、青皮・甘草・木香各1.0」
◎子嗽に《金匱要略》当帰料を煎服せしめ、屡々効を得たり、養血、除湿、清熱の剤胎気壅遏を安ずるにより咳嗽も治するなるべし。《清川玄道》




十宣散(一名千金内托散)《東醫寶鑑》

十棗湯(じっそうとう)[1-1]《傷寒論》
「芫花(熬)・甘遂・大戟」
以上三味、等分、各別搗為散、以水一1升半、先煮大棗肥者十枚取八合、去滓、内薬末。強人服一銭匕、羸人服半銭、温服之。平旦服。若下少病不徐者、明日更服、加半銭。得快下利後、糜粥自養。



十棗湯[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「芫花、甘遂、大戟各等分」作末しカプセルに入れ、第1日目は1.5g、以後毎日0.3gづつ増やし3gまで増量。大棗8~15gの煎液で早朝空腹時に服用。



十棗湯[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》

「芫花・甘遂・大戟」以上を細末とし、「大棗10」を水200‹に入れて煮て100‹とし、滓を去る。以上の末1を加えて頓服する。
◎老人や虚弱な人には禁忌。
◎十棗湯証(胸下に引きて痛み、乾嘔・短気。又曰く、咳煩。)《薬徴》
◎十棗湯証=脇下に引きて痛む。又曰く、咳煩、胸中痛。
◎十棗湯は、大棗を君薬となす。しかして引痛(ひきつれいたむ)の証あり。
◎病、胸腹に在ってする者を治す《吉益東洞》
◎大棗を君薬となして胸脇引痛の証あり。《重校薬徴》
◎胸腹掣痛し、息迫する者を治す。《方極附言》
◎此方は懸飲内痛を主とす。《勿誤薬室方函口訣》
「懸飲」:

→外邪内陥して、胃中の水を胸へ引き上げて、胸に水気を蓄えるなり。また外表の方へ張り出す気味あって、汗出、発熱、頭痛などの証を兼ねる者もあれども、裏の水気主となりて、表は客なり。故に胸下痛、乾嘔、短気、或いは咳煩、水気、浮腫、上気、喘急、大小便不通を目的として此方を与ふべし。
◎欠盆穴に引くを目的として用いる。脈は沈弦or緊。
◎作用の激しい薬だから長期の連用には適しない。頓服として用いて、一時の急に備えるものである。これを飲むとたちまち水様の激しい下痢を起こすので、体力の弱い人は、便所で腰が抜けて立てなくなることがある。しかし又奇効を奏することも事実である。《大塚敬節》
   

【腹証】
 《腹診配剤録》
 “心下痞満して痛み、而してその痛、脇下に引く。故に呼吸短息す”
    

★適応症及び病名(十棗湯)
[1]水飲:
☆欬家の水飲には、引痛なくとも此方を用いるべし。
[2]脚気:
☆水腫性脚気等にして、強実なる証《奥田謙蔵》
[3]胸水。
[4]胸痛:
☆胸肋部疼痛し、腹筋攣急し、尿利減少し、その脈稍浮にして滑なる証。《奥田謙蔵》
☆脇下支満し、飲すなわち脇下に引いて痛むを療す《外台秘要方》
☆体格の良いガッチリした男性。久しい間、右の胸痛を訴え種々手当をしたが治らないと言う。腹診してみると、心下部が鞕満し、季肋下は右側が特に痞硬して抵抗圧痛がある。すなわち胸脇苦満である。また第10肋骨と第9肋骨間のあたりで、側胸の部に、ちょっと指を触れてもビックリして痛む。脈は沈んで力があり、便秘する。これならば大柴胡湯で効があろうと考え、2ヶ月近くも投与したが効無く、少し良いという程度である。そこで十棗湯を与えることにした。すると数回、水瀉様の下痢があり、胸痛はきれいに去った。《大塚敬節》
[5]胸満:
☆熱候なく、胸部満悶して、時々痛み、痛を発すれば俯仰する能わず、二便減少し、その脈緊なる証《奥田謙蔵》
[6]下痢:
☆十棗湯の証に下痢する者あり。上迫の勢甚だしく熱下陥するに因って利を為しなり。故に脱利とその趣はるかに異なる。柴胡、瀉心の下痢も亦然り。《先哲医話》
☆下利、咳逆、痛み脇下に引き、飲食を欲せず、寒熱去来し、労とならんと欲する者、急に之を下す。十棗湯に宜し。《先哲医話》
[7]懸飲:
☆1武官、富貴で、養生のよい人で、70歳近い。いつもは、味の濃いものを喜び、酒は飲まない。菓子・餅など甘味を好む。持薬には、益気湯、八味丸などを用いている。この人、持病に頭痛と脱肛があり、魚や鳥の類を過食すると、きまって頭痛がし或いは脱肛が起こる。こんな時はいつも香砂六君子湯または消化剤を用いる。すると黄色or無色の水を吐いて治る。ところがある日、ふと大きい咳が出たとたんに脇下がひきつれ痛むようになり、身体を動かして歩くことも難しいので、大小便の時には両方から人が支えて、やっとすますという調子である。しかし、飲食はいつもと変わらず、気力もあり、脈は弦である。医者を3、4人と更えて治療したが治らない。そこで古方家を招いて治せしめんとしたが、患家の人たちは古方家を恐れて決断がつかなかった。謙斎は自分では治せないのを知り、無理に古方家を招いて治を托した。すると、その医者は十棗湯の粉末5分(約1.6g)を作り、翌朝これを与え、しばらくして粥を飲ませたところ、たちまち腹がゴロゴロ鳴って下痢し、米のとぎ汁のようなものを2升近くも下した。その後で鮎の料理を飯で2杯食べたが、味はいつもと変わらなかった。それから午後にかけて、3、4行も同じ様な下痢があり、その時は、ひとりで起って便所に行くことが出来た。その後、5、6日して、平日通り、出勤出来るようになった。《医療手引草》     
[8]神経痛:
☆「ロイマチス」性疾患にして、虚候なき証《奥田謙蔵》
☆支飲、咳嗽、胸脇掣痛し、及び肩背、手脚に走り痛む者を治す《類聚方広義》
☆痛風、支体に走注し、手足微腫する者は、甘草附子湯を与え、此方を兼用すれば、掎捔の功有り。丸と為して用いるも、亦佳なり。《類聚方広義》
[9]手の腫れ:
☆《前田長庵》の経験に、一人手ばかり腫れて餘処はサッパリと腫れず、元気飲食共にもとの如き者に、此方を用いて水瀉を得たれば速やかに癒えたり。《勿誤薬室方函口訣》
☆久しく癖飲を病み、停痰消せず、胸膈の上に在りて液液、時に頭眩して痛み、若くは眼睛、身体に攣き、手足十指の甲尽く黄なるを療す。 《外台秘要方》
[10]肥満:
☆栄養をとりすぎて、肥満している者に、この方を用いる機会がある《大塚敬節》
[11]肋膜炎:
☆湿性肋膜炎、及び其の類証にして、強実なる者《奥田謙蔵》





十灰丸《東醫寶鑑》
「黄絹・馬尾・藕節・艾葉・蒲黄・蓮房・油髪・棕櫚・赤松皮・新綿」各等分。焼灰して作末し、醋に糯米糊を煮て梧子大の丸剤。米飲で100丸飲む。
◎血崩と一切の失血。
◎虚労による心・肺が虚弱し、吐血する者を治す。
◎咯血・唾血の止まらない者を治す。


十灰散《十薬神書》
「大薊・小薊・側柏葉・茅根・茜草根・陳棕炭各15g・大黄(生)・山梔子・牡丹皮各9g・荷葉1枚」薬性を保って黒焼きにし、極細末にし毎回9~15g を大根汁or藕汁にといて服用。
◎熱証の出血。

十灰散《東醫寶鑑》
「大薊・小薊・荷葉・柏葉・茅根・茜草根・大黄・山梔子・棕櫚皮・牡丹皮」 各等分。焼いて火毒を除いて細末にし、生藕汁・生蘿菖汁に松煙墨半椀を すって、5銭服用。
◎嘔・吐・喀血・嗽血を治す。過労で大吐血する者。

十補丸《東醫寶鑑》
「附子(切豆大)1両、塩4両、黒豆(炒)1合」を炒って附子裂に他薬は捨て、附子を取って「葫芦巴・木香・巴戟・川練肉・肉桂・延胡索・蓽澄茄・茴香(炒)・破故紙(炒)各1両」作末し、糯米粉酒姜糊で梧子大の丸剤。朱砂で衣をつけて50~70丸酒で服用。
◎寒疝の陰冷と、小腸・膀胱の奔豚など。

十補丸《経験方》
「鹿茸・杜仲・熟地黄・枸杞子・菟絲子・山茱肉、山薬、麦門冬、五味子」

十補湯《済世全書》《古今方彙》
「人参、白朮、茯苓、黄蓍、肉桂、当帰、川芎、熟地黄、白芍薬(酒)、附子、甘草(炙)、生姜、大棗」
◎諸虚百損、一身痼冷するを治す。


十味温胆湯《古今方彙》
「二陳湯人参・遠志・酸棗仁・五味子・熟地黄・枳実」
◎温胆湯と同じ証に適用
◎兼ねて、四肢浮腫し、飲食味無く、心虚煩悶し、座臥安からざるを治す。

十味芎蘇散《東醫寶鑑》
「川芎1銭半、半夏1銭1分、赤茯苓・紫蘇葉・柴胡・乾葛各1銭、陳皮・枳穀・甘草各7分、桔梗5分」剉作し、1貼に姜3片・棗2枚を入れ水煎服。
◎温・熱の瘟疫を治す。
    
十味芎蘇散《古今方彙》
「川芎7分、半夏6分、柴胡・茯苓各5分、乾葛・紫蘇葉各3分、陳皮・枳殻・桔梗各3分、甘草2分、生姜」水煎。
◎外は頭痛、発熱悪寒あり、内は咳嗽吐痰、気淘(胸中に痰があってむかむかする)の者を主どる。


十味香薷飲《東醫寶鑑》
「香薷1銭半、厚朴・白扁豆・人参・陳皮・白朮・白茯苓・黄蓍・木瓜・甘草各7分」剉作1貼して水煎服。又は毎回2銭を、熱湯或いは冷水で任意に調下。
◎暑をはらい、胃を和らげ、気を補う。
◎暑に中る者は、夏月卒暴、炎暑昏冒、痿厥、吐瀉、喘満、此方之を主どる。《万病回春》     

十味香薷飲《是斎百一選方》《古今方彙》
「黄蓍・人参・白朮・茯苓・陳皮黄連解毒湯・木瓜各5分、香薷1銭、厚朴・白扁豆(炒)・甘草各5分」水煎。
◎暑に伏して身倦、躰困、神昏、頭重、吐利するを治す。
◎暑風には:「黄蓍、羗活」


十味挫散《葉氏録験方》
「附子1銭、茯苓7分、当帰1銭、川芎7分、芍薬1銭、防風7分、白朮7分、黄蓍1銭、桂枝7分、地黄2銭」
◎臂痛、筋を連ね、骨に及び、挙動困難を治す。
◎此方は、血虚、臂痛甚だしき者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎足痛、日を経て脛肉脱し、行歩困難の者に効あり。
◎《癀峯方》に云う、臂絀(ヘキチュウ、ヒジの屈折)力無く、重きに堪えず、此れ乃ち肝腎の気虚し、風邪栄衛の間に客滞し、気血をして周養し能わざらしむ。按ずるに此の症、十味挫散に宜し。《方読便覧》
◎《葉氏》曰く、此薬また血を益し、筋を養い、力を生ぜしむ、と是なり。
◎もし折傷に因る者「調栄湯」に宜し。即ち「八珍湯牛皮消・川骨」《方読便覧》

十味剉散《易簡方》《古今方彙》
「十全大補湯-人参・甘草、+附子・防風」
◎中風にて血弱、臂痛連なり、及び筋骨挙動難するを治す。

十味剉散《漢方治療の実際》
「当帰・芍薬・川芎・地黄・茯苓・朮・黄蓍・桂枝・防風各3、附子0.5」

 十味剉散《易簡方》《漢方後世要方解説》
「当帰・芍薬・地黄・茯苓・白朮・黄蓍・桂枝・防風各3、附子0.5~1」
◎此方は十全大補湯より人参・甘草を去り、附子・防風を加えたもので、血虚による臂痛、又、脚弱、疼痛、歩行困難なる者を治す。最も屡々五十肩にて初老血虚の者に用いられる。

「四物湯」=血弱を補養す
「白朮、茯苓」=脾を補う
「黄蓍、桂枝」=表を補い、肌を生じ、血脈を通ず。
「防風」=骨節痺痛を治す
「附子」=四肢厥逆、十二経を通ず。
    

★適応症及び病名(十味剉散)
[1]脚気
[2]五十肩
[3]四十肩
[4]中風



十味小柴胡湯《医学入門》《古今方彙》
「人参・黄芩・柴胡・乾姜・山梔子各7分半、白朮・防風・半夏・甘草各5分、五味子9粒、生姜」煎服。
◎気虚不足し逆するを治す。

十味参蘇飲《正体類要》
「人参・紫蘇葉・半夏・茯苓・陳皮・前胡・桔梗・葛根・枳穀各4g、甘草2g」を姜水で煎服。

十味蒼柏散《東醫寶鑑》
「蒼朮・黄柏・香附子各1銭、青皮・延胡索・益智仁・桃仁各7分、茴香(炒)
◎湿熱疝痛を治す。

 十味蒼柏散《医学入門》《古今方彙》
「蒼朮、黄柏、香附子<君>、青皮、延胡索、益智仁、桃仁<臣>、小茴香、附子、百草(100種の草を集め黒焼きにしたもの)<佐>」
◎疝にて痛みを作すを治す。

十味当帰湯《備急千金要方》         「当帰3 両、桂枝3分、茯苓、枳実、大黄1両、呉茱萸5分、芍薬8分、人 参1両、甘草2両、乾姜6分」
=「当帰大黄湯[1]《外台秘要方》+枳実茯苓」
◎冷気、脇下に往来し、胸膈を衝いて痛み、脇背に引いて悶える者を治す。
◎《備急千金要方》《外台秘要方》に冷気とは、上は痰飲を指し、下は疝気を指す。
◎疝積
◎衝疝:不大便の者《勿誤薬室方函口訣》

十味導赤散《東醫寶鑑》
「黄連・黄芩・麦門冬・半夏・地骨皮・茯神・赤芍・木通・生地黄・甘草各 5分、生姜5片」
◎心臓の実熱・口舌生瘡・驚悸を治す。

十味敗毒湯[1-1]《華岡青洲方》《勿誤薬室方函口訣》
「柴胡、独活、桔梗、川芎、甘草、荊芥、防風、桜皮、生姜」
右十味、今、撲樕を以て桜皮に代う。
◎癰瘡及び諸慥腫、初起憎寒、壮熱、疼痛を治す。
◎此方は「荊防敗毒散」を取捨したる者にて、荊防よりはその力優なりとす。
◎鼠毒:「茅根倍加」《方読便覧》
◎風犬傷、毒浅き者:「雄黄湯」《方読便覧》
◎すべての皮膚病に効くことが多い:「連翹」《済世薬室》

十味敗毒湯[1-2]《華岡青洲方》《漢方後世要方解説》
「柴胡・独活・撲樕・防風・桔梗・川芎各3、茯苓4、荊芥・甘草・生姜各1」


十味敗毒湯[1-3]《華岡青洲方》《漢方治療の実際》
「柴胡・撲樕(土根皮)・桔梗・生姜・川芎・茯苓各3、独活・防風各1.5、甘草・荊芥各1」

十味敗毒湯[1-4]《華岡青洲方》
「柴胡・桔梗・防風・川芎・桜皮・茯苓各3.5g、独活・荊芥・甘草各2.0g、干姜1.0g」《龍野ー漢方処方集》
=「荊防敗毒散-羗活・前胡・連翹・枳殻・金銀花・薄荷桜笳」《大塚敬節》
「桜笳」とは、

桜の幹のあま肌の部分を削ったものである。《本間棗軒》はこの十味敗毒剤を十味敗毒散と呼び、浅田宗伯は桜笳を撲樕に代えて、十味敗毒湯と呼んでいる。撲樕というのは、土根皮のことである。《大塚敬節》
◎癤・癰・リンパ腺炎・乳房炎、その他の炎症性の瘡腫の発病初期で、悪寒、発熱があって、腫れ痛むものに用いる。《大塚敬節》
◎癰疽、疔腫、一切の瘡毒、惞痛、寒熱、脈緊の者を治す。《有持桂里》
◎化膿症の初期で発熱悪寒疼痛ある者。《龍野ー漢方処方集》




★適応症及び病名(十味敗毒湯)
[1]アトピー性皮膚炎
[2]アレルギー性皮膚炎:
☆65歳女性。本患者は特異体質で、新薬に対して非常な過敏症である。4年前に腎臓炎と言われたことがある。ちょうど3年前に高熱を出したときに使用したペニシリンに反応を起こし、全身に発疹を起こし、3日後に全身は黒くなってしまった。しばらくの間は、すれ違う人々が不審に思い立ち止まって振り返るほどであったという。恥ずかしいので大学病院に入院し、特別の高価な治療をしてもらった。しかし、その折も度々薬の反応を起こし、アメリカから輸入したという、1本4000円という注射をしてもらった時は、口中はもちろん、鼻粘膜、胃腸粘膜と全粘膜が発赤腫脹し、その後ひどいT大病院の○内科では証明書を書いて渡し、以後診察を受けるときは、必ずこの証明書をみると、“本患者は化学薬品に極めて過敏なり、注意を要す”という文面であった。皮膚の色は未だ元通りとまではゆかなかったが、他に治療法がないというので、証明書をもらって退院したのであった。
現症は3日前に眩暈を起こしたので、内科医の診察を受けたところ、血圧が160あるというので化学剤でないという粉薬をもらって飲んだ。ところがまもなく38℃の熱が出たので驚いて訴えたところ、今度は何か注射してくれた。するとたちまち顔面と両手が真っ赤に腫れ上がってチクチク刺激感が起こり、動くと動悸がして苦しい。今日は顔も手の甲も赤黒くなって来たので、3年前のことを思いだして、またあのような苦しい恥ずかしい思いをするのかと、すっかり悲観してしまった。しかし病院に行けば必ず何か注射されるし、何か薬を飲むと必ず反応を起こすので、もうこれ以上診察を受ける気持にもなれないというので、悶々として家人に訴えて騒ぐばかりであった。
夫れを聞いて、近所の人がそれなら漢方薬を飲みなさいといって紹介してくれた。
神経質になっている患者は、不平と不安を綿々と繰り返し訴える。私は内心困った難症に遭遇したと思ったが、十味敗毒湯連翹薏苡仁を10日分与え、無理に診察室を出てもらったほどである。幾度が電話が来ることを覚悟していたが、一向に電話はかかってこなかった。
服薬10日後、患者は非常に喜んで再来した。この薬を2日分飲むと腫脹が引き、赤黒い色も引き始め、薄皮が剥けて、こんなに綺麗になったというのである。引き続き服薬していると食欲も進み、いままで白内障があって視力が弱っていたのが、その方も大変良くなったとのことで前後50日の服薬で廃止した《矢数道明》
[2]陰嚢湿疹
[3]外耳炎:
☆この方は外耳の癤で、葛根湯+桔梗石膏を用いて、効のない者及び湿疹などのために炎症が外耳道に拡がり、外耳道の内壁全体が腫脹しているような時に用いる。《大塚敬節》
☆炎症が激しい時:「石膏」《大塚敬節》
[4]かぶれ:
☆白髪染めによるかぶれに良く効く《大塚敬節》
[4]かゆみ(激しい掻痒感)
[5]汗疱状白癬:
☆「連翹」《大塚敬節》
☆この患者は1年前から左右の掌の皮が脱落するようになった。ちょっと見ると汗疱状白癬の様にも見えるが、2、3の病院で、白癬菌はないと云われた。カユミはほとんど無いが、やや発赤し、次から次へと皮がこぼれる。その他には口渇が強く、舌に白苔がある。大便は1日1行である。
患者は1年間、いろいろの手当をしているが、どうしても治らないという。そこで十味敗毒湯を与えたところ、10日間の服用で、著効があり、40日の服薬で全治した。《大塚敬節》
[6]胸脇苦満
[7]肛門周囲膿瘍
[8]湿疹:
☆発疹は小さく赤みを帯び、分泌物少なく、かゆみが激しい。
☆症状により「連翹」「薏苡仁」
☆浸出液が多くて痂皮を作るようなものには、向かない。《大塚敬節》
☆40才余りの体格のよい小太りの男性。発疹はマッチの実ぐらいの大きさで、少し赤味を帯びて隆起し、上下肢と下腹部から腰のまわりがひどい。かゆいのをガマンしていると身震いする。大小便や食欲に異常なし。私はかってこんな患者に葛根湯を与えて、かえって病勢が増悪したことがあるので、十味敗毒湯を与えた。
これは良く効いて、かゆみがどんどん去り、2ヶ月ほどで全治した。《大塚敬節》 
☆皮膚面からはあまり隆起せず、色も少し赤く、ところどころ落屑があり、カユミもあり、浸出液の無い者に用いる。若い男子で、体格の良い人多く、慢性に経過する。このタイプでカユミが少なく赤く ないタイプに葛根湯で治るものがある。その判別は難しい。《大塚敬節》
☆59歳の体格、栄養共によい男子、手掌と足の裏に、大豆大の粒状のものが、時々出来、それが出来ると1ヶ月は治らない。自発痛は無いが正痛がある。化膿することはなく、いつともなく消える。これも十味敗毒湯を用いて、2ヶ月足らずで全治した。《大塚敬節》
[9]腫脹
[10]小児ストロフルス:
=ジンマシン様苔癬
[11]掌蹠膿疱症:
[12]ジンマシン:
☆太く、皮膚面に赤く隆起しているジンマシンに効く。
☆小さくて、色が皮膚面と同じであるか、それより蒼く見えるようなものには効がない。こんなジンマシンには、「真武湯」が効く場合がある《大塚敬節》
☆「+連翹」《大塚敬節》
☆19才女性。幼年時代に自家中毒症を繰り返し、虚弱な体質であったという。患者は血色の良い肥満したからだで、食欲・大便ともに正常。口渇が強い。ジンマシンは昨年の夏から約1カ年、ずっと続いている
腹部は膨満しているが、胸脇苦満はほとんどない。月経は正常。私はこれに十味敗毒湯+石膏を与えた。3週間の服用で全治《大塚敬節》
[13]神経質     
[14]心下痞鞕
[15]進行性手掌角化症
[16]身体疼痛
[17]癤(フルンケル)
☆36歳女性。1年中顔面、項部などに癤が出来ている。1つ治ると又出来るので、いろいろ抗生物質やペニシリンなども用いているが良くならないと言う。患者は中肉中背で、血色はあまり良くない。 糖尿病はない。商売柄、毎夜酒を少しずつ飲むという。 私はこれに十味敗毒湯を与えたが、1ヶ月ほど飲むと癤の出るのが止んだ。そこで休薬していたところ、1ヶ月ほどたつとまた出始めたので、さらに3ヶ月ほど服薬を続けて全治した。《大塚敬節》
 ☆43歳男性。3年前に胆嚢を摘出した。その前から湿疹があったが、近年は特にひどく、顔面、後頭部、項部、上膊、季肋部、大腿内側などの拡がり痒くて堪らない。ところが、4、5日前から項部と左耳の後ろに、1つずつ大豆大の癤が出来て枕をすることが出来ないという。
湿疹は赤みを帯びた麻の実大のもので、やや隆起し、所々集合して結痂を作っている。癤のまわりはひろく坐をとり硬く、古人が疔と呼んだものである。
私は湿疹も癤も一緒に治るだろうといって十味敗毒湯を与えた。ところが、その夜の7時過ぎ、患家から電話があり、主人が帰宅後、薬を煎じて呑んだところ、1時間ほどたつと急に苦悶を訴え、どうしたものかと心配した。しかしその時は半時間ほどで楽になった。夕方また1服したところ、7時頃より、もう死ぬ、もう死ぬというほどの苦しみで、先年ペニシリンでショックを起こした時のような苦しみだという。私は困った。患家は遠い。そこで、とにかく近所の医師に至急診てもらってくれといって電話を切った。その夜、私は今に電話がありはしないかと、ビクビクしながら寝た。
 翌朝7時に患家から電話があった。おかげさまでという挨拶。私は安心した。その時の話によると、近所の医師が往診に出て留守なので、診てもらえず1時間ほどたつと、病人は眠ってしまった。すやすやと眠ってしまったので、そのままにしておいた。すると、夜中に枕がぬれたというので、診てみると、2つの癤がつぶれて、今までの苦痛はどこかへ消えたという。
こんな風にして、癤は治ったが、湿疹の方はまだ全治に至っていない。《大塚敬節》
[18]全身性エリテマトーデス
十味敗毒湯を用いることもある。小柴胡湯の適応する体質傾向を有するもので、胸脇苦満があり、発赤や浸出液などのある皮膚症状が強いものによい。(漢方診療医典)
    [18]乳腺炎
[19]中耳炎
[20]疔=面疔
[21]麦粒腫
[22]発熱
[23]鼻炎
☆粘液性または膿性の分泌物が多量にでるものによい。急性に用いると慢性に移行することを予防できる。慢性の鼻炎には長期間連用するとよい。(漢方診療医典)
[23]皮膚炎:
☆浸出液が多くて痂皮を作るようなものには、向かない。《大塚敬節》
☆「連翹」《大塚敬節》
☆23才男子。一昨日より頸部にかゆみがあるという。栗粒大の無数の発疹があり、赤く、多少の灼熱感がある。皮膚炎らしい。十味敗毒湯を与え、5日分を飲む切らないうちに完治《大塚敬節》
[24]皮膚枯燥
[25]皮膚の化膿(濃厚な膿汁)
[26]風湿熱
[27]発赤
☆本方より熱証が強いときは「清上防風湯」「治頭瘡一方」を考える。
[28]水虫
[29]面疱
[30]癰 Karbunkel:
☆67歳の男性。やや肥満した色黒の体格で、高血圧症と腹部膨満があり、大柴胡湯を服用して、初診時160-100の血圧が140内外-90内外になっていたが、10日間ほどの旅行から帰って、数日たった 頃、臍の上で、やや左によったところに、小さい癤のようなものができた。あまり痛まないので、薬店で、吸い出し膏薬というもの買ってきてつけておいた。するとだんだん痛みがひどくなり、周囲が赤く硬く腫れてきたという。診てみると鶏卵大の癰である。軽い悪寒があり、体温は37、8℃ある。脈は浮大である。
私はこれに十味敗毒湯連翹を与え、平素から便秘しているので、大黄1.0を加えた。2日間ほどは、夜も眠れないほど痛んだが、3日目に、小さい口が3つほど開いた。すると、やや楽になった。しかし膿はいくらも出ない。手元に破敵膏が無かったので、青木の葉を単軟膏で煮て作った膏薬を貼った。5日目には創面一面に口が開いたが、体温は38、0℃になった。少し不安になったが、十味敗毒湯を続けた。すると翌日は体温も下がり気分が良くなった。創面からは、どんどん膿が出て、10日目には、苦痛を忘れた。そこで紫雲膏を塗ることにした。内服薬は十味敗毒湯で押し通したが、17日目からは紫雲膏だけにした。かくて40日足らずで全治した。          《大塚敬節》
[31]リンパ腺炎:
☆32歳の女性。左の拇指にケガをしたところ化膿し、そのため腋下のリンパ腺が腫れて痛み、悪寒、発熱を訴える。そこで拇指に紫雲膏を塗って、十味敗毒湯を与えたところ、翌日は悪寒も発熱もとれ、2、3日でリンパ腺の腫脹はそのまま消散した。

   


十味敗毒湯[2]《方輿輗》
「羗活、桔梗、川芎、枳実、柴胡、荊芥、防風、連翹、甘草、金銀花」
◎「荊防敗毒散独活・前胡・茯苓・薄荷」《大塚敬節》



十四味建中湯《東醫寶鑑》
「十全大補湯炮附子・肉蓯蓉・半夏・麦門冬各等分」 
◎虚労による気血不足を治す。



十四友元《東醫寶鑑》
「竜歯(細研)2両、熟地黄・白茯苓・白茯神・酸棗仁(炒)・人参・肉桂・阿膠・遠志・酒晒蒸・当帰・黄蓍・柏子仁・紫石英(細研)各1両、辰砂5銭」細末にし、梧子大の蜜丸。30~40丸服用。
◎心と肝の虚弱を補い、心志の不安・睡眠不足を治す。

十六味保元湯《寿世保元》《古今方彙》
「貫衆(去根)3銭、人参・巴戟天各2銭、杜仲(小茴塩煎湯拌炒)1銭半、黄蓍・山薬・当帰・茯苓・独活・蓮蕋・骨砕補各1銭、黄柏(酒)・升麻・竜眼肉各8分、甘草(生)3分、石斛7分」水煎空心に服す。
◎赤白帯下、白淫、虚に属する者を治す。
◎五心煩熱して口舌乾く者「知母・麦門冬・地骨皮」

十六味流気飲[1-1]《東醫寶鑑》
「紫蘇葉1銭半、人参・黄蓍・当帰各1銭、川芎・肉桂・厚朴・白芷・防風 ・烏薬・檳榔・白芍・枳穀・木香・甘草各5分、桔梗3分、青皮1銭」水 煎服。
◎乳ガン(妳巖)を治す。


十六味流気飲[1-2]《万病回春》
「人参、当帰、黄蓍、桔梗、防風、木香、枳殻、芍薬、川芎、肉桂、檳榔子、白芷、厚朴、紫蘇葉、烏薬、甘草」各等分。水煎、食遠臥するに臨み頻りに服す。
◎無名の悪腫、癰疽等の疾を治す。名も無き腫毒を消す。   
◎脉が洪緩沈遅細ならざる者は用うべからず。
◎乳癰には:「青皮」


十六味流気飲[1-3] 《漢方治療の実際》
「人参・当帰・黄蓍・桔梗・防風・木香・枳実・芍薬・川芎・肉桂・檳榔・白芷・厚朴・蘇葉・烏薬・甘草各1.5」




十六味流気飲[1-4]《万病回春》《漢方後世要方解説》
「当帰3、川芎3、芍薬3、白芷2、桂枝3、人参3、黄蓍2、木香2、烏薬2、厚朴2、枳殻2、檳榔2、蘇葉2、防風2、桔梗3、甘草2」
◎諸気鬱滞し腫核を生じ、瘡瘍をなすもの、之を主る。《医方口訣集》
◎此方は《衆方規矩》の外科門に掲げられ、《万病回春》や《医学正伝》の癰疽門に出ず。《衆方規矩》の註に「按ずるに此方はよく、名もなき腫毒を消す。肩頸、或いは手足の甲に腫れ、その色赤く、23年を経ると云うも黄汁のみにて膿まず、世俗之を気腫という。此方之を主る」
「乳房の中に小石の如き物あって痛む、乳核と名く、或いは乳癌となって膿血を出し甚だ痛むは青皮を加う。時々大験あり」

「人参・黄蓍・甘草」=その気を補う
「当帰・芍薬・川芎」=その血を補う
「木香・檳榔・枳殻・厚朴・紫蘇」=気を順らす
「烏薬・防風」=皆気滞を破る。 「桂枝・白朮」=血滞を破る。

★適応症及び病名(十六味流気飲)
[]頸部リンパ腺腫:
[]甲状腺腫:
☆58歳の肥満した女性。バセドウ氏病だというふれこみで来院した。なるほど甲状腺は、左右ともに大きい、右の方は大きい鶏卵ぐらい。 この患者はある漢方の研究家が、バセドウ氏病という診断で、しばらく投薬を続けていたので、患者もそのつもりでいたらしい。
私は甲状腺腫の診断の下に、十六味流気飲を与えた。この患者も、これを7日分飲んで来院した時は、明らかに、この薬の効顕が現れ、引き続き7日分あて25回投薬し、左側は全治、右側はよくみればまだ少し腫れていたが、しばらく服薬を中止した。その後、1ヶ月ほどたって来院したときは、また少し腫れが増加していた。そこで引き続き2ヶ月あまり服薬して、めだたない程度になって休薬した。《大塚敬節》
[]乳ガン:
☆無名の悪瘡、癰疽、あるいは乳岩を治す《衆方規矩》
☆婦人、乳核と云って、乳房の内に小さい碁石のような硬いものが出来痛む者にはこの方を用いる。この乳核という者は5、6年も催して後、乳岩と云う物になって終には死ぬものである。十死の一生の症である。 故に乳核の時に早くこの方を頻りに用いると消散する。乳岩となっては、この方も効がない。《疎註要験》
☆38歳の女性。4人の子供がある。4、5年前、右の乳房にしこりが あるのに気づき、近所の医師に診てもらったところ、乳ガンではない と言われたので、そのままにしていたが、最近、何となく気にかかり、そのしこりが少し大きくなったように思われるので、某大学の外科で診てもらったところ、マストパチーで、将来はガンになるかも知れないから、手術をした方がよいと言われたという。
診察したところ、右の乳房に、大きい梅干し大の腫瘤があり、これは周囲の組織と癒着せず、皮膚の陥没もない。自発痛もない。その他特に変わったところもない。
そこで、十六味流気飲を15日分与え、これをのんでいるうちに少しでも小さくなるようなら2、3ヶ月続けてのめば、手術をしなくてもよくなるが、15日分のんで、まったく変化がなければ手術しないといって帰した。ところが、15日分ずつ5回の投薬で、すっかりきれいに腫瘤がとれてしまった。《大塚敬節》
[]乳腺症
[]癰疽:
☆右の目の下に、グリグリした塊があり、これを押すと白い膿が混じって、眼と鼻から出たが、これを与えて3ヶ月で治った。《衆方規矩》
☆私はかって1婦人を治療したことがある。その婦人は、ウメの種のようなものが数10個も体中に出来て痛み、毎年、春から夏にかけて、その中の6、7個が破れて膿血が流れ、あとで、腐った綿のようなも のが出て、瘡の根が抜ける。すると来年はまた別のところが破れて、古い根が抜け、新しい根が次々と出来る。こんな状態が20年余りも続き、その間、内科的治療も外科的治療もいろいろやったが効かない。    余はこれを診て、この病気は、気の欝結によって生じたものであるから、十六味流気飲を用いた方がよいと云った。すると患者の云うにはいままでも、たびたびこの方を用いましたが、効いたように思いません。そこで、余は云った。この病気は多年の痼疾であるから、量を多くして長期にわたって飲まなければならない。少しの量では効がなと、よって、この方200貼あまりを与えたところ、次の年には新し         いものが出来なかったばかりか、古いものもだんだん消散した。《医         方口訣集》



収嗽湯《保嬰須知》
「天門冬、貝母、檳榔、百部根、甘草」
    ◎小児頓嗽、蛔を兼ねる者を治す。
    ◎此方は頓嗽のを兼ねる者を治す。

聚金丸《厳氏済生方》
      「黄連、防風、黄芩」


手捻散《東醫寶鑑》
      「牛蒡子・白芍・大黄・桃仁各6分、紅花4分、桂枝2分半」水煎服。
◎痘瘡で腰痛する者。神解湯で止痛してから使用。

 手捻散《万病回春》《古今方彙》
      「牛蒡子・白芍薬・桃仁・大黄各1銭、紅花8分、桂枝5分」水煎温服。
    ◎当に靨す時に腹痛して靨せざるときはその痛み著しく中脘に在り、乃ち熱毒凝     滞し、血にて痛みを作すを治す。


 手拈散《医学心悟》
      「没薬、延胡索、五霊脂、香附子」


手拈散(しゅねんさん)《奇効良方》
「延胡索・五霊脂(酒研)・草果・没薬」各等分。

 手拈散(しゅねんさん)《東醫寶鑑》
      「草果玄胡索
       霊脂並没薬
       酒調三二銭
       一似手拈却」
    ◎九種の心痛と心脾痛に効く

螽斯丸《東醫寶鑑》
      「香附子・白薇・半夏・白茯苓・杜仲・厚朴・当帰・秦艽各2両、防風・肉       桂・乾姜・牛膝・沙参各1両半、細辛・人参各2銭3分」作末し、煉蜜で       梧子大の丸剤。空腹時に50~70丸、酒で呑む。
◎経を補い、7日間服用して交合すると孕胎する。

取痔虫方《東醫寶鑑》
      「瞿麦半升、猪牙皀角1寸」を作末し、猪腰子1雙の中に入れて、空腹時に       食べると虫が出る。
◎痔瘻の虫を除く。

取漏膿法《東醫寶鑑》
      「焔硝3両、苦参1両半」作末し、袋を作って、薬は半分、砒素3分を入れ       た後、残りの薬全部入れて縛り、馬に乗るようにまたいで腰にくくりつけ       る。
◎内痔瘻に。

縮砂散《東醫寶鑑》
「縮砂・黄連・木賊」各等分、作末し毎回2銭、調下する。
◎熱を帯びて脱肛腫痛。

縮泉丸《婦人大全良方》
「烏薬、益智仁」

縮泉丸加味《中薬臨床応用》
「益智仁・烏薬・山薬・菟絲子・桑蛸」各等量。作末し糊状につぶし丸剤。1日1~2回、6gづつ服用。
◎脾腎陽虚
◎下痢、遺尿、頻尿。
    


縮泉元《東醫寶鑑》
「烏薬・益智仁」等分に作末し、酒煮の山薬糊で梧子大の丸剤。就寝時に70丸飲む。
◎膀胱の気が少なく、小便が出ないのに、1日100余回もする者。

縮脾飲《東醫寶鑑》
「縮砂1銭半、草果・烏梅肉・香・甘草各1銭、白扁豆・乾葛各7分、姜5片」水煎服。
◎暑月に冷えて腹痛・嘔吐する者。

縮脾飲《和剤局方》《古今方彙》
「白扁豆・葛根各2両、草果・烏梅・縮砂・甘草各4両、生姜」水煎。
◎伏暑の煩渇を除き、暑を消し、吐利を止め霍乱を治す。


朮附湯[1]《東醫寶鑑》
「白朮・附子(炮)各2銭、杜仲1銭、姜3片」水煎服。
◎湿が腎経を傷つけて起こる、腰痛・冷え症。
◎(水様便・腹痛・冷え)

朮附湯[2-1]《東醫寶鑑》
「白朮3銭、附子2銭、甘草1銭、姜3、棗2」水煎服。
◎風湿を治す。(シビレ・暖めると楽になる)

朮附湯[2-2]《近効方》《金匱要略》
「白朮2両、甘草1両、附子1枚半」
右3味、、毎5錢匕、薑5 片、棗1枚、水盞半、煎7分、去滓温服。
◎治風虚頭重眩、苦極、不知食味。煖肌補中、精氣。


朮苓芍薬湯(一名燥湿湯)《東醫寶鑑》
「白朮2銭、白茯苓・白芍・各1銭半、陳皮1銭、炙甘草5分」水煎服。
◎下痢。

朮苓湯《東醫寶鑑》
「蓄朮(土砂)・滑石各2銭、赤茯苓・白朮・陳皮各1銭」水煎服。
◎水を吐く者。

朮連丸《東醫寶鑑》
「白朮4両、黄連4銭半」作末し、神麹糊で黍米大の丸剤。つばで100丸呑む。
◎嘈雑を治す。

茱連丸(一名黄連丸)《東醫寶鑑》
「呉茱萸・黄連各2両」を(酒浸)し3日置き、それぞれ選んで(焙乾)、醋糊で梧子大の丸剤。赤痢には黄連丸30粒を甘草湯で呑み下し、白痢には茱連丸30粒を乾姜湯で呑み下し、赤白痢には2つをそれぞれ30粒づつ甘草乾姜湯で呑み下す。
◎赤白痢を治す。

蓯沈丸(一名蓯蓉潤腸丸)《東醫寶鑑》
「肉蓯蓉2両、沈香1両」作末し、麻子仁汁糊で梧子大の丸剤。
白湯で50丸飲む。
◎津液がなくなり、大便が堅い。 

蓯蓉元《東醫寶鑑》
「当帰・生乾地黄・肉蓯蓉・白芍各1両、胡粉5銭」作末し、黍米大の蜜丸。毎回10丸、黒豆湯で飲む。
◎小児の毛髪が生えない。

蓯蓉牛膝湯《東醫寶鑑》
「肉蓯蓉・牛膝・木瓜・白芍・熟地黄・当帰・甘草各1銭を剉作し、1貼に姜3片、烏梅1箇を入れ水煎服。
◎胸脇と小腹が疼痛して、腹鳴・溏泄(泥のような腹くだし)する者。

暑方《葉天子》
「香・香・佩蘭葉・紫蘇葉・厚朴・銀花・竹葉 薄荷」煎服。


蔚子丸《審視瑤函》《中薬臨床応用》
「蔚子・沢瀉各5g、黄連・枸杞子・枳殻・青子・生地黄各30g、石決明()・麦門冬・細辛・車前子各60g」作末し小豆大の蜜丸。1回9gを食後、重湯で服用。
◎伝染病で衰弱
◎視力障害
◎角膜混濁


熟地黄丸《東醫寶鑑》
「熟地黄・石斛・菟絲子(酒製)・防風・黄蓍・車前子・蔚子・覆盆子・肉蓯蓉(酒浸)・磁石(製)・地膚子各1両、兎肝1具(焙乾)」作末し蜜で梧子大の丸剤。空腹時に塩湯で50~70丸飲む。
◎腎が弱くて目に黒花が見える者を治す。

熟地二陳湯《景岳全書》《中薬臨床応用》
⇒「金水六君煎」
「当帰9g、熟地黄12g、陳皮5g、半夏6g、茯苓9g、甘草(炙)3g」水煎服。
◎肺腎陰虚
◎痰が多い
◎咳嗽
◎息苦しい

苓湯《東醫寶鑑》
「沢瀉1銭2分、猪苓・赤茯苓・白朮・香・黄連(姜汁炒)・白扁豆・厚朴 (製)各1銭、甘草3分」水煎服。
◎夏の下痢で痢疾になろうとする者。
【加減方】[白芍薬・車前子](小便が赤く、水様の下痢)


糯米膏《本草綱目》《東醫寶鑑》
「糯米1升、皀角(切砕く)半升、銅銭100両を炒って黒く焦がしたら、銅銭は捨て、末にして酒と混ぜて膏を作り、患部に貼る。
◎打撲による骨折・筋の切れた者。

棕櫚丸
「棕櫚(焼灰)・白礬枯末」各等分にし、2銭を酒で服用。
又は、絲瓜絡の焼いた灰で等分に作末し塩湯で服用。
    ◎崩漏・帯下を治す。

春沢湯[1]《奇効良方》
「五苓散柴胡・人参・麦門冬」
◎伏暑、発熱、煩渇、引飲、小便不利を治す。
◎《医法選要》に云う、兼ねて傷寒を治す。陰陽不分、疑似の間、最も之を服るに宜し。又云う、渇甚だしきは桂を去り、五味、黄連各2銭を加うと。
◎此方は能く伏暑の熱邪を解す。《勿誤薬室方函口訣》
◎此症、柴苓湯に似たれども、
<1>柴苓湯は往来寒熱を主とす
<2>春沢湯は清熱滋潤を主とす。
◎湿瘟、白虎湯の症に似て、熱気はやや軽くして湿邪の方重き者に用いる。


春沢湯[2]《東醫寶鑑》
「五苓散桂枝、人参」
◎暑熱と燥渇と引飲に度がなく、水が入ればすぐ吐く者。

春沢湯《済世全書》《古今方彙》
「猪苓2両、沢瀉3銭、白朮・茯苓各2銭、肉桂・人参・柴胡各1銭、麦門冬1銭半、燈心草」水煎。
◎伏暑発熱、煩渇引飲、小便不利するを治す。兼ねて傷寒を治す。陰陽を分たぬ疑似の間に最も之を服するに宜し。
◎渇甚だしければ:「肉桂五味子・黄連」

春雪膏[1]《東醫寶鑑》
「仁2両、竜脳2銭半、生蜜2銭半、生 6銭」細末にしてたらす。
◎目赤・腫痛・涙が出る者。点眼薬。

春雪膏[2]《東醫寶鑑》
「硼砂3銭、竜脳1銭、朴硝5銭」細末にし、少しづつ口中の津液で調合して入れて目をつぶり、しばらくして開けると涙が出て効く。
◎眼目赤腫と障の出る者。点眼薬。

順気丸《東醫寶鑑》
「香附子8両を童便に漬けて晒して乾かし、作末し栗米糊で丸めて食べる。」
◎血欝を治す。

順気剤《香川修徳》
「茯苓、半夏、枳実、厚朴、甘草、生姜」
◎吾が門は順気を以て治療の第一義と為す。順気とは承気なり。蓋し仲景の承気湯の意に取るなり。苟も能く此方の識り得て、臨機応変、以て之を活用すれば、則ち処剤治病、掌上に運らすべし。
◎此方は半夏厚朴湯の変方にして、承気の意を寓す。艮山の趣意は唯一気滞留するに因って胸中心下に飲を畜へ、或いは嘔吐、悪心をなし、或いは痰喘壅盛、気急、或いは種々閉塞の症を発す。是皆一気の為す所故、反って淡味の剤を用ふれば畜飲にもさわらずして痞塞早く緩む。即ち柔よく剛を制するの手段なり。今病者に臨んで、芩連の苦味にて推すべき症も無く、又芍薬、甘草、膠飴の甘味にて緩むべき症にもあらず、ただ気胸中に迫りて鬱悶多慮するに用いて効あ。半夏厚朴湯、温胆湯も同類の方なれども、各主証ありて、少しくゆく処を異にするなり、《勿誤薬室方函口訣》


順気散《東醫寶鑑》
「厚朴2銭半、大黄2銭、枳実1銭」水煎服。
◎消中で良く食べられるが、小便が黄色く赤い者。

順気消食化痰湯《医方考》《古今方彙》
「半夏・天南星各1分、神麹・麦芽・陳皮・青皮・杏仁・蘿葡子・山楂子(炒)・葛根・紫蘇子・香附子各1両、生姜」水煎。or細末して作丸するも亦可なり。
◎飲食にて痰を生じ、胸膈膨悶する者を治す。

順気消滞湯《寿世保元》《古今方彙》
「陳皮黄連解毒湯、半夏、白朮、茯苓、丁香、柿蔕、黄連、神麹、香附子、竹茹、甘草、生姜」水煎温服。
◎飽食の後に逆を発し、連声止まざるを治す。

順気導痰湯《東醫寶鑑》
「半夏・天南星・茯苓・枳実・陳皮・香附子・烏薬各1銭、木香・沈香・甘草各5分、姜5片」水煎服。
◎痰飲を治す。

順気木香散《東醫寶鑑》
「縮砂・丁香皮・良姜・乾姜・肉桂・陳皮・厚朴・桔梗・茴香(炒)・蒼朮 (炒)各1銭、甘草(炙)5分、姜3、棗2」水煎服。
◎寒脹で心腹が痛み、顔が黄色く、気が憔悴し、又下痢する者。

順気和中湯[1-1]《証治準縄》
「黄蓍6g、人参4g、白朮・陳皮・当帰・芍薬各2g、甘草(炙)・升麻・柴胡各1.2g、蔓荊子・川芎・細辛各0.8g」

順気和中湯[1-2]《東醫寶鑑》
「黄蓍(蜜炒)1銭半、白朮・当帰・芍薬・陳皮各5分、升麻・柴胡各3分、蔓荊子・川芎・細辛各2分」水煎服。
◎気虚で頭痛・耳鳴り。

順気和中湯[2-1]《古今医鑑》《東醫寶鑑》《古今方彙》
「陳皮(塩水炒)・香附子(醋炒)・山梔子(姜汁炒黒)各1銭、白朮(土炒)8分、白茯苓7分、半夏・神麹・黄連(姜汁浸し晒して乾燥、猪胆汁で炒)各6分、枳実5分、縮砂3分、甘草(炙)2分を剉作し、1貼に姜3片を入れ、黄土を水で混ぜてふるって清澄を取ったもので煎じ、竹瀝・童便・姜汁を入れ温服。
◎嘔吐・反胃・嘈雑・呑酸・噎膈・痰水を吐く者。心腹の刺痛を治す。
◎気虚には:「黄蓍・人参」》
◎血虚には:「当帰・川芎」
◎気脳或いは気が舒暢せざるには:「烏薬・木香」
◎胸膈飽悶するには:「蘿葡子」
◎心下嘈雑、醋心には:「呉茱萸、黄連・白朮倍加」
◎嘔吐止まざるには:「香梗」


順気和中湯[2-2] 《漢方治療の実際》
「陳皮・香附子・梔子各3、茯苓・半夏・白朮各2、黄連・枳実各1.5、神麹・縮砂・甘草各1、生姜3」


順気和中湯[2-3]《古今医鑑》《漢方後世要方解説》
「茯苓・白朮・半夏空く3、陳皮・香附子各2、枳実・黄連・山梔子・縮砂・神曲・生姜・甘草各1」
◎嘔吐、反胃、嘈雑、呑酸、痞悶、噫気、噎膈、心腹刺痛、悪心、痰水を吐するを治す。
◎此方は気を順らし、中を和する剤として順気和中と名付ける。心腹刺痛ばかりでなく、胸痛をも治する。
◎胸中には湿熱鬱痰があって煩悶、嘔吐、或いは粗雑、呑酸する者によい。
◎此方は虚寒の証ではなく、実熱の傾向ある者に用いる。
◎原方の如く修治するを可とするも、そのままにても効がある。
「神曲」=胃を開き、食を消し、中を調え、気を下す。
「山梔子」=鬱を解し、煩を除き、火を降ろし、胃痛を治す。

◎目標:
「胸焼け・胸煩・吐水のうち1つがあって、飲食を吐する症があるならば、必ずしも酒客でなくても効く」

★適応症及び病名 (順気和中湯)
[1]胃痛:
☆一時軽快する《矢数道明》
☆酒客の慢性胃炎で、嘔吐、胸焼け、吐水、気などのある者に用いる。又このような症状があって胃の痛み者にも良い《大塚敬節》
[2]胃潰瘍
[3]胃酸過多症
[-3]]嘔吐:
☆1農夫が5、6ヶ月も嘔吐が止まず、そのうえ大便はウルシのようであった。患者が云うのに、いつも胸焼けがあったが、この頃は特にひ どくなったと。そこで順気和中湯を与えて、10のうち7、8は治った。しかし酒客であるので、大酒を呑んでまた嘔吐するようになった。 そこで再び前方を与えて治った。ところが翌年また大酒を呑んで嘔吐が始まり、こんどは前方を与えたが効なくして死んだ《積山遺言》
[4]胸痛
[5]十二指腸潰瘍
[6]腹痛:
☆酒客病の上逆腹痛《矢数道明》
[7]肋間神経痛


潤下丸《東醫寶鑑》
「陳皮1斤(塩2両をで煮て乾燥焙)、甘草2両(粉末)」湯に浸して蒸し餅で梧子大の丸剤。白湯で30~50丸服用。
◎痰積気滞を治す。

潤腎丸《東醫寶鑑》
「蒼朮1斤に韭葉1斤を搗いて絞ったものをかき混ぜ9回蒸し9回晒し、又茴香半斤を共に蒸して茴香は捨て、熟地黄1斤、五味子半斤、乾姜を蒸して棗肉と梧子大の丸剤。空腹時に米飲で100丸飲む。
◎脾腎の虚。痩せて顔色が悪い者。


潤腸丸[1]《《沈氏尊生書》東醫寶鑑》
「当帰・生地黄・枳穀・桃仁・麻子仁」各等分。作末し、梧子大の蜜丸。空腹時に40~50丸飲む。
◎便秘で、七・八日間も便がない老人。コロコロ便。

潤腸丸[2]《東醫寶鑑》
「杏仁・枳穀・麻子仁・陳皮各5銭、阿膠・防風各2銭半」作末し、梧子大の蜜丸。毎回50丸、老人は蘇子湯で、若い人は荊芥湯で服用。
◎便秘。

潤腸膏《東醫寶鑑》
「威霊仙4両を搗いて汁を出し、生姜4両の汁を取り、真麻油2両、白砂蜜4両」弱火で煎じ水飴のようになったら、1匙づつ食べる。
◎噎膈・反胃を治す。

潤腸湯[1-1]《万病回春》《古今方彙》
「当帰・熟地黄・生地黄・麻子仁・桃仁・杏仁・枳殻・厚朴・黄芩・大黄各等分、甘草半減」水煎。
◎大便閉結して通ぜざるを治す。
◎発熱には:「柴胡」
◎腹痛には:「木香」
◎血虚枯燥には:「当帰、熟地黄、桃仁、紅花各倍加」
◎風燥して閉づる者には:「郁李仁・皀莢・羗活」
◎気虚して閉する者には:「人参・郁李仁」
◎気実にて閉づる者には:「檳榔子・木香」
◎痰火にて閉づる者には:「括楼仁・竹瀝」
◎汗多くor小便去ること多きに因りて津液枯渇して閉づるには:「人参・麦門冬」
◎老人気血枯燥して閉づる者には:「人参・鎖陽・麦門冬・郁李仁、当帰倍加、熟地黄倍加、生地黄倍加、桃仁少なく」
◎産婦血を去ること多くして枯燥して而して閉づるには:「人参・紅花、当帰倍加、熟地黄倍加、黄芩・桃仁」
◎「+檳榔子」=「通幽湯」


潤腸湯[1-2]《万病回春》《漢方後世要方解説》
「当帰・熟地黄・乾地黄各3、桃仁・杏仁・厚朴・黄芩・麻子仁各2、枳実1、甘草1.5、大黄1~3」
◎此方は津液枯燥に因って大便閉結する者に用いる。
◎古方の麻子仁丸より変じた処方。
(麻子仁丸−芍薬、+当帰・地黄・桃仁・甘草・黄芩)
◎老人など殊に多く、皮膚枯燥して承気の類用い難く、腹部を按ずれば燥結せる腸索を指頭に触れ、累々たるを認めることが多い。
◎他の下剤にては快く通ぜざる者に与えてよい。
◎動脈硬化症、慢性腎炎などを伴う老人の便閉には此方の証が多い。

「当帰、地黄」=血燥を潤す
「杏仁」=大腸気閉、便難を治す。
「厚朴」=脹を消し、満を除く、
「黄芩」=大腸の熱を清うす
「枳殻」=脹を寛め、気結を治す。
「桃仁」=大腸を潤す。
「麻子仁」=脹を潤し、結を通ず。


潤腸湯[1-3] 《漢方治療の実際》
「当帰・地黄各4、麻子仁・桃仁・杏仁・枳実・厚朴・黄芩・大黄各2、甘草1.5」


潤腸湯[1-4]《万病回春》《龍野ー漢方処方集》
「当帰・熟地黄・乾地黄各3.5g、麻子仁・桃仁・杏仁・枳殻・厚朴・黄芩各2.0g、大黄1.0g、甘草1.5g」
◎虚証の便秘。
◎動脈硬化の便秘。

★適応症及び病名(潤腸湯)
[1]陰虚の便秘
[2]口が乾く(夜中に)
[3]コロコロ便(兎糞状の排便)
☆常習性のコロコロ便で以下の者によく見られる。
 1.老人 2.虚弱者 3.術後の回復期 4.動脈硬化 5.慢性腎炎
[4]高血圧で便秘
[5]産後の便秘
[6]習慣性便秘:
☆体液欠乏し、大腸の粘滑性を失ったために起こった弛緩性またはケイレン性の常習性便秘に用いてよく奏効する。《矢数道明》
[7]動脈硬化で便秘
[8]疲労倦怠
[9]皮膚枯燥
[10]腹壁弛緩
[11]慢性腎炎で便秘
[12]老人の便秘


潤腸湯[2]《東醫寶鑑》
「蜂蜜1両、香油5銭、朴硝」水煎、温服。
◎老人・虚弱者の便秘。

潤腸湯[3]《東醫寶鑑》
「麻子仁1盃半を細切りし、水浸して皮脂を去り、桃仁・荊芥穂各1両を作末し丸剤。塩を少し入れて煎じ、茶代用。」
◎大便の秘渋。




潤肺丸[1]《東醫寶鑑》
「訶子皮・五倍子・五味子・黄・甘草」各等分。作末し、桜桃大の丸剤。毎回1丸飲む。
◎久咳・声がれ・言語不能。


潤肺丸[2]《東醫寶鑑》
「貝母1両、瓜呂仁・青黛各5銭を作末し、姜汁に蜜を入れ膏をつくり、溶かして呑む。
◎燥痰・乾嗽・労嗽。

潤肺豁痰寧嗽湯《東醫寶鑑》
「陳皮・半夏・熟地黄・黄柏・知母各8分、白茯苓7分、黄芩(酒洗)・貝母・天門冬・麦門冬・紫菀(酒洗)・款冬花(酒洗)・桔梗・当帰・甘草各6分、姜3片」水煎服。
◎陰虚の喘急。痰厥。

潤肺膏[1]《東醫寶鑑》
「紫菀・杏仁・款冬花各1両、麻黄・桔梗・訶子・細辛各5銭、枯白礬1銭、胡桃肉1両、生姜2両、精油8両、蜜1升」作末し、かき混ぜ、毎回2~3匙、就寝時に白湯で調下。
◎咳・痰喘。

潤肺膏[2]《東醫寶鑑》
「羊肺・杏仁(細研)・柿霜・真酥・真蛤粉各1両」白蜜2両で羊肺を洗い、次に5味と煮て服用。
◎虚労の長い咳や肺痿を治す。

潤肺除嗽飲《医学正伝》《東醫寶鑑》
「款冬花・紫菀茸・麻黄・陳皮・石膏粉・桔梗・半夏・桑白皮・枳穀・烏梅肉・罌栗殻各7分、人参・杏仁・薄荷・生甘草各5分、五味子9粒を剉作し、1貼に姜3片・茶一握りを入れ煎服。
◎老年の咳を治す。

潤肺除嗽飲《医学正伝》《古今方彙》
「人参・杏仁・甘草(生)・薄荷各3分、五味子・麻黄・紫菀・陳皮・石膏・款冬花・桔梗・半夏・枳殻・烏梅・桑白皮・罌栗殻(蜜炙)各5分、生姜、細茶」水煎。
◎遠年咳嗽するを治す。


潤麻丸潤麻丸
◎血燥と便秘。


小安腎丸《東醫寶鑑》
「香附子・川楝子・各半斤を塩2両・水2升で煎じ、煮詰まったら切って焙り、茴香(炒)6両、熟地黄4両、川烏(炮)・川椒(炒)各2両を作末し、酒糊で梧子大の丸剤。空腹時に塩湯又は温酒で30~50丸飲む。
◎虚労に腎気が冷え、小便が濁り、だんだん痩せて顔色が黒くなり、目が見えなくなって、耳鳴りがし、牙歯がうく者。

小胃丹《東醫寶鑑》
「芫花(醋浸一昼夜炒黒)・甘遂麺(水浸半日、晒して乾燥)・大戟(水で長期間煮て、晒し乾燥)各5銭、大黄(湿紙につつんで熱、酒浸炒)1両、黄柏(炒)2両」作末し、麻子大に粥で丸剤。毎回10丸就寝時に、唾で飲み込む。又、白朮膏で蘿葡子大の丸剤。就寝時に津液又は白湯で、2030丸飲む。
◎膈上の湿痰・積熱を治す。


小烏沈湯1《東醫寶鑑》
「香附子2両、烏薬1両、沈香・甘草各2銭半」作末し塩湯で服用。
◎心腹の刺痛に。

小烏沈湯2《東醫寶鑑》
「香附子(炒)4両、陳皮(去白)1両、甘草(生)2銭半」細末にし、毎回2銭塩湯で服用。
◎心腹の刺痛に。

小温経湯《医学入門》《古今方彙》
「当帰・芍薬・川芎・官桂・牡丹皮・莪朮各5分、人参・肝臓・牛膝各1銭」水煎。
◎血海(子宮)、虚寒或いは風邪のおそう所と為り、月水利せざるを治す。

小温中丸《東醫寶鑑》
「白朮3両、山楂肉・青皮・蒼朮・神麹各2両、香附子(便製)1両半」作末し醋糊で梧子大の丸剤。空腹時に塩湯で70~80丸飲む。
◎食積疸を治す。

小黄丸《東醫寶鑑》
「黄芩1両半、天南星・半夏各1両」作末し姜汁に漬けて搗いた餅で梧子大の丸剤。姜湯で50~70丸呑む。
◎熱痰咳嗽で脈が多く、顔が赤く煩渇する者。


小活血散《東醫寶鑑》
「白芍」細末にし、毎回1銭を酒で調下。
◎痘疹が多く出、身体が痛み、煩躁・脹痛する者。

小活絡丸《外科全生集》【中成薬】
「乳香、没薬、烏頭、地竜、胆南星」1日1~2回、1丸づつ服用。
◎脳血管障害のよるしびれ、関節痛。
◎風湿による手足の拘攣・疼痛。醒脾

小活絡丹《和剤局方》
「草烏、烏頭、天南星、地竜、乳香、没薬」
◎腰痛

小陥胸湯[1-1]《傷寒論》
「黄連1両、半夏(洗)半升、括蔞実(大)1枚」
以上三味、以水六升、先煮括蔞、取三升、去滓。内諸薬、煮取二升、去滓、分温三服。
◎小結胸病、正在心下、按之則痛、脉浮滑者、小陥胸湯主之。

小陥胸湯[1-2]《傷寒論》《東醫寶鑑》
「半夏(製)5銭、黄連2銭半、瓜蔞(大)1/4」剉作1貼し、水2盞に先に瓜蔞と煎じ、半分くらいになったら半夏・黄連を入れ、又煎じて半分ぐらいになったら、滓を捨て温服。


小陥胸湯[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「黄連1.5、括呂仁3、半夏5」


小陥胸湯[1-4]《傷寒論》《古今方彙》
「黄連1銭3分、半夏2銭6分、括楼仁(連穣)2銭半」水煎。
◎一方に、桔梗、黄芩を加える。《医学入門》
◎傷寒、之を下し、早く熱結し、胸中之を按ずれば則ち痛む。
◎傷寒にて渇を発し、而して飲水を大いに過して結胸となり、而してを発する者を治す《寿世保元》


小陥胸湯[1-5]《傷寒論》
「黄連3g、法半夏4.5g、括蔞仁18g」水煎服。《中薬臨床応用》
◎此方は飲邪心下に結して痛む者を治す《勿誤薬室方函口訣》
◎病、正に心下に在り、之を按ずれば痛み、心中煩して嘔し、或いは胸中痺する者を治す《方極附言》
◎所謂小結胸は、正に心下に在り、之を按ずれば或いは痛み、して涎沫を唾し、時に吐せんと欲し、心胸中煩し、或いは痛み者なり。小陥胸湯之を主どる《医聖方格》
◎括蔞実は痛みを主とす。

【腹証】
《腹診配剤録》
“心下に物有り、之を按ずれば即ち痛む”



小陥胸湯[1-6]《傷寒論》
★適応症及び病名(しょうかんきょうとう)
[1]胃炎
[2]胃酸過多症
[3]胃のあたりが落ち着かない。
[4]嘔吐:
☆傷寒、渇を発して水を飲むこと大いに過ぎ、結胸をなして嘔を発する者を治す。《雑病翼方》
[5]喀痰:
☆専ら鬱熱、咳嗽し、痰吐せざるを治す。《雑病翼方》
[6]気管支炎
[7]気管支肺炎
[8]亀胸:
☆小児の胸骨突起し、亀胸と称する者を治す。紫円、或いは南呂丸を兼用す《類聚方広義》
[9]胸中苦悶:
☆心下痞して胸膈痞満し、或いは発熱し、或いは喘咳し、或いは尿利減少し、その脈浮緩なる証《奥田謙蔵》
[10]胸膜炎:
☆胸痛ありて喘咳し、呼吸促迫して安穏ならず、その脈伏して緊なる証《奥田謙蔵》
[11]呼吸促迫:
☆熱性症候無くして心下部微痛し、喘咳して呼吸促迫し、尿利少なきも頻数なる証《奥田謙蔵》
[小児の癇症]


          ☆子供の気むつかしい者に小陥胸湯の効くこともある《大塚敬節》
     [12]深呼吸すると胸が痛い。:
          ☆胸満して塞がり、気難しく、或いは嘈雑、或いは腹鳴下利し、或           いは食物進まず、或いは胸痛を治す。《勿誤薬室方函口訣》
     [13]心下部に痞塞感がある:
          ☆胸痺を治す。
          ☆熱痰膈上に在る者を治す。
          ☆心下結痛し、気喘して悶ゆる者を治す《内台方議》
     [14]滲出性肋膜炎:
          ☆乾性肋膜炎等にありては、証に由り、本方に大小柴胡湯を合方す           《奥田謙蔵》
     [15]セキをすると胸が痛い
     [16]喘咳:
          ☆喘息妨悶し、胸膈痞痛、背に徹する者、瓜蔞実丸《厳氏済生方》           に宜しと。即ち「本方桔梗」を丸と為すものなり。《雑病翼方》
          ☆熱性症候著しからずして喘咳し、胸脇、及び心下部痞満し、その           脈浮なる者《奥田謙蔵》
          ☆凡そ咳嗽して面赤く、胸腹脇常に熱し、ただ手足乍ち凉なる時有           り、その脈洪なる者は、熱痰膈上に在る也。小陥胸湯に宜し《張           氏医通》
     [17]嘈雑
     [18]胆石症
  [19]つばを吐く
     [20]吐乳:
          ☆小児の吐乳証《奥田謙蔵》
  [21]肋間神経痛



小皀角元《東醫寶鑑》
      「皀角(炙)・枳穀」各等分。梧子大の蜜丸。米飲で70丸飲む。
◎風秘を治す。老人にはさらに良い。

小解毒湯《栗山》
      「遺糧・滑石・沢瀉・阿膠・茯苓・木通・忍冬・大黄」
    ◎下疳にて茎中痛み、膿出ずる者を治す。
    ◎此方は、内注下疳(梅毒性尿道炎)の淋痛を治す。《勿誤薬室方函口訣》

小芎黄湯《東醫寶鑑》
      「川芎3銭、黄芩2銭、甘草5分」水煎服。2~3服した後、大芎黄湯を使       う。
◎破傷風が中に入り、表に熱のある者。

小膠艾湯《東醫寶鑑》
      「阿膠珠2銭、艾葉4銭」水煎服。 
◎悪阻で胸背が痛む者。

小驚元《東醫寶鑑》
      「欝金・皀角(水煮)・黄連・馬牙硝・木香・香・草竜胆各2銭半、全蝎3       個」作末し、麺糊で梧子大の丸剤。雄黄・朱砂・麝香・金銀箔で衣をし、       薄荷湯で1~2丸呑む。
◎驚風を治す。

小金丹《外科全生集》
「白膠香・草烏頭・五霊脂・地竜・木鼈子・当帰身・乳香・没薬・麝香・墨       炭」
◎流注(リンパ管炎)・痰核(リンパ腺炎)・乳ガン
・横痃



小薊飲子《東醫寶鑑》
      「藕節2銭、当帰1銭、山梔子8分、小薊・生地黄・滑石・通草・蒲黄各5       分、甘草3分、竹葉7片」水煎服。
◎下焦結熱と尿血を治す。

小薊飲子《東醫寶鑑》
「生地黄2銭、小薊根・滑石・通草・蒲黄(炒)・藕節・竹葉・当帰・山梔子・炙甘草7分」水煎し、空腹時に服用。
◎下焦の結熱による血尿・淋痛。

小薊飲子《厳氏済生方》《中薬臨床応用》
「小薊根・生地黄・蒲黄(炒)・藕節・淡竹葉・通草・滑石・山梔子(炭)・当帰・甘草」各等分、粗末にし毎回12g水煎し温服。
◎血淋。



小薊散《中国民間験方》
「小薊草(炒め炙る)・白・生蒲黄・生香附子各12g」を微細末にする。密閉貯蔵。

小薊散《東醫寶鑑》
「百草霜・小薊・香附子・蒲黄(炒)各5銭」作末し、牙歯に塗る。随時。
◎牙宣出血を治す。


小建中湯[1-1]《傷寒論》
「桂枝(去皮)3両、甘草(炙)2両、大棗(擘)12枚、芍薬6両、生姜(切)3両、 膠飴1升」
以上六味、以水七升、去滓、内飴、更上微火消解。温服一升、日三服。嘔 家不可用小建中湯、以甜故也。 (甜=テン,甘くうまいこと)
◎傷寒、陽脉、陰脉弦、法當腹中急痛、先與小建中湯。不差者、小柴胡湯主之。


小建中湯[1-2]《金匱要略》
「桂枝(去皮)3両、甘草(炙)3両、大棗12枚、芍薬8両、生姜2両、膠飴1 升」
以上六味、以水七升、煮取三升、去滓、内膠飴、更上微火消解、温服一升、 日三服。
[千金療男女因積冷気滞、或大病後不復常、苦四肢沈重、骨肉痠疼、吸吸少氣、行動喘乏、胸満氣急、腰背強痛、心中虚悸、咽乾唇燥、面體少色、或飲食無味、脇肋腹脹、頭重不舉、多臥少起、甚者積年、軽者百日、漸至痩弱、五臓氣竭、則難可復常、六脉倶不足、虚寒乏氣、少腹拘急、羸瘠百病、名曰黄蓍建中湯、又有人参二両。」
◎虚労裏急、悸、衂、腹中痛、夢失精、四肢酸疼、手足煩熱、咽乾口燥、小建中湯主之。
◎男子黄、小便自利、當與虚労小建中湯。
◎婦人腹中痛、小建中湯主之。


小建中湯[1-3]《傷寒論》《東醫寶鑑》
「白芍5銭、桂枝3銭、甘草(炙)1銭」を剉作し、1貼に姜5片・棗4枚を入れて水煎し、半分ぐらいになったら滓を捨て、膠飴1両を入れて再煎服用。
◎虚労による疼痛・夢精・四肢がしびれて痛む・咽喉が乾く者。


小建中湯[1-4]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「桂枝6g、白芍薬12g、甘草(炙)6g、生姜6g、大棗9g、膠飴30g(溶解)」水煎服。
◎虚弱体質で解表剤を使用出来ない、慢性病患者の風寒感冒。




小建中湯[1-5]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「桂枝・甘草・大棗各3.0g、芍薬6.0g、水飴40.0g、干姜1.0g」
水280ccを以て水飴以外の薬を煮て120ccに煮詰め滓を去り、水飴を加え て少し温めて溶解し、3回に分服。
◎裏急し、腹皮拘急、及び急痛する者を治す。《吉益東洞》
「為則按ずるに、此の方は芍薬甘草湯より出づ。故に諸病、腹拘急して痛む者を主治するなり。」《薬徴》
◎小建中湯は《傷寒論》に其の証備らず、是を以て世医方意を獲ず、以て補剤と為す、故に其の施す所、竟(おもう)に効なし、為則按ずるに此方は桂枝加芍薬湯に類するが故に諸病腹拘急して痛み或いは四肢痠痛する者を治す。《重校薬徴》
◎此方は中気虚して腹中の引っ張り痛むを治す。すべて古方書に中と云うは脾胃のことにて、建中は脾胃を建立するの義なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎全体、腹くさくさとして無力、その内のここかしこに凝りある者は、此湯にて効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎血管透過性亢進による出血、or黄疸、or筋痛。
◎小建中湯は胃中を湿らせる方なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎此方、能く中気を建立す。故に之を建中湯と名くと。又、小と称するは、その大建中湯に比して作用緩和なるを以てなり。《奥田謙蔵》
◎小建中湯、当帰建中湯、黄蓍建中湯、蓍帰建中湯などは腹直筋の拘急がひどくて、歩行困難、または歩行不能の者に用いて時に著効を得ることがある。その際疼痛のある場合があり、知覚麻痺を伴うこともある。《大塚敬節》
◎腹直筋が軟弱無力のこともある《大塚敬節》
◎目標:
《大塚敬節》
<1>体質の悪い疲労しやすい人。
<2>または平素は体質が良いが、無理を重ねて疲れたような場合。
<3>小建中湯の患者は体力がないから、動悸がしやすく、手足がだるかったり、また手足に気持ち悪い熱感を覚えたりする。口も乾燥しやすい。
《有持桂里》
“此方は腹に力が無くて拘急する者に用いる。その他いろいろの虚の徴候があるものである。その内、小便自利も虚候の1つである。しかし必ずしも自利がなくてもよい”
《方読弁解》
“脈大数にして弦、腹痛、拘攣し、甘を好む者によく応ず。此方は桂枝芍薬を用いて腹中を調和し、脾胃を養い、急迫を緩める。膠飴は虚冷を補い、腹中に入って腹力を生ずる”

【腹診】
《大塚敬節》
“腹直筋を浅く腹表に触れる場合で、古人が2本棒とか、火吹竹とか呼んだものであるが、いつでもこの腹証がないと使用できないことではない。”
“皮下脂肪が少なく、腹壁がうすい。又、これと異なり、腹部全体が軟弱無力で、腸の蠕動を腹壁を透して診ることの出来る場合がある”
《矢野敏夫》
“臍部のすぐ左側に小さい堅い抵抗・圧痛を触知することあり”



小建中湯[1-6] 《傷寒論》《漢方治療の実際》
「桂枝・生姜・大棗各4、芍薬6、甘草2」以上を法の如く煎じ滓を去り、膠飴20を入れ、再び火にかけ、5分間煎じ、3回に分服。

☆体質改善の基本処方
「桂枝加芍薬湯に膠飴を加えたのが小建中湯。膠飴は玄米やうるち米などを麦芽で発酵させ飴にしたものだ。
体質改善の基本処方で
①体質虚弱
②血色がすぐれない
③腹痛
④動悸
⑤手足のほてりや冷え
⑥頻用や多尿
⑦小児虚弱体質
⑧夜尿症
⑨夜泣き
⑩慢性胃腸炎
などが使用目標になる。小児用だが、成人や老人にも多用される。
小児は、緊張するとお腹が痛くなるほか、寝汗をかいたり、疲れると手足がうずいて母親に「痛いからもんで」などと訴えることも多い。
口唇が乾燥しやすく、カサカサして痛くなる。アトピー性皮膚炎など皮膚のカサカサやジグジグには小建中湯に黄蓍を加えた黄蓍建中湯がよく使用される(花輪嘉彦・北里研究所東洋医学総合研究所長)2006.2/7《日経》


★適応症及び病名(しょうけんちゅうとう)
[1]あくび:(食後に多い)
[2]アデノイド:=咽頭・扁桃の増殖・肥大。《腺様増殖症》
[3]足がケイレン
[4]アレルギー性鼻炎に有効な場合がある
[5]インポテンツ
[6]胃アトニー
[6]胃潰瘍
[7]胃ガン:
☆60歳男性。上諏訪の赤十字病院で、胃ガンの末期だと診断され、嫁にいっている娘を頼って上京し、東京大学の付属病院でも診てもらったが、ここでもガンの末期だから、レ線で調べる必要もないと言われ、患者はすっかりしょげこんでいた。
患者は、痩せて血色も良くない、腹診してみると、腹壁一体が板のように硬い。主訴は、激しい胃痛と嘔吐で、吐物には血液様のものが混じっている。また大便には肉眼で分かるほど血液が混じっている。私は胃ガンよりも胃潰瘍を疑ったが、とにかく腹証によって人参湯を与えた。ところが少しも効かないので大建中湯に転方したが、これも駄目、そこで旋覆代赭湯をやてみたが、一向に痛みは止まらない。こんな風だから、患者は東京で有名な某胃腸病院を尋ねた。ここではレ線検査もしてくれたが、幽門ガンだという診断を下し、入院の必要はないと宣告したという。
そこで、この患者はまた私を訪れ、今一度、何とかして欲しいという。
私は考えた、《傷寒論》には、“嘔家には建中湯を与うべからず”とあって、嘔吐の有る者に小建中湯を用いてはならないことになっている。しかし、もうこうなっては、背水の陣だ。小建中湯を与える以外に方法はないと決心し、これを与えた。すると不思議なことに、胃痛が止まり、嘔吐が病み、血便も無くなり、2週間後には、あんなに苦しんだ症状がすっかりとれ、1ヶ月ばかりで元気を取り戻して信州に帰った。《大塚敬節》
[8]胃下垂
[9]胃酸過多症
[10]胃酸欠乏症
[11]胃腸神経症
[12]息切れ:
☆少しからだを動かしてだけで、口が乾き、息が切れ、動悸するという者に小建中湯の証がある。《大塚敬節》
[13]遺精
[14]異常発酵
[15]萎縮腎
[16]咽乾:
☆口が乾くが、水は飲みたくない。
☆咽乾口燥。
[17]陰嚢寒疝
[18]鬱病
[19]疫痢(えきり)
[20]黄疸:
(虚証)
☆小便自利(小便が多量に出る)者《大塚敬節》
☆《矢数有道》
“小建中湯を黄疸に用ゆべき場合が存することは、《金匱要略》の文句をみても不思議ではない、しかし私は最近に至って始めてその応用に遭い、そしてよく奏効した。興味ある報告例と思ったので次に詳述してみよう。
病歴として本人の語る所は、本年4月に病気となり胆嚢炎と診断された。当時の病状を詳細に訊くことができなかったが、発熱は無かったそうである。一時全く治ったと思ったが、8月になって再発した。粥食と下剤連用のため、漸々に体重を減じて、現在では病前の16貫から12貫程度になってしまったという。
初診10月18日。再発後すでに48日になる。商用のため病気を押して内地各地を旅行している内に、今年11月、栃木県で突然大腹痛に襲われ、注射でようやく凌いだ。5日目に同様の大激痛があって、今度も注射で抑えた。東京の医師は胆石症という。頑固な黄疸と激痛の襲来とにおびえて奨める人があって来院した。
所見、診ると著明な黄疸色である。皮膚が痒いという。絶えず上腹部の違和と微かな鈍痛とを覚えている。粥食と連日の下剤とのための自覚的に疲労感が強くて、だるくて堪らないという。食欲は可良であるが、あまり食べない方針である。大便は下剤のため軟いが、下痢気味で、便通がないと気持が悪いから下剤は止められぬと考えると患者は付言した。小便はもちろん黄疸色を呈し、分量も少ない。脈は弱い。腹は虚軟で何処にも拘攣も塊もない。脇下は圧痛があるが胸脇苦満も何もなく、寧ろ虚陥している。下肢が冷えるという。発病前に血圧は160耗あったが、現在は132耗である。これは 衰弱の結果によるもので、別に治癒した訳でもないことは患者も承 知しているようである。
診断、西洋医学では胆石症に下剤は定石であろうが、この患者の現在の状態は下剤の禁忌証であることを私は患者に告げた。粥食のために穀気不足していることを下剤の連用によって脾胃を損じ、更に肝虚の状態となっている。腹痛発作は傷寒論のいわゆる太陰病裏寒の腹痛と断ぜざるを得ない。則ち“甘薬を以て中気を補すべし”と考え、小建中湯を処方した。《金匱要略》の“男子の黄、小便自利するには当に小建中湯を与ふべし”の条に合致するものと考える。経過、非常によい。薬を飲むたびに気分が良くなったという。3日目には小便が綺麗になる。大便も下剤なしに快通がある。皮膚瘙痒もなくなるし、腹痛全くなし、食欲進み普通食とした。尤も初診時に私がそれを奨めておいたが、5日目に来院した時は、皮膚の黄疸色は9分通り薄らいだ。こんなに漢方薬は効くものかと(それほど効かぬ場合が相当にあるが)感嘆して、1ヶ月分の薬を所して無事に帰台した。
考案、さてこの患者について“小便不利”ということが問題になる。《金匱要略》では“小便自利”という条件を提示している。黄疸病は瘀熱に因るものが多い。少陽病か陽明病かである。また小便不利は必発的症状である。“陽明病、無汗、小便利せず、心中懊悩する者は、身必ず黄を発す”とあり、また“陽明病、発熱汗出ずる者は、黄を発すること能はず、但頭汗出で、身汗なく、熱裏に有りとなす。茵蔯蒿湯之を主る”とあるように。ところが黄疸病でも小便自利するものがある。その1つは瘀血によるものであり(太陽病篇、抵当湯)、ほかの1つは虚寒に属するものである。瘀熱によるものは大小柴胡湯、梔子豉湯など、それぞれ消炎利尿開通剤を用いるべきであろうが、この患者には勿論それらの適くべき証は見当たらない”
この患者は別に小便自利の侯はない。寧ろ不利に近い、従ってその点だけで考えると虚寒の黄疸ではなくて、瘀熱性のものということが出来るが、本病が裏虚寒の証であることは、他の症候によって厳然たる事実となっている。こういう場合は私は《金匱要略》の文字に拘泥すべきではないと考え、即ち小便量の多寡は本病の診断に主たる役割を果たすものでないという見解をとる方針を持している。
小便不利に対する小便自利の診断的価値は、前者が瘀熱性黄疸の標的となることに対し、後者は虚寒性黄疸の証拠として記載さるべきものである。《金匱要略》の著者が本方運用の主治目標として小便自利の文字を用いたのは、“虚寒に属する黄疸”という説明であ ると解すべきであろうと思う。従ってたとへ小便自利の侯がなくとも、虚寒の確徴が掴み得らるれば、本方を用いてよろしいのである。病人は有機的存在であるから、《金匱要略》の文字をそのままに拘泥していてその裏に潜む著者の真意を洞察するようにせぬと方証相対論も現実に於いてその脆弱性を暴露せねばならないことになる”
[21]顔色がさえない
[22]かぜ
[23]肩こり:
①甘いもの好き。
②くすぐったがり。
③手足がほてる。
④小便頻数。
⑤疲れやすい。
[24]脚気
[25]過敏性大腸症候群
[26]下腹部の冷感 
[27]体がだるい・重い
[28]過労
[29]眼瞼炎:
[30]眼底出血:
☆虚労を目標にして、動脈硬化症による眼底出血に用いる《大塚敬節》
[31]肝炎
[32]肝硬変
[33]気管支喘息
[34]期外収縮
[35]胸中煩悸
[36]虚弱児の体質改善:
☆冬は寒がり、夏は足をだるがり、すぐ疲れる者を目標にする《大塚敬節》
☆S少年は小学校2年生であるが、血色がすぐれず元気がない。学校から帰ると、疲れたと云って、ゴロゴロしているという。腹部を診ると、腹壁に弾力が乏しく、皮がうすいという感じである。尿は近い方であるが、遺尿はない。下痢もない。食欲は普通であるが、ちっとも体重が増加しないという。
私はこれに小建中湯を与えたが、2、3ヶ月たつと、顔に生気が充満し、疲れを訴えなくなり、朝も起こさなくても、一人で起きるようになった。風邪を引いてもすぐ治るようになり、学校の成績もよくなった。《大塚敬節》
[37]虚労:
☆此方は補虚(衰弱を補う)調血(血液循環を改善)の妙あり。
[38]気力がない
[39]筋肉攣縮:
☆痙症、汗多きを治す:「+人参」《方読便覧》
[40]筋無力症
[41]ケイレン性便秘
[42]頸管カタル
[43]頸部の腫瘍
[44]頸部リンパ腺炎
[45]頸部リンパ腺結核
[46]血小板減少性紫斑病
[47]結核性腹膜炎
[48]結膜炎:
☆虚労を目標にして、虚弱児の結膜乾燥症に用いる《大塚敬節》
[49]下痢:
☆下痢、赤白、久新を分かたず、ただ腹中大いに痛む者を治して神効あり。その脈弦急、或いは濇浮大、之を按じて空虚、或いは挙按し、皆無力なる者、是なり。《雑病翼方》
☆急慢の下痢等にして、腹部軟弱なるも腹筋攣急し、脈濇、或いは浮大にして虚なる証。《奥田謙蔵》
[50]原因不明の腹痛
[51]眩暈
[52]コロコロ便
[53]高血圧
[54]甲状腺腫
[55]口内乾燥:(口乾)
☆この方は“咽乾口燥”という症状を目標にして用いることがある。この咽乾口燥は虚労の症状で、体力の消耗があって、のどに湿りが足りなくなった状態である。白虎加人参湯の時のような、激しい口渇があるのではない。
物に驚いた時に、口に唾液が無くなったときのような状態である。 虚弱体質の人によくみられる症状で、少し動くと、息が切れて、口に唾液が足りなくなるという場合に、この方を用いて良いことがある《大塚敬節》
[56]声に力がない
[57]呼吸困難
[58]五十肩     
[59]座骨神経痛
[60]痔
[61]歯痛:
☆激しく歯の痛む者に小建中湯の証がある。これも甘草湯と同じく急迫を緩める効があるが、この方は腹証で用いる。《有持桂里》は“歯のひどく痛む病人があり、これを診てみるに、腹が引っ張り、または腹が痛むという状があれば小建中湯を用いて、腹を整えてやれば、歯痛も自然に治るものである。諸病ともに、その通りで、歯痛の場合もこれと同じ道理で、別に歯痛を治する薬を用いなくてもよいのである。      柴胡湯の腹証があれば柴胡湯を用い、建中湯の腹証があれば、建中湯を用いて良い。何でも証に随って、真武湯や四逆湯なども用いて良いが、歯痛には、柴胡剤や建中剤の証が多いから、ここに挙げたけれども。これに限ったことはない。自分は先年、脈が遅沈で歯の痛む者に、麻黄附子細辛湯を用いて治したことがある”と述べている《大塚敬節》
[62]衂血:
☆虚弱児童で常習性に衂血を出す者《大塚敬節》
☆紫斑病の少年の衂血に用いて効を得た《大塚敬節》
☆体質の虚弱なもので、貧血して疲れやすく、動悸を覚え、脈腹ともに虚している者によい。壊血病、紫斑病などの衂血に本方の症が多い。(漢方診療医典
[63]子宮筋腫(虚証)
[64]四十肩(腕)
[65]失精
[66]紫斑病
☆小児にみられる紫斑病で、病気が長引いて衰弱し、疲労の甚だしいときに用いる。《金匱要略》の虚労篇に“虚労、裏急、悸して衂し、腹中痛み、夢に失精し、四肢痠痛し、手足煩熱して、咽乾き、口燥くは小建中湯之を主る”の条文があり、これによって、紫斑病で、衂血を常習とするものに、これを用いて著効を得た。(漢方診療医典)
[67]十二指腸潰瘍
[68]耳鳴
[69]シャックリ:
☆一人噦を患うこと五十日ばかり、衆医手を束ぬ。余その腹侯をつまびらかにし、建中湯を与える。二剤にして安し。《先哲医話》
[70]食後眠たくなる
[71]食欲不振(食が細い)
[72]消化不良
[73]小便頻数
[74]小児科:
☆虚弱体質
☆臍部疝痛
☆習慣性頭痛
☆消化不良
☆寝小便
☆夜泣き
[75]神経質
[76]神経性胃腸炎
[77]神経性心悸亢進症
[78]神経衰弱
[79]腎硬化症
[80]心悸亢進
☆神経性心悸亢進等にして、時々衂血し、腹部或いは手足拘急し、手掌足蹠に煩熱を覚える証。《奥田謙蔵》
[81]心臓神経症
[82]心臓弁膜症
[83]心痛:
☆《尤鶴》曰く、余かって一香人の心痛を治す。之を問うに、服薬已に一月、左に向かって臥せば則ち右痛み、右に向かって臥せば則ち左痛み、仰臥すれば則ち痛み前に在り、堰臥すれば則ち痛み背に在り、坐立すれば則ち痛み上に在り、一刻も小安無し。余曰く、中虚なり。与うるに小建中湯を以てし、錫糖、炙甘草を重用す。4剤にして安しと。   《雑病翼方》
[84]身体疼痛
[85]スポーツの疲労
[86]頭痛:
☆虚弱児の常習頭痛に著効を示すことがある《大塚敬節》
☆12歳男児。生来身体虚弱で始終病気をするが、一番困るのは、しばしば頭が痛いと云って臥てしまうことである。平常食欲もあまりない。
診察すると、体格はやや小さい方で、やや痩せ型という程度。だが顔色も冴えないし、見るからにあまり丈夫そうでない。脈細、舌に特徴無く、腹を診ると、肉付き薄く、両側の腹直筋が攣急している。診察当日も朝から頭痛がすると云っていた。この患者に腹診から考えて小建中湯を大人の半量を投与したが、この日を最後に頭痛は全く起こらなくなった。《山田光胤》
[87]臍炎
[88]性的神経衰弱
[89]精力減退
[90]脊椎カリエス
[91]脊椎分離症
☆潜在性脊椎分離症
[92]脊椎不全症
[93]背中がつっぱる
[94]舌質 <正常~淡紅>
[95]舌苔 <無苔~微白>
[96]喘息: 気管支喘息に有効なことがある。
[97]腺病質
[98]前立腺肥大症
[99]早漏
[100]だるい
[101]大腸炎:
☆腸炎・腸カタル
[102]脱肛
[103]脱腸
[104]脱毛症
[115]胆石症(虚証)
[116]腸狭窄:
☆腸狭窄に用いる時は、腸の蠕動が亢進し、腹鳴を訴える者が多い。          《大塚敬節》
[117]直腸潰瘍
[118]直腸ガン
[119]腹直筋の攣急
[]腹痛
[120]疲れやすい
[121]手足拘急
[122]手足がだるい・重だるい
[123]手足のほてり(手足煩熱)
[124]低血圧症
[125]盗汗:
☆虚弱体質で、盗汗の出る者《大塚敬節》
[126]動悸:
☆からだの弱い人が、風邪をひいたり、ちょっと熱が出たりした時、しきりに動悸を訴えることがある。或いはちょっと胸苦しいと訴えることもある。このような症状があれば、葛根湯や麻黄湯のような発汗剤で汗を出すようなことをしてはならない。悪寒・頭痛などの表証があって、片方では裏寒の状があるから、先ず、裏の虚を補い、中気を建立する意味で小建中湯を用いるが良い。これで動悸が静まると共に熱の下るものが多い。《大塚敬節》
[127]糖尿病
[128]動脈硬化症
[129]どもり
[130]夏まけ・夏バテ
[131]乳児の疝気
[132]尿不利
[133]
[134]ノイローゼ
[135]肺気腫
[136]肺結核
[137]背痛
[138]鼻出血
[139]微熱:
☆汗を発し、又復って之を下し、悪寒、発熱(=虚熱)し、休止する時無き者は、小建中湯に宜し。《傷寒六書》
[140]疲労倦怠:
☆虚労性の疲労。
胃腸虚弱で疲労しやすい者
[141]貧血
☆諸種の貧血、或いは萎黄病の類にして尿利頻繁、腹痛、拘急を発する証。《奥田謙蔵》
[142]頻尿(小便の回数が多い)
[143]フリクテン
[144]ふけ
[145]腹痛:
☆(ケイレン性・鈍痛が続く)
☆虚寒腹痛、痛んでしばしば押さえる。
☆「柴胡鼈甲湯」「延年半夏湯」「解労散」などの如く腹中に痃癖ありて引っ張り痛むと異にして、ただ血の乾き、にわかに腹皮の拘急する者にて、強く按ぜば底に力無く、例えば琴の糸を上より按ずるが如きなり。《勿誤薬室方函口訣》
☆積聚腹痛などの症に、すべて建中湯は血を潤し急迫の気を緩むるの意を以て考ふべし。《勿誤薬室方函口訣》       
☆胃脘、心に当たりて痛み、六脈弦数なるを治す:「香附子」《赤水医按》
☆慢性腹膜炎、腸狭窄、胃ガン、胃潰瘍、胃下垂症などで腹痛する者に用いる《大塚敬節》
☆50歳男性。ガンが上腹部一杯に塊状になって触れるほどに拡がり、それが痛くて堪らない。こんなに苦しいなら、いっそひと思いに死んだ方がましだと患者は云う。私はこの患者に小建中湯を与え、5日分飲んだところで、痛みがずっと軽くなり、心下部の硬結も小さくなった。3回目には、自分で歩いて来院した。こんな風で、1ヶ月もたつと映画を見に行ったりして、とても元気になった。家族の者も不思議がっていたが、半年もたつと。だんだん衰弱が加わってついに死亡した。《大塚敬節》
☆27歳の女性。昭和22年8月に帝王切開によって分娩を終わり、その子供は元気に育て居るが、その後、母親の方は何となく気分がすぐれなかった。そうこうしているうち、昭和24年6月のある日、突然、右下腹部に疼痛を訴えるようになったので、医師を招いたところ虫垂炎だと言われた。しかし軽いから手術の必要がないとのことであった。ところが、この痛みはなかなかよくならないにで、2、3の医師に診てもらった。ある医師は慢性腹膜炎だと云った。身体はだんだん痩せてきた。歩くのに、身体を少し前こごみにしないと歩けなくなった。ときどき悪寒はするが、熱はない。あまり元気がないので胸部をよく調べてもらった。そこでは肺が結核に冒されているということであった。そんな訳で、しずかに寝ていたが、いつまでも腹痛は去らないという。
初診時の症状は、次の通りである。
患者は痩せて顔色は土のようで光沢がない。脈は沈濇で、この傾向は右が特にひどい。悪寒や熱はない。舌苔もなく口渇もない。食欲は普通である。大便は1日1行で、尿はやや回数が多い。月経は順調である。肩が少し凝る。腹直筋は左右とも拘攣している。右下腹部から臍下にかけて圧痛があり、腹部は板のように硬い。肺結核だという診断などを思い合わせると腹膜炎を考えるのは当然である。しかしどうも、はっきりした診断がつきかねる。駆虫剤は数回飲んだと言う。回虫のせいとも思えない。しいて診断をつけようとすれば、腹部のレントゲン検査は必要だろうし、再度の開腹手術も必要だろう。
だが、漢方の診断によれば、それが何病であろうと、小建中湯を与えるだけでよい。腹証や脈証から考えれば、これ以外に用いる処方はない。治っても治らなくても、とにかくやろう。
そう決心して10日分を与えた。これを飲み終わった患者は、母親に連れられて来院したが、腹痛は10中の5、6は去ったという。     元気が出て、顔色が生き生きとしてきた。更に10日分を与える。これを飲み終わった患者は右の鼠径部のあたりが少し痛むようになったが、腹は痛くないという。腹診してみるに、腹直筋の緊張がゆるみ、腹全体に弾力がついてきた。栄養状態もよくなった。この日、更に10日分を与えたが、患者はそれきり来院しなくなった。
それから幾月かたったある日。其の患者の母親が新しい患者を連れて来院した。その時の話しになると、あれから腹痛がなくなり、元気も出て、喜んでいたところ、間もなく痔が痛むと云うので、外科の先生に診てもらった。すると肛門に金属性のものがひっかかっているというので、肛門を少し切開したところ、黒くサビた鋏みのようなもの(止血鉗子)が出てきた。これが出てから、患者はすっかり病気を忘れてしまったという。《大塚敬節》
☆大黄やセンナで腹痛を起こす者に適応する。
☆「腹中急痛あるいは拘攣するものは正証なり、もし外閉の証あれば則ちこの湯の主治するところには非ざるなり」《方機》
[146]腹皮攣急:
☆小建中湯では、腹直筋の攣急があったり腹がつれるような状態になったりすることがある。これが裏急である。《大塚敬節》    
[147]腹膜炎(結核性)
☆腹膜炎に用いるときは、腹水は無く、腹壁を一体にベニヤ板のように触れる者を目標にする。《大塚敬節》
[148]腹満(腹が張る):
☆腹部虚脹し、腹筋の拘攣或いは疼痛を発する証。《奥田謙蔵》
[149]附骨疽
[150]不眠症
[151]フリクテン性結膜炎
[152]ヘルニア:
☆初生児の「ヘルニア」《奥田謙蔵》
☆小児の腺病性虚弱体質で、胃腸が弱く、疲労しやすく、痩せてしばしばヘルニアを起こすものは、本方を長期にわたええ服用し、体質が改善されるとヘルニアがなおる(漢方診療医典)
[153]偏頭痛
[154]扁桃肥大
[155]便秘:
①常習性・弛緩性。
②細い、こまぎれ、コロコロ便。
③最初硬くてあと下痢便(先硬後溏)。
☆北越高田城下の16、7歳の女性が、7月突然に1日20回ほどの吐下があり、その後、大便が出なくなり、1ヶ月に1回位しか通じないという。その後6ヶ月間、あちこちの名医を歴訪して色々の薬を呑んだけれども、ちっとも効かないという。
そこで診察してみると、大変な美人で血色も良く、腹診上特別の所見をみない。小便もいつもと変わりなく、食欲もある。ただ450歩行くと四肢が少し紫色になり、少し冷えるのが違っているだけである。いままで治療した医者は数十人、皆、これに大黄・芒硝 の下剤を用いているが、自分の診察では、宿便がある症状ではない。これは胃腸機能の不調和による便秘だから、下剤を必要とせず小建中湯で、陰陽を調和せしめてやれば良いと考え、小建中湯を与えた。すると30服ほど呑むと指のような大便がやっと出て、100服足らずで全治した。《古矢知白》
[156]慢性胃炎:
☆腹直筋の緊張が強く、腹部が膨満し、腹壁が薄く指でつまみやすい者で、肩こり、腹痛を訴える、血色がわるい者。
[157]慢性肝炎
[158]慢性消化不良
[159]慢性大腸炎
[160]耳が痛い
[161]耳鳴り
[162]夢精
[163]胸やけ
[164]めまい(軽い)
[165]網膜剥離:
☆外見上何の異常も発見せず、ただ眼が刺すように痛いという者に用いて効を得たことがある《大塚敬節》
[166]目眩
[167]夜尿症(寝小便):
☆尿利の頻繁、或いは夜尿症等。《奥田謙蔵》
☆虚弱児童の夜尿症に用いる。又、尿を漏らすことはないが、尿が近くて量も多い者にも用いる《大塚敬節》
☆14歳少女。背丈がひょろ長く、顔の色は土色をしている。この少女は大変小便が近く、1時間に2回も便所に行く。しかも1回量が多い。いくら食べても痩せていて肥えない。小便が出たくなると、すぐ便所に駆け込まないと、その場でも洩れるという。疲れやすくて、根気が続かないという。食べ物は、刺激性のものが大好きである。大便は毎日1回であるが、軟便である。冬は手足が冷える。のどが渇き水や茶をよく呑む。夜間も眠っていて、ときどき寝小便をする。私はこれに小建中湯を与えたが、1週間後には、2時間ぐらい小便が持つようになり、漏らすことはなくなった。引き続き2ヶ月ほど服用して、夜尿も止み、血色も良くなり、肥えてきた。《大塚敬節》
☆虚弱な体質で冷え症で栄養も血色も悪く、疲れやすい、だるいなどの症状があって夜尿症のあるものに用いる。このような患者は昼間でも尿意を覚えず尿の漏れるものもある(漢方診療医典)
[168]遊走腎
[169]夜泣き:
☆小児の夜驚症《奥田謙蔵》
[170]腰痛症
[171]ルイレキ
[172]肋膜炎
脈状:
☆弦の者があり、沈小のものがあり、一定していない。《大塚敬節》



小柴胡加地黄湯《普済本事方》
「小柴胡湯地黄」
◎婦人、室女、傷寒発熱し、或いは寒熱を発し、経水適(たまたま)来たり、或いは適(たまたま)断ち、昼は則ち明了なるも、夜は則ち譫語して鬼状を見るが如きを治す。
◎又、産後悪露来たるにあたり、忽爾として断絶するを治す。
◎此方は、熱入血室の主剤とす。経水の適断に拘わらず、血熱の甚だしき者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎血熱:
<1>頭疼、面赤、耳鳴、歯痛の者:「小柴胡湯石膏」
<2>血気刺痛、心下に衝逆し、嘔吐する者:「小柴胡湯紅花」
<3>五心煩熱、日哺、瘧の如く寒熱を発する者:「小柴胡湯鮮地黄」
◎《経験良方》曰く、婦人産後、癲狂し、未だ補心の薬を服せざるに、「小柴胡湯生地黄」を以てし、同煎じて日に3服す。凡そ百餘貼にして安し。《雑病翼方》
◎「柴胡地黄湯」《峰普済方》に同じ。
◎師尼寡婦、寒熱往来し、脈数にして労と成らんとす。「小柴胡湯生地黄」を以て之を主る。或いは「八味逍遥散」之を主る。



小柴胡湯[1-1]《傷寒論》
「柴胡半斤、黄芩・人参・甘草(炙)・生姜各3両切、大棗(擘)12枚、 半夏(洗)半升」
右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。
◎太陽病、10日以去、脉浮細而嗜臥者、外巳解也。設胸満脇痛者、與小柴胡湯。脉但浮者、與麻黄湯。七。

◎婦人中風、78日続得寒熱、発作有時、経水適断者、此為熱入血室、其血必結、故使如瘧状発作有時、小柴胡湯主之。方十。

◎傷寒56日、頭汗出、微悪寒、手足冷、心下満、口不欲食、大便硬、脉細者、此為陽微結、必有表、復有裏也。脉沈、亦在裏也。汗出、為陽微。假令純陰結、不得復有外証、悉入在裏、此為半在裏半在外也。脉雖沈緊、不得有汗、今頭汗出、故知非少陰也、可與少柴胡湯。設不了了者、得屎而解。十四。
◎傷寒56日、嘔而発熱者、柴胡湯証具、而以他薬下之、柴胡証仍在者、復与柴胡湯。此雖巳下之、不為逆、必蒸而振、却発熱汗出而解。若心下満而痛者、此為結胸也、大陥胸湯主之。但満而不痛者、此為痞、柴胡不中與之、宣半夏瀉心湯。方十五。

◎陽明病、発潮熱、大便溏、小便自可、胸脇満不去者、與小柴胡湯。
       
◎陽明病、脇下満、不大便而嘔、舌上白胎者、可與小柴胡湯。上焦得通、津液得下、胃氣因和、汗出而解。十七。
◎陽明中風、脉弦浮大、而短気、腹都満、脇下及心痛、久按之氣不通、鼻乾、不得汗、嗜臥、一身及目悉黄、小便難、有潮熱、時時、耳前後腫、刺之小差、外不解。病過10日、脉続浮者、與小柴胡湯。十八。
◎太陽病、過経10餘日、反2、3下之、後4、5日 、柴胡証仍在者、先與小柴胡。嘔不止、救心下急、鬱鬱微煩者、為未解也、可與大柴胡湯、下之則愈。方三十一。

◎傷寒十三日不解、胸脇満而嘔、日哺所発潮熱、巳而微利。此本柴胡、下之不得利、今反利者、知醫以丸薬下之、此非其治也。潮熱者、実也。先服小柴胡湯以解外、後以柴胡加芒硝湯主之。


小柴胡湯[1-2]《傷寒論》
「柴胡半斤、黄芩3両、人参3両、半夏(洗)半升、甘草(炙)、生姜(切)各3両、大棗(擘)12枚」
右7味、以水1斗2升、煮取6升、去滓、再煎取3升、温服1升、日3服。若胸中煩而不嘔者、去半夏人参、加括蔞実1枚。若渇、去半夏、加人参合前成4両半、括蔞根4両。若腹中痛者、去黄芩、加芍薬3両。若脇下痞硬、去大棗、加牡蛎4両。若心下悸、小便不利、去黄芩、加茯苓4両。若不渇、外有微熱者、去人参、加桂枝3両、温覆微汗愈。 若者、去人参大棗生姜、加五味子半升乾姜2両。」
◎傷寒56日中風、往来寒熱、胸脇苦満、不欲飲食、心煩喜嘔、或胸中煩而不嘔、或渇、或腹中痛、或脇下痞硬、或心下悸、小便不利、或不渇、身有微熱、或者、小柴胡湯主之。方四十八。
◎傷寒45日、身熱、悪風、頸項強、脇下満、手足温而渇者、小柴胡湯主之。
◎傷寒、陽脉、陰脉弦、法当腹中急痛、先與小建中湯。不差者、小柴胡湯主之。五十一。


小柴胡湯[1-3]《傷寒論》
「柴胡8両、人参3両、黄芩3両、甘草(炙)3両、半夏(洗)半升、生姜(切)3両、大棗(擘)12枚」
右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。
◎本太陽病不解、轉入少陽者、脇下満、乾嘔不能食、往来寒熱、尚未吐下、 脉沈緊者、與小柴胡湯。方一。
◎陽明中風、脉弦浮大、而短気、腹都満、脇下及心痛、鼻乾、不得汗、嗜臥、一身及目悉黄、小便難、有潮熱、時時、耳前後腫、刺之小差、外不解、過十日、脉続浮者、與小柴胡湯。脉但浮、無餘証者、與麻黄湯。不溺、腹満加悦者、不治。三十二。

◎太陽病、十日以去、脉浮而細、嗜臥者、外巳解也。設胸満脇痛者、與小柴胡湯。脉但浮者、與麻黄湯。三十三。
           
◎中風往来寒熱傷寒、五六日以後、胸脇苦満、不欲飲食、煩心喜嘔、或胸中煩而不嘔、或渇、或腹中痛、或脇下痞、或心下痞、小便不利、或不渇、身有微熱、或者、属小柴胡湯証。三十七。
◎傷寒四五日、身熱、悪風、頸項強、脇下満、手足温而渇者、属小柴胡湯。


小柴胡湯[1-4]《傷寒論》
「柴胡8両、人参2両、黄芩2両、甘草(炙)2両、生姜2両、半夏(洗)半升、大棗(擘)12枚」
右7味、以水1斗2升、煮取6升、去滓、再煎取3升、温服1升、日3服。
◎傷寒差以後更発熱、小柴胡湯主之。脉浮者、以汗解之。脉沈実者、以下解之。

小柴胡湯[1-5]《金匱要略》
「柴胡半斤、黄芩3両、人参3両、甘草3両、半夏半斤、生姜3両、大棗12枚」
右7味、以水1斗2升、煮取6升、去滓、再煎取3升、温服1升、日3服。
◎嘔而発熱者、小柴胡湯主之。

◎産婦鬱冒、其脉微弱、嘔不能食、大便反堅、但頭汗出、所以然者、血虚而厥、厥而必冒、冒家欲解、必大汗出、以血虚下厥、孤陽上出、故頭汗出。所以産婦喜汗出者、亡陰血虚、陽氣獨盛、故當汗出、陰陽乃復。大便堅、嘔不能食、小柴胡湯主之。

◎千金〔三物黄芩湯〕治婦人在草辱、自発露得風。四肢苦煩熱、頭痛者、與小柴胡湯。頭不痛但煩者、此湯主之。

◎婦人中風78日、續来寒熱、発作有時、経水適断、此為熱入血室。其血必結、故使如瘧状、発作有時、小柴胡湯主之。



小柴胡湯[1-6]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「柴胡12g、黄芩9g、製半夏9g、党参6g、生姜6g、甘草3g、大棗6g」水煎服。
◎弛張熱
◎往来寒熱。



小柴胡湯[1-7]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「柴胡・半夏各8.0g、黄芩・人参・大棗・甘草各区3.0g、干姜1.0g」
水480ccを以て240ccまで煮詰め、滓を去り、再び煮て120ccに煮詰め3回に分服。
◎胸脇苦満、往来寒熱、心下痞硬して嘔する者を治す《吉益東洞》
◎小柴胡湯証=胸脇苦満・往来寒熱。又いう、腹中痛。又いう、脇下痞硬《薬徴》
[往来寒熱]=悪寒と熱とが交互に出没すること。さむけがして寒気が止むと熱が出て、熱が下がってまたさむけがする。
小柴胡湯証=頚項強ばる。又云ふ、脇痛。《薬徴》(←大棗)
◎此方は往来寒熱、胸脇苦満、黙々不欲飲食、嘔吐、或いは耳聾が目的なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎凡そこれらの証あれば胃実の侯ありとも柴胡を与ふべし。老医の説に、脇下と手足の心と両処に汗なきものは、胃実の証ありとも柴胡を用いるべしとは、これの意なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎総じて此方の之く処は両肋の痞硬拘急を目的とす。
◎後世、「三禁湯」と名づくるものは、蓋し汗吐下を禁ずる処に用ゆる故なり。
◎感冒・流感・結核性疾患その他の熱のある病気で、口が苦く、舌に白苔があって乾燥し、食を欲せず、或いは悪心or嘔吐のある者に用いる。又、熱が無くても、胸脇苦満があって、食欲のない者にも用いる。《大塚敬節》

【腹証】
《腹診配剤録》
 “凡そ柴胡湯類の腹状は、皆之を按ずるに力有り。而して此の小柴胡湯は、胸脇下痞して、鳩尾に及ばず。或いは心下に微動有りて満つる也。”


小柴胡湯[1-8]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「柴胡7、半夏5、生姜4、黄芩・大棗・人参各3、甘草2」

★適応症及び病名(しょうさいことう)
[1]IgA腎症
☆浮腫が無くて、発熱、悪心、食欲不振、胸脇苦満などのある者に小柴胡湯を用いる。(漢方診療医典)
[2]アデノイド
☆一般にアデノイドの症候があり、腹診上胸脇苦満を認め、頸部リンパ節が腫れたり、神経過敏の傾向があるものによい。桔梗2,0g石膏5.0gとして用いる(漢方診療医典)
[3]アレルギー性鼻炎
[4]アンギナ
☆2~3日をすぎて熱がなお冷めず、咽痛するものは桔梗2.0g石膏10.0g。体質が強壮のもので胸脇苦満がひどく、便秘の傾向のある者は大柴胡湯桔梗・石膏に大黄1.0gを加える(漢方診療医典)
[5]イライラ
[6]インフルエンザ
[7]いんきんたむし
[8]胃ケイレン
[9]胃炎
[10]胃潰瘍
[11]胃酸過多症
[12]胃酸欠乏症
[13]胃痛
[14]陰痿(青壮年の)
[15]陰部掻痒症:
☆身熱し、小便渋滞するを治す:「竜胆草・黄連・車前子」
[16]咽喉炎:
☆咽喉痛、頬腫、及び嘔する者:「連翹」各等分。《先哲医話》
[17]噦病(えつびょう)=暑気あたり
[18]円形脱毛症:
☆「牡蠣」が良く効く。私は小柴胡湯牡蠣で、10数人の円形脱毛症を治した経験がある。服薬期間は数ヶ月~1年くらい《大塚敬節》
☆9歳男児。小柄で血症もすぐれないが、これというほどの大病に罹ったことないという。ところが約1年ほど前から、頭にハゲが出来始め、それがどんどん拡がるので、皮膚科の先生に注射と光線の手当を受けたが、少しも効無く、頭には数えるぐらいしか毛が無くなった。その量の小柴胡湯に牡蠣2.0を加えて与えた。1ヶ月ぐらいたつと、小さい毛がポツポツと生え始め、血色も良くなった。3ヶ月ほどたつと黒い毛が大分生えてきた。6ヶ月ほどすると半分近く毛が生えた。そこで小柴胡湯の中の柴胡を試しに除いて用いてみた。するとどんどん勢い良く生えていた毛の発育が悪くなって、1ヶ月たっても、新しい毛が生えなくなった。そこで、また柴胡を入れて用いてみたところ、1年後には、10円貨幣大の禿頭が2つ残ったきりで、真っ黒い毛が生えそろった。
そこで、もう大丈夫だろうと、服薬を中止していたところ、半年ほどたつと、またポツポツハゲ始めてきた。そこでまた服薬を始め、こんどは、全く生えそろってからも半年ほど服薬を続けた。
これですっかり円形脱毛症が良くなったばかりでなく、体格が見違える程良くなり、よくいたずらが出来るようになった。《大塚敬節》
[19]おたふくかぜ
[20]黄疸:
☆諸種の黄疸にして、腹痛、嘔吐を発する証《奥田謙蔵》
[21]悪心
[22]悪風:
☆悪風して時に発熱し、気鬱し、胸満感あり、汗出でて尿利減少する証《奥田謙蔵》
[23]嘔吐:
☆陽毒傷寒、四肢壮熱あり、心煩、嘔吐止まざるを治す:「麦門冬・竹葉」= 人参飲子《備全古今十便良方》
☆肝炎・胆嚢炎・流感・猩紅熱・腎炎などの初期にみられる嘔吐に、この方が良く用いられる。腹証として、胸脇苦満・心下痞硬が認められ、舌にはうすい白苔がつくことが多い。《大塚敬節》
☆乳幼児の風邪や急性胃腸炎などのさいに五苓散でなければ治らない嘔吐がくることがある。熱のある場合でも、熱がない場合でも、どちらでもよい。
はげしい口渇と尿利の減少があって、嘔吐を繰り返して訴える者を目標とする。嘔吐は1回に大量の水をドッと吐くのが特徴で、吐いた後で、水をほしがり、それを飲んでしばらくたつとまた吐く、吐くとまた水をほしがるので、このさい尿の出が少なくまいかをたずね尿利の減少があれば五苓散の適応症である。
多くの場合、1回または2回の服用で嘔吐が止み、口渇も無くなり、熱のある場合は発汗し、尿利が増加して下熱する。
また嘔吐に下痢を兼ねることもあり、嘔吐に腹痛を兼ねることもあり、嘔吐に頭痛を兼ねることもある。この場合でも口渇と尿利の減少を目標に用いる。(漢方診療医典)
[24]怒りっぽい(多怒)
[25]唖(おし)
[26]往来寒熱:
☆強い悪寒が来て、そのあとで熱が出る。その熱が下がってまた悪寒が来て熱が出るという状態。《大塚敬節》
☆往来寒熱は柴胡剤を用いる目標である。《大塚敬節》
[27]かぜ:
☆傷寒にて頭目疼痛し、発熱して焚(たく)るが如く、喘し、嘔吐し、利して赤黄を洩らし、脉洪数にして力ある者を治す:「人参、羗活・葛根・芍薬」《軒岐救正論》
☆感冒その他の熱病の初期に、悪寒、発熱の状がありそれが数日続いて悪寒や悪風が無くなり、熱だけとなり、口が粘ったり、口が苦くなって、食欲がなくなったり、悪心が現れたりするようになれば小柴胡湯を用いる。《大塚敬節》
[28]咳嗽:
☆熱嗽、痰濃く、鼻熱し、腥気あり。冷水を飲めばしばらく止む者を治す。《雑病翼方》
☆感冒・気管支炎・流感・肋膜炎・肺結核などで、鳩尾がつかえて食欲が減少し、舌がねばり、或いは白苔がつき、或いは口が苦く、胸が重苦しく、咳嗽する者に用いる《大塚敬節》
☆熱嗽を治す:「人参一倍、青黛半面」《保命集》
☆諸病差ゆる後の咳嗽唾沫はこれ肺虚なり:「人参・大棗・生姜、五味子3.0g、乾姜2.0g」《本草衍義序列》《龍野》
☆風邪胸脇に迫り、舌上白苔ありて、両脇に引いて咳嗽する者:「五味子・乾姜」《本草衍義》
☆婦人時行、寒に感じ咳嗽する:「人参大棗生姜五味子」《婦人大全良方》
☆《陳念祖》曰く、自註に云う、咳嗽に「人参五味子乾姜」。人多く口に順って読み過げ。余は此れに於いて全書の旨を悟透し、治咳の秘鑰を得たり。《雑病翼方》
☆寒熱瘧の如く咳嗽甚だしき者:「葛根・草花・天花粉」《和田東郭》
☆寒熱して脇痛み而して咳嗽する者は、肝熱が肺に移りたるなり:「青皮・桑白皮」《万病回春》
[29]潰瘍性大腸炎
[30]喀痰(粘痰が出る)
[31]肩こり:
☆肩から首にかけて凝る。
☆食欲がない。
☆白苔。 
☆《傷寒論》には“傷寒にかかって4、5日たって、身熱と悪風があって、頸項が強ばり、脇下が満ち、手先が温かくて口渇のある者は小柴胡湯の主治である”とあって、小柴胡湯を用いる目標に頸項強ばるという症状がある。ところで、頸項強ばると言う症状は、葛根湯の項背強ばるとその強ばる部位が違ってくる。項背強ばるとは、項部から脊柱に沿って縦に強ばるのをいう。頸項強ばるとは、耳朶の後を下に下って、鎖骨上または肩峰突起に向かって筋肉の強ばるのをいう。およそ柴胡剤を用いる肩凝りは、小柴胡湯に限らず、大柴胡湯その他の柴胡湯の場合でも、同じく、この頸項部の緊張が主となる。それと同時に季肋下に膨満、抵抗を証明する。だからもし季肋下に膨満抵抗があって、頸項強ばるの状があれば、柴胡剤を用いる肩凝りであると考える。ただし呉茱萸湯証との鑑別が必要。《大塚敬節》
☆肋膜炎・肺結核・肝炎・腺病体質・頸部リンパ節肥大などにみられる肩凝りに用いる機会がある《大塚敬節》
[32]化膿症:
☆諸種の化膿性の疾患に用いる。その目標は胸脇苦満、発熱、口苦、食不振などにある。《徐霊胎》は《古今医統》の中で“小柴胡湯は、瘰癧、乳癰(乳腺炎)、便毒(横痃)、下疳および肝経分の一切の瘡瘍、発         熱、潮熱し、或いは飲食を思うこと少なきを治す”といっている。《大         塚敬節》
        ☆「桔梗石膏」《湯本求真》
        ☆下疳瘡、または便毒、嚢癰(陰嚢の腫れる病)等の類、凡そ前陰にある         病には、小柴胡湯を用いる。《医方口訣》
☆小柴胡湯は瀉肝湯の気持で下疳瘡の類に用いる。下疳瘡などで、頭痛、         発熱し自汗などのある時には、猶更のこと、この方に竜胆、延胡索な         どを加えて用いる《老医口訣》
     [33]体がだるい・重い
     [34]肝炎
    [35]肝臓機能障害
    [36]癇癪持ち
      [37]頑癬:「連翹・蒼朮・白藜」
     [38]感冒:
        ☆伏暑、発熱汗渇、暑が心胞に入りて語たざるを治す:「茯苓」《万         病回春》
        ☆傷寒にて発熱し、経水適々来たり、昼は則ち明白、夜は則ち譫語する         者を治す。これ熱、血室に入るなり:「生地黄」《古今方彙》
     [39]気管支炎:
        ☆風邪が長引き、いつまでも微熱があり、のどが渇き、口が粘って食が         進まず、咳の止まらない者。
     [40]気管支拡張症
     [41]気管支喘息
     [42]吃逆(きつぎゃく):
        ☆吃逆には、証に由り「橘皮竹茹湯」を合方す《奥田謙蔵》
     [43]急性熱性病:
        ☆熱性病、胸痛あり、時に発熱、悪寒し、心下痞硬して嘔し、脈弦なる         証。《奥田謙蔵》
        ☆熱性病、便秘し、時に譫語し、喘咳ありて嘔吐し、食欲無くて脈浮緊         の証《奥田謙蔵》
        ☆熱性病、胸腹膨満を覚えて食を欲せず、若し食すれば嘔吐する証。《奥         田謙蔵》
     [44]胸脇苦満<>
        ☆季肋下に膨満抵抗があること。
        ☆胸脇部が脹って苦しい。
        ☆帯を締めると苦しい《螺王人》
        ☆ネクタイが嫌い・苦しい《螺王人》
        ☆胸部膨満感ありて心悸亢進し、時時腹痛し、その脈沈遅なる証《奥田         謙蔵》
        ☆柴胡の諸方は、皆能く瘧を治す。要は胸脇苦満を以て目的とすべし《類         聚方広義》
        ☆何となく、季肋下に充満感があるという自覚症状だけのこともある《大         塚敬節》
     [45]口が渇く(口渇)
        ☆口渇する者:「半夏。人参4.5gとし、括楼根4.0g」《龍野》
        ☆渇するには:「知母・石膏」《古今方彙》
        ☆肋膜炎で急激に浸出液が溜まり口渇する者:「石膏」《大塚敬節》
     [46]口が苦い(口苦)
    [47]口の周囲が乾燥して赤い(小児)
        ☆13歳少年。下顎からあごにかけて、乾燥して赤く爛れ、舌でなめず         りまわしていた。葛根湯を与えてみようかと考えたが、診察してみる         と、舌も乾燥して白苔があり、最近食欲も減少しているという。胸脇         苦満は著明ではないが、みずおちにつかえる気味がある。こんな患者         に葛根湯を与えると、食欲がますます無くなり、舌も口唇も乾燥する         心配があってので、小柴胡湯を用いた。2週間ほどで治った。《大塚         敬節》
     [48]首の筋が突っ張る(側頭部が多い)
        ☆側頸部~耳の回りの緊張・疼痛・熱感。
     [49]車酔い
     [50]頸部リンパ腺炎
     [51]頸部リンパ腺結核
     [52]月経前緊張症
     [53]元気がない
    [54]減酸症
[55]睾丸炎:
         ☆急性睾丸炎《大塚敬節》
[56]甲状腺腫
☆急性甲状腺腫で、甲状腺が赤く腫れて痛み、熱のある者に桔梗石膏を用いて、2、3日で全治したことがある(漢方診療医典)
     [57]更年期障害
     [58]三叉神経痛:
         ☆この女性は、3年前に左の下顎部を中心にして、口腔内まで、激し          く痛み、種々の手当も効無く、ついに歯科医にかかって、左側の下          顎部の歯を全部抜いてしまった。しかし疼痛は依然として続き、義          歯を作ったけれども、それをはめるとよけいに痛み、夜間も熟睡で          きないという。
           診察してみると三叉神経の第3枝の神経痛である。この患者は色          黒く、痩せてはいるが、筋肉質で、脈にも力があり、便秘している。          肩も凝り、頭も重い。そこで葛根湯に川芎3.0大黄3.0を加えて用          いた。これで大便は快通するが、軽快に向かう様子がない。桃核承          気湯にしたり、白虎加桂枝湯にしたりしてみたが、いずれも無効。          いよいよ困って、疎経活血湯にしたところ、初めて少しずつ軽快に          向かい、3ヶ月後には、義歯をはめられるようになり、10ヶ月後          には、ほとんど苦痛を忘れるほどに良くなった。けれどもまだ時々          痛み、またひどくなりそうだと云う。それに喘息の持病がこの頃起          きると云う。腹証上では軽い胸脇苦満があり、腹直筋もやや緊張し          ている。そこで小柴胡湯葛根湯にし、大黄4.0を加えて用いたと          ころ、初めてサッパリしたと云い、これを1年余り連用した。それ          から3年になるが、再発しないでいる。小柴胡湯葛根湯とせずに、          柴胡桂枝湯大黄でも良かったのかもしれない。《大塚敬節》
     [59]産褥熱:
         ☆婦人産後、敗血経に流れ、また能く人をして寒熱瘧の如く、暮れに          至れば則ち発し、発すれば則ち身痛み、杖を被るが如し。通経和血          の剤に宜し:「生地黄」=小柴胡加地黄湯
[60]COPD
     [61]ジンマシン
     [62]耳下腺炎:
         ☆急性耳下腺炎《大塚敬節》
    [63]耳聾:
         ☆傷寒癒えて後、唯だ耳中啾啾として安からず、或いは耳聾累月復せ          ざる者有り、此方を長服し可し。《類聚方広義》
         ☆毒を解し、核を散ず:「桔梗石膏」《方読便覧》
     [64]しもやけ
     [65]シャックリ
     [66]子宮付属器炎
     [67]暑気あたり
     [68]食道ケイレン
     [69]食欲不振:
         ☆一婦人、寒熱へだてて起こり、口苦く、咽乾き、頭痛し、食を欲せ          ず、眼中に時に紅影を見るを治す。:「当帰・香附子・羚羊角」《方          読便覧》
     [70]小児科:
         ☆小児の原因不明の熱。
         ☆小児の心神不安。
         ☆初生児、時時故なくして発熱、胸悸し、或いは吐乳する者は、之を          変蒸熱と称す。、此方に宜し。大便秘する者は、加芒硝湯に宜し。          或いは紫円を兼用す。《類聚方広義》
         ☆小児食停に、外邪を兼ね、或いは瘧の如きを治す《勿誤薬室方函口          訣》
         ☆小児の温熱は、悉く能く治療す《易簡方》
     [71]猩紅熱
     [72]視力障害
    [73]自律神経失調症
    [74]心下で動悸(心下悸)
         ☆心下悸し小便不利する「黄芩、茯苓4.0g」《龍野》
     [75]心下痞硬
         ☆脇下痞硬・・・大棗、牡蠣4.0g《龍野》
         ☆心中飽満するには:「桔梗・枳殻」《古今方彙》
         ☆心下痞満には:「黄連・枳実」《古今方彙》
     [76]心煩
         ☆胸中煩して嘔せぬ者:「半夏・人参、括楼実3.0g」《龍野》
     [77]神経質
     [78]神経性胃炎
     [79]神経性の不食症(拒食症)
         ☆22歳の女性。5年ほど前に虫垂炎の手術をし、その後次第に痩せ          てきた。ところが、約1年半ほど前から、米飯は1粒も食べられな          くなった。何か食べると鳩尾に石のようなものが入っている様に感          じ、苦しくてたまらない。食事はリンゴとパンを1片ぐらい食べる          だけである。便通は4、5日~10日も無いことがある。月経は1          月前から閉止している。体重は30kgになってしまった。患者は          某大学病院で、神経性のものだと診断されて治療を受けていたが、          最近では衰弱のため歩行困難になっていた。
          足が冷え、肩が凝る。脈は沈遅弱である。血圧は最高が90。腹診          するに、腹部は一体に痩せて弾力がないのに、右の季肋下に抵抗と          圧痛がある。明らかに胸脇苦満である。それに正中線から少し左に          よって臍上に膨隆した部分があって、やや抵抗がある。この患者は          古人が不食病と呼んだもので、脈からみると附子剤を用いる証のよ          うに思える。私はかって、この女性に似た不食病の患者に附子理中          湯や真武湯を用いて失敗した経験を持っている。そこでこんどは附          子剤を警戒して、腹証によって小柴胡湯を用いた。
この患者は、小柴胡湯を1回飲むと、強い腹痛を起こして下痢し、          七転八倒したが、しばらくすると、その痛みがおさまり、3日目か          ら米飯を3椀食べても平然としていた。
小柴胡湯で、腹痛、下痢を起こしたのは、古人が瞑眩と呼んだ良          い反応であった。《大塚敬節》
    [80]神経痛
    [81]腎炎
     [82]腎盂炎
☆膀胱炎の症状があまりなくて、往来寒熱、口苦、舌白苔、悪心または嘔吐、食欲がないを目標にする(漢方診療医典)
     [83]腎結石
     [84]ストロフルス=ジンマシン様苔癬
     [85]頭痛:
         ☆婦人、産後の頭痛にして、胸脇苦満を訴える証《奥田謙蔵》
         ☆傷寒差ゆる後、更に頭痛壮熱あり、煩悶す。
         ☆「茯苓山梔子」《内科摘要》
         ☆「半夏人参薄荷石膏」《六要》
     [86]精神分裂病
     [87](せつ):
         ☆「フルンケル」、及びその類似疾患にして、往来寒熱を発する証《奥          田謙蔵》
     [88]舌質 <紅>
     [89]舌苔 <薄白~白~白膩>
[90]全身性エリテマトーデス
慢性期に入り、胸脇苦満の柴胡証を表しているときに用いる。血の証を兼ねたものには桂枝茯苓丸を合方する。ときに五苓散を合方することもある(漢方診療医典)
     [91]喘息:
         ☆緩解期に飲むことで体質改善する:「半夏厚朴湯」or「麦門冬          湯」
         ☆灸火を被り、発熱、喘息する者:「黒豆、牡蛎」《先哲医話》
     [92]腺病質の体質改善
☆胸腺リンパ体質の小児で、扁桃やリンパ節が肥大しているものに用い、体質を改善する効がある(漢方診療医典)
     [93]そばかす
     [94]側頭部(の痛み・こり)
     [95]帯状疱疹
     [96]唾石:
         ☆私自身が耳下腺に唾石が出来た例。それは昭和36年12/30のこと          である。夕飯を食べようとすると、右ののどが、妙に突っぱる。お          かしいなあと思っている中に、妻が「あなた大変ですよ。おたふく          かぜのようですよ」という。頬に手をやってみると耳朶の前から下          にかけて、ひどく膨らんでいる。この部を按じてみると、弾力があ          って、軟い。圧痛はない。食前までは、何ともなかったものが、食          事を始めて5分間位の間に、こんなに腫れたのをみると、唾石に違          いない。そこで早速、小柴胡湯梔子3.0・芍薬4.0を呑んだ。翌          朝はだいぶん腫れが取れた。食事をしても腫れは、前夜の半分くら          いですんだ。そしてたった1日分で治ってしまった。石が出たよう          に見えなかったが、それきり治ってしまった。《大塚敬節》
[97]多発性筋炎
☆胸脇苦満、心下痞硬のある場合に用いる・血があれば桂枝茯苓丸などの駆血剤と合方する(漢方診療医典)
     [98]食べたくない
     [99]だるい
     [100]胆石症(芍薬甘草湯)
     [101]胆道ジスキネジー(茯苓飲)
⇒biliary dyskinesia(胆道機能不全)(胆道運動失調症)
    [102]胆嚢炎
    [103]丹毒:
         ☆頭瘟(頭部の丹毒):「桔梗石膏」《方読便覧》
     [104]中耳炎:
         ☆耳(テイジ、中耳炎)初起:「石膏」《方読便覧》
         ☆外耳道炎よりも中耳炎に用いる機会がある《大塚敬節》
         ☆葛根湯などを用いた後、疼痛は軽減したが、なお熱が残り、口が苦          く、食が進まず、頭が重いような場合に用いる《大塚敬節》
☆慢性中耳炎が感冒その他の原因で、炎症が強くなり疼痛を訴える者          に用いる《大塚敬節》
         ☆乳幼児の中耳炎に、小柴胡湯、小柴胡湯石膏、柴胡桂枝湯などを          用いる機会が多い。《大塚敬節》
         ☆乳幼児で突然、原因不明の高熱が出て、夜間など泣いて眠らない時          には、先ず急性中耳炎を疑ってみる必要がある。このような場合に          は、また乳を吐いたり、飲食物を吐いたりする事も多い。これには          小柴胡湯石膏の証が多い《大塚敬節》
☆発病後数日を経過して、悪寒、発熱があり口苦く、舌に白苔があり、耳痛、難聴、膿汁の出るものに用いる。熱が強くて煩悶、口渇を訴える者には、桔梗3.0g石膏5.0gを加える(漢方診療医典)
     [105]血の道症
     [106]蓄膿症:
         ☆鼻淵初起を治す:「辛夷・石膏・薄荷」《方読便覧》
   [107]腸チフス:
         ☆腸「カタール」等には、証に由り芍薬を加味し、或いは五苓散を合          方す。《奥田謙蔵》
     [108]疲れやすい
     [109]伝染性単核症
   [110]テンカン(癲癇)
「山城、淀藩の士人山下平左衛門は、《吉益東洞》先生に謁して曰く、「男ありて、生まれて5歳。唖にして癇、日に一発或いは再発す。虚(おう)羸憊して、旦夕斃(へい)を待つ。且つその悶苦の状は日一日と甚だし。父母の情として坐視するに忍びず。願わくば、先生の術に頼りて幸にひとたび起つを見れば、死すと雖も悔いなし」と。
  先生は因って為に之を診す。心下痞、之を按じて濡。乃って大黄黄連湯とつくりて之を飲ます。百日ばかり。痞去りて癇は復発せず。而して胸肋妨張し、脇下支満す。唖は尚故の如し。又小柴胡湯及び三黄丸を作りて、之を與う。時に大陥胸丸を以て之を攻む。半歳ばかり。一日乳母、兒を擁して門に倚る。適々馬を牽きて過ぎる者あり。兒(こ)忽呼びて曰く「牟麻(むま)」と父母喜び甚だし。乃ち襁負(きようふ)して(=耳を疑いながら)倶に來り、之を先生に告ぐ。先生試みに糖菓を拈して、以てその呼を挑む。  兒忽ち復呼びて曰く「牟麻」と。父母以為(おもえ)らく「願いに過ぐ」と。踊躍(ようやく)して自勝せず。因って前方を服すること數月、言語卒に常の兒の如し。」《建珠録》
虚(おう)=身体が衰弱し弱々しい
羸憊=やせ衰え疲れ果てる
胸肋妨張=脇腹部分がふくれて使える病気
自勝せず=自分で自分を抑えられないほど喜ぶこと。
☆癲癇発作の襲来と小柴胡湯証の発現には密接な関連がある。小柴胡          湯証が消失したと思って、小建中湯に変方すると忽ち発作が起きて          くる。発作の起る場合には必ず小柴胡湯証が出ているという風で油          断がならない。そこで胸脇苦満がなくとも小柴胡湯を続ける事とし          た。私は癲癇のすべてが小柴胡湯証体質を基礎とするものなること          を主張せんとするものではないが、少なくともある種の癲癇はこの          ように小柴胡湯証患者の病態表現の一病状なることを確信するもの          である。《相見三郎》
         ☆小柴胡湯桂枝加芍薬湯で、白痴の智能の低い患者を除けばすべて          全治する《相見三郎》
         ☆「黄連解毒湯」
     [111]凍傷
     [112]痘瘡(天然痘):
        ☆痘瘡、発熱甚だしくして、嘔する者は、宜しく之を服すべし《証治準         縄》
        ☆痘瘡、貫膿収靨の間、身熱くが如く、胸満、嘔渇し、痒、煩躁す         る者を治す。また収靨の後、余熱久しく解せず、前症の如き者も、亦         此方に宜し。《類聚方広義》 靨=エン、えくぼ
     [113]糖尿病
     [114]禿頭=はげ
     [115]吐血:
         ☆男女の諸熱あり、出血し、血熱薀降す。吐血上焦にある者に属する          治法なり。《仁斎直指方》
     [116]吐乳:
         ☆小児、乳食を吐し、発熱する証《奥田謙蔵》
   [117]どもり
[118]難聴
☆かぜで熱があった後、あるいは咳嗽などが続いて難聴を起こしたとき、あるいは中耳炎後の難聴やアデノイドに伴うものなどにはこの証がある。多くの場合胸脇苦満を認め、心下部肝臓のあたりが硬く張っているので、この部のうつ熱うぃ冷ますと良くなるものである。うつ熱が激しく口渇があるものに石膏7.0g(漢方診療医典)
     [119]乳腺炎
     [120]ネフローゼ
     [121]ノイローゼ
     [122]膿胸
     [123]肺炎
     [124]肺気腫
     [125]肺結核
     [126]梅毒:
        ☆黴毒残害を為す者は小柴胡湯を主とし、証に随って加減して、多く験         あり。《和田東郭》曰く、凡そ黴毒熱ある者、先ずその熱を解せざれ         ば則ち癒えず。
        ☆旧下疳瘡にて忽ち頭痛、発汗、自汗するを治す:「草竜胆・黄連・         胡黄連」《医学綱目》
         「下疳」=梅毒が陰茎、亀頭、包皮、女子大小陰唇、陰道などに生じ              る病。
     [127]はげ
     [128]はしか
     [129]発熱:
       ☆抗生物質を使用しても下がらない高熱。
        ☆原因不明の熱にも《大塚敬節》
        ☆瘧(=間歇性の悪寒・高熱・戦慄・汗出を特徴)、発する時、耳聾、         脇痛し、寒熱往来し、口苦、喜嘔し、脈弦なる者は、名付けて風瘧と         曰う。小柴胡湯之を主どる。《名医方考》
        ☆男女諸熱出で、血熱して蘊隆なるを治す。剛痙の熱有るを治す。咽乾         喉塞、亡血家、淋家、衂家、瘡家、動気は、並に汗す可らず、皆此湯         を用いる。《仁斎直指方》
        ☆伏暑、発熱し、汗し、渇し、暑心包に入り不語するを治す:「茯苓」
          《万病回春》
        ☆傷暑、外熱し、内渇するを治す:「茯苓・生姜」《仁斎直指方》
        ☆瘧を截(つき)ること神の如し。《張景岳》
        ☆瘧疾にて服薬して寒熱転ずること大なる者を治す。「知母・石膏・         桂枝」《寿世保元》
        ☆一男瘧を患うこと3年、昼発する者を治す。乃ち陰中の陽病なり。         :「柴胡・人参各倍加、白朮・川芎・禍根・陳皮。青皮・蒼朮」         《古今方彙》
        ☆一男子、瘧を患うこと3年、夜発するを治す。乃ち陰中の陰病なり。         :「四物湯青皮」《医学正伝》
        ☆12歳の男児。1ヶ月余り前から、午後になると、37、5℃の熱が         出て、元気が無く、だるがると云う。2、3の病院で詳しい診察を受         けたが、熱の原因が分からない。腹診上、胸脇苦満というほど季肋下         の抵抗を認めない。脈は浮ではなく、やや細である。悪風も悪寒もな         い。
桂枝湯や葛根湯の証ともみえない。試みに小柴胡湯を与えてみる。         7日後に来院したのをみると、何となく血色がよく、元気である。熱         の方は下らない。引き続き3週間分を飲む終わる頃から、熱が37、         1℃ぐらいになり、食が進み、疲れを訴えなくなった。《大塚敬節》
        ☆1貴人の小児、5、6歳。悪寒がして熱が出るという状態が数ヶ月も         続き、そのため痩せ衰えた。医は、これを疳労(小児結核)と云い、或         いは回虫のためだと診断して治療し、その他諸種の薬を用いたが、一         向に効がない。その後で、1人の医が、小柴胡湯を用いたところ、4、         5日もたたないのに、諸症が脱然として愈えた。これは面白いことだ。         前医はとかく、病の見立てが深くて薬が反って当たらず、後医は普通         のありきたりの常法を守って効を得たのである。《梧竹楼方函口訣》
     [130]半身不随
     [131]反芻症
     [132]B型肝炎
     [133]ひきつけ
     [134]微熱
        ☆発汗を行いて後、発熱減退するも、未だ心身爽快ならず、時に腹痛甚         だしく、口乾きて嘔する証《奥田謙蔵》
        ☆渇せず、外に微熱する:「人参、桂枝3.0g」《龍野》
        ☆経水たちまち断ち、瘟邪内の搏ち、血結んで散せず、邪出路なく、昼         は即ち熱軽く、夜は即ち熱重く、譫語し、渇を発す。これ熱、血と         結ぶなり「半夏花粉・桃仁・紅花・牡丹皮・生地黄・犀角」を以         て破血し、邪を逐う。もし腹満して痛み、大便せざる者は、さらに「         大黄」で微に之を利すと。《傷寒翼方》
     [135]百日咳     
[136]風疹
☆発疹後には、一般に小柴胡湯を用いる。頸部リンパ節腫脹、気管支炎、中耳炎などが併発した場合は桔梗石膏として用いる(漢方診療医典)
     [137]副睾丸炎
     [138]副鼻腔炎(加桔梗石膏)
[139]腹水
☆腹痛を主訴として入院した50歳の男性。肝肥大と腹水がみられ、軽微の黄疸もある。肝硬変の疑いで、某大学に入院して検査を受け、肝硬変症と診断されたが、2ヵ月の入院で、腹水は増加し、黄疸も強度になったので、退院して再び治を乞うた。そこで、小柴胡湯茵五苓散を用いたところ、1ヵ月あまりで、腹水も黄疸も消え、半ヶ年ほどで、愁訴は全くなくなり、2カ年あまりの服薬で、ほぼ全治した(漢方診療医典)
     [140]腹痛:
        ☆胸腹痛み拘急するに「小建中湯」を与えて癒えざるに此方を用いる。
        ☆積気ありて風邪に感じ、熱裏に閉じて発せざれば、必ず心腹痛あり。         これ時積なりとて、その鍼薬を施して治せざる者、此方にて速やかに         癒ゆ。《勿誤薬室方函口訣》
        ☆熱候なく、腹痛刺すが如く、嘔、渇ありて心煩し、脈沈なる証《奥田         謙蔵》
        ☆腹中痛む者:「黄芩、芍薬3.0g」《龍野》
        ☆胸腹に邪気留滞し、時に嘔せんとし、或いは腹痛し、小便不利なる者         :「黄連茯苓」
[141]副鼻腔炎
☆それほど強壮に見えない人、またやや虚弱の傾向のある者によい。
桔梗・石膏各3.0gまたは苓桂朮甘湯(漢方診療医典)
     [142]浮腫:
        ☆全身浮腫を治した例
         京師木屋街の魚店、吉兵衛の男、年15歳。通身洪腫し、心胸煩悶し、         小便不利し、脚殊に濡弱。衆醫效なし。
  《吉益東洞》先生之を診す。胸脇苦満し、心下痞し、四肢微熱す。         小柴胡湯をつくりて之を飲む。3服を盡くして小便快利し、腫張髄い         て減ず。いまだ10服に満たずして全く癒ゆ。《建珠録》
     [143]船酔い
     [144]不眠症:
        ☆内熱甚だしく錯語し、心煩し眠るを得ざる者:「解毒湯」《万病回         春》         
     [145]偏頭痛
     [146]扁桃炎
     [147]扁桃肥大
     [148]扁桃膿瘍
    [149]便秘:
         ☆久しく大便せざる者、此方にて程良く大便通じ、病解するなり。上          焦和し津液通ずるの義なり。《勿誤薬室方函口訣》
     [150]マラリヤ:
         ☆マラリア及びその類似疾患《奥田謙蔵》
   [151]麻疹 :
         ☆麻疹、及び痘瘡等にして、煩渇甚だしき者には、証に由り石膏を加          味し、或いは白虎湯を合方す。《奥田謙蔵》
         ☆麻疹発し、熱頗る解すも、余熱未だ解せず神色了了ならず、食未だ          進まざる者:「荊芥・防風・連翹」《麻疹心得続録》
         ☆麻疹発して後、胸脇苦満、嘔吐、煩渇し、飲食進まざるを治す:「          桔梗石膏」
☆発疹後には一般に小柴胡湯を用い、順調なものはこれで治る。また微熱が続き肺結核の続発が考えられるような場合にもこの方尾w用いる。頸部リンパ節腫脹、気管支炎、中耳炎などが併発した場合は小柴胡湯加桔梗石膏として藻チル。小柴胡湯で効のない場合は、柴胡清肝散で奏功することがある(漢方診療医典)
     [152]慢性胃腸炎:
         ☆食欲なく、口苦く、白苔、悪心、嘔吐、胸脇苦満がある者。
     [153]慢性肝炎
     [154]慢性腎炎:
         ☆浮腫はないが、タンパク尿がある:「茯苓・黄連」
☆亜急性期または慢性化した腎炎で浮腫が無いかあっても軽度のものには、小柴胡湯茯苓3.0、黄連1.5を用いる(漢方診療医典)
     [155]耳鳴り:
         ☆感冒が治ったあと、耳管カタルを起こして、耳が塞がったものに用          いて良く効く:「香蘇散」《大塚敬節》
   [156]目がくらむ
     [157]夜尿症:
         ☆小柴胡湯桂枝加芍薬湯《相見三郎》
         ☆患者、29歳。眼をぎょろつかせて絶望そのもののような表情で診          察室に入ってきた男。しばらく口ごもっていたが、やがて思い切っ          たように夜尿症だという。何時から始まったか、幼少年時代からだ          ったのではっきり憶えはないが、深刻な悩みとしてこの病気と対決          したのは18歳頃からだった。毎夜、必ず寝小便をするので、寝床          を濡らさない朝というものが記憶にないと云う。そのため、東大病          院、有名病院を遍歴し、カテラン比薦骨内注射法、頸部交感神経切          除手術、果ては膀胱括約筋の縫縮手術までも受けたが、どれもこれ          も全然来たい外れで寸効もない。最近は自律神経遮断剤をここ1年          半続けてきたが、主治医から、「どうかね、ちっとは効果がありそ          うかね」と聞かれ、がっかりすると同時に憤然とした。一体医者は          自分を実験材料にして来たのか、1年半も通わせて今に至って、ち          っとは効き目がありそうかとは何事だ。もう私は医者も病院も信用          しません。ただあなたを紹介してくれた人があまり親切だったので          やって来て見たのだと云う。
本人は立派な会社員で結婚の話も時々あるし、恋愛も2、3度し          たこともあるが、どれもいざ具体的な話となると、自分の病気のこ          とを隠す訳にはいかなくなる。そのため、どれもこれも破談になっ          てしまう。姉が1人居るが聾唖で結婚出来ないし、もう自分の代で          家系は断絶する覚悟をしていると、聞いているのがつらい程の話し。
診察すると、脈は緊張性で正常、舌は赤滑、便通は1日おき位、          小便は日中は特に近いという程でもない。頭痛と肩凝りを訴え、冷          え症で口渇もある。腹証を診ると左胸脇苦満と腹直筋緊張を触知す          る。小柴胡湯桂枝加芍薬湯を10日分投与。
4/2日再診。初診時と打って変わって晴れ晴れとした表情でやっ          てきた。服薬以来1回も夜尿しないと云う。長い年月毎朝蒲団の洗          濯をして物干し竿にかけてからでないと出勤出来なかったのに、こ          の頃は毎朝乾いた蒲団を片づけてすぐ出勤できる。その愉快な気分          は何とも言えないという。《相見三郎》

     [158]ゆううつ感
     [159]癰疽:
         ☆脳疽、疽、熱赤腫する者を治す:「石膏」
     [160]卵巣機能不全
     [161]リンパ節炎
     [162]リンパ腺炎:
         ☆6歳女児。頭痛と頸が痛いと云う。熱が39℃に近く、右の頸が腫          れている。医師に診てもらったら、リンパ腺炎であると云われた。          それから局部に氷嚢を当てて臥床した。その後、病勢は漸次熾にな          り、腫脹と疼痛のために頸の運動が妨げられ、頭を左側に傾けた位          置をとり、起臥が楽に出来なくなった。熱は38℃より40℃の間          を往来し、時々悪寒がある。食欲は減退し盗汗が出る。発病後2週          間以上も経つが一向に良い方に向かず。不安に思って余の許を訪れ          た。
主訴、右頸腺腫、疼痛、頭痛、食欲不振、盗汗、往来寒熱(熱は          最高40℃に至る)
現症、体格中等、栄養中等の女児。頸は左斜頸の位置を取り氷嚢          を当てて固定している。脈はやや数であるが著変はない。舌には一          面に白苔がある。扁桃腺の肥大なし、氷嚢を除いて診ると右頸腺部          が鳩卵大に腫脹隆起し、圧に対して過敏、波動を触れず、表皮の発          赤なし。腹壁厚くして弛緩す。臍傍に抵抗強き所ありて圧痛あり、          便通は秘結す。
小柴胡湯桔梗石膏を処方す。
           経過、投薬後5日目、視察質に入るや非常に良くなったことを感          謝された。先ず頭は自由に動くようになり、頸部の腫脹は外観では          左右比較してほとんど分からない位になり、触診するとまだ指頭大          の硬い部分があって強く圧すれば痛い。熱は平熱になり、元気が平          常通りに回復した。今日は顔色冴え、相当肥っているし、腹にも弾          力が出てきた。便通はその後毎日1回自然排便がある。何もかも良          くなって前日とは見違えるようである。薬は前方を続けさせ、5日          で全快した。《木村長久》
     [163]流感
     [164]溜飲症
[165]流行性耳下腺炎
☆2~3日経って耳下腺が腫れて発熱し、舌に苔ができ食欲があまりない者に用いる。桔梗石膏(漢方診療医典)
     [166]ルイレキ(瘰癧)=頸部リンパ節結核
         ☆瘰癧には、証に由り石膏を加える《奥田謙蔵》
         ☆肝経熱毒、下注便毒、腫痛、一切の瘡傷、或いは風毒、悪核、瘰癧          を治す:「大棗生姜山梔子・竜胆草・当帰・芍薬」《保嬰撮要》
         ☆これは往来寒熱と腹証で用いる。瘰癧には柴胡剤を用いることが多          い。その症は往来寒熱して、胸脇へせまり、気分が悪く、衰弱して          労状になるものである。後世家ではこのような場合逍遙散を用いる。          もし労状になって、下痢し或いは羸痩などして、すっかり衰えた者          には、小柴胡湯よりも逍遙散がよいけれども、下痢もせず、むしろ          便秘し、羸痩もせず、まだ労状になりきらない者には小柴胡湯がよ          い。《有持桂里》
         ☆私は瘰癧で、自潰しないものには小柴胡湯夏枯草、または柴胡桂          枝湯夏枯草、または加味逍遥散貝母・夏枯草・括楼根・牡蠣・          青皮を用いる。瘰癧も自潰して排膿しているような場合は、蓍帰建          中湯、内托散、十全大補湯などを用いる《大塚敬節》
      [167]肋膜炎:
         ☆肋膜炎等には、証に由り「小陥胸湯」を合方す《奥田謙蔵》
   [168]肋間神経痛
   [169]ワイル病 Weil disease《黄疸出血性レプトスピラ病》
     [170]わきばらが痛い:
         ☆肝気のために脇痛が起こり、手足がだるく、安眠出来ない者を治す。          :「川芎・当帰・白芍薬・蒼朮・青皮・草竜薈」。
         ☆性急で怒りっぽい人の、脇痛:「川芎・芍薬・青皮」を煎じ、竜           薈丸で飲む。
         ☆気欝から肝火を動かし脇痛する者:「黄連・牡蠣・枳殻」。
         ☆血が肝に溜まり、脇下が疼痛し、触れると痛みが激しくなる。:
          「四物湯桃仁・紅花・乳香」。
【副作用】
     ★間質性肺炎:
      「慢性肝炎の治療などに使われる漢方薬小柴胡湯を服用した患者が副作用で       死亡した問題で、製品の警告欄の新設や医療機関への注意喚起などを行っ       た96年3月以降も、4人が死亡していたことが4日、厚生省の調べで明       らかになった。これで同剤を服用していた患者が肺炎を起こしたのは、9       4年1月以降、188例にのぼり、うち20人が死亡した。」1998.3.5《日       本経済新聞》
★田代真一・昭和薬科大学教授(漢方薬理学)1998.5.24《朝日新聞》
「72歳の女性。風邪で熱が出たとき、これまでは漢方薬の柴胡桂枝湯をよ       く飲んでいました。しかし、この薬を本で調べたところ、副作用で死者が       出た小柴胡湯と成分が似ているようです。副作用の原因は何でしょうか?       こんど風邪を引いたときに飲んでよいかどうか迷っています。(栃木・O)」
       ●難しい名前の薬ですが、どういう治療に使うのですか?
      「柴胡桂枝湯は頭痛や寒気のひどい風邪などに使います。小柴胡湯はもとも       と肺炎などに使っていましたが、肝臓の働きを改善する効果が証明され、       慢性肝炎の治療にも使うようになりました。」
●薬の成分は似ているのですか?
      「混ぜてある生薬に共通のものがあるので似ています。小柴胡湯は7の生薬       を混合していますが、これに別の2種の生薬を加えたのが柴胡桂枝湯です。
       ●問題になった小柴胡湯の副作用とは?
      「小柴胡湯は慢性肝炎への効果が認められて漢方薬の中では一番使われてい       ます。厚生省の調べでは、服用した人がまれに間質性肺炎という重い肺炎       にかかり、中には呼吸困難で死亡した人もいたことが判ったのです。」
●副作用の原因は何ですか?
      「いくつかの原因が推定されるだけで、まだ突き止められていません。組織       的な原因究明をする必要があります。厚生省がこの3月に出した医薬品安       全性情報では「アレルギーと推定される」としています。食物アレルギー       で、ひどい場合にはショック死する人がいるように、薬でもひどいアレル       ギーが起きることがあります。
ただ、間質性肺炎になった人の中で追跡調査の出来た66例でアレルギ       ー反応を試したところ、はっきりした陽性は3割ほどに過ぎませんでした。
●アレルギーの他にどんな可能性があるのですか?
      「私は小柴胡を飲んだ人がかかった間質性肺炎に中には、全く原因不明で起       きる『特発性間質性肺炎』もあるのではないか、と考えています。間質性       肺炎は普通、副腎皮質ホルモンを与えると治るのですが、発症後の治療を       調べることが出来た9例の死亡例は、いずれもこの治療を受けていたにも       関わらず、治らなかったからです。
●原因が分からないと不安ですね?
      「漢方は患者の症状に見合う処方を大切にしますので、「本来飲むべきでな       い人が服用したのではないか?」という見方もあります。また、生薬の何       らかの成分が害を引き起こした可能性もまだ否定できません。
●柴胡桂枝湯は大丈夫なのですか?
      「小柴胡湯と共通する生薬を含むので、同じ害が起きる可能性は皆無ではあ       りません。しかし、これまでのところ、そうした報告はありません。万一、       小柴胡湯と同じ程度の危険性があるとしても、薬による利益がはるかに大       きいので、恐れすぎることはありません。小柴胡湯で間質性肺炎になった       頻度は高めに診ても1/10000で、この頻度は、インターフェロンが間質性       肺炎を起こす1/500という頻度と比べて著しく低い(20倍低い)と言       えます。風邪で長期に飲む訳ではなく、あまり心配することは無いでしょ       う。
       ●柴胡桂枝湯を飲むときはどんなことに注意すればよいでしょう?
      「間質性肺炎の兆候は、
         タンがないのにコンコン咳きをする。
         ちょっと動くとすぐ息切れする、
         微熱がある、といったことです。
        風邪の場合に、もともと出がちな症状なのですが、飲み続けてもこうし       た症状がおまらない場合は、間質性肺炎の恐れがあります。すぐ医師に相       談してください。間質性肺炎と分かっても、すぐにきちんとした治療をす       ればまず大丈夫です。」
  (参照→病状:『特発性間質性肺炎』)


   【加減】
      山梔子・牡丹皮=「加味小柴胡湯」


 小柴胡湯加桔梗石膏
    ★適応症及び病名
[1]咽痛
     [2]咽喉化膿
     [3]往来寒熱
     [4]感冒
     [5]胸脇苦満
     [6]首の横が緊張・疼痛・熱感あり
     [7]頸部リンパ腺炎
     [8]口渇<>
     [9]口苦
    [10]高熱
    [11]耳下腺炎
    [12]心下痞硬
    [13]心煩
     [14]のどの痛み(咽痛)
[15]肺炎
[16]百日咳
[17]扁桃炎
    [18]扁桃周囲炎
    [19]癰疽


 小柴胡湯合桂枝加芍薬湯《漢方治療の実際》
      「小柴胡湯桂枝4、芍薬6」


 小柴胡湯合香蘇散《漢方治療の実際》
    =「柴蘇飲」
      「小柴胡湯香附子4、蘇葉1、陳皮2.5」




 小柴胡湯合半夏厚朴湯《漢方治療の実際》
    =「柴朴湯」
      「小柴胡湯厚朴3、蘇葉2、茯苓4」
    ★適応症及び病名(五十音順)
(参照á柴朴湯)



小承気湯[1-1]《傷寒論》
      「大黄(酒洗)4両、厚朴(炙去皮)2両、枳実(大者炙)3枚」
       右三味、以水四升、煮取一升二合、去滓、分温二服。初服湯當更衣、不爾 者盡飲之。若更衣者、勿服之。
    ◎陽明病、脉遅、雖汗出不悪寒者、其身必重、短気、腹満而喘、有潮熱者、此外     欲解、可攻裏也。手足然汗出者、此大便已也。大承気湯主之。若汗多、微     発熱悪寒者、外未解也。其熱不潮、未可與承気湯。若腹大満不通者、可與小承     気湯、微和胃氣、勿令至大泄下。大承気湯。方二。
    ◎下利譫語者、有燥屎也、宜小承気湯。
    ◎陽明病、潮熱、大便微者、可與大承気湯。不者、不可與之。若不大便六七     日、恐有燥屎、欲知之法、少與小承気湯、湯入腹中、轉失氣者、此有燥屎也、     乃可攻之。若不轉失氣者、此但初頭、後必溏、不可攻之、攻之必脹満不能食     也。欲飮水者、與水則、其後発熱者、大便必復而少也、宜小承気湯和之。     不轉失氣者、愼不可攻也。
◎太陽病、若吐、若下、若発汗後、微煩、小便數、大便因者、與小承気湯、和     之癒。

  
 小承気湯[1-2]《傷寒論》《東醫寶鑑》
      「大黄4銭、厚朴・枳実各1銭半」水煎服。
◎傷寒の裏症に少し熱があり、脹満する者。



│処方 │厚朴 │枳実 │大黄 │適応症 │
│厚朴三物湯 │ 8両 │ 5個 │ 4両 │腹部滿痛・秘結 │
│ 小承気湯 │ 2両 │ 3個 │ 4両 │陽明腑実、大便秘結、潮熱譫語 │
│厚朴大黄湯 │ 1尺 │ 4枚 │ 6両 │子飲胸滿 │






小承気湯[1-3]《傷寒論》《中薬臨床応用》
      「大黄(生)12g(後下)、厚朴6g、枳実9g」水煎服。
    ◎腹満して大便硬き者を治す。《吉益東洞》
    ◎此方は胃中の邪気を軽く泄下するなり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎本論にては燥屎に有無を以て二湯の別とす。燥屎の侯法、種々あれども、その     的切は、燥屎あるものは下を按じて物あり。これを撫ずれば肌膚乾くなり。     燥屎と積気と見誤ることあり。これはくるくるとして手に按じて大抵知るなり。     燥屎は按じて痛み少なく、積は痛んで自ずから発きさめあり。且つ、下焦にあ     るのみならず、上中焦へも上るなり。此の侯無くして潮熱譫語する者、此方に     宜し。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎後世にて、
      <1>大承気湯:三焦痞満を目的とし、 (小承気湯芒硝=大承気湯)
      <2>小承気湯:上焦痞満を目的とする。
    ◎参照á厚朴三物湯
    ◎厚朴が筋肉を弛緩させるので、厚朴枳実が入った処方は、筋肉の緊張が良い     事が目標となる。《大塚敬節》


 小承気湯[1-4]《傷寒論》《漢方治療の実際》
      「大黄・枳実各2、厚朴3」
    ★適応症及び病名(五十音順)
     嘔吐:
        ☆便秘して嘔吐する者で、実証の者に用いる。便秘して嘔吐する者でも、         腹膜炎・腸捻転などのさいは、多くは虚証で、この方を用いることはほとんど無い《大塚敬節》
☆丸田町堀川西、俵屋伝右衛門、寡婦、歳50余、7月中旬、霍乱を患う。癒えて後、ただ嘔止まず、連綿30数日、百方をつくして効無し。時に残暑灼くが如く。多日不飲する者故に、羸痩甚だしく手足厥冷、脈沈微、凡そ食物或いは湯薬、辛酸甘苦の類、皆受けず、如何ともすることなし。とくとその腹を診するに、右脇肋骨の際、鳩尾を去ること2寸ばかりに当て、積塊手に応ずる者あり。予思えらく、大腸中の燥屎なり、下道の塞がる故気通ぜずして、上へ還り嘔するとして、強いて嘔を忍て小承気3貼を服せしむ。はじめ甚だ苦渋入り難けれども強いて服せしむ。或いは嘔し或いは収まり、遂に燥屎数塊を下す。朝に服して夕に嘔頓に止み、靡粥調理、数日にして安し。《梧竹楼方函口訣》
☆《傷寒論》に“嘔の多いものは、陽明の証(腹満・便秘)があっても下してはいけない”とあるが、大便がつまって、嘔吐の止まない場合に、承気湯類を用いることがある《大塚敬節》
[1]脚気:
☆脚気等にして腹満し、便秘する証《奥田謙蔵》
[2]急性大腸炎:
☆急性大腸「カタール」にして、腹痛、裏急後重甚だしく、腹満感去らず、脈実にして、舌に黄苔ある証《奥田謙蔵》
[3]胸腹部が脹って苦しい
[4]下痢:
☆痢の初発、積気甚だ盛にして、腹痛忍び難く、或いは脹悶を作し、裏急後重し、しばしば圊に至るも、而も通ずること能わず、窘迫すること甚だしきを治す《入門良方》 (圊=セイ、便所)(窘=キン、苦しむ)
[5]高熱、譫語
[6]口渇
[7]しゃっくり:(吃逆)
☆大便通ぜず、噦数なるを治す《雑病翼方》
☆吃逆を発し、或いは譫語し、便秘して脈沈実なる証《奥田謙蔵》
☆傷寒、噦逆の症は、熱閉、邪実に属する者有り、寒飲、精虚に属する者有り、又蚘虫に因る者有り、宜しく精診甄(ケン)辮し、以て方を措く べし。世医皆吃逆を懼(オソレ)る。故にひとたび噦症をみれば、則ちもて胃寒、虚脱と為し、概ね吃噦の剤を用いる。祖は謂う可し。王宇泰は瀉心湯、小承気湯、調胃承気湯、桃仁承気湯等を用い、龔廷賢は、黄連解毒湯、白虎湯を用いる。具眼の士と謂う可し。《類聚方広義》
☆この方は、大便が出ずに、腹満して、吃逆を発する者を治す剤である。ただ、注意しなければいけないのは、便秘・腹満があっても、脈の微弱の者には用いない。例えば、腹膜炎や腹水があって、腹満・便秘のあるような患者が吃逆したからといって、軽率に小承気湯を用いてはならない。小承気湯は実証に用いる方剤であるから、腹満も弾力のある充実した状態であり、脈にも力がなければならない。《大塚敬節》
☆これは不大便が目的なり。主治に譫語を云ってあれども、それには拘わらざるなり。およそ噦ある者、是を診するに、腹微満して不大便する者ならば、此方を用るなり。この金匱の主治は正しけれども、今これを活用して胃中に欝熱あると思う者に用ゆ。その処に此方を用て効を得ること多し。そのときは譫語や舌苔に拘わらずして、ただ腹候と不大便とにて用ゆべし。余もと此方を拡充して用ひしは噦の奇方に平胃散(厚朴が筋肉の痙攣や緊張を緩解せしめる)を用ひありて珍重するあり。京師の大家の医におごそかに此方を用る人などあり、なるほどこれをみるに、いかにも効験あり、因って謂ふに、噦に胃中の欝塞より来るものあることを、しからば、とてものことならば、平胃散より承気湯を用るがその効速かなるべしと按じて、後この症に会ひて、承気湯を試みるしに、果たして即効あり。理中湯・四逆湯・呉茱萸湯のの反対と見えたり。さて平胃散、効あるの方といへども、ただこれを噦の妙剤と覚えたるもの笑ふべし。《有持桂里》
[8]消渇:
☆消中、熱胃に在りて能く食し、小便赤黄なるを治す。微しく之を利せば効を為す。多利すべからず。此の薬を服して漸々と之を利し、多食 を欲せざれば則ち癒ゆ。《雑病翼方》
[9]頭痛:
☆頭痛甚だしくして便秘し、腹部緊満、尿黄赤色なる証《奥田謙蔵》
[10]舌苔:暗黄色
[11]パーキンソン病:
☆「+芍薬甘草湯」《大塚敬節》
[12]熱性病:
☆諸般の熱性病、胸腹部膨満し、二便にわかに閉止し、煩悶、躁擾して安からず、その脈実なるも、尚少しく浮の傾向ある証《奥田謙蔵》
[13]中風:
☆「+小続命湯」《潔古》
☆中風の九竅に閉じ、唇緩やかに舌強ばるを利す。:「+羗活」《活用機要》
[14]手足厥冷:
☆少陰病、手足厥冷し、大便秘し、小便赤く、脈沈にして滑なるは、小承気湯なり。《傷寒諸論》
[15]痘瘡:
☆痘、冷を飲みて食に傷られ、腹痛甚だしき者を治す。《奥田謙蔵》
[16]吐乳:
☆小児の吐乳症にして、腹満し、便閉する証《奥田謙蔵》
[17]尿淋瀝:
☆尿淋瀝し、便秘の傾向あり、或いは血尿を漏らし、下腹部緊満、疼痛し、脈沈実なる証《奥田謙蔵》
[18]煩躁:
☆吐瀉の後、大熱煩躁し、脈緊実なる証《奥田謙蔵》
[19]便秘:
☆腹部が全般的に膨満して弾力があり、脈にも力があって、便秘しているときに用いる。しかし腹膜炎や腹水などがあって、膨満している時は用いてはならない。《大塚敬節》
☆感染性疾患で、便秘する者。
☆発熱性疾患で、便秘する者。
☆発汗過多、流汗止まず、便閉して煩悶、擾乱し、その脈実なるも、尚少しく浮を帯びる証《奥田謙蔵》
☆大便秘結し、下腹部微満、緊実なる証《奥田謙蔵》
☆パーキンソン氏病などにくる便秘に用いる機会がある。《大塚敬節》





小省風湯《東醫寶鑑》
「防風・天南星(炮)各2銭、半夏製・黄芩・甘草各1銭」剉作し、1貼に姜10片入れ水煎服。導痰湯と合わせて煎じて飲むとさらによい。
◎風を散らして痰を除いて火を降ろす。
◎卒中風で人事不省になり熱がないとき。

小省風湯《和剤局方》《古今方彙》
「防風・天南星各4両、黄芩・半夏・甘草各2両、生姜」煎服。導痰湯と合して服すれば尤も妙なり。
◎卒中風、口噤、口眼喎斜、筋脉攣急、抽掣疼痛、風盛痰実、旋暈僵仆、頭目眩重、胸膈煩満、左癱右瘓、手足麻痺、骨折煩疼、歩履艱辛、恍惚不定、神志昏憒、一切の風症を治す。
◎此方は風を散じ、痰を豁き、火を降ろし、標本兼ねて治する者を謂う可なり。
 

小参蘇飲《東醫寶鑑》
「蘇木2両」を切って、水2杯で1杯まで煎じ、人参(細末)を入れて呑む。
◎産後の敗血が肺に入って、顔色黒く、喘促を発して死にかかっている者。

小清空膏《東醫寶鑑》
「片芩」細切りにし(酒浸)し作末、茶清で2銭調服。
◎風・湿・熱の偏・正頭痛を治す。

小清脾湯《東醫寶鑑》     「厚朴2銭、烏梅肉・半夏・青皮・良姜各1銭、草果・甘草各5分、姜3、棗2」水煎服。
◎胃瘧を治す。

小青竜湯[1-1]《傷寒論》
「麻黄(去節)・芍薬・細辛・乾姜・甘草(炙)・桂枝(去皮)各3両、五味子半升、半夏(洗)半升」
右八升、以水一斗、先煮麻黄減二升、去上沫、内諸薬。煮取三升、去滓、温服一升。若渇、去半夏、加栝楼根三両、若微利、去麻黄、加芫花、如一鷄子、熬令赤色。若噎者、去麻黄、加杏仁半升、去皮尖。且芫花不治利、麻黄主喘、今此語反之、疑非仲景意。
◎傷寒、脉不解、心下有水氣、乾嘔、発熱而欬、或渇、或利、或噎、或小便不利、小腹満、或喘者、小青竜湯主之。
◎病溢飲者、當發其汗、大青竜湯主之、小青竜湯亦主之。

「心下有水氣」→細辛

小青竜湯[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
=「温肺化飲湯」
「麻黄6g、桂枝6g、白芍薬6g、細辛3g、乾姜6g、五味子3g、製半夏6g、甘草(炙)3g」水煎服。
◎肺寒による呼吸困難、咳嗽。

 
小青竜湯[1-3]《傷寒論》《東醫寶鑑》
「麻黄・芍薬・半夏(製)・五味子・各1銭半、細辛・乾姜・桂枝・甘草(炙)各1銭」水煎服。
此の湯を飲むと裏気が温かく、水気は散る。
◎傷寒が散らず、心下に水気があって乾嘔逆し、気逆による発熱、咳嗽・喘息する者。


小青竜[1-4]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「麻黄・芍薬・細辛・乾姜・甘草・桂枝・五味子各3.0g、半夏8.0g」
水400ccを以て麻黄を煮て320ccに煮詰め、上沫を去り、他の諸薬を入れ煮直し120ccに煮詰め、3回に分服。
◎咳喘上衝し、頭痛発熱し、悪風乾嘔する者を治す。《吉益東洞》
◎咳、喘、上衝、頭痛、発熱、悪風し、或いは乾嘔する者を治す《方極附言》
◎此方は、表不解而心下水気ありて、咳喘する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎又、溢飲の咳嗽にも用いる。《雑病論識》
「溢飲」=汗出でずして、水気四肢に帰して、身体疼重を致す等の証。
<1>大青竜湯:溢飲、身体疼痛、汗出でず、拘急痛を治す。
<2>小青竜湯:溢飲、支飲、倚息、臥を得ず、及び喘満するを治す。
◎その人、咳嗽喘急、寒暑に至れば必ず発し、痰沫を吐いて臥すること能はず、喉中しはめくなどは、心下に水飲あればなり。此方に宜し。
◎此方を諸病に用ゆる目的は、痰沫、咳嗽、無裏熱の症を主とす。もし老痰になりて熱候深き者は、「清肺湯」「清湿化痰湯」の類に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎《大塚敬節》「心下水気」の具体的症状:
発作の起こらんとする前に水様性の鼻汁を流して、しきりにクシャミをする者。
頻々尿意を催す者。
喀痰がからまって喘鳴のある者
◎小青竜湯は表に邪があって、裏に水毒にあるものに用いられる。
多くは平素から胸脇に水毒のあるものが、外邪に誘発されて起こる諸種の症状を治する。このような患者は感冒にかかると、気管支炎または喘息性気管支炎をおこして、咳嗽が頻発し、喘鳴、息切れを訴えて、泡沫様のタンを喀出する。桂皮は麻黄と組んで、表邪を去り、麻黄、細辛、半夏は水毒を去り、利尿の效があり、乾姜は裏の寒を去り、五味子は麻黄、細辛とともに咳嗽を治する。芍薬は桂皮と組んで、血行を促し、うっ血を去る《漢方診療医典》


小青竜湯[1-5]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「麻黄・芍薬・乾姜・甘草・桂枝・細辛・五味子各3、半夏6」
    

★適応症及び病名(小青竜湯)
[1]アレルギー性鼻炎:
☆毎年、秋から冬にかけて定期的にクシャミと鼻漏が出る女性に、冷え症で、小便が頻数で、心下部が硬く、水様性の鼻汁が出るというのを目標にして、小青竜湯を用いて著効を得た。
☆心下部に水飲があって、表の邪気を伴い、この水飲が動揺して上昇し、クシャミの頻発、鼻汁過多となり、甚だしい時には涙が出てよだれが流れ出す《漢方診療医典》
[2]インフルエンザ(流感)
[3]胃液分泌過多症
[4]胃酸過多症
[5]胃内停水:
☆胃内に停水あり、頭重く、身体疼痛し、悪寒あり、脈浮細なる証。《奥田謙蔵》
☆ヘソの両側の腹直筋が緊張し、胃のあたりを叩くとポチャポチャと音がする(=胃内停水or胃部振水音)。
[6]悪寒:
☆(背中で悪寒を感じる)
☆少陰表寒の治法なり:「+附子」《傷寒翼方》
[7]咳逆倚息
[8]咳嗽:
☆喘咳し、心下満ち、時々発熱し、脈やや浮なる証。《奥田謙蔵》
☆咳逆し、微喘し、心下部痞満し、尿不利にして脈数、或いは乾嘔し、或いは眩暈を発する証。《奥田謙蔵》
☆脚気肺に迫り、人をして喘嗽せしむ:「+檳榔」《証治要訣并治類方》
☆咳嗽頻発し、呼吸促迫し、逆上甚だしく、脈浮大にして力ある等の者には、証に由り本方に石膏を加える。《奥田謙蔵》
☆呼吸困難がなくて、しきりに咳の出る者にも用いる《大塚敬節》
[9]喀痰あり
☆咳をして、泡沫状の痰を吐く者が目標になる《大塚敬節》
[10]間質性肺炎
小青竜湯には軽度の強心作用が認められる。咳、水様の痰を目標に用いる。《漢方診療医典》
[11]寒嗽:
☆《柯韻伯》、咳嗽を治するに、冬夏を論ぜず、浅深に拘わらず、ただ是れ寒嗽は倶に小青竜湯を用い、多く効あり。
☆《尤在徑》曰く、これ寒を散じ飲をのぞく神剤なり。
[12]関節炎(浮腫性)
[13]関節水腫
[14]感染症
[15]感冒(かぜ):
☆感冒で頭痛・発熱・悪寒の表証があると同時に、腹痛・下痢の裏証があって、咳をする者に小青竜湯の証がある。これを用いて、表邪を散ずるとともに裏の水をさばくから治る《大塚敬節》
[16]気の上衝 <++>
☆上気煩躁あれば:「+石膏」《勿誤薬室方函口訣》
[17]気管支炎:
☆急性気管支炎で、のどがゼイゼイして、咳と共に泡のようなタンが出る者
☆気管支炎にして、微熱有り、腹満を自覚し、口渇を訴え、心下部膨満して咳喘を発し、背部に悪寒を感じる証。《奥田謙蔵》
☆咳が頻発し、喘鳴を伴うこともあり呼吸が苦しくて泡のような痰の出る者によい。早朝に咳のためか顔が浮腫状になっている者は小青竜湯を用いる目標である《漢方診療医典》
[18]気管支拡張症
[19]気管支喘息:
☆呼吸困難が強く、口渇があり、額に汗が出て起座呼吸し、痰がほとんど出ない者:「麻杏甘石湯」《中医処方解説》
☆咽で喘鳴、痰の音がする:「射干麻黄湯」《中医処方解説》
☆この方を気管支喘息に用いるときは、発作時ばかりでなく、発作の収まっている時にも永く続けていると、発作を防ぎ全治に至らしめることが出来る《大塚敬節》
☆気管支喘息には小青竜湯の応ずるものが多いが、痩せて貧血し、腹部は軟弱無力で胃部に振水音を証明し、食欲不振を訴え、手足が冷え、脈が微弱であれば、小青竜湯や麻杏甘石湯などの麻黄剤を用いない方がよい。もし誤ってこれを与えると、全身の疲労感が甚だしくなり、呼吸困難がかえってひどくなることがある。《大塚敬節》
☆“心下水気”を胃内停水と考えて、小青竜湯の腹証に胃の振水音をもってくるけれども、気管支喘息では小青竜湯の効く場合には、胃部の振水音を証明出来ないことが多い。《大塚敬節》
☆15歳の少年。中肉中背で、腹部に胸脇苦満はなく、また腹直筋もさほど緊張していなかったが、発作の前には、風邪をひいたような状態になって、クシャミと水ばなが出る。そして間もなく呼吸が苦しくなる。そうなると、4、5日は学校を休まねばならなかった。そんなことが気候の変わり目によく起こった。
私はこれに小青竜湯を与えた、これを飲むと気持が良く、発作が起こらないというので、2年ほど飲み続けた。それから10年あまりになるが、いまだに発作は起こらない。《大塚敬節》
☆気管支喘息の患者に小青竜湯を与えたところ、ひどい子宮出血を起こし、それきり喘息が治った《漢方診療医典》
☆発作の起こる前兆としてしきりにクシャミをして水様の鼻汁を流し、だんだん呼吸が苦しくなるという患者にには小青竜湯の証が多い。また発作の前駆症状として、頻繁に尿意を催し尿が出る。このような状態に引き続いて発作の起こる場合もあり、これも小青竜湯を用いる目標である。《漢方診療医典》
☆小青竜湯を用いる場合には腹証に注意すると良い。一般に患者の腹直筋が緊張していることが多く、ことに上腹部で腹直筋を硬く触れることが多い。《傷寒論》に小青竜湯の条下に“心下水気あり”とあるがこれは胃部に振水音があるという意味ではないので、振水音を証明しなくても小青竜湯を用いて良い。もし煩躁状態があれば石膏5~10g/日加えるとよい《漢方診療医典》
[20]気管支肺炎
[21]吃逆(きつぎゃく)=シャックリ
[22]急性上気道炎
[23]急性鼻炎
☆鼻水やクシャミが頻繁に出て、鼻水過多症となっているものによい。分泌物は水様稀薄のことが多い。脈は浮で上衝気味のものである《漢方診療医典》
[24]胸水
[25]筋肉リウマチ
[26]クシャミ
[27]結膜炎
☆心下に水飲があって、その上方または表にあふれ出て、結膜に炎症、充血を起こし、流涙がはなはだしく、浮脈の傾向がある。溢飲の証の1つ。アレルギー性結膜炎にもよい。《漢方診療医典》
[28]下痢:
☆脈促にして頭重く、喘咳して熱し、尿不利にして下痢し、或いは少しく裏急後重の状ある証。《奥田謙蔵》
[29]口渇:
☆肋膜炎で急激に滲出液が溜まり口渇する者:「+石膏」《大塚敬節》
[30]肛門掻痒
[31]呼吸困難:
☆気管支喘息・気管支炎・肺気腫などから来る呼吸困難に用いる《大塚敬節》
☆小青竜湯を与えて却って、病勢が増悪して、咳がひどく出るようになった患者がある。1例は30歳位の男性で、1人は30歳位の女性であった。2例とも刺激性の激しい咳と、発作性の呼吸困難を起こしていた。私はこれに小青竜湯を与えたが、1、2日の服用で、咳がひどくて夜も眠れなくなったといって服薬を中止した。考えてみるに、これらの患者には地黄や麦門冬などの滋潤剤の配剤せられた処方を用いなければならなかったのに、逆に小青竜湯で水を去って乾燥せしめたから、却って咳がひどくなったものであろう。小青竜湯は“心下水あり”という者を目標にしているが、これを単に胃内停水と狭く考えてはならないと痛切に感じた、《大塚敬節》
☆ある程度の腹力のある者に用い、腹部の軟弱無力のものには用いないのがよい《漢方診療医典》
[32]昏倒=めまいがして倒れること。
[33]シャックリ
[34]自汗:
☆胸痛、頭疼、悪汗、汗出ずるに発汗剤を与ふること禁法なれども、咳して汗ある症にやはり小青竜湯にて押し通す症あり。麻杏甘石湯を汗出ずるに用ゆるも此の意なり。一老医の伝に、此の場合の汗は必ず臭気甚だしいと。一徴とすべし。《勿誤薬室方函口訣》
[35]湿疹:
☆気管支喘息の患者のジンマシンに:「+石膏」《大塚敬節》
[36]湿性肋膜炎
[37]上腹部振水音:
☆喘息の持病のある人は、胸膈部分の筋肉の発達している者が多く、腹直筋などは上半分がことに強く発達して拘攣し、振水音の証明は不可能である。《大塚敬節》
☆長年喘息に苦しみながら、しかも腹部が軟弱無力で振水音の証明が可能であれば、かなりの虚証であるから、うかうかと小青竜湯を用いてはならない。このような者に私は六君子湯、喘四君子湯などを用いる。《大塚敬節》
[38]少腹満
[39]人事不省
[40]神経痛
[41]腎炎(急・慢性)
☆急性腎炎で熱があり、尿量減少と浮腫がある者。
☆腹診すると、ヘソの両側の腹直筋がピーンと突っ張っている。
☆慢性腎炎にして、喘息を発し、尿中タンパクを認める証。《奥田謙蔵》
[42]心痛:
☆悪寒発熱し、外因の心痛、五臓を内攻し、拘急して転側を得ず:「-五味子+附子」《奇効良方》
[43]頭重
[44]頭痛
[45]喘息:
☆季節の変わり目、前線通過の前後に発作を引き起こす者。
☆発作の前にくしゃみ・鼻水が出て、呼吸が苦しくなる者。
☆喘息にして、表証尚あり、頭痛、微熱し、脈浮細或いは浮弱にして、時々泡沫様希薄痰を喀出する証。《奥田謙蔵》
☆喘息にして、胃内停水あり、心下部の膨満強く、時々咳逆して吐痰する者には、証に由り麻杏甘石湯を合方す。《奥田謙蔵》
☆喘には:「-麻黄、+杏仁4.0g」《龍野ー漢方処方集》
☆昭和14年8月に、私は葉山に住む61歳の退役海軍将校で、毎年10月から3月頃まで間断なく喘息発作に苦しむという方を診察した。この患者は筋肉のしまりの良い痩せた方で、腹直筋が肋骨弓下で硬く突っ張っていた。発作のない時でも、水ばなが流れて困ると患者は云う。それが発作の前にはひどくなる。また皮膚に栗粒大のかゆみのある発疹が出来たり、消えたりする。このような症状には小青竜湯を用いる1つの目標になる。
そこで私は小青竜湯を与えた。するとその冬は1回も発作を起こさなかった。ところが、次の年の12月に、仕事のことで伊香保の旅館に泊まったところ、その旅館が新築であったので木材の匂いがした。    これはいけないと思うと急に呼吸が苦しくなり、別の旅館に移って事なきを得たという。この患者は昭和18年まで私の薬を飲み続けたが、その間に1回、別府の旅館で大酒を飲んだ後、ひどい発作を起こしたことがあった。《大塚敬節》
☆瞑眩を起こして治ることがある。細野史郎氏はこれを用いて、子宮出血があり、それとともに喘息がすっかり治った例を経験し、私はひどく下痢して喘息の治った例をもっている《大塚敬節》
☆3歳の男児。
「風邪を引いて扁桃炎を起こし、高熱を出し、激しい咳が出るようになり、しだいにひどくなって呼吸困難が起こってきた。
風邪をひくと、くしゃみが頻発し、鼻が詰まり、鼻汁がたくさん出る癖があった。母親や兄弟にも同じような傾向があり、アレルギー性鼻炎の一家であった。この子に小青竜湯エキスを与えたところ、服薬後風邪を引かなくなり、咳や呼吸困難が起こらず、別人のように元気になった。」《矢数道明》
[46]喘鳴:
☆(ゴロゴロ・ゼーゼー)
☆《尤怡》曰く、齁喘なる者は、積痰肺に在り、冷に遇えば即ち発し、喘鳴迫塞し、ただ坐し、臥するを得ず、外感内飲と相搏つなり。小青竜湯之を主るに宜し。もし肺に積熱あり、熱寒のため束する者は越婢湯之を主るに宜し。《雑病翼方》 (齁=コウ、いびき)
[47]痰が多い(透明~白色)
[48]涙が出やすい
[49]においが分からない(臭覚低下)
☆アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎などで水様鼻漏、クシャミを伴う場合に用いる。小柴胡湯を併用も可《漢方診療医典》
    [50]尿毒症
    [51]尿量減少(尿利減少)
    [52]妊娠腎
    [53]ネフローゼ
[54]肺炎
☆小青竜湯は小葉性肺炎の初期で寒気がして熱があり、咳の出るものによい。これで尿がよく出るようになれば解熱する《漢方診療医典》
[55]肺気腫:
☆老人の肺気腫にして、表証ある証。《奥田謙蔵》
    [56]肺結核
[57]肺真菌症
☆肺真菌症の治療は、慢性気管支炎や気管支喘息の治療に準じて行う。小青竜湯は比較的体力のある者に用いられる。咳嗽の強い場合は小青竜湯+杏仁4.0または小青竜湯+杏仁4.0石膏10.0。
体力がなく小青竜湯が用いられない場合は苓甘姜味辛夏仁湯を用いる。《漢方診療医典》
[58]肺脹:
☆《程氏》曰く、肺脹を治し、水飲を去り、風寒を散ずる重剤であると。《雑病論識》
    [59]肺癰
    [60]白癬症
[61]発熱:
☆熱候あり、心下部満ち、尿利著しく減少し、咳して嘔し、脈数なる証。《奥田謙蔵》
[62]鼻炎・鼻カタル
☆鼻水やクシャミが頻繁に出て、鼻水過多症となっているものによい。分泌物は水様稀薄のことが多い。脈は浮で上衝気味のもの(漢方診療医典)
[63]鼻づまり=鼻閉
    [64]鼻水  
    [65]半身不随:
[66]百日咳:
☆百日咳の初期にして、微熱なお有り、咳嗽、喘鳴止まざる証。《奥田謙蔵》
    [67]疲労倦怠
[68]鼻涙菅狭窄
☆体内に水気があって、それが体表に溢れ出るというのが、本方の目標の1つである。涙嚢炎で涙が出てやまないのも溢飲の証である、アレルギー性鼻炎に伴って起こるものによい(漢方診療医典)
    [69]腹水
    [70]婦人の神経症    
[71]浮腫:
☆懐妊して四肢浮腫あり、既に娩して復た腫る。胃脘に物あり、胸脇に賁突し、暈倒し、気絶す。腥めて後、短気、喘悶し、脈弦数なる者、《友益》曰く、是れ心下の停水、肺を衝く、産後の水源未だ全く除かず、復漿薬を受く。故に溢れて腫を為すのみ。すなわち「小青竜湯-麻黄+杏仁・前胡・陳皮・茯苓・厚朴」を与う。小便漸く利して癒ゆ。《皇国名医伝》
☆感冒後、腎炎となって浮腫をきたした者《木村長久》
☆咳き込んで顔に軽い浮腫のみられる者も目標になる《大塚敬節》
☆越婢加朮湯や小青竜湯は急性期の浮腫に用いられたが、利尿薬が発達したことにより、あまり利用されなくなった。また、麻黄に含まれるプソイドエフェドリンにプロスタグランジン生合成阻害作用が想定され、腎血流量を低下させて腎機能を悪化させる可能性があるので、高齢者や腎障害のある患者には麻黄剤は慎重に投与する必要がある《漢方診療医典》
[72]ブドウ膜炎(虹彩、毛様体、脈絡膜を含む)
☆炎症充血がはなはだしく、頭痛、羞明、流涙などの証があって、脈浮のときに用いる。、さらに激しいときは大青龍湯にする。《漢方診療医典》
    [73]偏頭痛
    [74]膀胱炎
[75]麻疹
☆発疹後、気管支炎もしくは気管支肺炎を併発し、咳嗽、呼吸困難を訴えるものに、小青竜湯+麻杏甘石湯として用いる(漢方診療医典)
[75]慢性気管支炎
☆慢性気管支炎の老婦人に、小青竜湯を与えたところ、帯下がドッサリ下って、それきり気管支炎が治ってしまった《大塚敬節》
    [76]目が充血
    [77]よだれが出る
    [78]肋間神経痛
    [79]肋膜炎
☆湿性肋膜炎の初期で浸出液は多いが体温もあまり上がらず、体力も衰えず、貧血、盗汗、食欲不振などの無い者に用いる。これで尿量が増加して急速に浸出液の消失することがある《漢方診療医典》
[80]涙嚢炎    
☆体内に水気があって、それが体表にあふれ出るというのが小青竜湯の目標の1つ。涙嚢炎で涙が流れ出て止まないのみ溢飲の証。アレルギー性鼻炎に伴って起きるものによい。《漢方診療医典》
    [81]溜飲症


小青竜加石膏湯《金匱要略》
「麻黄・芍薬・桂枝・細辛・甘草・乾姜各3両、五味子・半夏各半升、石膏2両」
右九味、以水一斗、先煮麻黄、去上沫、内諸薬、煮取三升、強人服一升、羸者減之、日三服、小児服四合。
◎肺脹而上気、煩躁而喘、脉浮者、心下有水、小青竜湯加石膏湯主之。


★適応症及び病名(小青竜加石膏湯)
[1]胃アトニー
[2]胃炎(急性・慢性)     
[3]胃下垂
[4]胃腸虚弱
[5]胃内停水
[6]悪心
☆胃切除後の慢性的な悪心・嘔吐。
[7]悪阻(=つわり)
[8]嘔吐
 ☆周期性嘔吐症
[9]咳嗽:
 ☆哮喘《方読便覧》
 ☆水気喘咳を治す:「麻黄杏仁」《仁斎直指方》
[10]気管支喘息:
☆8歳男児。この少年は体格もよく筋肉もよく発育しているが、母親の云うところによると、年中風邪の引き通しで、学校に行く間がない。 かぜを引くとひどい咳と呼吸困難で、それに時によるとジンマシンも 一緒に出ることがあるという。また発作時には、口渇がひどいと言う。
私はこれに小青竜湯加石膏湯を与えたが、病勢に一進一退を続けて、なかなか全治しなかった。しかし患者は辛抱強く服薬を続けた。その間、私は越婢加半夏湯に転方したり、葛根湯石膏に転方したりした。そしてついにいつともなしに発作が起こらなくなり、ジンマシンも出なくなった。服薬期間は3年であるが、発作もジンマシンも出なくなって、10年ほどになる、《大塚敬節》
    [11]吃逆
     [12]車酔い
     [13]眩暈
[14]口渇
    [15]自汗
    [16]湿性肋膜炎
     [17]上腹部振水音
    [18]食欲不振
     [19]神経性嘔吐
     [20]心悸亢進
     [21]心下部のつかえ
   [22]水腫性脚気
   [23]頭汗
    [24]舌苔 :
☆<微白苔~白滑>
    [25]手足微厥
     [26]動悸
[27]妊娠嘔吐(つわり)
    [28]妊娠中毒症
   [29]尿量減少(尿利減少)
    ☆麻黄+石膏=利水。
     [30]乗り物酔い
[31]肺癰:
☆肺癰初起、これを用いて発汗す《方読便覧》
    [31]二日酔い
     [32]船酔い
    [33]疲労倦怠
[34]浮腫:
☆水腫で咳嗽の激しい者に用いる《餐英舘療治雑話》
     [34]慢性胃炎
    [35]メニエール
     [36]めまい
[37]目眩
     [38]幽門ケイレン
   [39]肋膜炎



小接命熏臍秘方《東醫寶鑑》
「乳香・玩薬・課猳鼠糞・青塩両頭尖・続断各2銭、麝香1分」を作末し、飽食仰臥した後、そば麺で団子を作り、槐皮1片でそれをかぶせ、豆粒ぐらいの炭で灸をする。
◎根元を壮健にし、形態を保護して古病を除去する妙薬。
毎年中秋に1回づつ薫蒸するとよい。

小皀角元《東醫寶鑑》
「皀角(炙)・枳穀」各等分を梧子大の蜜丸。米飲で70丸呑む。
◎風秘を治す。老人にはなお良い。


小瘡摺薬《東洞家塾方》
「巴豆(去殻)・萆麻子各1銭、大黄5分」
右3味、まず杵き研り、2味を泥となして大黄を内れ、末とし綿に包み、煖酒に浸し中にて之を摺ること1日に7回にして癒ゆ。若し癒えざれば前 法の如くす。
◎諸々の疥癬、膁瘡を治す。

小続命湯[1-1]《備急千金要方》
「附子1枚、防風1両半、麻黄・桂枝・黄芩・甘草・芍薬・防已・杏仁・川芎・人参各1両、生姜5分」
◎卒中風、死せんと欲し、身体緩急し、口目不正、舌強ばり語る能わず、奄々忽々、神情悶乱するを治す。諸風之を服して皆験あり。人をして虚せざらしむ。
◎此方は中風初起、病経絡にある者の主治とす。《金匱要略》続命湯とは陰陽の別あり。
◎《福井楓亭》は此方の症にして桂附の用い難き者に:「烏薬順気散」
此方の症にして上気強く面浮腫する者に:「続命湯」《西州》を用いる。
◎身鞕く、風邪に属する者。《方読便覧》

小続命湯[1-2]《東醫寶鑑》
「防風1銭半、防已・杏仁・肉桂・黄芩・白芍・人参・川芎・麻黄・甘草各1銭、附子(炮)5分を剉作し、1貼に姜3、棗2を入れ水煎服」
■ 一方に、防已附子の代わりに当帰・石膏を使い、熱があると白附子を使う。中風に六脈が浄し緊く、風気が盛んで心火が昇り、痰涎が経絡の中に壅塞するのは小続命湯を使い、附子で雄壮な気を出し、斬関奪将の勢いを助け、人参等で十二経に運行して散失された元陽を回復させ麻黄・防風・杏仁等で血分に入って行血養血をさせてその汚損した真陰を滋養し、或いは石膏・知母を加えて、胃火をおろし或いは黄芩を加えて肺金を浄めるもので、もし病勢が少しよくなって精神が漸次回復すると、再び丹溪の法を使って気血を補って浄める薬でその本気を調養する。これは標を治し、標を本にする治法である。
◎卒中風で人事不省になり、喎斜して癱瘓し、瘖瘂で麻木し、眩暈して初期の中風で汗なく、表が実したとき、
◎一切の諸風を治める。
◎風病に常服して瘖瘂を予防すべきである《丹心》

    
小続命湯[1-3]《備急千金要方》《古今方彙》
「人参1銭、附子(炮)5分、桂枝・麻黄・川芎・芍薬・杏仁(炒)・黄芩(酒)各1銭、防風1銭半、防已・甘草各1銭、生姜」水煎。


小続命湯 《漢方治療の実際》
「麻黄・桂枝・甘草各3、生姜4、人参・川芎・防已・芍薬・防風・黄芩各2、附子0.6」
◎中風にて外邪ありて頭疼み、身熱し、背強ばる等の症を治す。
◎《金匱要略》には石膏・当帰ありて、附子・防風・防已無し。
◎小続命湯は、“卒中風、死せんと欲し、身体緩急、口目正しからず、舌強ばって語ること能わず、奄々忽々、神情悶乱するを治す。諸風これを服して皆験、人をして虚せざらしむ”とある薬方で、附子が入っている。続命湯には石膏が入っているから、陽証のものに用い、この方は附子が入っているから陰証のものに用いる《大塚敬節》
    

★適応症及び病名(小続命湯)
[]知覚麻痺:
☆《大塚敬節》
“患者は43歳の男子。昭和24年のある日、強いくしゃみをした時、右の上膊に痛みを訴えた。その後、どうも調子がよくないので、某国立大学の付属病院に入院した。しかしさっぱりしなかった。昭和29年になって、右の示指が動かなくなった。昭和33年4月に高熱が出た。その後、右の足がシビレ、歩行が困難になった。その頃から左の小指も運動が制限せられるようになった。そこで6月になって、東京の某大学病院に入院したが、病名も不明で、症状は少しも良くならなかったという。そこで同年8月24日に当院に治を乞うた。
以上の症状のほかに、めまいと頭痛がある。脈は沈弦小で、血圧は132-88、膝蓋腱反射が亢進し、右側は特に甚だしい。腹診上には特に著明な変化はみられない。大小便は快通し、安眠もできる。
私はこれに小続命湯を2週間分を与えた。これを飲み終わって来院した時は、めまいがよくなったが、その他は大した変化はなかった。更に2週間分を与える。これを飲み終わって来院した時、頭痛・シビレ感もとれ、小指も動くようになり、歩行も前より楽になったという。更に2週間分を与える。これを飲むと、足にだいぶん力がついて、階段の上り降りがよほど楽になったという。”
[]小便失禁:
☆《大塚敬節》
“72歳の男子で脳軟化症が亢じて、小便を失禁し、意識は朦朧とし、あと数日があぶないと思われた者に、この方を用いて、一時の危急を救い、また2年あまり生き延びた”




小続命湯[2]《活人》
「小続命湯《備急千金要方》-杏仁人参+白朮」
◎痙病陰位に属する者の治方なり。《雑病翼方》


小続命湯[3]《西州》
=「続命湯」《西州》
=「続命湯《金匱要略》-人参+黄芩」
◎風湿、腰脚攣急、痺疼を治す。《勿誤薬室方函口訣》



小駐車元《東醫寶鑑》
「黄連3両、阿膠珠1両半、当帰1両、乾姜5銭」作末し、醋糊で梧子大 の丸剤。空腹時に30~50丸飲む。
◎赤白痢を治す。


小調中湯《東醫寶鑑》
「黄連煎じ湯に甘草を浸し、甘草煎じ湯に黄連を漬けたもの。括楼仁を水で煎じて半夏を浸し、半夏の水で煎じたものに括楼仁のつけたものを、それぞれ炒って水がなくなったのを等分に切って、毎回5銭に生姜3片を入れ水煎服。又は4味を作末して良姜を煮て汁を取り、糊で梧子大の丸剤。白湯で50丸飲む。
◎一切の痰火・諸難病を治す。脾胃を調整する。

小調中湯《医学入門》《古今方彙》
「黄連を煎じたる水で甘草を浸し、甘草を煎じた水で黄連を浸し、括楼仁を煎じた水で半夏を浸し、半夏を煎じた水で括楼仁を浸す。生姜」煎じ温服。或いは姜汁糊にて丸となすも尤も妙なり。
◎一切の痰火及び百般の怪病を治す。善く脾胃を調え神効あり。

小通聖散《東醫寶鑑》
「羗活・防風・薄荷・当帰・山梔子・川芎・桔梗・大黄各1銭、防已・甘草各5分」剉作し、1貼に灯心1団・竹葉7片を入れて煎服。
◎風熱・頭痛・咽疼・頬腫を治す。


小兎絲子元《東醫寶鑑》
「兎絲子5両、山薬・蓮肉各2両、白茯苓1両」作末し山薬糊で梧子大の 丸剤。温酒又は塩湯で70~90丸飲む。
◎虚労に腎が虚し、陽気が衰少して小便の多い者。


小児衛生総微論方《小児衛生総微論》
「石膏、檳榔子、黄連、黄柏」

小児疳積丸《中薬臨床応用》
「胡黄連60g、蕪荑60g、使君子30g、麝香1.5g、蛤蟆(乾)5匹、黄連60g」作末し小麦粉で丸剤。1日2回、3gづつ湯で服用。
◎腸内寄生虫による腹部膨満
◎午後の潮熱

小児傷食方《中薬臨床応用》
「麦芽6g、穀芽6g、山楂子5g、萊菔子3g、陳皮2,5g、連翹3g、神麹6g、白朮3g」水煎服。
◎消化不良

 小児初生一方《寿世保元》《古今方彙》
「白朮、猪苓、沢瀉、木通、生地黄、赤茯苓、肉桂、甘草各等分」水煎。
    ◎小児の満口白く爛れ瘡を生じ、口糜れるを治す。


小児清心丸《東醫寶鑑》
      「人参・茯神・防風・朱砂・柴胡各2銭、金箔30片」作末し、梧子大の蜜       丸。毎回1丸を竹瀝で調下する。
◎あらゆる驚熱・煩躁を治す。

小寧心湯《勿誤薬室方函口訣》
「半夏。茯苓、粳米、竹茹、黄連、知母、石膏」
◎宿痰、鬱火、胸動高亢し、大便軟なる者。

小半夏湯[1-1]《金匱要略》
「半夏1斤、生姜半斤」
右二味、以水七升、煮取一升半、分温再服。
◎嘔家本渇、渇者為欲解、今反不渇、心下有支飲故也。小半夏湯主之。
◎黄疸病、小便色不変、欲自利、腹満而喘、不可除熱、熱除必噦。噦者、小半夏湯主之。
◎諸嘔吐、穀不得下者、小半夏湯主之。



小半夏湯[1-2]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「半夏・生姜各8」
◎吐して渇せざる者を治す。《吉益東洞》
◎心下に支飲有り、渇せずして嘔吐する者は、小半夏湯之を主どる《医聖方格》
◎此方は嘔家の聖剤なり。その内、水飲の嘔吐は極めて宜し。水飲の症は、心下痞硬し、背七八椎の処、手掌大の如き程に限りて冷ゆる者なり。これらの証を目的として此方を用いるときは百発百中なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎「生姜半夏湯」:薬味同じなるも、煎法と服用法が異なり、証治も異なる。
【腹証】
《腹診配剤録》
 “心下痞し、且つ水気有り、之を按ずれば即ち鳴る”



★適応症及び病名(小半夏湯)
[1]嘔吐:
☆諸病、嘔吐甚だしく、或いは病人、湯薬を悪みて嘔吐、悪心し、対症の方を服すること能はざる者《類聚方広義》
☆此方は嘔吐の主薬也。若し嘔吐して渇し、飲みて復た嘔吐し、嘔渇倶に甚だしき者は、此方の主治に非ざる也。小半夏加茯苓湯、五苓散、茯苓沢瀉湯を撰用す可じ。《類聚方広義》
☆胃虚嘔吐、穀不得下者、先ず此方を服せしめ、癒えざる者、大半夏湯を与える。《勿誤薬室方函口訣》
☆諸般の嘔吐には、先づ本方を与えて其の嘔を止め、然る後に、証に随いて他の適方を処す。《奥田謙蔵》
     [2]黄疸:
     [3]霍乱:
☆霍乱、涎沫を嘔吐するに、医反って之を下し、心下痞を治す《聖済総録》
     [4]シャックリ:
☆此方は能く噦を治す。然れども傷寒大熱し、譫語、煩躁し、腹満、便閉の諸症未だ退かざる者は、当にその主症を治すべし。主症治すれば 噦自ら止まん。《類聚方広義》
     [5]せき:
☆欬逆して死せんと欲するを通治す《医林集要》


小半夏湯[2]《備急千金要方》
「半夏1升、生姜1升、橘皮4両」
◎心腹虚冷を病み、遊痰気上り、胸脇満し、食を下さず、嘔逆、胸中冷ゆる者。《雑病翼方》



小半夏加茯苓湯[1-1]《金匱要略》
「半夏1升、生姜半斤、茯苓3両」
右三味、以水七升、煮取一升五合、分温再服。
◎卒嘔吐、心下痞、膈間有水、眩悸者、半夏加茯苓湯主之。


小半夏加茯苓湯[1-2]《金匱要略》《中薬臨床応用》
「製半夏9g、茯苓9g、生姜15g」水煎し2回に分服。
◎急性消化不良による嘔吐
◎心窩部がつかえて苦しい



小半夏加茯苓湯[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「小半夏湯+茯苓3」
 「半夏・生姜各8、茯苓3」
◎小半夏の証にして眩悸する者を治す。《吉益東洞》
◎此方は小半夏の症に停飲を兼ねて渇する者を治す。又、停飲ありて嘔吐不食、心下痞硬、或いは頭眩する者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》



★適応症及び病名(小半夏加茯苓湯)
     [1]胃アトニー
     [2]胃腸虚弱:
☆急性胃腸「カタール」等にして、嘔吐甚だしき証《奥田謙蔵》
 [3]悪心
☆悪心で服薬できない者に、本方で服用させる、又は本方を先に飲ませてから、服薬させる。
☆慢性の悪心・嘔吐
☆胃切除後の嘔吐・悪心。
     [4]嘔吐:
☆(周期性あり)
☆悪心・嘔吐を主訴とする者に用いる《大塚敬節》
☆悪阻の嘔吐や種々の薬物による胃障害からくる嘔吐に用いる《大塚敬節》
☆旦に食し、暮れに吐するを治す:「大黄」《医宗必読》
☆食已って吐逆するを治す。:「橘皮・甘草」《僧深方》
☆中暑、昏悶醒めず、并びに伏暑、停食吐瀉する:「茯苓・半夏・甘草末」を生姜汁に入れ、口を開き、水で調え之に濯ぐに宜し。《学実在易》
【鑑別】 

*五苓散証では多量の水を1回にパッと吐くが、

*小半夏加茯苓湯証では、何回にも少しずつ吐くし、悪心の状が吐いた後にも残る。《大塚敬節》
     [5]悪阻(つわり):
☆妊娠嘔吐等。《奥田謙蔵》
☆「+黄土8.0」=「茯苓肝煎」といい、悪阻の治療に良く用いる。  1回に多量呑むと吐くことがあるので、冷たくしてから少量づつ呑ませると良い。《大塚敬節》
☆妊娠嘔吐止まず、水分動甚だしき者:「+粳米、薯蕷、生地黄」
     [6]顔色悪い
     [7]咳嗽
     [8]脚気:       ☆脚気、嘔吐甚だしく、諸薬納れざる者を治す。按ずるに《外台秘要方》《必効》脚気を療する方、及び《文仲》の脚気心に入り悶絶死せんとするを療する方、并びに小半夏湯を用ゆ。ただ姜汁を以て生姜に代ゆるのみ。《脚気提要》
☆脚気の険症を治す《原南陽》《山田業広》
☆水腫性脚気等にして、嘔吐を発する証《奥田謙蔵》
     [9]関節痛:
☆肩臂痛を治す。《葉氏録験方》
     [10]吃逆
     [11]急性胃腸炎
     [12]車酔い
     [13]口渇
     [14]自汗
     [15]上腹部振水音
     [16]食欲不振:
☆痰飲、脾胃和せず、咳嗽、嘔吐し、飲食入らざるを治す《婦人大全良方》
☆すべて飲食進まざる者:「生姜倍加」
☆瘧疾日を経て食進まざる者:「生姜倍加」
     [17]心悸亢進
     [18]心下痞:
☆霍乱、涎沫を嘔吐し、医反って之を下し、心下痞を作すを治す。《聖済総録》
     [19]心下痞硬:
☆心下苦悶し、嘔吐、薬を受けざる者:「本方を以て左金丸を送下す」
     [20]頭汗:
☆水結胸の証、心下忪満し、大熱無く、頭に汗ずるを治す《仁斎直指方》
     [21]前額洞炎:
☆旧友の小林英治博士がかって前額洞炎に小半夏加茯苓湯を用いて、著効を得たことがあり、私はこの話を聞いて、半夏と茯苓と生姜というこの簡単な薬方の奇効に驚いた。この方は古人がいう湿痰(病的な水の意)を治する効があり、蓄膿も湿痰であるから、この方が効いたのであろうと考えた。《大塚敬節》
     [22]手足が冷たい
     [23]吐乳:
☆小児の吐乳症等《奥田謙蔵》
     [24]尿不利:
☆痰飲、汗多くして、小便利せざるを治す《張氏医通》
     [25]妊娠中毒症
     [26]疲労倦怠
     [27]二日酔い
     [28]反胃:
☆熱吐の反胃及び傷寒遍身発熱し、冷吐するを治す:「竹葉」《衛生家宝》
☆反胃、治し難し。然れども停飲を駆除し、胃気を和ずれば、癒ゆるを得。「小半夏加茯苓湯」を長服し、時々、「大黄甘草丸」を以てその腐穢を除く。《先哲医話》
     [29]慢性胃腸炎
     [30]メニエール
 [31]目眩:
☆眩暈、嘔吐を発し、心悸亢進を自覚する証《奥田謙蔵》
     [32]幽門ケイレン
     [33]肋膜炎:
☆湿性肋膜炎の水をこの方で、一夜の中に消失せしめたことがある。          《大塚敬節》




小檳榔湯《千金本無方名》
「檳榔4分、半夏1銭8分、茯苓・桂枝9分、甘草・生姜2銭4分」
◎脚気、心煩悶し、気息不安を治す。
◎脚気嘔吐を治し効あり。《高階枳園》
◎此方は脚気嘔気ありて衝心せんとする者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎しかし「唐侍中一方」に比すればその症軽し。故に小檳榔湯の名あり。
◎又此症にして水気上部に盛んなるものは「犀角旋覆花湯」を与ふべし。
◎脚気の嘔吐を治し効あり。如し煩悶気急するに至っては豈此湯の能く敵する所ならんや。《雑病翼方》



小麻仁丸《東醫寶鑑》
  「潤麻丸に同じ。」                     潤麻丸

「麻子仁・桃仁・生地黄・当帰・枳穀」。
◎血燥と便秘。

小羅皀丸《東醫寶鑑》
「蘿葡子(蒸)2両、皀角(煆)5銭、天南星(明礬水に漬け乾燥)・瓜呂仁・海粉各1両」作末し姜汁に蜜を混ぜ桜桃大の丸剤。口に入れて溶かして飲み込む。
◎久喘を治す。

小竜薈丸《東醫寶鑑》
「当帰・草竜胆・山梔子・黄連・川芎・大黄各5銭、蘆薈3銭、木香1銭を作末し、麝香少し入れ粥で緑豆大の丸剤。姜湯で50~70丸飲む。
◎肝火が盛んで脇痛の者。



少腹逐瘀湯《医林改錯》《中薬臨床応用》
「肉桂3g(服)、小茴香(炒)7粒、乾姜0.6g、延胡索3g、蒲黄9g、没薬3g、当帰9g、川芎3g、赤芍薬6g、五霊脂6g」水煎服。
◎月経前の下腹部痛


正気天香湯[1-1]《丹渓纂要》
「香附子6銭、烏薬1銭半、陳皮・紫蘇葉・乾姜6分半、甘草1銭」
「香蘇散烏薬・乾姜」
◎婦人一切の気病に。或いは心胸に上湊し、或いは脇肋を攻むるを治す。
◎《玉機微義》に、腹中結塊し、発渇刺痛、月水不調、或いは眩暈、嘔吐、往来寒熱し、食を減ず。
◎此方は気剤の総司なり。諸気為痛と云うを以て目的とす。《勿誤薬室方函口訣》
◎その他、眩暈、嘔吐、寒熱の類、何れも気の欝滞より来るものは、一症を見さば即ち用いるべし。蓋し此方、専ら気の欝滞を利すれども、血分の申分にも能く応ず。何故なら、血不能独行、必依気流行すと云って、血分の不和は気に本づくが必然の理なり。それ故、気滞より経行不利する者に用いて効あり。経行不利を強いて血分にこだわって療治するは拙策とす。気滞のみならず、痃癖、攣急の類、すべてその腹候を審(つまび)らかにし、その源証を治すれば、自然と経事来るものなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎産後、嘔吐し、諸薬効かざる者:「烏薬倍加」《生々堂方函》
◎気厥、心胸に上湊し、胸脇痛み、或いは腹中結塊、発渇刺痛し、或いは眩暈、     怔忡、精神乏迫し、或いは酸水を嘔吐し、往来寒熱し、口苦からず、脈沈遅、     或いは月水不調の者、此方大効あり。《雑病翼方》
◎婦人手足麻痺する者、多く七情鬱絡凝滞に致す所なり:「正気天香湯」or「香蘇散二陳湯烏薬」《高階枳園》
    ◎「蘇葉・陳皮」=「異香四神散」。婦人室女、血気の不調を調理す。
    ◎一婦人、喜く唾し、数日止まず、医以て虫積あるいは虚冷を為し、之を治し無     効なり。余、以て鬱と為し、正気天香湯を与え、速やかに癒える。
疫後、喜唾了了ならざる者、一老医、大柴胡湯を与えて速効あり、是れ亦、鬱     に属するなり《先哲医話》

正気天香湯[1-2]《東醫寶鑑》
      「香附子3銭、烏薬・陳皮・紫蘇葉各1銭、乾姜・甘草各5分」を煎服。又       は作末して塩湯で2銭づつ点服。
◎婦人の神経痛。

 正気天香湯[1-3]《医学入門》《古今方彙》
      「香附子6銭、烏薬1銭半、陳皮・紫蘇葉・陥胸各6分半」水煎しやや熱服       す。
◎《朱丹渓》には甘草1銭あり。
    ◎婦人一切諸気痛みを作し、或いは上りて心竅に湊り、或いは脇肋を攻築し、腹     中結塊、発渇刺痛、月水之に因りて調わず、或いは眩暈嘔吐、往来寒熱するを     治す。胎前、産後を問うこと無く一切の気候並びに皆之を治す。


 正気天香湯[1-4]《医学入門》《漢方後世要方解説》
      「香附子4、陳皮・烏薬各2、紫蘇葉・乾姜各1.5、甘草1」
    ◎[香蘇散烏薬・乾姜]
    ◎婦人一切諸気痛みを作し、或いは上気胸に湊り、或いは脇肋に攻め築き、腹中     結塊、発端刺痛、月水之に因って調わず、或いは眩暈、嘔吐、往来寒熱するを     治す。胎前、産後を問うことなし。一切気候並に皆之を治す。
◎婦人一切の気痛みをなし、眩暈、頭痛、腹中に塊あり、月水調わず、諸の欝症、     室女の経閉、寡婦尼僧の病に奇効あり。
◎此方は気鬱を解する総司の剤である。婦人血の道と称するもの、諸事心意を遂     げず、気鬱し、血滞り、ために痰飲停留し、積聚血塊など生じ、労苦して気鬱     増激するときは心下小腹に疼痛を発し、眩暈、嘔吐、寒熱往来し、柴胡剤、建     中剤など応ぜず、脈沈んで稍寒状を帯びた者によい。転じて気鬱血滞による経     閉、ヒステリー、神経衰弱等に用いられる。
◎烏薬・香附子・紫蘇葉=辛温香棘、諸気鬱を散ず
     乾姜=辛熱気を順らす
     陳皮=上下の気を利し升降せしむ。
   [主治]
    《医学正伝》
      “婦人一切諸気痛みを作し、或は心胸に上りて湊まり、或いは脇肋を攻め築       き、腹中結塊、発渇(発作的の意)刺痛、月水之に因りて調はず、或いは眩       暈嘔吐往来寒熱を治す。胎前後を問うこと無し、一切の気候並びに皆之を       治す”
    《医方口訣集》
      “婦人一切諸気痛みを作し、或いは寒熱往来、眩暈嘔吐等の症之を主る”
    《牛山方考》
      “婦人一切の気痛をなし、眩暈頭痛、腹中に塊あり、月水調わず、諸の鬱症、       室女の経閉、寡婦僧尼の病に奇効あり”       
   [目標]
    《勿誤薬室方函口訣》
      “此方は気剤の総司なり、諸気痛みを為すと云うを以て目的とす。その他眩       暈、嘔吐、寒熱の類、何れも気の欝滞より来るものは、一症を見さば即ち       用ゆべし。蓋し此方専ら気の欝滞を利すれども、血分の申分にも能く応ず。       如何となれば、血独行すること能はず、必ず気に依りて流行すと云ふて、       血分の不和は気に本づくが必然の理なし。それ故気滞より経行不利する者       に用ひて効あり。経行不利を強ひて血分に拘わりて療治するは拙策とす。       気滞のみならず、痃癖攣急の類すべてその腹候を審にし、その源鉦を治す       れば自然と経事来る也”
    《医方口訣集》
      “愚按するに、先賢已に婦人の病を以て治し難しと為すは何ぞや、蓋し婦人       は陰に属してその気欝結し易し。気欝結するときは則ち血も亦凝滞す。”
    《漢陰噫乗》
      “此方は婦人心事を遂げず、或いは気悩気鬱よりなす諸症に用いてよし。第       一心下凝り痛み、或は頭痛、或は外感に感ずるが如く寒熱往来逆上をなす       者に、予が家始祖より此方に小柴胡湯を合して用ゆ、寒熱往来を目当とす。       医方口訣の方後に中山三柳子が塊痛を治せし経験あり。予も手の措き難き       者に用いて極めて效あり。”
   [治験]
    《漢陰噫乗》 
      “一老婦脇下もと塊あり、平生は格別の悩みなし。一旦鍼医来たりて養生に       鍼治を施せんが、鍼の折込みたるをその儘にして告げずして去る、後婦人       腹の痛みを覚え人をして審かに之を視せしむるに、鍼の跡にて鍼頭を見は       し、此が為に百方して之を抜き去る。その婦もと気盛んなるものなりしが       鍼医の不届きを憤ると、驚きとにて右の塊物忽ち植え冲して大いに痛み、       忍ぶべからず。予此方を与えて数貼にして癒ゆ”
    《先哲医話》
      “北山友松の条に、一婦人喜唾数日止まず、医以て蠱積或いは虚冷と為し、       之を治して効無し、余以て鬱と為し、正気天香湯を与えて速に癒ゆ。”
    《矢数道明》
      “38歳の婦人、腹中に塊あり、右下腹痛を発し、盲腸炎の診断を受けたる       ものに初め甲字湯を与えて效なく、本方によって速やかに治したことがあ       る。又、一婦人気鬱し、佐卵巣腫れ痛みを訴えるものに与えて著効を奏し       たことがある”
    《医方口訣集》
      “予、大阪鬻薬家の一婦を治す。年4旬を踰へ、平生小腹塊有り、動ずる時       は則ち痛みを作し、或は乾嘔を作す。蓋し七気相干(オカ)して然るを致す也。       一日忽ち血崩を病む、医者或は血剤を用ひ、或いは渋薬を用ひ、倶に効無       し。その脈を診するに沈緩にして神有り、脈を以て之を論ずれば乃ち気病       なり、血病に非ざる也。気道阻滞して血その度を失し、以て下脱を致す。       気一周流は血経絡を循る、則ち後崩ること無し、遂に正気天香湯を用ひ、       症癒ること78改、帰脾湯を用ひて以て十全を収む”
   [薬能]
    《医方口訣集》
      “王海蔵曰く、香附は陽中の陰、血中の気薬なり。凡そ気鬱血滞には必ず之       を用ゆ妙なり、此れ婦人の仙薬なりと。瑞竹堂も亦婦人の諸病を治するに       4個の香附丸有り。今之を用ひて君を為す、真に諸気鬱を解するに足れり。       烏薬、紫蘇の辛温香竄之を用ひて諸気鬱を散ず、夫れ気寒を得るときは則       ち滞り易く、熱を得るときは則ち順り易し。乾姜の辛熱以て順すべく、陳       皮は気薄く味厚し、升る可く降す可し、之を用ひて上下の気を利す”
    《医方集解》
      “此れ手の太陽(肺経)足厥陰(肝経)薬也。烏薬、陳皮は気分に入りて気を理       し、香附、紫蘇は能く血分に入って気を行らす。引くに乾姜を以て気分に       入り兼ねて血分に入らしむ。諸辛温を用ひ以て鬱を解し肝を散ず。気調つ       て血を和せじむれば則ち、経行常有りて自ら痛壅の患ひ無し”



 正気天香湯[1-4]《医学入門》《漢方治療の実際》
      「香附子4、陳皮・烏薬各3、蘇葉1.5、甘草1、乾姜1.5」
    ★適応症及び病名
     [1]嘔吐:
        ☆嘔吐が止まない者によいことがある《矢数道明》
     [2]瘧疾:
        ☆諸薬応じない者《矢数道明》
     [3]下血:
        ☆気鬱による子宮出血で、痛み、嘔吐有る者《矢数道明》
     [4]月経閉止:
        ☆処女気鬱による月経閉止によい《矢数道明》
     [5]気鬱
     [6]産前産後:
        ☆精神感動によって、寒熱往来、胸背痛み、戦慄痙攣など発する者《矢         数道明》
     [7]神経症
産前産後の神経症
        寡婦のとりとめのない病証《矢数道明》
        尼僧の
     [8]神経衰弱:
        ☆神経質者気鬱し、胸痞え頭重く、源ぬんなどあり、食欲の進まない者         《矢数道明》
[9]血の道
     [10]ヒステリー:
        ☆胃痙攣、子宮痙攣、その他種々の痛みがある者《矢数道明》
     [11]腹中塊あり:
        ☆平生腹中に塊物のある者《矢数道明》
        ☆七情激変によって胸腹大いに痛み、嘔吐眩暈などある者《矢数道明》
     無月経:
        ☆気鬱からくる無月経に用いる。《大塚敬節》
        ☆内経に曰く、百病は皆気より生ずと。乱世の人は知らず、太平の民を         治するには、此の一語誠に宝典と云ふべし。一切諸病を療してみるに、         とにかく皆気の欝滞より生ずることにて、気流暢になれば存外なる病         も、それにつれて癒るなり。況わんや、痃癖・積聚の類、皆この気滞         より生ずるなり。この一語療治をする者は事に臨んで念々忘るべから         ず。
後藤艮山の万病は一気の留滞に生ずと唱へしは、この経語を焼き直         したるまでのことなり。世人創闢の見のように思ふは陋(ろう)なり。
          ここに山脇東海翁の家婢、歳18、9の頃まで経行なし。東海翁こ         れを診し、正気天香湯を処す。服する暫くにして、経大いに利し、そ         の後はまた滞ることなし。予童子時、その婢の容貌を記す。随分壮実         そうに見ゆる者にて血の不足する筈のなき婦人と覚ゆ。まったく気の         欝滞より経行不利をなしたるなり。東海翁はそこへ目を付けられ、血         分の療治をせずして、気分の方から掛けられたる至極高按を云ふべし。         また伊良子氏の先代より遺したる規則に、婦人の乳癰、初起寒熱腫脹         疼痛の者に推し切て香正気散を用ゆるこいとあり、至極面白き運用         の仕方なり」《百々鳩窓》
     [12]薬煩:
        ☆補薬胸に泥む者《矢数道明》




 正気湯《東醫寶鑑》
      「柴胡・前胡・川芎・白芷・半夏・麦門冬・檳榔・草果・青皮・赤茯苓各1 銭、桂皮・甘草各5分、姜3、棗2」水煎服。
    ◎

 正気湯《万病回春》《古今方彙》
      「茯苓・半夏・白芷・青皮・川芎・草果・檳榔子・前胡・柴胡・麦門冬各1       銭、桂枝・甘草各3分、生姜、大棗」水煎し先に預(ソナエ)て熱服す。
◎瘧疾を治す。
    ◎初めに憎寒壮熱をなし、頭疼口乾、汗あり。

 正気補虚湯《医学入門》《古今方彙》
   「人参・黄蓍・当帰・川芎・香・厚朴・熟地黄・茯神・白芷各5分、半夏       ・白朮・五味子・木香・附子・肉桂・丁香・陥胸・甘草各2分半、生姜、       大棗」水煎。
◎内傷、飲食七情を治し、兼ねて外邪襲う所、寒熱頭痛身疼、腰脚軟弱転筋、自     汗肢冷背痺、男婦の諸虚、婦人産後寒に感ずるに通用す。



正心湯[1-1]《古今医統》
「当帰・茯苓・地黄・羚羊角・甘草・酸棗仁・遠志・人参各8分」
    ◎七情五志、久逆、心風(精神病)、妄言、苦しむ所を知らざるを治す。
七情=喜怒哀懼愛悪欲or喜怒憂思悲恐驚
       五志=喜怒思憂恐。心志=喜。肝志=怒。
    ◎此方は、「帰脾湯」の症にして、心風甚だしく、妄言、妄行止まず、血気枯燥     する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎小児、肝虚、内熱、精神爽やかならざる者に用いる。



正心湯[1-2]《古今医統》《漢方後世要方解説》
      「当帰4、茯苓5、地黄4、羚羊角1、甘草2、酸棗仁・遠志・人参各3」
    ◎此方は極度の精神疲労により、茫然自失して痴呆状態となる者に用いるもので、    「帰脾湯」の症の更に進行したものに良い。又浅田宗伯は小児の精神薄弱に用い     ている。
《大塚敬節》氏は糖尿昏睡に用いて奇効を得たという。
     著者は一処女就職後の過労により、身心困憊混乱し、白昼夢の如きに用いて効     があった。
    ★適応症及び病名
     健忘症
神経衰弱
     精神薄弱
     糖尿病による昏睡
     ノイローゼ
老人性痴呆症


正舌散《東醫寶鑑》
      「薄荷(焙)2両、赤茯苓1両、蝎梢2銭半」作末し毎回1~2銭、温酒で調 下。
◎中風で舌がかたく、語渋(しゃべりにくい)の者。

正伝加味二陳湯《東醫寶鑑》
      「山楂肉1銭半、香附子・半夏各1銭、川芎・白朮・蒼朮各8分、橘紅・茯       苓・神麹(炒)各7分、縮砂(研)・麦芽(炒)各5分、甘草(炙)3分、姜3、       棗2」水煎服。
◎食積痰・導痰を治す。

正伝羊肝元《東醫寶鑑》
      「黄連1両、甘菊・防風・薄荷・荊芥・羗活・当帰・川芎各3銭」作末し白       羊肝を蒸して入れ、搗いて丸服する。
    ◎障と青盲を治す。

正陽散1《東醫寶鑑》
      「麻黄1銭半、陳皮・大黄・生乾姜・肉桂・芍薬・炮附子・半夏(製)・炙甘       草各7分、呉茱萸5分・姜3、棗2」水煎服。
◎陰症傷寒を治す。

 正陽散2《東醫寶鑑》
      「炮附子1両、乾姜(炮)・炙甘草各2銭半、皀角1挺、麝香1銭」を作末し、       毎回2銭を水1盃で半分まで煎じ、滓を捨てないでそのまま熱くして服す       る。又白湯で調下してもよい。
    ◎傷寒陰毒を治す。


生胃丹


生化湯《傳青主》
「当帰・川芎・桃仁・黒姜・炙甘草」
◎産後悪露甚だしく、腹中痛む。



 生化湯《達生編》
      「当帰6銭、川芎4銭、桃仁5分、甘草5分、乾姜5分」
    ◎児沈痛を治す。
    ◎此方は、《景岳全書》《幼幼集成》等に出でたれども、襲の《女科秘方》に載     せたる論、最も精し。其の主意は、凡そ産後に血気順行すれば、蓄消して、     新血滋生するの理必然なり。故に古より「桂枝茯苓丸」を用いて血を逐うを     主薬とす。しかれども脱血過多の症には参・附・地黄・黄蓍など専用して温補     すべきことなれど、概して地黄など用ゆるは宜しからず。是に於いて、芎・帰     ・姜・桃を以て生化の運用を成すこと実に妙手段と云うべし。若し平素、疝に     て子宮痛者か、或いは月信痛堪え難き者には、桃仁を去って用意ゆるを佳とす     る。《勿誤薬室方函口訣》




 生肌散《東醫寶鑑》
      「竜骨()5銭、寒水石()・軽粉⇒水銀粉各1銭、乾臙脂3分」作末し、       しみ込ませる。
◎新しい肉が出来、瘡口がふさがる。


生肌玉紅膏《外科正宗》


生姜甘草湯《備急千金要方》
「生姜5両、人参3両、甘草4両、大棗15枚」
右4味、以水7升、煮取3升、分温3服
◎治肺痿欬唾、涎沫不止、咽躁而渇。


生姜甘草湯《備急千金要方》
      「生姜5両、人参3両、甘草4両、大棗15枚」

    証(咽(のど)乾いて渇す)《薬徴》
生姜甘草湯証に曰く、咳唾、涎沫止まず。為則按ずるに、若(かくのごとき)の証の人は、胸中攣引強急の状あるを患ふ。故に大棗を用ふること居多(大部分を占める)なり。《薬徴》

    ◎肺痿、涎沫を咳唾して止まず、因燥きて渇するを治す。
    ◎此方は肺熱候なき者に用ゆ。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎「甘草乾姜湯」に比すれば潤燥の剤なり。故に、
      <1>甘草乾姜湯:肺寒を主とし。
      <2>人参養栄湯《聖済総録》:肺熱を主とし。
      <3>生姜甘草湯:その中間に之くものなり。
    ◎「甘草乾姜湯」「生姜甘草湯」、二方は倶に肺冷に属し、而して一燥一潤、渇     と不渇とに因り、之を異にして制するものなり。《雑病翼方》



生姜甘草湯《備急千金要方》《東醫寶鑑》
      「生姜5銭、人参2銭、甘草(炙)3銭、大棗5枚」水煎し1日2服する。
    ◎肺痿で咳をし、前末を吐く。


生姜橘皮湯(一名陳皮湯)《東醫寶鑑》
      「橘皮4両、生姜(切)8両」水7杯を3杯まで煎じ服用。
    ◎乾嘔で手足が冷える者。


 生姜瀉心湯[1-1]《傷寒論》
      「生姜(切)4両、甘草(炙)3両、人参3両、乾姜1両、黄芩3両、半夏(洗)       半升、黄連1両、大棗(擘)12枚」
右八味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升。温服一升、日三服。附       子瀉心湯、本云加附子、半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、同體別名耳。生姜瀉心       湯、本云理中人参黄芩湯、去桂枝、朮、加黄連、并瀉肝法。
    ◎傷寒汗出解之後、胃中不和、心下痞、乾噫食臭、脇下有水気、腹中雷鳴下利     者、生姜瀉心湯主之。


 生姜瀉心湯[1-2]《傷寒論》《古今方彙》
      「生姜・半夏各2銭、人参・乾姜各1銭半、黄連・甘草各1銭、黄芩5分、       大棗2枚」
    ◎汗出で解したる後、胃中不和、心下痞、気、食臭、或いは脇下水気あり、腹     中雷鳴するを治す。


 生姜瀉心湯[1-3]《傷寒論》《中薬臨床応用》
      「生姜6g、製半夏9g、黄連3g、黄芩6g、党参12g、乾姜6g、甘草3g、大       棗6g」水煎服。
    ◎胃寒による嘔吐。



生姜瀉心湯[1-4]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
      「生姜(必ずひねショウガ)4.0g、甘草・人参・黄芩・大棗各3.0g、乾姜・黄連       各1.0g、半夏8.0g」
水400を以て240に煮詰め、3回に分服。


 生姜瀉心湯[1-5]《傷寒論》《漢方治療の実際》
      「半夏瀉心湯の乾姜を半分に減じ、生姜2.0を加える」
「半夏5、黄2.5、乾姜1.25、人参2.5、甘草2.5、大棗2.5、生姜2、黄連1」
○生姜瀉心湯証=脇下水気あり、腹中雷鳴。《薬徴》
[脇下水気]=季肋下部に水がある。これは多くは胃部に振水音があることによって分かる。
◎半夏瀉心湯証にして乾嘔、食臭、下利する者を治す。《吉益東洞》
    ◎病人、心下痞し、食臭を噫し、重き者は嘔吐し、脇下に水気有り、腹中雷鳴し、     下利する者は、生姜瀉心湯之を主どる《医聖方格》
    ◎此方は後世、順気和中を用いる場へ即効あり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎香砂六君子湯、香砂平胃散など与えて、痰火上格の熱ありて応ぜざる者に用い     て善験あり。
    ◎古方、皆、乾姜あるときは生姜を用いず、ただ此方のみ生乾共に用いる。その     深意味わうべし。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎半夏、生姜、甘草、三瀉心湯の証は、水気心中に迫り、心下痞硬して痞する者     有りて、胸腹は迫りなく、ただ心下のみ甚だしく、胸中へ上逆して嘔吐気し、     或いは水気下行して腹中雷鳴下利する者、是胃中の虚、不和よりなす故に、な     かには下利清穀と同じように見ゆれども、全く穀不化の証なり。《勿誤薬室方     函口訣》
     「清穀」=完穀下泄なり。全く消化せずに下痢すること。
    ◎胃部つかえ張り、或いは嘔き、或いは下り、或いは腸鳴する者。
    ◎鑑別:旋覆代赭湯(旋覆花・大棗・代赭石各3、甘草・人参各2、半夏5生姜0.5)
      「生姜瀉心湯」は、下痢またはその傾向の有る者を目標とし、「旋覆花代       赭石湯」は、便秘の傾向にある者を目標とするのが通説だが、事実はこれ       とは無関係で、この反対のことすらある。《大塚敬節》
      この2方の差は、虚実の差で「生姜瀉心湯」よりも患者が一段と体力の衰       えている時に、「旋覆花代赭石湯」を用いる《大塚敬節》
    ★適応症及び病名(五十音順)
      [1]気(ゲップ)(腐敗臭)
         ☆凡そ噫気、乾嘔を患ひ、或いは嘈雑、呑酸し、或いは平日飲食する          毎に悪心、妨満を覚え、脇下に水飲升降する者は、その人多くは心          下痞硬し、或いは臍上に凝塊有り。長く此方を服用し、五椎より十          一椎に至るまで、及び章門に灸すること、日に数百壮、消塊丸、硝          石大円等を兼用すれば自然に効有り。《類聚方広義》
         ☆生姜瀉心湯を用いて治らないときは「旋覆代赭湯」を用いる《大塚          敬節》
     [2]胃液分泌過多症
    [3]胃腸炎(急・慢性)
☆甘草瀉心湯、生姜瀉心湯、半夏瀉心湯ともに、心下痞硬、腹鳴、下痢を目標として用いるが、悪心、嘔吐を伴う者に用いて良い。
腹痛を伴うこともあるが、激しい痛みではない。下痢は裏急後重を伴うことはなく、さっと下る。
下痢の回数が多いとき・・・甘草瀉心湯
噫気を伴うとき・・・生姜瀉心湯
     [4]胃潰瘍
     [5]胃拡張
     [6]胃下垂
     [7]胃酸過多症
     [8]胃酸欠乏症
     [9]胃弱
    [10]胃痛
    [11]嘔吐:
         ☆嘔吐、或いは下痢性疾患にして、心下痞硬し、呑酸、嘈雑甚だしき          証《奥田謙蔵》
         ☆心下痞硬のある患者でゲップが多くて嘔吐する者に用いる《大塚敬          節》
         ☆1婦人、多年胃病を病み、食すすまず、たまたま食が進むと嘔吐が          くる癖がある。甘味のあるものを食べると、胸焼けし、とかく気          が多い。腹診するに心下痞硬し、振水音を証明する。そこで生姜瀉          心湯を与えたところ、3日目の夕方突然激しい嘔吐があって、大き          な洗面器1杯の水を吐いた。この患者は、それきり多年の胃病を忘          れた。《大塚敬節》
  [12]悪心
    [13]下痢:
         ☆(穀不化)
         ☆虚労又は脾労などで心下痞して下利する者を治す。
         ☆婦人妊娠7月以上は、当に当帰芍薬散を与え、水を逐い、血を理む          べし。否らざれば則ち分娩後多く下利を患うなり。又産後下利する          者は、多く腸胃、胎の為に圧制による者、一時に舒暢を得て水気下          奔するなり。その勢に乗じ、生姜瀉心湯を与え、以て水気を尽くす          に如かざるなり。《先哲医話》
         ☆下痢すること頻々、心下部膨満し、或いは痛み、或いは痛まずして          食欲無く、時々酸性液を吐出する等の証《奥田謙蔵》
☆私は幼少の頃から下痢しやすい傾向があり、油ものを多く食べると          下痢する。下痢するときは腹がゴロゴロと鳴り、どっと下る。渋り          腹ではない。たいてい1日5、6行下る。胃部はつかえて、気が          良く出る。下痢するとき腹痛を伴うことがある。こんな時、下痢が          激しければ「甘草瀉心湯」を用い、悪臭のある気の多く出る時は、         「生姜瀉心湯」を用い、下痢の回数が少ない時は「半夏瀉心湯」を用          いている。《大塚敬節》
  [14]十二指腸潰瘍
      [15]上腹部振水音
      [16]食欲不振:
         ☆急性胃炎や胃酸過多症で食欲不振の者《大塚敬節》 
      [17]神経性胃炎
[18]心下痞
     [19]心下痞硬
☆心下痞硬は、半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、生姜瀉心湯、人参湯などを用いる目標。
    [20]嘈雑:
         ☆嘈雑は水気火を挟むなり。三黄瀉心湯、生姜瀉心湯に宜し。但し心          下痞せざる者は効無し。
         ☆飲食停滞の感ありて、心下部痞し、或いは嘈雑に苦しむ証《奥田謙          蔵》
         ☆心下痞せずに嘈雑する者は:旋覆花湯or呉茱萸一味《先哲医話》
    [21]帯下
    [22]呑酸
    [23]脳症
    [24]吐き気
    [25]ひきつけ
    [26]腹中雷鳴
    [27]腹痛
    [28]二日酔い
     [29]慢性胃腸炎:
         ☆ゲップがあり、ゲップに食べ物の臭気があり、腹中雷鳴、下痢する          者。
☆慢性胃腸病の患者に、生姜瀉心湯を与えたところ、ひどい吐瀉を起こして、気絶し、仮死状態になって、目が覚めるとともに、多年の慢性病がぬぐうように治った《吉益東洞》
☆慢性胃腸病の患者に、生姜瀉心湯を与えたところ、大きな洗面器にあふれるほど水を吐いて、それきり、治った《大塚敬節》
  [30]無酸症




 生姜半夏湯[1-1]《金匱要略》
      「半夏半升、生姜汁1升」
       右二味、以水三升、煮半夏取二升、内生姜汁、煮取一升半、小冷分四服、       日三、夜一服、止、停後服。
    ◎病人胸中似喘不喘、似嘔不嘔、似不、徹心中憤憤然無奈者、生姜半夏湯主     之。
◎「小半夏湯」と薬味同じ。


 生姜半夏湯[1-2]《金匱要略》《東醫寶鑑》
      「半夏5銭」水1杯半で半杯まで煎じ、姜汁半杯に混ぜゆっくり飲む。
    ◎胸中では喘息のようだが喘息でなく、嘔逆のようで嘔逆でない症。



生姜湯《僧深方》
「小半夏加茯苓湯橘皮・甘草」
    ◎食已って吐逆するを治す。


生血潤膚飲《医学正伝》《東醫寶鑑》
      「天門冬1銭、麦門冬・生地黄・熟地黄・当帰・黄蓍各1銭、黄芩(酒)・瓜       呂仁・桃仁(泥)各5分、升麻2分、酒紅1分、五味子9粒」水煎服。
◎燥症が皮膚・手足の爪甲に広がり、掻くと血が出て痛い者。
    ◎躰膚虚弱にて血少なく、皮膚折裂、手足枯燥、之を掻けば屑起こり、血出でて     痛み楚(クル)しむを治す。《古今方彙》
    ◎大便燥結すれば:「麻子仁・郁李仁」


生犀散《東醫寶鑑》
      「犀角・地骨皮・赤芍・柴胡・乾葛・甘草各3分」を作末し、薄荷          5葉を入れ水煎服。
◎骨蒸熱を治す。

生地黄引子《簡易方》
「生地黄・熟地黄・黄芩・地骨皮・天門冬・麦門冬
・白芍・銀柴胡・黄蓍・甘草」

生地黄飲子《東醫寶鑑》
      「人参・生乾地黄・熟地黄・黄蓍・天門冬・枳殻・石斛・枇杷葉・           沢瀉各1銭、甘草5分」水煎服。
    ◎消渇を治す。

生地黄粥《東醫寶鑑》
      「糯米2合で粥を作り、生地黄汁1合を混ぜ、空腹時に服用。」
      ◎胎漏を治す。


生地黄丸


生地黄膏《東醫寶鑑》
      「地黄(生)2斤、蜜1椀、白茯苓1両、人参5銭」に地黄汁を蜜と混ぜて煎       じ、半分になったらかき混ぜ、容器に入れて1匙づつ温水で服用。
    ◎渇を治すときに通用する。


生地黄散《東醫寶鑑》
      「生乾地黄・川芎・羚羊角・大黄・赤芍薬・枳殻・木香各1銭」水煎し食後       服用。
    ◎目に打撲傷を受けた者を治す。

生地黄湯《備急千金要方》
「地黄・桂枝各2両」
    ◎今、大黄を加え特に捷なり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎此方は小児の腹痛に奇効あり。
    ◎小児の痛に胎毒攻下の剤を与えて癒えざる者、必ず試むべし。
    ◎凡そ小児の腹痛と否とを決疹するには、時を期して頻に啼呼して反張する者、     是を腹痛の候とするなり。

生地黄湯《東醫寶鑑》
      「生地黄・赤芍・川芎・当帰・括蔞根各1銭半」煎服。
    ◎胎熱を治す。

 生地黄湯《寿世保元》《古今方彙》
      「生地黄・茅根・柏葉各3銭、川芎・山梔子・黄芩・桔梗・蒲黄・阿膠・牡       丹皮・白芍薬各1銭、甘草3分」水煎。
◎衂血を治すの総司なり。


生地芩連湯《東醫寶鑑》
      「生地黄・川芎・当帰各1銭、赤芍・山梔子・黄芩・黄連各7分、防風2銭」
◎婦人が崩漏で大出血。又は男子の失血過多。
(失血過多で眩暈・人事不省)

生地芩連湯《傷寒六書》《古今方彙》
      「鎖陽地黄、柴胡、黄連、芍薬、甘草、川芎、桔梗、山梔子、犀角、大棗」       煎じ服するに臨み搗きたる韭汁と磨墨を入れ之を調え温服。
◎鼻血流れを成して止まざる者、或いは熱毒深く入り、吐血止まざる者、並びに     耳目口鼻を見て並びに出血する者を治す。
◎すなわち上厥下竭と為す。

 生地消風飲《中薬臨床応用》
      「生地黄12g、川芎3g、大風9g、白鮮皮12g、白藜12g、防風9g」水煎       服。
    ◎血熱による皮膚病
    ◎ジンマシン、湿疹。


 生熟飲子《東醫寶鑑》
      「罌栗殻(大)4個(中身と尾を捨て半生半炙)、陳皮2片(半生半炒)、甘草2       寸(半生半炙)、烏梅2個(半生半煨)、大棗2枚(半生半煨)、生姜2塊(半       生半煨)、黒豆60粒(半生半炒)、黄蓍2寸(半生半炙)、白朮2塊(半生半       煨)、当帰2寸(半生半煨)を細切りにし、毎回5銭を壷に入れて、水1盃       半を半分まで煎じ滓を去り、温服。小児は1~2合服用。
◎大人の痢疾。子供の虚・積痢。

 生熟地黄丸《東醫寶鑑》
      「生乾地黄・熟地黄・玄参・石膏各1両」梧子大の丸剤。空腹時に茶清で50       ~70丸飲む。
    ◎血虚眼昏を治す。

 生熟地黄湯《医林集要》《古今方彙》
      「川芎、赤茯苓、枳殻、杏仁、御言う連、半夏、天麻、地骨皮、甘草(炙)、       生地黄、熟地黄、黒豆、生姜」水煎。
◎疳眼閉合して開かざるを治す。


 生津飲加減《中薬臨床応用》
      「天花粉、沙参、麦門冬、生地黄、石斛、熟地黄、天門冬、葛根、五味子、       淡竹葉、甘草」


生津甘露湯《東醫寶鑑》
      「石膏・草竜胆・黄柏各1銭、柴胡・羗活・黄蓍(酒炒)・知母(酒           炒)・黄芩(炙)・甘草各8分、当帰身6分、升麻4分、防風・防已・         地黄(生)・甘草(生)各3分、杏仁10、桃仁5、紅花少々」水2杯を注         いで1杯にし、随時、酒1匙入れて温服。
    ◎消中で良く食べながら痩せ、大便乾き、小便少ない。

生津補血湯《東醫寶鑑》
      「当帰・白芍薬・熟地黄・地黄(生)・白茯苓各1銭、枳実・陳皮・黄          連(炒)・蘇子・貝母各7分、縮砂・沈香(水磨取汁)各5分」剉作し          て、1貼に「姜1、棗2」を入れ水煎し沈香汁を調服。
◎年少の人の噎膈による胃の血が乾き、便なく、食物が消化しない。
効能効果
     嚥下困難:
☆当帰養血湯と生津補血湯の2方は、内容が類似で、食道に狭窄があって嚥下困難、嘔吐を訴えるものに用いる。本方を用いる患者は皮膚と粘膜が枯燥している点に着目する。
私はかって、自殺の目的で大量のシュウ酸を飲んで、食道に瘢痕性狭窄を起こしたものに、生津補血湯を用いて著効を得たことがある(漢方診療医典)
    



生津養血湯《東醫寶鑑》
      「当帰・白芍薬・地黄(生)・麦門冬各1銭、川芎・黄連各8分、天花粉7分、       知母・黄柏(蜜炒)・蓮肉・烏梅・薄荷・甘草各5分」水煎服。
    ◎上消を治す。

生疝丸


生禿烏雲油


生韮飲《東醫寶鑑》
      「桃仁(生)7個を皮のまま囓って、生韭汁1杯で飲み下す。
    ◎血欝と胃に血があって痛む者を治す。


生附四君子湯《東醫寶鑑》
      「四君子湯の材料に生附子末を等分に加え、姜(2銭に切る)5片を入れ、水       煎し口中に入れる。
◎慢脾風を治す。

生附除湿湯《東醫寶鑑》
      「蒼朮2銭、附子(生)・白朮・厚朴・木瓜・甘草各1銭、姜10」水煎服。
◎寒湿を治す。

生附湯[1]《東醫寶鑑》
      「蒼朮・杜仲各1銭半、附子(生)・牛膝・厚朴・乾姜・白朮・赤茯苓・甘草       各7分、姜3、棗2」水煎服。
◎傷湿諸症を治し、又寒湿を治す。

 生附湯[2]《東醫寶鑑》
      「附子(生)・滑石各7分、木通・半夏(麹)・瞿麦各1銭2分、生姜7片、燈       心20茎、蜜半匙」空腹時に水煎服。
    ◎冷淋で小便すると痛み、ぶるぶるふるえ寒さが増す者。

 生附湯《三因極一病証方論》《古今方彙》
      「附子(生用)・滑石各半両、瞿麦・半夏・木通各7銭半、生姜、燈心草」
    ◎冷淋、小便秘渋、数数起こりて通ぜず、竅中疼痛し、憎寒凛凛するを治す。多     くは飲水過多に因り、或いは寒に渋り、心虚して気耗と為るは皆此の証あり。


生脈散[1-1]《内外傷弁惑論》
    =「生脉散」
      「麦門冬・人参各2匁、五味子19粒」
    ◎精気を滋生し、真元を培養し、心を補い、肺を潤す。
    ◎此方、世に《備急千金要方》より出ずると称すれども確かならず。《張潔古》、     《李東垣》より専ら用い始めしなり。
◎その旨は、寒は血を凝し、暑は気を傷ると云ひて、暑と云う者は至ってよく人     の元気を損なうものなり。尤も老人、虚人などの暑の疲るること甚だしく、六     脈力無く、甚だしきに至っては結代するものあり。此方にて元気を引き立て脈     を生ずるを云う意なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎但し、暑中に限らず、一切元気弱き脈の人には、「医王湯」や「真武湯」に此     方を合して用いるべし。
◎熱、元気を傷め、気短、倦怠、口乾き、汗出ずる者を治す《雑病翼方》
    ◎肺虚、或いは自汗し、或いは少気して、喘するを治す《雑病翼方》
    ◎《医学入門》50代女性。
       素もと痰嗽あり、忽ち一日大いに喘し、痰出ずる泉の如し、身汗する油の       如く、脈浮にして、絶命の状に似たるを治す。
    ◎吐血、久しく癒えざる者を治す:「黄蓍、当帰、地黄」《病機暈編》
    ◎肺傷嗽血を治す:「茯苓、地黄、阿膠、白」《仁斎直指方》
◎咽破声嘶して痛む:「六味丸」《張氏医通》



生脈散[1-2]《内外傷弁惑論》《中薬臨床応用》
      「麦門冬12g、吉林参6g(or党参15g)、五味子5g」水煎服。
    ◎心筋のDNA合成率を高める。
    ◎ショックで大量に汗が出る、頻脈、血圧低下のとき。
    ◎虚脱

生脈散[1-3]《内外傷弁惑論》《東醫寶鑑》
      「麦門冬2銭、人参・五味子各1銭を水煎し、夏月に熟水の代用で飲          み、或いは黄蓍・甘草各1銭を加えるか?、又は黄柏2分を加えて          飲むと気力が出る。
        人参・麦門冬・五味子が脈を治すが、脈とは即ち元気である。

消飲《東醫寶鑑》
      「当帰・赤芍・生乾地黄・桃仁・紅花・蘇木・大黄各1銭、甘草5           分」を水煎し、滓を去り、芒硝を入れ温服。
    ◎血・腹痛を治す。


消化丸《東醫寶鑑》
      「青石(金色になるまで焼く)・明白礬細末・皀角・天南星(炮)・生半夏        (製)・白茯苓・陳皮各2両、枳穀・枳実各1両半、薄荷1両、沈香・黄芩       各5銭を作末し、姜汁に漬けた神麹末で糊をつくり、梧子大の丸剤。毎回       100丸、就寝時に飴糖で飲み、太平丸をかじって呑む。
    ◎虚労・肺痿・熱痰。

消火補陰湯

消塊丸《東醫寶鑑》
      「大黄4両、硝石3両、人参・甘草各1両を作末し、磁器に陳醋3升を入れ、       先に大黄を入れ、煮るとき休まずにかき混ぜ1升ぐらいになったら、残り       の薬を入れ、梧子大の丸剤。米飲で30丸調下。
◎痞塊とを治す。

 消核丸
      「夏枯草、牡蛎、玄参、貝母、連翹」
    ◎瘰癧。

 消渇飲《中薬臨床応用》 
      「吉林参6g(別)、熟地黄18g、枸杞子12g、天門冬9g、山茱萸9g、       沢瀉12g」水煎服。
    ◎糖尿病の口渇
    ◎発熱性疾患による口渇
    ◎血糖値が下がらないとき。

 消渇方《中薬臨床応用》
      「石斛9g、天花粉24g、知母12g、麦門冬9g、沙参15g、生地黄15g、黄連3g」       水煎服。
    ◎糖尿病
    ◎飢餓感、多食、多飲
    ◎羸痩
    ◎口乾、口臭、口苦、舌燥
    ◎歯根の腫脹、出血
    ◎舌質紅、舌苔黄ざらざら。
    
消河餅《東醫寶鑑》
      「田螺(大)4個、蒜(大)5、車前子末3銭」同時に作末し、餅を作って臍に       貼り、絹帛を巻いておくと、少したつと小便が出る。
◎水腫で膨んだ者を治す。

 消疳飲《済世全書》《古今方彙》
「人参、白朮、茯苓、黄連、胡黄連、神麹、青皮、砂仁、甘草(炙)」水煎。
    ◎小児疳疾にて身熱し、面黄、肚大、青筋、痩弱の者を治す。
    ◎虫あれば:「使君子」
    ◎食に傷れたるには:「山楂子」

消疳飲《厳氏済生方》
      「人参・黄連・神麹・青皮・甘草・茯苓・白朮・縮砂・胡黄連」
    ◎小児疳疾、身熱し、面黄に、肚大に青筋あり、痩弱するを治す。
◎此の方は、小児脾疳、腹肚大の者に用ゆ。主治にある青筋を顕す者は大抵不治     なり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎小児、面黄に、腹脹れ、寒熱来去し、毛髪乱れ、黄痩し、あるいは骨立し、精     神悦ばず、あるいは微下利する者、之を病と謂う。
    ◎病(サビョウ)も亦疳の類なり。
    ◎病、乳癖は化し易く、穀癖は化し難し。体痩せ、腹膨れ、発熱口乾、小便赤く、     或いは渋り、脈沈緊なる者は、名付けて穀と曰う。《雑病補亡論》


消疳丸《東醫寶鑑》
      「蒼朮・陳皮・厚朴・枳穀・檳榔・神麹(炒)・山楂肉・麦芽(炒)・三稜(煨)       ・莪朮(煨)・縮砂・茯苓・黄連(炒)・胡黄連・蕪・使君子・蘆薈」各等       分を作末し、蒸し餅で梧子大の丸剤。1丸を米飲で呑む。
◎五疳を治す。

 消疳退熱飲《寿世保元》《古今方彙》
      「山楂子、烏薬、竹茹、檳榔子、使君子、蕪仁、木通、牽牛子、大黄、柴       胡、莪朮、枳殻、黄芩、子、燈心草」水煎温服。
◎疳積にて発熱し、肚大にして青筋、骨痩せたる者を治す。

消疳退熱飲《勿誤薬室方函口訣》
      「青黛・檳榔・使君子・木通・牽牛子・柴胡・莪朮・枳実・黄芩・甘草」
    ◎此方は「消疳飲」と虚実の別あり。《高階枳園》
◎此方は「消疳飲」の症にしてやや実に属する者を治す。水腫脹満の類、その腹     硬くして石の如く、唇色は朱の如く、身熱ありて小便赤く、脈数なる者、此の     方奇効あり。
    ◎虫積の症にして水腫鼓脹となる者、此方に油断すべからず。唇朱の如きと云う     が1つの目的なり。
◎亀胸、亀背。《方読便覧》
    ◎吃泥を愛す《方読便覧》

 消疳湯《万病回春》《古今方彙》
      「山楂子・白芍薬(炒)・黄連(姜)・茯苓・白朮・沢瀉各1銭、青皮4分、甘       草(生)3分、生姜、大棗」煎服。
◎小児大便の色は疳白にして、小便渾濁するを治す。

消疳理脾湯《医宗金鑑》
「蕪・三稜・莪朮・青皮(炒)・陳皮・蘆薈・檳榔・使君子肉・生甘草・       川黄連・胡黄連・麦芽(炒)・神麹(炒)・灯心草」煎服。


消蠱湯(しょうことう)《東醫寶鑑》
「半夏・蘿葡子・炙甘草各7分、紫蘇茎葉・縮砂・肉豆・枳穀・青皮・陳       皮・三稜・莪朮・檳榔・官桂・白豆蔲・畢澄茄・木香各5分、生姜3・大       棗2」水煎服
    ◎気によって蠱脹となった者。
    ◎腹が膨れ、四肢と面に浮腫がない者。

 消蠱湯《済世全書》《古今方彙》
      「紫蘇子、辣桂、青皮、陳皮、三稜、莪朮、木香、檳榔子、白豆蔲、澄茄、       枳殻、半夏、砂仁、甘草、蘿葡子、生姜、大棗」煎服。
◎気が蠱脹を作し、ただ腹満して四肢頭面腫れざる者を治す。
    ◎鼓脹を按じて初起及び壮盛の人は服す可し。

 消腫潰堅湯《万病回春》
    ◎瘤、結核を治す。

 消腫調脾順気湯《万病回春》《古今方彙》
      「蒼朮、陳皮、草果、厚朴、砂仁、猪苓、木通、沢瀉、檳榔子(男は雌・女       は雄)、香附子、枳殻、木香、桔梗、三稜、莪朮、官桂、大茴香、人参、       木瓜、桑白皮、大腹皮、大黄、牽牛子(男は白・女は黒)、甘草、生姜」水       煎。
◎水腫を治す、脹満を消し、気を順らし、脾を和四物湯、湿を除き、水を利す。

消暑飲《衛生方》
「茯苓、半夏、甘草末」を生姜汁に入れ、口を開き、水で調え之に濯ぐ。
    ◎而して今散と為す。運用特に妙なり。《時方妙用》に云う、暑証第一の神方と     為すと。《雑病翼方》


消暑元《東醫寶鑑》
      「半夏8両、赤茯苓・生甘草各4両を醋2升半で半夏だけ煎じ、醋がなくな       ると全部を作末し姜汁糊で梧子大の丸剤。毎回50丸呑む。
    ◎伏暑に気が切れようとする者。


消暑湯《松原一閑斎》《勿誤薬室方函口訣》
      「半夏・石膏・茯苓・生姜」
    ◎夏日、熱甚だしく、嘔吐し、食下らず、頭痛煩渇する者を治す。
◎此方は、《嶺南衛星方》消暑湯に石膏を加えたる者。往年暴瀉(=コレラ)流行の時、     頗(スコブ)る効を得たり。

消暑十全飲《東醫寶鑑》
      「香1銭半、白扁豆・厚朴・紫蘇葉・白朮・赤茯苓・木瓜・白檀香各1銭、       甘草5分」水煎服。
◎傷暑と吐瀉を治す。

消食散《東醫寶鑑》
      「白朮(陳壁で炒ったもの)2銭半、麦芽・縮砂・山楂肉各1銭、橘紅・香附       米・神麹・青皮各7分、甘草5分」作末し、毎回1銭を米飲で調下。
◎食積の腹痛を治す。

消食散《東醫寶鑑》
      「白朮(陳壁で炒ったもの)2銭半、麦芽・縮砂・山楂肉各1銭、橘紅・香附       米・神麹・青皮各7分、甘草5分」作末し、毎回1銭を米飲で調下。
◎食積にて腹痛するを治す。その脉は弦にして、その痛みは上にあり、手を以て     重く按じてますます痛む甚だしく、大便利せんと欲したる後にその痛み減ずる     者は是なり。

消食散《済世全書》《古今方彙》
「山楂子、神麹、砂仁、麦芽、白朮、陳皮、甘草、生姜」水煎。
    ◎小児傷食にて腹痛するを治す。
    ◎寒を受けて痛みを作すには:「香・呉茱萸」
    ◎熱あれば:「黄芩」


消食清欝湯《万病回春》《東醫寶鑑》
      「半夏・陳皮・白茯苓・神麹(炒)・山楂肉・香附子・川芎・麦芽(炒)・枳穀       ・山梔子(炒)・黄連(姜汁炒)・蒼朮・香・甘草各7分、姜3片」水煎服。
◎嘈雑を治す。
◎嘈雑にて悶乱悪心、発熱頭疼するを治す《古今方彙》

 消食方《中薬臨床応用》
      「山楂子(炒)・神麹・山薬・金銀花各9g、布渣葉12g、葛根・青皮各6g」       水煎服。
    ◎便秘=大黄・枳殻。
    ◎感冒、発熱=佩蘭・連翹。


消水聖癒湯《時方妙用》《勿誤薬室方函口訣》
      「桂姜草棗黄辛附湯知母・防已。附子を天雄に換える。」
    ◎治水第一の方なり。然して両手の脈浮遅、足趺陽(膀胱経の)の脈浮数。
    ◎此方は、陰水の主剤とす。陳修園の発明に出て、場合に因って意外に効を奏す。     即ち大気一転の手段なり。
◎「知母一味」。主治はるかに殊なり、経方の変化竜の如きを知るべし。
     「天雄1銭、細辛1銭、麻黄1銭5厘、甘草1銭、生姜2銭、大棗2枚、知母3     銭、水盛者加防已2銭」《方読便覧》


 消水方《中薬臨床応用》
      「黒牽牛子(研末)24g(沖服)、大黄15g(後下)、元明粉12g(沖服)、枳実9g」       水煎服。
    ◎肝硬変の腹水。
    ◎虚弱者・服用後下痢がひどいときは、大棗30gを煎じた湯で調服。
    ◎効果があった時点で服用を中止する。


消積丸《東醫寶鑑》
      「丁香・縮砂各12個、烏梅肉・巴豆肉各3個」作末し、麻子大の丸剤。毎       回3丸、橘皮湯で飲む。
◎乳食による傷積・脹満を治す。

消積正元散(一名開鬱正元散)《東醫寶鑑》
      「白朮1銭半、神麹・香附子・枳実・延胡索・海粉各1銭、赤茯苓・陳皮・       青皮・縮砂・麦芽(炒)・山楂肉・甘草各7分を剉作し、1貼に姜3を入       れ煎服。
◎痰飲を気血が鬱結して食積になり、気が昇降せず、積聚が腫れて痛む者。
    
消積保中丸《東醫寶鑑》
      「白朮(土炒)・神麹(炒)・黄連(姜汁炒)・梔子(姜汁炒)各1両、檳榔7銭、       莪朮・三稜(炒)各8銭、麦芽(炒)6銭、乾漆(炒)5銭、青皮(香油炒)・縮       砂(炒)各4銭、木香・阿魏各銭」作末し、姜汁酒糊で梧子大の丸剤。白湯       で80~90丸飲む。
    ◎痞塊を散らす。

消疝丸《東醫寶鑑》
      「蒼朮1斤を切ってに浸したもの、葱石1斤切って塩1両を混ぜて炒って       黄色くなったら葱は捨て、川椒(微炒)・白茯苓・茴香(炒)各4両」作末し       酒糊で梧子大の丸剤。空腹時に調下する。
    ◎小腸疝気を治す。

 消瘡飲《外科発揮》《中薬臨床応用》
    =「仙方活命飲」
      「金銀花30g、穿山甲(炙)9g、角刺9g、赤芍薬9g、浙貝母9g、防風6g、       白芷5g、当帰尾12g、乳香3g、没薬3g、陳皮6g、天花粉12g、甘草6g」       水煎服。服用後に悪心・嘔吐が生じることがあるが、無害である。
    ◎膿瘍、フルンケルなどで、自潰していない。


消息丸(一名消乳丸)《東醫寶鑑》
      「香附子(炒)5銭、縮砂・陳皮・三稜・莪朮・神麹・麦芽各2銭半」作末し、 神麹糊で麻子大の丸剤。1才児に2~3丸、米飲で呑む。
    ◎宿食が消化しないとき。
    ◎乳積・食積を治す。

消滞丸[1]《奥田家方》
      「大黄10.0、枳実・神各5.0、茯苓・朮・黄芩・黄連各3.0、沢瀉2.0」右       8味、各別に細末、糊丸。1回2.0~4.0。瀉下するを限度とする。
    ◎不消化物を食い、或いは過食によって痞満し、或いは腹痛する者を治す。

 消滞丸[2]《東醫寶鑑》
      「牽牛子(炒)2両、香附子(炒)・五霊脂各1両、作末し、醋糊で緑豆大の丸       剤。姜湯で20~30丸呑む。
◎消食・消酒・消水・消気・消痞・消脹・消積・消痛に応用。

 消痰治風方《中薬臨床応用》
      「天竺黄9g、製南星6g、石菖蒲5g、法半夏5g、丹参12g、三七末3g(沖服)、       鶏血藤15g、陳皮6g、茯苓12g、甘草(炙)3g」水煎服。
    ◎脳卒中で意識障害。
    ◎両手を握りしめる
    ◎いびきをかく。
    ◎痰が出しにくい

消痰茯苓丸《東醫寶鑑》
      「半夏2両、赤茯苓1両、枳穀5銭、朴硝2銭半」作末し、姜汁糊で梧子大       に丸剤。姜湯で30~50丸呑む。
    ◎痰飲が流注し、臂痛で腕が上がらず、痛みが移動する者。



消脹飲子《東醫寶鑑》
      「猪苓・沢瀉・人参・白朮・赤茯苓・半夏・陳皮・厚朴・紫蘇葉・香附子・       縮砂・木香・檳榔・大腹皮・木通・蘿葡子・甘草各5分、姜5、棗2」水       煎服。
◎蠱脹と単腹脹を治す。

消脹元(一名小檳榔元)《東醫寶鑑》
      「黒丑頭末2両、蘿葡子(炒)・木香・檳榔」各等分を作末し、水で梧子大の       丸剤。姜湯で30~50丸呑む。
    ◎気を快し、脹をなくし、食欲を増進させる。

 消脹散《万病回春》《古今方彙》
      「蘿葡子・紫蘇梗・乾葛・陳皮・枳殻各等分、甘草(少許)」水煎。
    ◎小児腹脹するを治す。
    ◎食少なきは:「白朮」

 消毒飲《和剤局方》《古今方彙》
      「牛蒡(微炒)4銭、荊芥・甘草各1銭、防風半銭」水煎温服。
◎一方に、黄芩・犀角を加える。
    ◎痘瘡出でんと欲して出でず、熱なお、未だ解せず、毒気太盛、稠蜜片を成し、     或いは内に邪熱を蘊む、咽膈利せず、痰涎壅嗽、眼赤く瞼腫れ、腮項結核にて     腫れ壅がり、毒は遍身に聚り、風疹痺毒赤痛する等の症を治す。
    ◎麻疹既に出でて1日、而して又没する者を治す。乃ち風寒の冲する所と為りて     麻毒内攻す。もし治せざれば胃は爛れて死す。《寿世保元》


消毒飲《東醫寶鑑》
      「大黄(煨)・荊芥穂各2銭、悪実・甘草各1銭」水煎服。
◎瞼に栗つぶのようなものが出来る者。

消毒飲《中薬臨床応用》
    =「普済消毒飲」
「黄芩・黄連・柴胡・桔梗・升麻・玄参・連翹・板藍根・馬勃・白彊蚕・牛       蒡子・陳皮・薄荷・甘草」
◎頭面の腫れがひどく、目が開けられない。
    ◎しかも口渇・舌乾(大頭蘊)。


 消毒活血湯《活幼心法》《古今方彙》
      「紫草茸・当帰・前胡・牛蒡子・木通各6分、生地黄・白芍薬(生酒洗)・連       翹・桔梗各5分、黄芩(酒炒)・黄連(酒炒)各7分、甘草4分、山梔子8分、       人参3分、黄蓍(生)8分、生姜1片」煎服。
◎痘色紅紫乾枯し、或いは焦黒を帯びる者を治す。毒熾んにして血凝る者なり。     必ず膿を成さず。
◎煩渇には:「人参・黄蓍、括楼根」

消毒丸《東醫寶鑑》
      「大黄・牡蛎()・白彊蚕(炒)各1両」作末し、梧子大の蜜丸。毎回1丸呑       む。
◎大頭瘟の悪症を治す。

消毒散《東醫寶鑑》
      「大黄(煨)・荊芥穂各2銭、悪実・甘草各1銭」水煎服。
    ◎まぶたに栗粒のようなものが出来る者。

 消毒散《万病回春》《古今方彙》
      「天南星・半夏・陳皮・桔梗・柴胡・前胡・黄連・連翹・赤芍薬・防風・独       活・白附子・紫蘇子・莪朮・蔓荊子・木通・甘草各等分、生姜、燈心草」       水煎。
◎咽喉結核にて腫塊が桃の如く腫れて硬く疼痛し、頸項廻らず両脇下に転じ或い     は塊ありて硬きこと石の如きを治す。


 消毒補中丸


 消礬散《金匱要略》
    =「消石礬石散」
      「消石、礬石(焼)」各等分。
       右二味、為散、以大麦粥汁和服方寸匕、日三服。病隨大小便去、小便正黄、       大便正黒、是侯也。
    ◎黄家、日所発熱、而反悪寒、此為女労得之、膀胱急、少腹満、身盡黄、額上     黒、足下熱、因作黒疸。其腹脹如水状、大便必黒、時溏、此女労之病、非水也。     腹満者難治。消礬散主之。


消斑青黛飲《東醫寶鑑》
      「黄連・石膏・知母・柴胡・玄参・生地黄・山梔子・犀角・青黛各1銭、人       参・甘草各5分」を水煎し姜1・棗2を入れ、酒1匙を混ぜて食べる。
◎陽毒・熱毒で錦紋のような発斑が出る者。

 消痞湯《済世全書》《古今方彙》
      「人参、白朮、茯苓、陳皮、半夏、厚朴(酒炒)、枳実、黄連、砂仁、沢瀉、       生姜」水煎温服。
◎それ痞は脹満と軽重の分あり、痞すれば即ち痞悶を覚え而して外は脹急の形無     き者是れなり。


消痺狗皮膏
「阿魏40g 乳香(油を去る)・没薬(油を去る)各24g 肉桂・公丁香20g        木香16g 麝香4g」細末にして、万応膏960gを重湯煎で軟らかくした内       にいれて、かき混ぜた後ひろげる。

 消風化痰湯《万病回春》《古今方彙》
      「天南星・半夏・赤芍薬・連翹・天麻・青藤・白殭蚕・蒼耳・金銀花・


消風散[1-1]《外科正宗》
「当帰・地黄・防風・蝉退・知母・苦参・胡麻・荊芥・蒼朮・牛蒡・石膏・       甘草・木通」

消風散[1-1]《外科正宗》《漢方治療の実際》
      「当帰・地黄各3、防風2、蝉退1、知母1.5、苦参1、胡麻1.5、荊芥1、朮3、       牛蒡子2、石膏5、木通5、甘草1.5」

 

消風散[1-2]《外科正宗》《漢方後世要方解説》
      「当帰・地黄・石膏各3、防風・蒼朮・木通・牛蒡子各2、知母・胡麻各1.5、       蝉退・苦参・荊芥各1」
    ◎風湿血脈に浸淫し、瘡疥を致生して痒絶えざるを治す。及び大人小児風熱     疹身に遍く、雲片斑点たちまち有り、たちまち無きに併せて効あり。
◎此方は頑固なる皮膚病に屡々用いられる。
     風湿血脈に浸淫するとて、夏季暑熱の侯に毎年発する悪瘡に効を奏し、皮膚枯     燥或いは時に分泌物あることあり、痒甚だしき皮膚病に用いる。
又、慢性となれるジンマシンにも応用される。夏期には増悪する皮膚病、古     方なれば白虎加人参湯などの症がある。本方は更に長引き毒深く血燥のものに     よい。
当帰、地黄=血燥を潤す。
     苦参=癰腫、瘡疥を治す
     牛蒡子=瘡毒、風熱を消す
     知母=熱渇を除く
     胡麻=血を涼し、毒を解す
     蝉退=風を消し、熱を除く
     荊芥、防風=風を去り、瘡を治す。



消風散[1-3]《外科正宗》
       「当帰・熟地黄・石膏各3.0g、防風・木通・牛蒡子各2.0g、知母・胡麻各        1.5g、蝉退。苦参・荊芥各1.0g」《龍野ー漢方処方集》
    ◎風湿、血脈に浸淫し、瘡疥を致生し、掻痒絶えざるを治す。及び大人小児、風     熱、疹、身に遍(あまね)く、雲片斑点、乍(タチマ)ち有り乍ち無きも、並びに     効あり。
◎.此方は、風湿血脈に浸淫して瘡疥を発する者を治す。一婦人、年30代、年々     夏になれば総身悪瘡を発し、肌膚木皮の如く痒搨(ヨウトウ)、時に稀水淋漓(漓リ=     したたる)、忍べからず。諸医手を束ねて癒えず。余、此の方を持ちゆること     1ヶ月にして効あり、3ヶ月にして全く癒える。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎目標:《大塚敬節》
     <1>消風散の効く湿疹は、夏期に増悪する傾向があるが、1年中同じ状態の患       者もいる。また、
     <2>口渇を訴える傾向があり、湯茶を好んで飲んでいる患者が多い。
     <3>分泌物が多いということも、消風散を用いる目標である。しかし、分泌物       のあまり無いものに用いて効いたこともある。
    ★適応症及び病名(五十音順)
     [1]アトピー性皮膚炎
     [2]あせも
     [4]胃風
     [6]陰嚢湿疹
     [7]化膿傾向
     [8]かゆみが激しい
        ☆掻痒感=激甚<>
        ☆夜間に増悪する傾向がある。《中医処方解説》
        ☆全身(四肢)に麻痺感があって、皮膚がかゆい。
     [9]感覚異常(顔面部)
     [10]乾癬
    [11]眼痛
   [12]汗疱
   [13]顔面の腫れと感覚異常
    [14]局所の発赤と熱感
    [15]口渇:
        ☆口渇を訴える者が多い《大塚敬節》
    [16]固定ジンマシン
        ☆ケロイド様になった:「駆血剤」《中医処方解説》
湿疹
☆湿疹の患者に、消風散を与えたところ、3日ほどたって、かえって増悪したが、7日後には、どんどん快方に向かった《漢方診療医典》
    [17]ジクジク又は水泡:
        ☆湿疹で分泌物多く、痂皮を形成し、カユミの強いもの《大塚敬節》 
        ☆7月末の蒸し暑い日に、肥満した26歳の婦人が訪れた。この患者は、         川から這い上がったかと思う程、顔から、首から汁がたれ、痒くて、         夜も寝られないという。患部は円く、限局しているのではなく、一体         に赤くなっている。これも消風散がよく聞いて、7日間の服薬で9分         通り治り、2週間分で治ってしまった。《大塚敬節》
        ☆浅黒い36歳の男子。7年前より湿疹が治らない。断食をしたらいっ         たんは治ったが、また再発した。その後、食養生で一旦軽快したが、、         又再発したという。湿疹は顔面一面と手足に広がり、カユミがひどい、         患部からは分泌物が流れ、それどころか痂皮を作っている。口渇があ         り、大便は1日1行。
私はこれに消風散を与え、砂糖・アルコール・牛肉・鶏肉・マグロ         ・サバなどの魚類を食べることを禁じたが、1週間目毎の来院のたび         に、患部がきれいになり、多少の一進一退はあったが、半年で9分通         りよくなった。しかし食禁を破ると、また再発の傾向があるという《大         塚敬節》
   [18]ジンマシン
        ☆(ジクジク又は水泡、固定ジンマシン)
        ☆慢性のジンマシン《矢数道明》
        ☆発赤が強く局所の熱感ある風熱型《中医処方解説》
        ☆皮膚白く寒冷:「桂麻各半湯」《中医処方解説》
        ☆夜床に入ると猛烈にかゆくなる:「大青竜湯」《中医処方解説》
        ☆食中毒で:「小柴胡湯茵蒿湯」《中医処方解説》
        ☆精神的ストレスで:「四逆散or加味帰脾湯or三黄瀉心湯or黄連解毒         湯の加減《中医処方解説》
    [19]ジンマシン様苔癬=ストロフルス
        ☆「消風散石膏胡麻」《大塚敬節》
        ☆《老医口訣》
         “小児、毎年夏に至りて疥の如き小瘡を発し、カユミ強く、夜寝かぬ          るもの、世上に多し。後世家は荊防敗毒散浮萍、古方家は胎毒な          りとて紫円などにて下せども癒えず。かようの症は、必ずしも胎毒          ばかりに非ず、皮膚血脈の中に、風湿を受けたるものと覚ゆ。正宗          の消風散の石膏、胡麻を去り用ゆべきし、妙なり。また方彙、頭痛          門にある局方の消風散に苦参を加え用ゆるも効相似たり”
    [20]湿疹:
        ☆体格の良い、血色の良い30歳余りの女性。足におできが出来て、何         時までも治らないという。診ると右の下腿にクルミ大の円い発疹があ         り、ジュクジュクと汁が出て、いつまでも治らないという。かゆいが、         なるべく引っ掻かないようにしていると云う。
私はこれに桂枝茯苓丸、十味敗毒湯、防已黄蓍湯などを用いたが、         効が無いばかりか、却って良くない。困って、方函類聚を読んでいる         と、消風散の条に、次のような記載を発見した。
“婦人、年30ばかり、年々夏になれば忽身悪瘡を発し、肌膚、木         皮の如く、痒搨時、稀水淋漓、忍ぶべからず。諸医手を束て癒えず。         余此方を用いること1月にして効あり。3月にして全く癒ゆ。”    (漓=リ、したたる)
          私の患者は、患部は下腿の一部分に限局してはいるが、発病が5月         下旬で、分泌液が流れる点、この例によく似ている。そこで消風散に         したところ、分泌物が減じ、カユミも軽くなり、1ヶ月足らずで治し         た。その後、湿疹で分泌物が多く、貨幣状に痂皮を作るものに用いる         と、まことに良く効くことを知った。《大塚敬節》
☆湿疹の患者に消風散を与えたところ、3日ほどたつと、かえって増悪したが、7日後には、どんどん快方に向かった《漢方診療医典》
     [21]充血
    [22]耳聾:
        ☆聴力が低下し聞こえない。
    [23]浸出液(分泌液):
        ☆多い・濃厚
        ☆42歳の男子。2年前から湿疹が全身に出来て、良くなったり悪くな         ったりしていたが、3ヶ月ほど前から、ひどく増悪し、某病院に入院         したが、良くならないという。
湿疹は顔面にひどく、一部分から粘稠な汁が流れ、一部は痂皮を作         り、一部は発赤して小豆大の発疹となり、眼瞼にも発疹が及んでいる。         脈は浮大で口渇がある。
私はこれに消風散を与えたが、3日目から効き目が現れ、カユミが         減じ、3週間分を飲み終わったゴロには9分通り良くなった。ところ         が、この人は職業が俳優であったから、久しぶりで、どうらん化粧を         して舞台へ出た。するとまた増悪のきざしが見えてきた。しかし、消         風散を飲み続けながら、舞台に出ているうちに治ってしまった。
[24]ストロフルス
     [25]水泡形成
     [26]頭重
    [27]頭痛(不定期)
    [28]舌質 <紅>
    [29]舌苔 <乾燥した白苔~微黄>
[31]蓄膿症:
        ☆(粘稠な鼻水・血が混じることもある)
     [32]疼痛
    [33]頭皮の無感覚
    [34]頭部からの発汗が多い
     [35]なまあくび
     [36]熱感
     [37]白癬症
     [38]発疹:
        ☆(乾燥性・掻痒性)
         ☆膨隆し弾力あり。
     [3]鼻粘膜潰瘍
        ☆悪臭性のもの。
     [39]皮膚炎(夏期に増悪する)
         ☆入浴・就寝時に身体が暖まると、かゆみがひどくなる。
     [40]皮膚掻痒症:
        ☆頑固な皮膚病
     [41]眉稜の痛み
     [42]フケ
     [43]風疹
    [44]ほてり
     [45]慢性鼻炎:
        ☆(透明な鼻水が出て、鼻がつまる)
     [46]水虫
[47]めまい



 消風散[2]《和剤局方》《東醫寶鑑》
      「荊芥・甘草各1銭、人参・茯苓・白彊蚕・川芎・防風・香・蝉退・羗活       各5分、陳皮・厚朴各3分、細茶一握り」煎服。又は作末し、毎回2銭を       茶清or温酒で調服。
    ◎風邪が上にのぼり、頭や目がくらみ、鼻が詰まり、耳が鳴り、皮膚がカサカサ     になる者。
    ◎婦人の血風で、頭皮が腫れ上がってかゆい者。

 消風散[3]《寿世保元》《古今方彙》
      「陳皮・白朮・当帰・白茯苓各1銭、延胡索・半夏・牛膝・川芎核8分、防       已・羗活・秦艽・独活各6分、枳殻・防風各5分、木瓜4分、甘草3分、       生姜」水煎。
◎手足屈伸する能わず週身疼痛するを治す。


 消風敗毒散《万病回春》《古今方彙》
      「当帰・川芎・赤芍薬・生地黄・升麻・乾葛・黄芩各1銭、黄連・黄柏・連       翹・防風各8分、羗活・金銀花・甘草各5分、蝉退2個」水煎。初めて服       するときは、大黄・芒硝を加う。
◎楊梅天疱にて初起の者は此湯に宜し。

 消風百解散《和剤局方》《古今方彙》
  「荊芥・麻黄・陳皮・蒼朮・白芷各4両、甘草2両、生姜、烏梅」水煎。
    ◎頭痛発熱、鼻塞り声重く、咳嗽する者を治す。


消風百解湯《東醫寶鑑》
      「荊芥・蒼朮・白芷・陳皮・麻黄各1銭、甘草5分を剉作し、1貼に姜3片       ・葱白2茎を入れ水煎服。
◎風寒による頭痛・身痛・鼻閉・声がれ。

消風養血湯《医方集解》
「荊芥・蔓荊子・菊花・白芷・麻黄・防風・桃仁・紅花・川芎・当帰・白芍       ・草決明・石決明・甘草」
◎目赤く腫れて痛む。

消癖元(一名芫花丸)《東醫寶鑑》
      「芫花(炒)・朱砂」各等分を作末し、小豆大の蜜丸。毎回10丸を棗湯で呑       む。
◎瘧が何年も続いて、汗・吐・下が多く、栄衛を損ない、邪気が肋骨の間に潜     伏して詰まり、になって脇腹が痛くなる者。

消癖湯《高階枳園》

消癖湯《済世全書》《古今方彙》
      「人参、白朮、茯苓、半夏、柴胡、黄芩、猪苓、沢瀉、麦門冬、山楂子、三       稜(醋炒)、莪朮(醋炒)、甘草、胡黄連、生姜、大棗」煎服。
◎小児癖疾にて発熱口乾、尿赤きを治す。
    ◎若し癖疾にて日久しく元気虚損するには此方奏功する能わず、宜しく「補中益     気湯」を多服すべし。


消遥解毒湯《黴瘡約言》

 消瘰丸《医学心悟》
      「玄参、牡蛎()、貝母」


 逍遙散[1-1]《和剤局方》
      「柴胡、当帰、白芍薬、白朮、茯苓、薄荷、生姜、甘草(炙)」


 逍遙散[1-2]《医貫》《古今方彙》
      「柴胡、薄荷、当帰、芍薬、陳皮、甘草、白朮、茯神、黄連(呉茱萸炒)、加       味は牡丹皮、山梔子を加う。山梔子を以て屈曲下行して水を泄らし、改め       て呉茱萸に浸し炒った黄連を用いる。方中の唯柴胡、薄荷の二味が最も妙       なり。
◎木欝を治す。而して諸欝皆癒える。
    ◎虚労、発熱乾嗽、呼吸喘急、両頬倶に赤く、六脉が数大なる者を治す:「牡     丹皮・薏苡仁・蘭葉」《医宗必読》

逍遥散《和剤局方》
•下痢と便秘を繰り返す・神経性
•血虚労倦し、五心煩熱し、頭目昏重し、心き、頬赤く、発熱盗汗あるを、及び血熱相搏ち、月水調わず、臍腹脹痛し、寒熱瘧の如きを治す。
•此方は「小柴胡湯」の変方にして、小柴胡湯よりは少し肝虚の形ある者にして「医王湯」よりは一層手前の場合にゆくものなり。《勿誤薬室方函口訣》

•此方、専ら婦人虚労を治すと云えども、その実は体気甚だ強壮ならず、平生血気薄く、肝火亢ぶり、或いは寒熱往来、或いは頭痛、口苦、或いは頬赤、寒熱如瘧、或いは月経不調にて申し分絶えず、或いは小便淋瀝渋痛、俗に云うせっかちの如く、一切肝火にて、種々申し分ある者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》


•《聖済総録》曰く。産後、血虚し、心煩、自汗あり、精神昏冒し、心き、頬赤く、口乾き、咽乾き、発熱頭痛し、或いは寒熱ありて瘧の如きを治す。《雑病翼方》
•《医学真悟》に云う、噎膈、鬱を挟む者は則ち逍遥散を用いて之を主る。

•《雞峰普済方》に云う、此の症は乃ち神思間の病なり、法は当に内観静養すべしと。この言深く病情に中る《方読便覧》

•血虚発熱止まざる、あるいは労咳なる者を治す:「麦門冬・阿膠」

•血虚鬱塞する者を治す:「地黄・莎草」。
《和田東郭》の地黄・香附子を加ふる者、此の裏にて、肝虚の症、水分の動悸甚だしく、両脇拘急して思慮欝結する者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》

•陰中の諸瘡を治す:「荊芥地骨皮」《本朝経験》

•婦人の諸虚百損、五労七傷にて、経脈調わず、肢体羸痩するを治す:「陳皮・知母・貝母・香附子・地骨皮・麦門冬」=「滋陰至宝湯」《古今医鑑》
•逍遥散+牡丹皮・山梔子=加味逍遥散(丹梔逍遥散)





 逍遙散[1-3]《寿世保元》《古今方彙》
      「当帰1銭2分、白芍薬(酒)1銭、柴胡・黄芩各1銭、川芎・熟地黄・半夏       各7分、人参・麦門冬各5分、甘草4分、生姜」水煎。
◎室女17・8歳にして経脈通ぜざること、或いは100日或いは半年にして顔色     青黄、飲食少しく進み、寒熱往来し、四肢困倦し、頭疼も目眩み、肚痛みて塊     を結び、五心煩熱し、嘔吐し膨張するを治す。
◎睡少なければ:「酸棗仁」

 逍遙散[1-4]《和剤局方》《古今方彙》
      「甘草(炙)、当帰、白芍薬、白朮、茯苓、柴胡酒、煨姜、薄荷(少許)」水煎。
    ◎肝脾の血虚にて発熱し、或いは潮熱し、或いは自汗盗汗、或いは頭痛目渋り、     或いは怔忡寧からず、頬赤く、口乾き、或いは月経不調、或いは肚腹痛みを作     し、或いは小腹重墜して水道渋痛し、或いは腫痛し、出膿、内熱、渇を作す等     の症を治す。
    ◎「牡丹皮・梔子仁」=「加味逍遙散」《薛立斎》

 逍遙散[1-5]《和剤局方》《漢方後世要方解説》
      「当帰・芍薬・柴胡・白朮・茯苓各3、甘草・乾姜各1.5、薄荷葉1」
    ◎血虚労倦、五心煩熱、肢体疼痛、頭目昏重、心頬赤、発熱盗汗、減食嗜臥、     及び血熱相搏ち、月水調わず、又室女血弱陰虚して栄衛和せず。痰嗽潮熱、肌     体羸痩、漸く骨蒸となるを治す。
◎此方は小柴胡湯の変方で、「小柴胡湯」よりは少しく虚状を帯び、「柴胡桂枝     乾姜湯」「補中益気湯」よりはやや力あるものである。婦人の虚労、結核の初     期に用い、又中和の剤であるから病後の調理によく用いられる。
◎加味逍遥散(逍遙散梔子牡丹皮)は清熱を主とし、上部の血症に効がある。頭     痛、面熱、衂血、肩背拘ばる等、上部の血熱を清解する。又婦人の肝気亢ぶり、     種々と申し分絶えざる神経症にも広く用いられる。
柴胡・梔子・牡丹皮・芍薬=肝の火を瀉す。
     当帰=厥陰の血を滋す。
     白朮・茯苓・甘草=脾を養う


逍遙散[1-6]《漢方治療の実際》
      「当帰・芍薬・柴胡・朮・茯苓各3、生姜2、甘草1.5、薄荷1」
    ★適応症及び病名(五十音順)
     [1]肩こり:
        ☆肝欝して肩こり、頭重、不眠などある者《矢数道明》
     [2]肝硬変:
        ☆腹水のない者《矢数道明》
     [3]気鬱症:
        ☆特に室女寡婦の気鬱で肺労に似たもの《矢数道明》
     [4]結核:
        ☆初期軽症
     [5]月経不順:
        ☆心下に痞硬し、肝鬱血して順らない者《矢数道明》
     [6]更年期障害:
        ☆血の道症、身体的灼熱感と悪寒を訴え、のぼせ、全身倦怠する者《矢         数道明》
     [7]産後舌爛:
        ☆「牡丹皮・梔子」《矢数道明》
        ☆妊娠中に舌が荒れる者に用いて、著効があった《大塚敬節》
        ☆この方は、諸病で虚熱があって、脈が数で、気が欝してのびず、怒り         やすく、心下は痞え、両方の脇下が拘攣し、左脇がとくにひどく、或         いは左に動悸のある者を標的とする。さて口舌咽喉等に瘡を生じて痛         む者には実熱の者が多く、虚証は少ないのである。この方は虚火によ         って、口舌に瘡を生ずる者によく応ずる。舌上or舌先or舌の横にぐ         つぐつと瘡を生じ、或いは正中が少しの間、鳥の皮を剥いたようにな         る証には必ず効がある。これは腎肝の虚火が発動して瘡が出来た証で         あるから、脈、腹ともに実することはない。
また産前産後の口舌が赤爛して瘡を生ずる証は世上に甚だ多い。こ         の病気は些細なものだけれども、なかなか治りにくい。世医は皆困り、         うち捨てて置くのが常である。自分もまたこの証を度々治療したが、         終に著効を得なかった。この頃、この方を試みてみるに、手に応じて         効がある。また虚火発動等強き証は、加味逍遥散連翹・桔梗が特に         著効がある《目黒道》
     [8]神経症:(ヒステリー)
        ☆故白河城主阿部候の祖母聴徳院老女、年50あまり、候家がつぶれた         のをうれい患い、心思鬱々として楽しまず、飲食に味がなく、体は痩         せ、息切れがし、動くのが大儀で、脈は沈弱である。侍医は虚労であ         るから、難治だと診断した。余はこれを診察して云った。悪寒も熱も         なく、脈はまだ数ではない。息切れがしても、幸いに、積も痰も出な         い。或いは救うことが出来る出あろうと。逍遙散地黄香附子を与え         た。
          これを数10日服用すると、飲食が次第に進むようになり、気力も         またついてきた。ただ、胸で動悸を感じ、安眠が出来ない。そこで帰         脾湯地黄煉を服用せしめ、数ヶ月で常態に回復した《橘窓書影》
     [9]血の道症:
        ☆婦人の血の道症の薬として用いられ、疎註要験には、“女子、物ごと         心にかなわず、思ふこと、どげず、役にもたたぬことを気づかい、後         には乱気にもなるべきかと見る者、この方を用ひてよし”とある《大         塚敬節》
     [10]癲狂:(気ちがい)
        ☆婦人は嫉妬の心が深く、或いは怒りを隠し、或いは妄りにおもんばか         り、これがために肝気が欝滞して、癲狂になりやすい。この症は脈が         必ず弦である。これがその目標である。逍遙散生地黄・桃仁・紅         花・蘇木・遠志・辰砂を与える。《積山遺言》
        ☆婦人癲疾を患い、歌唱すること時なく、垣根を越え、屋根に登るもの         には、逍遙散桃仁・遠志・紅花・蘇木・生地黄を用いる《衆方規矩》
        ☆18歳女性。初産、27夜を過ぎてのち、顔が赤く、からだに熱があ         り、胸がおどり、食欲がなく、しばらく眠ったかと思うと、にわかに         驚き、声を震わせ、両方の手を差し上げてブルブルと震わせる。この         ようなことが毎夜14、5回もある。医者は手をこまねいて治するこ         とが出来ない。そこで逍遙散地骨皮・陳皮・酸棗仁を与えて良くな         った。《衆方規矩》
     [11]肺尖炎:
        ☆気鬱が長引いて咳嗽する初期の肺尖《矢数道明》
        ☆病勢の進行した者には用いてはならない《矢数道明》
     [12]白帯下
     [13]皮膚病:
        ☆婦人の皮膚病ですっきり治らない者「四苓湯」《矢数道明》
     [14]婦人神経症
     [15]便秘:
        ☆婦人の便秘、大黄剤の用い難き、虚証の者《矢数道明》
     [16]慢性尿道炎




尚足飲《竹田謙預》
「三黄瀉心湯紅花・石膏・甘草」
    ◎舌瘡腐爛、一切の歯痛を治す。


升発二陳湯《東醫寶鑑》
      「半夏2銭、陳皮・蕪・赤茯苓各1銭半、柴胡・防風・升麻・甘草各1銭、       姜3片」水煎服。
    ◎痰欝を治す。


升麻胃風湯《脾胃論》《東醫寶鑑》
      「升麻2銭、白芷1銭2分、当帰・葛根・蒼朮各1銭、甘草1銭半、麻黄5       分、柴胡・藁本・羗活・黄柏・草豆各3分、蔓荊子2分、姜3、棗2」       水煎し食後服用。
◎胃風でなった面腫を治す。
◎食べた後、冷たい風に当たると麻痺し、奥歯が痛み、目玉がくらつき、胃に風     があって顔が腫れる者を治す。
    ◎虚風にて能く食し、麻木、牙関急(歯をくいしばること)、目内蠕、胃風面     腫るるを治す。《古今方彙》


升麻益胃散


升麻黄連丸《東醫寶鑑》
      「黄芩(酒洗)2両、黄連1両、生姜汁・青皮・升麻各5銭、生甘草3銭、白       檀2銭」作末し蒸餅をつくり弾子大の丸剤。毎回1丸、白湯でかみ下す。
◎口臭がひどい者。

升麻黄連湯《衛生宝鑑》《東醫寶鑑》
      「升麻・乾葛各1銭、白芷7分、白芍・甘草各5分、黄連(酒炒)4分、犀角       (屑)・散及・荊芥穂・薄荷各3分」先に水半杯に川芎・荊芥・薄荷を漬け、       残りは皆水2杯で煎じて1杯ぐらいになると、味をつけてまた煎じ、7分       ぐらいになったら滓を捨て、食後に温服。
◎面熱を治す。





 升麻葛根湯[1]《万病回春》《古今方彙》
      「升麻、葛根、白芍薬、柴胡、黄芩、山梔子、甘草、木通」水煎。母子同じ       く服す。
    ◎小児丹毒にて身体発熱し、面紅気急、啼叫驚する等の症を治す。



升麻葛根湯[2-1]《銭乙方》
「升麻・葛根・赤芍・甘草」

升麻葛根湯[2-2]《氏小児方論》《中薬臨床応用》
      「升麻2.5g、葛根9g、赤芍薬5g、甘草2.5g」水煎服。




 升麻葛根湯[2-3]《東醫寶鑑》
      「葛根2銭、白芍・升麻・甘草各1銭、姜3、葱白2」
    ◎温病と四時の感冒を治す。
    ◎過飲による膈の熱で、口瘡が出来、咽喉が痛い者。


 升麻葛根湯[2-4]《和剤局方》《漢方後世要方解説》
      「葛根5、升麻2、芍薬3、生姜2、甘草1.5、葱白1寸許り2個」
    ◎足の陽明胃経の汗剤。
    ◎大人、小児、時気瘟疫、頭痛発熱、肢体疼痛するを治す。及び瘡疹已に発し、     及び未だ発生せず、疑似の間宜しく之を服すべし。
◎陽明の傷寒中風、頭疼、身痛、発熱、悪寒、汗なくして口渇し、目痛、鼻乾い     て臥することを得ず、及び陽明の発斑出でんと欲して出でず、寒暄(カンケン)時な     らざるを治す。《医方集解》
    ◎此方は胃中の熱及び血中の熱を清解する剤である。陽明経の表邪を発表する。     諸熱性病、目痛み、花乾き、不眠し、汗無くして悪寒発熱するのは陽明経の熱     症である。
本症は痘瘡、麻疹、猩紅熱等発疹を伴う熱性病の初期、又は流行性感冒にて     脳症状の著明なものに用いられる。将に現れんとする時期に適応する。
    ★適応症及び病名(五十音順)
     感冒:頭痛激しきかぜ
     衂血
     猩紅熱:初期
痘瘡
     扁桃腺炎
     麻疹:初期
     目の充血


 升麻葛根湯[2-5]《傷寒活人書》《古今方彙》
      「葛根3銭、升麻・白芍薬・甘草各2銭、生姜」水煎。
    ◎傷寒、頭痛、時疫にて憎寒壮熱、肢体痛み、発熱悪寒、鼻乾き睡るを得ざるを     治す。兼ねて寒暄(あたたかい)時ならず、人多く疫を病み、たちまち暖かく衣     を脱するを治す。及び瘡疹已に発し、未だ発せず、疑似の間に宜しく服すべし。
◎頭痛すれば:「葱白」
    ◎咳嗽んは:「桑白皮」
    ◎上膈熱するには:「黄芩・薄荷」
    ◎無汗には:「麻黄」
    ◎咽痛には:「桔梗・甘草」
    ◎発黄、丹毒には:「玄参」



 升麻葛根湯[2-6]《万病回春》《龍野ー漢方処方集》
      「葛根6.0g、升麻・芍薬・甘草各3.0g、干姜1.0g」
    ◎熱病で頭痛発熱・悪寒体痛・鼻乾不眠の者。
    ◎目痛み鼻乾き眠らず、自汗悪熱する者。
    ◎麻疹水痘等で、発熱が出るか出ないか疑わしい者、或いは出にくい者。

升麻葛根湯[2-7] 《漢方治療の実際》
      「葛根5、升麻・生姜各2、芍薬3、甘草1.5」
    ★適応症及び病名(五十音順)
  [1]胃中熱
     [2]悪寒
     [3]疹(いんしん)
     [4]咳嗽:
☆咳には・・・桑白皮3.0g《龍野ー漢方処方集》
     [5]化膿性の発疹・吹き出物
     [6]感冒
     [8]くしゃみ
     [9]首から上の汗
    [10]頸強
    [11]下痢:
        ☆(水が吹き出す様な暴瀉便)
    [12]口渇
    [13]口乾
    [14]ジンマシン
    [15]衂血
    [16]猩紅熱
    [17]暑泄(夏季の暑さによる下痢)
[18]小児の丹毒
   [19]身体疼痛
    [20]水痘
   [21]頭痛(激しい頭痛)
        ☆感冒・脳脊髄膜炎などで、激しい頭痛する者。
    [22]舌質 <紅>
    [23]舌苔 <無苔~白苔>
    [24]はしか(麻疹)の初期
[25]斑疹(はんしん)
  ☆赤い発疹に・・・駆血剤。
    [26]鼻乾
     [27]鼻出血
     [28]皮膚掻痒症
    [29]風疹
☆発疹を伴う熱性病の初期、または流感の頭痛甚だしく脳症状あるものに用いる。発疹を促進し、発疹が出そろうまで飲ましてよい(漢方診療医典)
     [30]不眠
    [31]扁桃炎:
         ☆咽痛には・・桔梗3.0g《龍野ー漢方処方集》
     [32]発赤
     [33]麻疹(はしか):
         ☆初期
    [34]無汗:
☆.汗無き者・・麻黄3.0g《龍野ー漢方処方集》
[35]胸苦しい
[36]目の充血(結膜の充血)
   [37]目の痛み




升麻散《東醫寶鑑》
      「升麻・玄参・川芎・生地黄・麦門冬各1銭、大黄・黄連・黄芩・甘草各5       分、姜3、棗2」水煎服。
◎心脾の熱で口舌に瘡が出来て裂ける者。

 升麻順気湯《医学入門》《古今方彙》
      「升麻1銭半、乾葛・防風・白芷・黄蓍・人参各1銭、白芍薬6分、甘草・       蒼朮各5分、生姜、大棗」煎服。
◎憂思して飲食節を失し、面色黒、心懸して饑えるが如くして、食を欲せず、     気短而して促なるを治す。

升麻蒼朮湯《明医雑著》《東醫寶鑑》
      「蒼朮1銭半、半夏1銭、厚朴・陳皮・枳実・桔梗・川芎・木通・升麻・柴       胡各7分、黄連・黄芩・木香・甘草各5分、姜5片」水煎服。
    ◎嶺南の春秋の季節に山瘴霧の毒気にふれ、寒熱を発し、胸が詰まって食欲のな     い者。
◎春秋時月、人が山嵐瘴霧の毒気に感じて寒熱を発し、胸膈飽悶、飲食を思わず、     此れは毒気が鼻孔より内に入るなり。治は当に上焦を清め、内毒を解し、気を     行らし、痰を降ろすべし、宜しく汗を発すべからず。《古今方彙》

升麻托裏湯(一名内托升麻湯)《東醫寶鑑》
      「升麻・乾葛・連翹各1銭半、黄蓍・当帰・甘草(炙)各1銭、悪実5分、肉       桂3分、黄柏2分」水2杯で煎服。
◎乳癰のつぶれない症。
    ◎両乳のあいだの黒い悪瘡を治す。

升麻湯[1]《東醫寶鑑》
      「陳皮・甘草各1銭、蒼朮・乾葛・桔梗・升麻各7分、赤芍・大黄(酒         蒸)各5分、半夏・赤茯苓・白芷・当帰各3分、枳穀・乾姜各2分、         姜3片、灯心草」煎服。
◎肺風瘡を治す。

升麻湯[2]《東醫寶鑑》
      「升麻2銭、茯神・人参・防風・犀角・羚羊角・羗活各1銭、桂皮5分         を剉作し、1貼に姜5片を入れて煮詰め、竹瀝5匙を入れて調服。
    ◎熱痺で肌肉が極熱し、体に麻痺が走るような気がし、口がひっくり返         るようなこともあり、又、皮色の変わる者。

 升麻湯《万病回春》《古今方彙》
      「升麻・蒼朮・薄荷各等分」水煎。
    ◎雷頭風(耳鳴りの甚だしき頭痛症のこと)にて頭痛して核塊を起こす(上焦に風     熱強く塊が立つ)者を治す。

 升麻発表湯《傷寒六書》《古今方彙》
      「麻黄、杏仁、桂枝、甘草、川芎、白芷、羗活、防風、升麻、生姜、大棗、       豆」水煎熱服。汗を出し汗止まれば多服すること勿れ。
◎冬月正傷寒にて頭疼、発熱、悪寒、項背強重、脉浮緊、汗無し、是れ足の太陽     膀胱経、表証もし頭を斧にて劈くが如く、身を火に炙るに似たる者は此方に宜     し。
◎《万病回春》の麻黄湯が此方なり。

 升麻白芷湯《衛生宝鑑》《古今方彙》
      「升麻・防風・白芷各1銭、芍薬・蒼朮各3分、黄蓍・人参各7分、葛根1       銭半、甘草4分、生姜、大棗」水煎。
◎面と唇が紫黒なるを治す。乃ち陽明経の不足なり。

升麻附子湯《衛生宝鑑》《東醫寶鑑》
      「升麻・炮附子・葛根・白芷・黄蓍(蜜炒)各7分、人参・白豆蔲・甘          草(炙)各5分、益智仁3分」を作末し、連鬚葱白3茎を入れ、食前         に煎服。
◎顔面の冷たい者。
◎これ陽明経の虚寒なり。《古今方彙》
 

升麻鼈甲湯[1-1]《金匱要略》
      「升麻2両、当帰1両、蜀椒1両、甘草2両、甲1片、雄黄半両」
      =「升麻甲湯」
    ◎此方は陽毒の発斑、錦文の如きを治す。陰陽毒の説明了かならざれども、疫毒     斑疹の異症に用いて効あり。
    ◎按ずるに陰陽毒とは、即ち後世の所謂、陰斑、陽斑なり。《雑病翼方》
    ◎喉痺:
       ☆平安時代、佐野氏は《菫氏医級》の説に本づきて、喉痺の急症を陰陽毒        の種類とし、此方を用いて治を得る甚だ多しと云う。《勿誤薬室方函口        訣》

 升麻鼈甲湯[1-2](一名甘草湯)《東醫寶鑑》
      「甘草(炙)・升麻・桂枝各1銭、雄黄・川椒各1銭半、鼈甲(酥炙)3銭」剉       作1貼し水煎服。
       毒は汗と共に出るが、出ないときには再服する。
    ◎陰毒を治す。

 升麻鼈甲湯[1-3]《東醫寶鑑》
      「升麻2銭、当帰・甘草各1銭2分、鼈甲(炙)1銭、雄黄末4分、川椒20        粒」水煎服。
    ◎陰毒で陰斑の出る者。

 升麻和気飲《和剤局方》《古今方彙》
      「升麻・乾葛・白芷・陳皮・蒼朮・桔梗・甘草各1両、白芍薬7銭、当帰・       茯苓・半夏・枳殻・乾姜・大黄各9銭、生姜、燈心草」水煎。
◎瘡疥四肢に発し、痛痒常ならざるを治す。
    ◎甚だしく憎寒発熱を致し、下湿痒して虚するも又宜しくこれを服すべし。

升明湯《東醫寶鑑》
      「紫檀香・車前子(炒)・青皮・半夏・酸棗仁・甘草姜5片」水煎服。
    ◎寅申の歳の病気。


升陽益胃湯[1](一名復煎散)《東醫寶鑑》
      「連翹2銭、羗活・藁本・黄蓍(炙)・甘草各1銭半、知母・生地黄・黄芩・       桔梗・生甘草各1銭、沢瀉7分、独活・防風・黄連・黄柏・人参・陳皮・       当帰梢・蘇木・防已(酒)各5分」剉作2貼し、毎1貼に水2杯(大)で半日       漬けて煎じ、1杯になったら酒10滴をたらし、滓を去り、就寝時に温服。
◎脳疽・背癰・一切の悪瘡の内托をする。

 升陽益胃湯[2]《東醫寶鑑》
      「黄蓍2銭、人参・半夏・甘草各1銭、羗活・独活・防風・白芍各7分、陳       皮5分、柴胡・白朮・茯苓・沢瀉各3分、黄連2分、姜3、棗2」水煎服。
    ◎食欲がなく、身体が重く、口渇、大小便が不順で、ぞくぞくと悪寒する者。

 升陽益胃湯《弁惑論》《古今方彙》
      「黄蓍1銭、橘紅2分半、独活・防風各3分、半夏・甘草(炙)・人参各5分、       白芍薬・黄連・白朮・沢瀉・茯苓・柴胡・羗活各2分、生姜、大棗」水煎。
早飯の後に温服す。
       淋閉せざる者には:「沢瀉」
       小便利し渇せざる者には:「茯苓」
    ◎肺の脾胃虚(脾胃が不足して肺気が弱った)し、怠惰、臥するを好み、四肢収     まらず、時に秋燥に値えば湿を行らしめ、熱少しく退き、躰重く、節痛み、口     燥き、舌乾き、飲食味無く、大便調わず小便頻数、食を欲せず食消せず、兼ね     て肺病を見わし、浙浙として悪寒し惨惨として楽しまず、面色悪く而して和せ     ず乃ち陽気伸びざるを治す。

升陽散火湯[1-1]《傷寒六書》
「人参、当帰、芍薬、柴胡、黄芩、麦門冬、白朮、茯苓、陳皮、甘草、生姜」
      「人参養栄湯地黄知母黄芩、柴胡、茯苓、白朮」
    ◎叉手冒胸、尋衣模床、譫語、昏沈醒めざるを治す。此れ肝熱、肺に乗じ元気虚     し、自ら主持する能わざるなり。名付けて『撮空証』と曰う。
    ◎此方は瘟疫虚症、循衣模床、譫語、昏沈、人事不省者に 人参養栄湯[4]《温疫     論》を互いに用いて効あり。就中此方の主つ処は、癇症の如くにして煩悶強く、     或いは両脇攣痛し、或いは下利する者に宜し。
    ◎此方の症にして、困睡し熱強き者は、「瀉心導赤散」に宜し。
    ◎一体、大承気湯の循衣模床は胃実よりすることなれども、又肝経へ邪熱のかぶ     れ甚だしく、元気主持すること能はざる者有る故に、《陶節庵》が此方を制せ     るなり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎柴胡加竜骨牡蛎湯の証にして虚に属する者:「升陽散火湯」
     瀉心湯の証にして虚に属する者:「導赤各半湯」《傷寒翼方》

 升陽散火湯 《漢方治療の実際》
      「人参・当帰・芍薬各3、黄芩2、麦門冬4、朮3、柴胡4、陳皮・茯苓各3、       甘草・生姜各1.5」



升陽散火湯[1-2]《傷寒六書》《古今方彙》
      「人参、当帰、柴胡、芍薬、黄芩、甘草、白朮、麦門冬、陳皮、茯神、生姜、       大棗、金首飾」を入れ煎じ、熱服。
◎叉手冒胸(手を重ねて胸を被う)、尋衣模床(病人が着衣を撫で夜具を模ぐる動     作)、譫語、昏沈、人事を醒めず、俗医は病を見るを知らずして便ち呼びて風     症と為し、殊に肝の肺金に乗ずるを知らず。元気虚して自ら主持する能わざる     なり。名づけて撮空証と曰う。
◎痰ある者:半夏。
    ◎大便燥実、譫語、渇を発する:大黄。
    ◎泄漏する者:升麻、白朮。
    ★参照:「黄土湯」腸出血の項。


 升陽散火湯[2]《東醫寶鑑》
      「升麻・乾葛・羗活・独活・白芍・人参各1銭、柴胡・甘草各6分、防風5       分、生甘草4分」水煎服。
    ◎火鬱・五心の煩熱を治す。

 升陽散火湯《弁惑論》《古今方彙》
      「升麻・葛根・羗活・独活・白芍薬・人参各5銭、柴胡3銭、防風2銭半、       甘草(生)・甘草(炙)各2銭、生姜」水煎。
◎男子、婦人四肢発熱、筋骨間が熱し、肌表熱して、火門の烙手の如きは此の病     多くは血虚に因りて之を得る。或いは胃に冷物を過食し欝遏し陽気が脾土の中     に火欝すれば則ち之を発す。


升陽除湿湯[1]《東醫寶鑑》
      「黄蓍・蒼朮・羗活各1銭、柴胡・升麻・防風・藁本・炙甘草各7分、蔓荊       子5分、独活・当帰各3分」水煎服。
◎血崩が止まらない者。

 升陽除湿湯[2]《東醫寶鑑》
      「蒼朮1銭半、升麻・柴胡・羗活・防風・神麹・沢瀉・猪苓各7分、陳皮・       麦芽(炒)・甘草(炙)5分」水煎し空腹時に服用。
    ◎気虚泄瀉で食欲なく、困倦無力の者。

 升陽除湿湯《蘭室秘蔵》《古今方彙》
      「麦芽・甘草・陳皮各3分、蒼朮1銭、猪苓・沢瀉・防風・羗活・神麹・升       麻・柴胡各5分」水煎。
◎湿気が下焦より上がる者を治す。引きて之を去るなり。
    ◎胃寒にて腸鳴るには:「益智仁半夏生姜大棗」

 升陽除湿湯《蘭室秘蔵》《古今方彙》
「升麻・柴胡・羗活・防風・猪苓・沢瀉各5分、蒼朮1銭、陳皮3分、神麹5       分、麦芽・甘草各3分」水煎。
◎自ら下り而して上る者は而して之を竭す。
     (上へ上る湿は下に引き下げて小水の方へ取り、下へ陥り低りたる陽気は上焦      の方へ引き挙げる様にする意味)

 升陽除湿防風湯《古今方彙》
      「蒼朮4銭、防風2銭、白朮・茯苓・芍薬各1銭」水煎。
    ◎泄瀉し頭痛するを治す。


 升陽除湿和血湯《医学入門》《古今方彙》
      「甘草(生)、甘草(炙)、黄蓍、当帰、熟地黄、蒼朮、秦艽、肉桂、陳皮、升       麻」
◎血箭(血が糸筋の如くなりて箭のように走ること)湿毒を治す。

 升陽除湿和湯《東醫寶鑑》
      「白芍1銭半、黄蓍・炙甘草各1銭、陳皮・升麻各7分、生地黄・牡丹皮・       生甘草各5分、当帰・熟地黄・蒼朮・秦艽・肉桂各3分」
    ◎腸下血で出血し、腹痛する者。

升陽順気湯《東醫寶鑑》
      「黄蓍(蜜炙)2銭、人参・半夏(姜製)各1銭、神麹(炒)7分半、当帰・草豆       ・陳皮・升麻・柴胡各5分、黄柏・炙甘草2分半、生姜3片」水煎服。
◎忿努で肝を悪くし、思慮が脾を悪くし、悲哀が肺を悪くし、各経絡に火が動い     て元気をなくし、熱を発して食欲のないとき。
◎内傷の諸症で、春は食欲なく、夏は暑くても身体が冷え、胸腹が脹って、食べ     なくても腹が一杯の感じがする。

 升陽順気湯《弁惑論》《古今方彙》
      「黄蓍1両、黄柏(酒)・甘草(炙)各5分、人参3分、当帰・陳皮各1銭、升       麻・柴胡各1銭、半夏3銭、草豆、生姜」水煎。
◎飲食労役により傷るる所、腹脇満悶、短気、春に遇えば則ち口淡く味無く、夏     に遇えば熱と雖もなお寒く、飢えて常に飽きやすく冷を食するを喜ばざるを治     す。
◎飲食して胸膈飽脹し、大便溏瀉する者を治す《万病回春》

升陽順年湯


升陽燥湿湯《蘭室秘蔵》
「黄芩・橘皮各5分、防風・良姜・甘草各1銭、郁李仁1銭、柴胡1銭3分、       乾姜1銭、白葵花7朶」(朶=ダ、えだ)
    ◎白帯下、陰戸中痛み、空心にして急痛、身黄皮緩に、身重きこと山の如く、陰     冷え水の如きを治す。
    ◎此方は白帯下の主剤とす。身重如山、陰冷如水と云うが目的なり。《勿誤薬室     方函口訣》
    ◎白帯下は婦人の内、尤も難治とす。臭気甚だしき者は別して不治なり。
    ◎此方は牝戸より俗に水じもとと云う如き冷水を漏下し腰痛する者に効あり。
◎《立野龍貞》は、「白葵花白鶏冠花」が験ありと云う。


 升陽蒼朮湯《東醫寶鑑》
      「蒼朮1銭半、半夏1銭、厚朴・陳皮・枳実・桔梗・川芎・木通・升麻・柴       胡各7分、黄連・黄芩・木香・甘草各5分、姜5片」水煎服。
    ◎嶺南の春秋の季節に山瘴霧の毒気にふれ、寒熱を発し、胸が詰まって食欲のな     い者。

升陽調経湯《東醫寶鑑》
      「柴胡・羗活・蒼朮・黄蓍各1銭、当帰・防風・升麻・藁本各7分、          蔓荊子5分、独活3分」水煎服。
    ◎内傷により、出血が止まらない者。


升陽補胃湯《東醫寶鑑》
      「白芍1銭半、升麻・羗活・黄蓍各1銭、生地黄・独活・柴胡・防風         ・熟地黄・牡丹皮・炙甘草各5分、当帰・葛根各3分、肉桂2分」
    ◎腸下血が射出され、色が黒紫で腰痛の重い(=湿毒腸)者。


升陽補気湯《東醫寶鑑》
      「柴胡1銭半、生地黄1銭、升麻・沢瀉・白芍・防風・羗活・独活・甘草各7       分、厚朴5分、姜3、棗2」水煎服。
    ◎食事の不規則・ひもじい時に労役して、胃気が不足し・気短・無力・四肢のだ     るさを治す。

升陽補気湯《弁惑論》《古今方彙》
      「厚朴5分、升麻・羗活・白芍薬・独活・防風・沢瀉各1銭、柴胡2銭5分、       生地黄1銭5分、甘草1銭、生姜、大棗」水煎し食前温服。
    ◎飲食節を失し、飢飽労役、胃気不足、脾気下陥、気弱無力、満熱する能わず、     早飯の後に転増昏悶し、頻りに眠睡を要し怠惰四肢収まらず、懶倦動作、五心     煩熱するを治す。
    ◎腹脹り及び狭窄するには:「厚朴」
    ◎腹中硬きに似れば:「砂仁」


 菖蒲欝金湯《温病全書》《中薬臨床応用》
      「石菖蒲5g、欝金5g、連翹9g、山梔子6g、菊花6g、牡丹皮6g、淡竹葉9g、       滑石12g、牛蒡子9g、天竺黄6g、生姜汁6滴(沖服)、玉枢丹末1,5g(沖服)」       水煎服。
    ◎意識障害
    ◎煩躁
    ◎流行性脳脊髄膜炎
    ◎日本脳炎

 菖蒲開音湯《中薬臨床応用》
      「石菖蒲3g、醋梅花9g、佩蘭9g、桔梗6g、石斛12g、人参葉9g、烏梅3g、       牛蒡子5g、麦門冬9g、梅根24g」水煎服。
    ◎咽喉炎
    ◎声帯浮腫による嗄声。


菖蒲丸《東醫寶鑑》
      「石菖蒲・人参・麦門冬・遠志・川芎・当帰各2銭、乳香・朱砂各1銭」作       末し、麻子大の蜜丸。米飲で10~20丸調服。
    ◎言葉が遅い幼児。

菖蒲散《東醫寶鑑》
      「菖蒲・皀角」各等分に作末し、毎回1銭を綿でくるんで息をふさぎ、仰臥       する。
◎鼻がつまり、息が出来ない者。

 菖蒲散《寿世保元》《古今方彙》
      「菖蒲根、当帰、秦艽、呉茱萸、葱白」煎服。
    ◎婦人の前陰が腫痛するを治す。


勝金丸《東醫寶鑑》
      「常山4両(一晩酒浸晒して乾燥)、蒼朮(米のとぎ汁に漬け乾燥)・檳榔・草       果各2両を作末し、常山を漬けた余酒で糊をつくって梧子大の丸剤。毎回       50丸服用。
◎一切の瘧を治す。

勝金散《東醫寶鑑》
      「塩1両を青布にくるんで焼き、麝香1銭を入れ作末し、酒に漬けて1銭       服用。」
    ◎難産・横産・逆産を治す。


勝金丹[1]《東醫寶鑑》
      「常山4両、檳榔(酒蒸・晒し乾燥)1両」作末し、醋糊で緑豆大の丸剤。就       寝時に30丸、冷酒で飲み、次の日早朝に又15丸、冷酒で飲む。
◎すべての瘧疾が治らないとき。

 勝金丹[2]《東醫寶鑑》
      「牡丹皮・藁本・人参・当帰・白茯苓・赤石脂・白芷・肉桂・白薇・川芎・       延胡索・白芍・白朮各1両、沈香・甘草各5銭」作末し、弾子大の蜜丸。       毎回1丸、空腹時に温酒でかじって飲む。
    ◎月経不順で長い間妊娠出来ない者。
    ◎血癖・気痛。

 勝金丹[3]《東醫寶鑑》
      「百歯霜を作末し梧子大に丸め、黄丹で衣をし、毎回3丸を逆流水で食後に       飲み、左乳が病んだら左側を下にして寝、右乳は右を下にして寝て温め、       汗を出すとすぐ治る。


    ◎吹乳に効く。

勝紅元《東醫寶鑑》
      「三稜(醋炒)・莪朮(醋炒)・青皮・陳皮・乾姜(炮)・良姜(炒)各1両、香附       子(醋炒)2両」作末し醋糊で梧子大の丸剤。姜湯で30~50丸飲む。
◎血積・酒積、婦人の脾と血の積気を治す。

勝湿湯《東醫寶鑑》
      「白朮3銭、人参・白芍・乾姜・附子(炮)・桂枝・白茯苓・甘草各7分、姜5、       棗2」水煎服。
◎湿地に座臥し、また雨露に濡れて身体が重い者。
    ◎足が弱く、下痢する者。

勝湿餅子《東醫寶鑑》
      「黒牛2両頭未を取って5銭、白牛2両頭未を取って5銭、甘遂5銭を細末       にし蕎麦麺1両半と水で薬末を混ぜ、餅子を銅銭3つぐらいの大きさに作       り、ご飯の上で蒸し、毎回1餅を空腹時に茶清で飲む。
◎久年の脚気で、足脛が腫痛する者。

勝駿丸《東醫寶鑑》
      「木瓜4両、当帰(酒浸)・天麻(酒浸)・牛膝(酒浸)・酸棗仁(炒)・熟地黄(酒       浸)・防風各2両、全蝎(去毒)1両、附子(炮去皮臍)1枚、乳香・没薬・羗       活・木香・甘草各5銭、麝香2銭」作末し、生地黄2斤を酒4升と煎じて       膏のようになったら、前薬を入れて搗いて堅くし、1両を10丸に作る。       就寝時に1丸づつ酒で服用。
◎脚気でケイレンして痛み、歩行不能と一切の足弱を治す。


 将軍湯《寿世保元》《古今方彙》
      「大黄(酒)一宿浸す」水煎。
    ◎癲狂諸病を治す。


 将軍湯《漢方治療の実際》
      「大黄1味」水煎。
    ◎その主治に、精神守らず、語言錯乱、妄見、妄言、少しく臥し、狂走常ならざ     るを治すとあり、この方はもと江州の民間で、気ちがいの妙薬として売ってい     たもので、この方を中山三柳が病家要覧に載せた。《大塚敬節》


 省風清痰転舌湯《万病回春》《古今方彙》
      「陳皮・半夏・枳殻・黄芩(酒炒)各1銭、茯苓8分、防已1銭、防風7分、       天南星5分、天麻8分、甘草5分、全蝎7分、蝉退8分、生姜、竹茹」水       煎。丸と為して服するも亦可なり。
◎口眼斜、舌強ばり、言い難きを治す。

省風湯[1]《銀海精微》
「防風・犀角・大黄・知母・玄参・黄芩・桔梗・羚羊角(肝虚には除く)」       以上を作末し、毎服8g、水で煎じ、灯心草・竹葉を入れ、食後服用。

 省風湯[2](一名小省風湯)《東醫寶鑑》
      「防風・天南星(炮)各2銭、半夏(製)・黄芩・甘草各1銭」剉作し、1貼に       姜10片入れ水煎し、導痰湯と合わせて煎じて飲むともっとよい。
◎卒中風で人事不省になり熱がない者。
    ◎風を散らして痰を除き火を降ろす。

省味金花丸《銀海精微》
「山梔子・黄・黄柏・桑白皮・地骨皮・桔梗・知母・甘草」を微細末にし、      蜜で丸剤にして、清茶で服用。

漿水散《東醫寶鑑》
      「半夏(製)2両、乾姜(炮)・肉桂・附子(炮)・甘草(炙)各5銭、良姜          2銭半を粗末にし毎回5銭を水2盃で1盃まで煎じ、空腹時に温服。
    ◎暴泄で一身に冷汗をかき、脈が弱く、気弱で話すことも出来ず、甚だ         しいときは吐くこともある。

衝寒散《東醫寶鑑》
      「香附子・陳皮・草果各1銭半、縮砂・白姜・肉豆各7分、香・          白茯苓・木通・呉茱萸各3分」作末し、毎回2銭を温酒又は姜湯          で調下。或いは剉作1貼して水煎服。
◎痼冷腹痛で下痢し、食欲不振の者。

 瘴疸丸《東醫寶鑑》
      「茵・山梔子・大黄・芒硝・各1両、杏仁6銭、常山・鼈甲・巴豆霜各4       銭、豆2銭」作末し、蒸し餅で梧子大の丸剤。毎回3~5丸温水で飲       む。
◎天行病が急に発黄した者。瘴瘧発黄を治す。


 硝石大円(しょうせきたいえん)《漢方治療の実際》
      「消石6、大黄8、人参・甘草各2、当帰1」以上を作末し米糊で丸とし、1       回1.5。


 硝石大円
    =「夾鐘円」
      「大黄40.0、消石30.0、甘草・人参10.0」
       右四味、各別に細末にし、醋1合5勺を以て、先ず大黄を煮て1合に減じ、       後、甘草、人参、を入れ、再び煮て飴状の如くにし、火より下し、更に消       石を入れ、攪和して丹と為す。1回に2.0~4.0。
    ◎腹中の結毒、心下痞の者を治す。《古方兼用丸散方》
    ◎腹中に僻塊有り、心下痞し、或いは腹痛し、吐する者を治す《春林軒丸散方》



硝胆膏《東醫寶鑑》
      「芒硝」作末し猪胆汁で調合して塗る。
◎痘毒であばたになり、肌肉が壊爛し膿が乾かず痛む者。

 逍遥解毒湯《黴瘡約言》《勿誤薬室方函口訣》
      「金銀花・当帰・芍薬・白朮・柴胡・梔子・茯苓・薏苡仁・連翹・甘草」右       十味。
    ◎楊梅、結毒除かれず、腹中熱あり、肌肉痩削し、俗に呼んで湿労というもの、     或いは粉剤を服して後、変を生じ、或いは諸瘡久しく癒えざるを治す。
    ◎此方、湿労を治する主剤とす。
    ◎逍遥散は小柴胡湯の腹形には手弱き剤なり。故に当帰・芍薬・柴胡・甘草にて     心下両脇をゆるめ、白朮・茯苓にて胃中の水飲を消導する中に、梔子の瀉火、     連翹の湿熱を清する、薏苡仁の濁湿を駆る、金銀花の瘡毒を制する品を伍入し     て、むっくりと精気を損せず邪毒を去るの工夫、青州翁の精義入神と謂うべし。     《勿誤薬室方函口訣》

逍遥散《和剤局方》《中薬臨床応用》
      「柴胡9g、当帰9g、白芍薬9g、白朮9g、茯苓9g、薄荷3g(後下)、生姜5g、      甘草(炙)3g」水煎服。
    ◎肝気欝結による月経不順

 逍遥散《和剤局方》《勿誤薬室方函口訣》
      「柴胡・芍薬・茯苓・当帰各1両、薄荷少許、白朮1両、甘草半両、生姜1       塊」
    ◎(下痢と便秘を繰り返す・神経性)
    ◎血虚労倦し、五心煩熱し、頭目昏重し、心き、頬赤く、発熱盗汗あるを、及     び血熱相搏ち、月水調わず、臍腹脹痛し、寒熱瘧の如きを治す。
    ◎此方は「小柴胡湯」の変方にして、小柴胡湯よりは少し肝虚の形ある者にして     「医王湯」よりは一層手前の場合にゆくものなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎此方、専ら婦人虚労を治すと云えども、その実は体気甚だ強壮ならず、平生血     気薄く、肝火亢ぶり、或いは寒熱往来、或いは頭痛、口苦、或いは頬赤、寒熱     如瘧、或いは月経不調にて申し分絶えず、或いは小便淋瀝渋痛、俗に云うせっ     かちの如く、一切肝火にて、種々申し分ある者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎《聖済総録》曰く。産後、血虚し、心煩、自汗あり、精神昏冒し、心き、頬     赤く、口乾き、咽乾き、発熱頭痛し、或いは寒熱ありて瘧の如きを治す。《雑     病翼方》
    ◎《医学真悟》に云う、噎膈、鬱を挟む者は則ち逍遥散を用いて之を主る。
    ◎《峰普済方》に云う、此の症は乃ち神思間の病なり、法は当に内観静養すべ     しと。この言深く病情に中る《方読便覧》
◎血虚発熱止まざる、あるいは労咳なる者を治す:「麦門冬・阿膠」
    ◎血虚鬱塞する者を治す:「地黄・莎草」。
     《和田東郭》の地黄・香附子を加ふる者、此の裏にて、肝虚の症、水分の動悸     甚だしく、両脇拘急して思慮欝結する者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎陰中の諸瘡を治す:「荊芥地骨皮」《本朝経験》
    ◎婦人の諸虚百損、五労七傷にて、経脈調わず、肢体羸痩するを治す:「陳皮     ・知母・貝母・香附子・地骨皮・麦門冬」=「滋陰至宝湯」《古今医鑑》

   

逍遥散《医貫》《勿誤薬室方函口訣》
      「逍遥散《和剤局方》甘草橘皮・牡丹皮・貝母・黄連」
    ◎一切の欝証、瘧に似たる者を治す。
    ◎ただし、その人、口苦、清水或いは苦水を嘔吐し、面青く、脇痛、耳鳴、脈     なり。


椒元《東醫寶鑑》
      「椒目1銭、27粒、巴豆(皮芯を去り細研)1個」水をたらして緑豆大の       丸剤。温水で3~5丸飲む。
◎浮腫を治す。

椒豆散《東醫寶鑑》
      「胡椒・緑豆各49粒」研末して調服。又煎服。
◎霍乱・吐瀉のあと、薬・水薬が入らない者。


椒梅湯《万病回春》
      「烏梅・花椒・檳榔・枳実・木香(別研)・香附子・砂仁・肉桂・厚朴・乾姜       ・甘草・川楝子(去核)」各等分。剉作1剤。生姜1片。水煎服。
    ◎虫痛を治す。
    ◎腹痛、時に痛み、時に止み、面白く、唇紅なるは、是れ虫痛なり。
    ◎此の方は、回虫の腹痛を治す。其の形症、実に似たれども、殺虫の薬応ぜざる     者に効あり。其の一等軽き者を椒梅丸とす。《勿誤薬室方函口訣》


椒梅瀉心湯《本朝経験》《勿誤薬室方函口訣》
「半夏瀉心湯烏梅蜀椒」
    ◎此方は回虫の嘔吐、心下刺痛を治す。
    ◎常に心下寒飲ありて悪心、喜唾する者を治す。
    ◎回虫を兼ねて悪心甚だしき者《橘窓書影》

椒梅瀉心湯《本朝経験》《漢方治療の実際》
      「半夏瀉心湯烏梅・蜀椒各2」



椒附散《東醫寶鑑》
      「大附子1箇の皮を去り作末2銭、川椒20粒に白麺を混ぜて置いて、         水1杯半、生姜を煎じて7分ぐらいになると椒は捨て、塩を少し入          れて空腹時に温服。
◎腎気が上に攻搏して項背がまわらない者。

椒粉散《東醫寶鑑》
      「麻黄根2銭、黒狗脊・蛇床子各1銭、川椒・当帰梢・猪苓各6分、斑         花4枚、軽粉・紅花」少しづつ、作末して使う。
◎陰嚢の湿痒を治す。

焼塩方《備急千金要方》
「焼塩・熱童便」

 焼散《東醫寶鑑》
      「婦人の陰部に近い肌着1切れ、直径4~5寸を焼き(焼存性)、温水で         1日3回、1銭を調服すると小便がすぐ利し、陰頭に若干腫を生じ          ながら治る。
    ◎陰陽易を治す。

焼腎散《東醫寶鑑》
      「磁石(火醋淬7回)・附子(炮)・川椒(炒)・巴戟各1両を作末し、         猪腎1枚を細切りにし葱白1銭と薬末1銭、塩1匙を入れて混ぜ、湿         紙でくるみ煨熟して、空腹時にかんで呑み下す。
◎腎虚耳聾を治す。

焼丹丸《東醫寶鑑》
      「太隣玄精石・軽粉⇒水銀粉各1銭、粉霜・硼砂各5分」を細末にし、寒食 麺1銭を入れて水滴を良くおとし、細かくしたものを餅状にし、また麺で くるんで洗い、黄色くなったら麺は捨て、又水滴をふり落として細かく切 って、米粒ほどの丸剤。最初は5丸、次に10丸と温水で飲む。そして大 便に悪物が出るまで飲む。
 大変治療しにくい症状には、先に焼丹丸を使い、次に四物湯に黄連を加 えて季節に従って加減して使い、飲食を淡泊なものにして効果を助けると 半年ぐらいで治る。
    ◎胎驚でおきた癇症状を治す。

薔薇湯(しょうびとう)《浅田家方》
[薔薇花、桔梗、甘草」
    ◎口瘡を治す。口に含む。
    ◎此方は、大病の人、口瘡を発し、或いは口中糜爛して、薬食共に廃する者に用     いて効あり。《勿誤薬室方函口訣》

薔薇湯《備急千金要方》
「黄柏、升麻、地黄、薔薇根」
    ◎口瘡を治す。

諸蠱保命丹《東醫寶鑑》
      「肉蓯蓉3両、青礬・紅棗・香附子各1斤、麦芽1斤半」作末し、先に肉蓯      蓉と棗・礬を入れ、火し煙りが尽きたら薬末を梧子大の丸剤。毎回20~30      丸、食後に酒で調下。
◎蜘蛛蠱脹を治す。

 杵糠丸(一名奪命丸)《東醫寶鑑》
      「杵頭糠・牛転草各半斤、糯米1斤」作末し、黄母牛の口中の涎を取          って、砂糖3両を加え、実大に作丸し鍋に入れ弱火で1日2回服用。
    ◎五膈を治す。

蜀漆散《金匱要略》
      「蜀漆(洗去腥)、雲母(焼二日夜)、竜骨」等分。
       右三味、杵為散、未発前以漿水服半銭、温瘧加蜀漆半分、臨発時服一銭匕。
◎瘧多寒者、名曰牡瘧、蜀漆散主之。
    ◎蜀漆散の条は所謂牡瘧は瘧病にして寒多き者なり。而して下に動ある者は、     此の方能く之を治す。若し下に動なき者は、終にその効を見ず。《重校薬徴》

蜀漆湯《備急千金要方》
「蜀漆1分、桂枝1分、甘草1分、黄芩1分、黄蓍1分、知母4分、芍薬4       分、地黄3銭分」
    ◎産後、虚熱往来し、心胸煩満、骨節疼痛、及び頭痛壮熱、哺時に甚だしく、又     微瘧の如きを治す。
蜀漆散
“蜀漆散条に、謂ふところの瘧は、是れ寒熱発作時あり。しかしてその臍下に動ある者、此の散の主治するところなり。臍下に動なき者に之れを用ふれば、則ち未だその効を見ず”《薬徴》
[瘧]=おこり。マラリヤ。
◎此方は蓐労の主薬とす。《勿誤薬室方函口訣》

青皮湯《東醫寶鑑》
      「青皮(焙)2銭」酒で調服。
◎吹乳の痛くも痒くもなく、石のように硬く腫れる者。

 青皮湯《医学入門》《古今方彙》
      「莪朮7分、青皮1分、三稜7分、陳皮・神麹各5分、延胡索3分、生姜」       水煎。
◎食を進め、脾を健にし積を消し、聚を化す。
    ◎痞満には:「黄連」
    ◎欝には:「山梔子」
    ◎少食には:「山楂子・麦芽」
    ◎婦人には:「香附子・川芎・紅花・木香」
    ◎気冷にて痛みを作すには:「沈香・木香」


上下分消導気湯《万病回春》《東醫寶鑑》
      「枳穀・桔梗・桑白皮・川芎・赤茯苓・厚朴・青皮・香附子(炒)各2両、       黄連(姜汁炒)・半夏(製)・瓜蔞仁・沢瀉・木通・檳榔・麦芽(炒)各1両、       炙甘草3銭」細切りにし、毎回1両に灸3片を入れ水煎服。又は作末し神       麹糊で丸め、白湯で70~80丸服用。
◎気鬱を治す。いつも煩悩する人の常用薬。
    ◎功は「分心気飲」に勝る。


 上清飲《東醫寶鑑》
      「川芎・欝金・芍薬・荊芥・薄荷・芒硝各2銭半、乳香・没薬各5分、竜脳2       分半」作末し毎回2銭を鼻内に入れる。
    ◎風頭痛と眉骨・眼の痛む者を治す。

上清元《東醫寶鑑》
      「薄荷葉1斤、縮砂4両、甘草2両、防風・桔梗・黄芩各1両」作末         し・1両で20丸の蜜丸。毎回1丸を口に含む。
◎咽喉腫痛・口舌生瘡。
    ◎上焦の風熱を治す。

上清散《東醫寶鑑》
      「川芎・欝金・芍薬・荊芥・薄荷・芒硝各2銭、乳香・没薬各5分、          竜脳2分半」作末し、毎回2銭反を鼻内に入れる。
◎風頭痛と眉骨・眼(=スイ,見上げる)の痛む者。

上清白附子丸《東醫寶鑑》
      「白附子(炮)・半夏(製)・川芎・甘菊・天南星(炮)・白彊蚕(炒)・       陳皮(去白)・旋覆花・天麻各1両、全蝎(炒)半両」作末し、姜汁          を浸して蒸した餅で梧子大の丸剤。30丸姜湯で飲む。
◎風痰で頭痛・めまいする者。

上丹《東醫寶鑑》
      「五味子8両、蛇床子・兎絲子・百部根・杜仲・白茯苓・防風・巴戟・肉       蓉・山薬・遠志・枸杞子・柏子仁各2両」作末し、梧子大の蜜丸。空腹時       に温酒または塩湯で50~70丸呑む。
◎労傷・虚損・男の不能を治す。

上品錠子《東醫寶鑑》
      「紐礬1両2銭半、信砒火()5銭、乳香・没薬・朱砂各2銭半、牛黄2分       半、綱砂5分(熟)・2分(生)」作末し、麺糊で混ぜ、錠子を瘡の大小・深       浅に合わせて孔中の挿入する。
◎18種の痔瘻を治す。


 承気丸《東洞家塾方》
      「大黄8銭、硝石12銭」
       右2味末と為し梧桐子大の糊丸。枳実厚朴湯を以て之を服す。毎服8分。
      [枳実厚朴湯]
        「枳実1銭2分、厚朴1銭8分」
         右2味、。水1合5勺を以て煎じて6勺を取り、承気丸8分を送下す。
    ◎腹満、或いは燥屎通ぜざる者を治す。


 如神丸[1-1]
    =「仲呂丸」
      「大黄6.0、牽牛子・甘遂各3.0」(一方に消石3.0あり)
      右三味、各別に細末にし、糊丸。1回1.5~3.0を白湯で服用。

 如神丸[1-2]《春林軒丸散方》
      「大黄・牽牛子各6.0、甘遂3.0」用法用量上に同じ。
    ◎腹脹、水腫、小便利せざる者を治す《古方兼用丸散方》
    ◎心下痞し、小便利せず、四肢疼痛し、大便通ぜず、或いは身体腫痛し、或い     は腰間攣痛し、或いは陰嚢腫れ、少腹に引いて痛む者を治す。《春林軒丸散方》



如神散《東醫寶鑑》
      「苦匏子・苦胡蘆子各3~7個、黄黍米300粒、安息香2」皀子大に作末し、1       字(=2分5厘)を鼻中に入れると黄水がドロドロと出る。
◎酒毒の発黄を治す。

如神湯《東醫寶鑑》
「延胡索・当帰・桂心・杜仲(姜汁炒)」等分に作末し、毎回2銭を空腹時に温酒で調下。
◎挫閃腰痛・ギックリ腰。
    

如神白虎湯《傷寒六書》《古今方彙》
「石膏、知母、甘草、人参、山梔子、麦門冬、五味子、生姜、大棗、竹葉」煎服。
◎身熱、渇し而して汗ありて解せず、或いは汗過を経て渇し解せず、脈微にして洪なるを治す。
◎熱眠心煩の者:竹茹。
◎大渇、心煩、背悪寒する者:山梔子天花粉。

如聖飲《傷寒六書》《古今方彙》
「羗活、防風、川芎、白芷、柴胡、芍薬、当帰、烏薬、半夏、黄芩、甘草、生姜」水煎し、服するに臨み「姜汁・竹瀝」を入れ温服。
◎傷寒重く、寒湿を感ずれば則ち剛柔二となり、頭面赤く、項強直し、手足し、頭揺り、口噤、背張、と同じ治法なり。
◎汗あれば、柔痙なり:「白朮・桂枝」
◎汗無ければ、剛痙なる:「麻黄・蒼朮」
◎口噤、咬牙の者、大便実なり:「大黄」
 
如聖飲《万病回春》《古今方彙》
「人参、常山、緒工、甘草」水煎し酒(少許)入れ一宿を露し発するに臨み、五更に温服。
◎瘧久しく止まざる者は、截ちて而る後に補うなり。

如聖丸《東醫寶鑑》
「黄連・胡黄連・蕪荑・使君子肉各1両、麝香5分、蝦蟆(乾)1個を酒浸し煎じて膏を作る」作末し膏と混ぜ、麻子大の丸剤。人参湯で2~3歳児に5~7丸呑ませる。
◎冷熱疳を治す。

如聖丸《錢乙方》
「使君子、胡黄連、蕪荑、干蟾、麝香」

如聖膏

如聖散[1]《東醫寶鑑》
「巴豆1~2粒(皮を去り細切り)油は捨てず、朱砂・黄丹を少しづつ入れて紙に塗り、小児の顋の上の毛をそって貼ると四方に栗粒のうなものが出来るが、薬を温水でふきとって、又菖蒲水で洗う。
◎小児が口瘡で乳が飲めない。

如聖散[2]《東醫寶鑑》
「棕櫚・烏梅各1両、乾姜1両半」焼いて作末し、毎回2銭づつ烏梅酒で空腹時に飲む。
◎血崩に効く。

如聖散[3]《済世全書》《古今方彙》
「当帰、白朮、黄芩、枳殻、黒豆、大腹皮、砂仁、甘草」水煎。
(比較):
①身熱し足冷ゆる者にて腹脹るには:「八物湯木香」
②脾気虚して飲食進まず毒発して出でざるには:「四君子湯木香・糯米・紫草」
③胎動不安には:「安胎飲砂仁」
④痘出ること稠密なるには:「参蓍内托散紫草・芍薬・当帰」
⑤単に外に邪ありて内に症の無き者には:「参蘇飲木香」or此方を以てす。
◎痘出て太盛なるには:「黄連(酒)・牛蒡子・連翹・山楂子」
◎起発せざれば:「牛蒡子・白芍薬」
◎口乾には:「麦門冬・知母・括楼根」
◎痰多きは:「半夏」


如聖勝金錠《東醫寶鑑》
「硫黄・川芎・蝋茶・薄荷・川烏・硝石・生地黄」各等分に作末し、生葱汁でまぜ、1両を10錠に作り、毎回1錠を水でうがいして、次に薄荷5~7養を錠と噛んで呑み下す。
◎咽喉急閉・単蛾・隻蛾・結喉・重舌・木舌を治す。

如聖丹《儒門事親方》
「蛇床子・明礬」各等分を末にして、酢とメリケン粉で弾丸大の丸にして、燕脂(化粧に使用する紅)で衣をかぶせ、真綿で包み、女子陰部に挿入する。熱くなったら取り替える。」

如聖湯《医学入門》《古今方彙》
「白芍薬・升麻・乾葛各5分、甘草・紫草・木通各2分半、山楂子根3寸、生姜、葱白」煎服。
◎痘瘡已に出で、未だ出でず、身熱すること火の如く、頭疼み、瞼赤く、呵欠し鼻瘡の者を治す。
◎心煩すれば:「麦門冬・赤茯苓」
◎煩渇には:「生脉散」
◎身熱し火の如きには:「黄芩(酒)・地骨皮」


如聖餅子《東醫寶鑑》
「天南星・乾姜・川芎・川烏・甘草各1両、防風・半夏(製)・天麻・細辛各5銭」作末し姜汁麺糊で混ぜ、実大の団子。5個を温酒又は茶清で食べる。
◎気厥・痰厥の頭痛。

如程飲《済世全書》《古今方彙》
「当帰、川芎、白朮、白芍薬、茯苓、陳皮、半夏、枳殻、白芷、桔梗、白蚕、天麻、防風、荊芥、細辛、黄芩、烏薬、甘草、生姜」水煎。
◎中風にて口眼斜するを治す。

 助胃膏《東醫寶鑑》
「山薬5銭、人参・白朮・白茯苓・陳皮・甘草各2銭半、木香1銭、縮砂20       個、白豆蔲7個、肉豆2個」作末し皀子大の蜜丸。毎回1丸を米飲で呑       む。
    ◎小児の吐瀉を治し、食欲を増進させる。

 助胃湯《万病回春》《古今方彙》
      「白朮・茯苓・人参・肝臓(炙)各2銭半、白豆蔲・木香・山薬各5銭、砂仁20       個、丁香・肉桂・香各3銭、陳皮5銭、肉豆2個」水煎。
◎元気も脾胃も虚弱にて吐瀉止まず、飲食を思わず、及び久しく瀉して虚寒なる     者を治す。

助元散《東醫寶鑑》
      「白朮3両、白茯苓・陳皮各1両、麦芽(炒)5銭」作末し砂糖屑3両を入れ、       磁器に入れて貯蔵し、白湯で3銭づつ調服。
◎脾胃を保養し、食欲を増進させる。
    ◎老人に良い。

 助陽丸《中薬臨床応用》
      「海狗腎9g、巴戟天12g、枸杞子12g、鹿茸6g、山茱萸9g、熟地黄12       g、山薬12g」細末を小豆大の蜜丸。毎食後10丸服用。
◎腎陽虚
    ◎インポテンス
    ◎性機能減退

助陽散《東醫寶鑑》
      「乾姜・牡蠣各1両」作末し焼酒で調合し、手のひらにつけて外腎をもみ、       婦人は両乳房を揉む。
    ◎急陰冷を治す。

 助陽和血湯《古今方彙》
    =「活血湯」《李東垣》
      「黄蓍・当帰・甘草・防風・柴胡各5分、白芷3分、蔓荊子2分、升麻7分」       水煎。
◎眼が之を発せし後になお熱あり、白睛赤色、隠渋して開き難く、而して涙多     き等の症を治す。

 助陽和血湯《東垣》《実用漢方処方集》
「黄蓍・当帰・防風・柴胡各3.0、甘草2.0、白芷・蔓荊子・升麻各1.0」
◎逆まつげ
 結膜炎

除源散(一名泝源散)《東醫寶鑑》
      「食べたものを探って研末し、生韮一握りを搗いて汁を取って調服し、下痢       薬を飲むと、宿食が降りて熱が下がるとすぐ治る。
◎食中毒で悪寒発熱・心腹痞痛する者。

除湿化毒湯《喉証明弁》
「葛根・金銀花・生地黄・桑葉・貝母(去心)各8g、枇杷葉6g(毛を去って       蜜炙)、竹葉4g、木通・生甘草各3.2g、薄荷2g」煎服

除湿羗活湯(一名除風湿羗活湯)《東醫寶鑑》
      「蒼朮・藁本各2銭、羗活1銭半、防風・升麻・柴胡各1銭」水煎服。
    ◎風湿が相搏って、全身が痛む者。

 除湿羗活湯《弁惑論》《古今方彙》
      「羗活7分、升麻・柴胡・防風各5分、藁本・蒼朮各1銭」水煎温服。
    ◎風湿相搏ち、一身尽く痛む者を治す。



除湿健脾湯《東醫寶鑑》
      「白朮1銭半、蒼朮(炒)・白茯苓・白芍(炒)各1銭、当帰・陳皮各8分、猪       苓・沢瀉各7分、厚朴・防風各6分、升麻・柴胡各5分、甘草4分、姜3       片、棗2枚」水煎し空腹時に服用。
◎久泄で顔色青く、食欲のない者。

 除湿健脾湯《万病回春》《古今方彙》
      「蒼朮、分苦慮言う、白芍薬(炒)、当帰、陳皮、白朮、防風、厚朴、柴胡、       升麻、猪苓、沢瀉、甘草(炙)、生姜、大棗」水煎。
◎久瀉にて色蒼く而して歯疎(歯の間の疎くことや肉の落ちるは脾胃の虚する     看板)、倦怠、食減じ下墜するを治す。
    ◎久瀉には:「天南星」


除湿痺湯《証治準縄》
「蒼朮(米のとぎ汁に浸し、皮を去り、切って炒る)8g、白朮8g(蒼朮とい       っしょに炒る)、茯苓・羗活・沢瀉各6g、陳皮4g、甘草(炙)1.6g、姜汁       竹瀝」

 除湿消疹湯《中薬臨床応用》
      「地膚子15g、白鮮皮9g、萆薢12g、苦参9g、野菊花9g、生地黄12g、赤芍       薬9g、当帰9g」水煎服。
    ◎湿疹
◎掻痒性皮疹

 除湿湯《東醫寶鑑》
      「蒼朮・厚朴・半夏各1銭半、香・陳皮各7分半、甘草5分、姜7、棗2」       水煎服。
◎中湿で全身が重い者。

 除湿湯《医学入門》《古今方彙》
      「蒼朮・厚朴・半夏・香各8分、陳皮・茯苓・白朮各4分、甘草2分、生       姜、大棗」水煎。
◎寒湿の傷る所にて身重く、腰脚酸痛し、大便瀉し、小便或いは渋し或いは利す     るを治す。

除湿補気湯
「橘皮、黄蓍、柴胡、蒼朮、五味子、当帰、藁木、升麻、黄柏、知母、甘草」
      「医王湯人参五味子藁木黄柏知母」
    ◎両腿麻木、沈重無力、多汗、喜笑、口中涎下り、身重く山の如く、語声出でざ     る者を治す。
    ◎此方は腿風、俗に酔々と称する者の主薬とす。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎食禁を厳にし、此方を与えるときは、やや保全すべし。もし此症にして湿熱甚     だしき者には「清湿湯」《会解》とす。

除湿補気湯《済世全書》《古今方彙》
      「陳皮、黄蓍、柴胡、蒼朮、五味子、当帰、黄柏(酒)、知母酒、藁本、升麻、       甘草(生)」水煎温服。
    ◎両腿麻木、沈重無力、多汗、喜笑、口中涎、下身重きこと山の如く、語声出ざ     る者を治す。

除痛解毒湯《勿誤薬室方函口訣》
      「撲湯《本朝経験》川芎牛膝附子甘草」
    ◎骨節疼痛、黴毒を兼ねる者を治す。




除風清脾飲《審視瑶函》
「陳皮・連翹・防風・知母・芒硝・黄・玄参・黄連・荊芥穂・大黄・桔梗       ・生地黄」各等分。煎服


 上池飲《寿世保元》《古今方彙》
      「加減潤燥湯人参・烏薬、桃仁」
    ◎一切の中風、左、右、半身不随、口眼斜、語言蹇渋、呵欠噴嚔、頭目暈、     筋骨時に痛み、頭或いは痛み、心中悴、痰火熾盛す。これ乃ち血気大いに虚     し、脾胃虧損し、痰あり、火あり、風あり、湿あり、此方は総ての諸風を津す     るの神方なり。

浄府散《古今医鑑》
「柴胡・茯苓各1匁、猪苓7分、沢瀉・山査子・三稜・莪朮各1匁、黄芩8       分、白朮7分、半夏8分、人参・甘草・胡黄連各3分」
      「柴苓湯大棗生姜莪朮三稜胡黄連」
◎小児、腹中癖塊あり、発熱口乾、小便赤きを治す。
    ◎此方は柴苓湯の変方にして、莪朮、三稜、胡黄連を加ふる者は、峻に胸中心下     を推し開き、胃口両脇の間に停畜する処の水飲を消導するときは、癖塊も融和     するなり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎余、越前藩老母、寒熱腹満甚だしき者を治し、又、平岡栄山は、暑疫の熱、固     有の塊癖の執着して数日解せざる者を治す。
◎癇症《方読便覧》
    ◎解顱《方読便覧》
    ◎此方の症で胃気鬱閉一層甚だしき者:「麦芽・木香」《和田東郭》


 浄府湯《漢方治療の実際》
    =「浄腑湯」
      「柴胡・茯苓各2、猪苓・沢瀉・山楂子・三稜・莪朮・黄芩各1.5、朮・半       夏各2、人参1.5、甘草・胡黄連各1、生姜・大棗各3」


 浄腑湯《万病回春》《古今方彙》
    =「浄府湯」
      「柴胡・茯苓・猪苓・山楂子・沢瀉・三稜(醋炒)・莪朮(醋炒)各2銭、黄芩       ・白朮・半夏・人参各8分、胡黄連・甘草各3分、生姜、大棗」水煎。
◎小児一切の痺塊にて発熱し、口乾、小便赤く、或いは渋る者を治す。

 浄腑湯《万病回春》《漢方後世要方解説》
      「柴胡・茯苓・猪苓・沢瀉・白朮・半夏各2、山陵・莪朮・山楂子各1.5、       人参・黄連・生姜・大棗・甘草各1、胡黄連0.5」(小児1日量)
    ◎小児一切の癖塊、発熱、口渇、小便赤くして或いは渋る者を治す。
    ◎此方は柴苓湯の変方にして、即ち小柴胡湯、五苓散を取捨して山陵、莪朮の気     を破る剤、山楂子、黄連の健胃剤を加味せるものである。
    ◎此方は柴苓湯の変方で小児の癖塊とて慢性腹膜炎の硬結を生じ、食欲のみ亢進     して身体漸次羸痩し、腹部膨満、所謂脾疳を称せられるる小児の結核性腸間膜     癆の初期、寒熱往来して口渇、小便赤渋の者に用いてよい。本方は脾胃の欝熱     を解するもので、他の柴胡剤にては如何ともし難きものに奇効がある。小児に     多く用いられるが、脾胃の欝熱を目標として大人にも用いられる。
山楂子・胡黄連=食積を散じ
     山陵・莪朮=堅硬を軟らぐ。
    ★適応症及び病名
     消化不良症
脾疳症
     幼児急癇
     慢性腹膜炎
     虫症


常山飲《東醫寶鑑》
      「常山・知母・草果各1銭半、良姜1銭、烏梅肉・甘草各5分、姜5、棗2」       水煎服。
◎労瘧を治す。

常山飲《和剤局方》
      「常山、知母、草果、甘草(炙)、高良姜、烏梅肉」

常山飲《和剤局方》《中薬臨床応用》
      「常山9g、貝母9g、草果5g、檳榔子12g、烏梅6g、生姜9g、大棗12g」水       煎服。
    ◎3日熱
    ◎4日熱マラリア
    ◎瘧。
 
 常山飲子《寿世保元》《古今方彙》
      「常山・草果(不去皮)・知母各2銭、良姜1銭半、烏梅1銭半、甘草(炙)1       銭、大棗」水煎。未だ発せざる時に連りて2服を進む。
◎諸瘧、先に寒く後に熱し、或いは先に熱し後に寒く、或いは寒熱独りなし。或     いは連日并び発し、或いは間日一発して頭疼み悪心、煩渇、飲を引き、気息喘     急、口苦咽乾し、諸薬の効かざる者を問わず治す。


常山湯《香川修徳》
「常山、知母、檳榔」
    ◎截瘧の剤。
    ◎マラリアの発作を止める。
    ◎此方は蜀漆散《金匱要略》と同じく、瘧の截薬なり。(截=セツ、断ち切る)
    ◎常山の方、数種あれども、此方最も効あり《勿誤薬室方函口訣》

茸香元《東醫寶鑑》
      「鶏内金(炙)7銭半、鹿茸(酥炙)・肉蓯蓉(酒浸)・当帰(酒洗)各銭、竜骨()       ・牡蛎粉・巴戟・赤石脂・禹余粮(醋淬研)・白姜・益智仁・乳香各2銭       半」作末し糯米糊で梧子大の丸剤。空腹時に塩湯で70丸飲む。
    ◎虚損・虚冷で小便不禁の者。

茸珠丸《沈氏尊生書》
      「鹿茸、鹿角膠、鹿角霜、陽起石、肉蓯蓉。酸棗仁、柏子仁、黄蓍、当帰、       黒附子、地黄、辰砂」

 茸珠丸《東醫寶鑑》
      「鹿茸・鹿角霜・鹿角膠・熟地黄・当帰各1両半、肉蓯蓉・酸棗仁・黄蓍・       柏子仁各7銭、陽起石()・附子(炮)・辰砂(水飛)各3銭」作末し酒麺糊       で梧子大の丸剤。温酒or塩湯で70~90丸飲む。
    ◎虚労による腎弱。
    ◎命門の陽の衰える症を治す。

 醸乳丸《大塚家方》
      「白殭蚕」作末し、寒梅粉で丸剤。
       1回に1匁(4.5)ずつ、朝夕2回、酒服する。
    ◎乳汁分泌不足に、産後100日以内に飲む。効果は10目までに表れる。10日     分を飲み終わって少しも乳の出が増さないなら、いくら続けても無駄である。
其の効果は7%ぐらいである。《大塚敬節》


 醸乳方[1]《東醫寶鑑》
      「人参・木香・香・沈香・陳皮・神麹・麦芽各1銭、丁香5分を剉作し、       1貼に姜5片、紫蘇葉5葉、棗3枚を入れ煎服。
◎慢驚風を治す。

 醸乳方[2]《東醫寶鑑》
      「沢瀉2銭、生地黄1銭半、猪苓・赤茯苓・茵蒿・天花粉・甘草各1銭」       剉作し、乳母が食後に服用。
    ◎骨蒸熱を治す。

醸乳方《済世全書》《古今方彙》
      「生地黄2銭、沢瀉2銭半、猪苓・赤茯苓・括楼根各1銭半、茵、甘草」       煎じ乳母をして之を治す。
    ◎胎熱にて生下(生まれおちること)し身熱し眼閉じ、焦啼燥熱するものを治す。

 条痰湯《古今方彙》
      「導痰湯人参・竹茹・石菖蒲」
    ◎中風にて痰が心竅に迷い、舌強ばりて、言う能わざるを治す。

滌痰湯《医方集解》
「半夏(姜制)・胆星各10g、橘紅・枳実・茯苓各8g、人参・菖蒲各4g、竹       茹2.8g、甘草2g、生姜を加え煎服。

 滌痰湯《東醫寶鑑》
      「半夏(姜製)・天南星(姜製)各2銭、枳実1銭半、茯苓・陳皮各1銭、         石菖蒲・人参・竹茹各5分、甘草3分」剉作し、1貼に姜5片を入れ         水煎服。
    ◎中風に痰が心竅を迷塞し、舌が堅くなってまわらない者。
◎中風でしゃべれない時豁痰・清熱・利気・補虚する最良方。

舒肝潰堅湯《医宗金鑑》
「夏枯草・白彊蚕(炒)各8g、香附子(酒炒)・石決明(椴)各6g、当帰・白       芍(酢炒)・陳皮・柴胡・蕪・穿山甲各4g、紅花・姜黄・甘草各2g、灯       心草50寸」以上を水3盃を1盃に煎じ、空腹時に温服する。
    ◎便が乾く者は、乳香4gを加え、
    ◎軟便の者には、牡蛎4gを加える。


舒筋温胆湯《伊沢蘭軒》
「柴胡、芍薬、枳実、茯苓、半夏、当帰、竹茹、羚羊角、木瓜、釣藤鈎、甘       草、呉茱萸」
◎痿躄を治す。
    ◎諸の癇癖、攣痛を治して効あり。《高階枳園》
    ◎此方は《伊沢蘭軒》の経験にて痿躄を治すと云う。余は四逆散、温胆湯の変方     として、癇症にて四肢拘攣、腹裏拘急して心志不寧、抑肝散などよりその症一     等重き者に用いて効あり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎肝経風の痿躄を治す。《方読便覧》


舒筋散《東醫寶鑑》
      「延胡索・当帰・桂心」等分に粉末。毎回2銭を空腹時に温酒で調下。又は       牛膝・桃仁・続断を加えてもよい。
◎挫閃血瀝腰痛に。
(血瀝=転んでキリで刺すように痛む)

舒筋湯《証治準縄》
「当帰、芍薬、羗活、姜黄、海桐皮、白朮、甘草、大棗、生姜」
      「痺湯[1]《楊氏家蔵方》黄蓍白朮・海桐皮」
    ◎風湿相搏ち、身体煩重、項背強急するを治す。
    ◎痺湯の証にして筋脈拘急強く痛ある者に用いる。《方読便解》

舒筋保安散《東醫寶鑑》
      「木瓜5両、萆薢・五霊脂・牛膝・続断・白彊蚕・烏薬・松節・白芍・天麻       ・威霊仙・黄蓍・当帰・防風・虎骨各1両」切って好酒1斗に侵し、堅く       封をしてから27日間置いた後、薬を出して焙って乾燥し作末する。毎回2       銭を薬に侵した酒半杯で調下し、もし酒が全部無くなったら米飲で調下す       る。
◎で筋脈が拘攣し、痛みが流注する者。


 舒筋立安散《万病回春》《古今方彙》
      「防風、羗活、独活、茯苓、川芎、白芷、生地黄、蒼朮、紅花、桃仁、天南       星、陳皮、半夏、白朮、威霊仙、牛膝、木瓜、防已、黄芩(酒)、連翹、木       通、竜胆、附子(少許)、甘草」水煎し、「竹瀝・姜汁」入れ服用。
◎慢性関節リウマチ:多発性慢性関節リウマチに用いる。
              痛みが強い者。
◎痛み甚だしき者:「乳香・没薬」


舒腸活血湯《傷科補要》
「川芎・当帰・桃仁・大腹皮・青皮・紅花・川断・延胡索・枳穀・木通・大       黄」煎服。

 食欝香砂平胃散《万病回春》《古今方彙》
      「蒼朮・厚朴・香附子(便)・陳皮各1銭、甘草3分、砂仁・木香・枳殻・山       子・麦芽・神麹・乾姜(炒)各5分、生姜、蘿葡子1撮(ツマミ)」水煎。
◎食欝症を治す。凡そ食欝の者は気し酸をなし、胸腹飽満して痛みを作し食を     悪みて思わず、右の関脉緊盛なるなり。
    ◎食欝久しく塊をなす:「乾姜大黄」

蜀椒湯《中薬臨床応用》
      「蜀椒5g、乾姜9g、附子9g、党参15g、甘草6g、大棗15g、膠飴30g(沖       服)」水煎服。
    ◎脾胃虚寒
    ◎腹痛、悪心

 薯蕷湯《勿誤薬室方函口訣》
      「四逆散薯蕷」
◎疝家、鬱毒鬱火を挟む者を治す。

 止涙補肝湯


辛夷膏《東醫寶鑑》
      「辛夷2両、細辛・木通・木香・白芷・杏仁各5銭、羊髄・猪脂各2両に薬       を混ぜ、石器に弱火で煮詰めて膏をつくり、赤黄色になったら竜脳・麝香       各1銭を入れて丸め、綿にくるんで鼻中に入れておくと取れる。
◎鼻のなかの肉がつまって痛い。

 辛夷散《厳氏済生方》
      「辛夷、白芷、防風、細辛、升麻、藁本、川芎、木通、甘草各等分」作末し、1       回6gをうすい茶で服用。
    ◎副鼻腔炎。




辛夷清肺湯[1-1]《外科正宗》《龍野ー漢方処方集》
      「辛夷・黄芩・知母・百合各3.0g、麦門冬・石膏各6.0g、山梔子・升麻各1.5g、       枇杷葉1.0g」
    ◎肺熱、鼻内の肉、初めは榴子の如く、日後ようやく大となり、孔竅を閉塞し、     気宣通せざるを治す。
    ◎濃い鼻汁が出る熱性の蓄膿症・肥厚性鼻炎。



 辛夷清肺湯[1-2]《外科正宗》《漢方治療の実際》
      「辛夷2、知母・百合・黄芩・梔子各3、麦門冬・石膏各5、升麻1.5、枇杷       葉2」
    ★辛夷清肺湯(鼻づまり、鼻汁<膿性>、口渇、舌苔黄、舌質紅乾燥)
    ★適応症及び病名(五十音順)
     [1]咽痛
     [2]喀痰(粘稠で黄色の痰)
     [3]気管支拡張症
     [4]口渇
     [5]後鼻漏
     [6]呼吸促迫
     [7]嗄声     
     酒渣鼻:
       ☆酒を厳禁し、時々、三稜針を以て刺して血を去り、辛夷清肺湯を与える        べし《先哲医話》
     [8]頭痛
     [9]舌質 <紅><紅で乾燥>
     [10]舌苔 <白苔~黄苔>
    [11]痰(タン)が出る
    [12]においが分からない(臭覚喪失)
[13]熱感 <++>
       ☆顔面・頭部の熱感。
     [14]鼻炎・鼻カタル
☆本方は体力中等度以上の鼻症状、膿性鼻漏、膿性後鼻漏、鼻閉塞を目標に用いられる。(漢方診療医典)
[15]鼻汁(膿性の鼻汁)
    [16]鼻ポリープ
     [17]鼻づまり(鼻閉)
    [18]肥厚性鼻炎
    [19]副鼻腔炎
☆上顎洞炎や肥厚性鼻炎、鼻茸、嗅覚欠如症、鼻閉塞の甚だしいもので、熱毒があって疼痛を伴うものに(漢方診療医典)
    [20]慢性咽喉炎
    [21]慢性気管支炎
    [22]慢性気管支拡張症
    [23]慢性鼻炎
    [24]慢性副鼻腔炎   
☆脳漏鼻淵はたいてい「葛根湯川芎大黄」或いは「頭風神方化毒丸」        にて治すれども、熱毒ありて疼痛甚だしき者は此方に非ざれば治するこ        と能わず。《勿誤薬室方函口訣》
    

辛黄三白湯《東醫寶鑑》
      「人参・白芍各2銭、白茯苓・当帰各1銭、細辛・麻黄各5分、姜3、棗2」       水煎服。
    ◎陰症傷寒が表経にある者。

 浸膏槐角丸【中成薬】
      「槐角・地楡・防風・枳殻・当帰・黄芩」
    ◎痔。


進食丸《東醫寶鑑》
「木香・枳穀・当帰・代赭石・朱砂各3銭、巴豆霜1銭、麝香5分」を作末       し、麺糊で黍米大の丸剤。1歳児に2~3丸、米飲で呑む。
◎癖積を治す。

深黄散《中国民間験方》
「硼砂40g 人中黄・明雄黄各8g 芒硝(精製)・竜脳(最上級)各4g 」を       極細末にして瓶に貯蔵。

腎気円《薛立斎十六種》

 腎気丸[1-1]《東醫寶鑑》
      「六味地黄元五味子4両」
    ◎肺の根元を保養する。
    ◎虚労の腎損を治す。

腎気丸[1-2]《方薬合編》
「六味丸五味子8g」
    ◎腎虚が原因で起こる肺疾患。

 腎気丸[2]《漢方治療の実際》
=八味丸⇒附桂八味丸。

腎気明目湯《万病回春》
    ⇒滋陰明目湯
「当帰、・川芎・熟地黄・生地黄各等分、桔梗・人参・梔子・黄連・白芷・       菊花・蔓荊子・甘草各減半」
今、「熟地黄」
    ◎労神、腎虚、血少、眼痛、昏暗を治す。
    ◎此方は内障眼の主方とす。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎内障に気虚、血虚の分あり。
       <1>血虚の者:①「腎気明目湯」
              ②一等重き者:「十全大補湯沈香・白豆蔲・附子」
       <2>気虚の者:①「益気聡明湯」
②一等重き者:医王湯防風・蔓荊子・白豆蔲」
    ◎内障の硬翳、乳汁翳の二証あり。
    ◎黒内障、癇家に属する者あり。


 腎虚胃熱牙疼方《東醫寶鑑》
      「羊脛骨灰4両、石膏5両、升麻・地黄(生)各5銭、黄連1銭、胡桐涙3銭、       竜胆草半銭」作末し、すりつけて口をゆすぐ。

 腎石一方《中薬臨床応用》
      「金銭草60g、瞿麦18g、滑石(生)39g、海金砂21g(包煎)、杜仲24g、木通9g、       牛膝12g、党参9g、鶏内金9g、魚脳石12g、胡桃肉30g、石葦12g、両頭       尖12g」水煎服。
    ◎腎結石。
    

 腎石二方《中薬臨床応用》
      「玉米鬚12g、金銭草30g、通草6g、木香9g(後下)、枳殻9g、琥珀末3g(沖       服)、冬葵子30g、甘草梢6g」水煎服。
    ◎尿路結石
    ◎排尿困難、排尿痛

 腎石血尿方《中薬臨床応用》
      「金銭草30g、紫珠草30g、猫鬚草18g、冬葵子30g、熟地黄18g」水煎服。
   ◎出血に対する常用薬。
    ◎血尿がひどい時:熟地黄を生地黄炭に代える。

腎疸湯《蘭室秘蔵》《東醫寶鑑》
      「蒼朮1銭、升麻・羗活・防風・藁本・独活・柴胡・葛根・白朮各5分、猪       苓4分、沢瀉・神麹・人参・甘草各3分、黄芩・黄柏各2分」水煎服。
◎腎疸で全身が黄色く、小便が赤い者。

 腎着湯[1-1]《備急千金要方》
      「苓姜朮甘湯《金匱要略》」に同じ。
    ◎傷湿、身重く、腰冷え、水中に座あうるが如きを治す。
    
 腎着湯[1-2]《三因極一病証方論》《古今方彙》
      「茯苓・白朮各8分、乾姜・甘草各1分、杏仁5分」水煎。
    ◎妊娠して腰脚腫れる者を治す。

腎着湯[1-3]《東醫寶鑑》
      「白朮2銭半、乾姜(炮)・赤茯苓各1銭半、甘草(炙)5分」水煎服。
◎身体が重く、腰が冷え、小便の出が悪い時。

腎瀝湯《東醫寶鑑》
      「羊腎1具、生姜(切)2両、磁石(砕)1両半を水1斗で5升まで煎じ、玄参       ・白芍・白茯苓各1両半、黄蓍・川芎・五味子・桂心・当帰・人参・防風       ・甘草各1両、地骨皮5銭を切って入れ2升まで煎じ、滓を去り3分服。
◎腎臓風で語音が蹇吃の者。
    ◎腎が虚し、癘風に傷つくと、言語がにぶく、口眼斜し、足が痩せ、たるんで 弱く、或いは耳が聞こえなくなり、腰と背中が突っ張り疼痛する。

 秦艽飲《医学入門》《古今方彙》
      「秦艽、当帰、木香、桂枝、茯苓、熟地黄、陳皮、小草(遠志の苗)、川芎、       甘草、半夏、大棗」水煎。
    ◎五疸にて口淡(胃熱)、耳鳴り、脚弱、寒熱し、小便白濁するを治す。
    ◎これ虚疸なり。

秦艽飲子《東醫寶鑑》
      「秦艽・当帰・芍薬・白朮・桂皮・赤茯苓・陳皮・熟地黄・川芎・小草各1       銭、半夏・甘草各5分、姜5片」水煎服。
◎女労疸を治す。

秦艽羗活湯[1-1]《東醫寶鑑》
    =「秦艽湯」
      「羗活1銭5分、秦艽・黄蓍各1銭、防風7分、升麻・麻黄・柴胡・甘草(炙)       各5分、藁本3分、細辛・紅花各2分」煎服。
◎痔瘻が塊になって、痒い者。

 秦艽羗活湯[1-2]《蘭室秘蔵》《古今方彙》
      「羗活1銭2分、秦艽・黄蓍各1銭、防風7分、升麻、甘草、麻黄、柴胡各5       分、藁本3分、細辛、紅花(少許)」水煎。
    ◎痔瘻にて塊を成して下垂し、その癢(カユミ)に任(タエ)ざるを治す。



 秦艽羗活湯[1-3]《漢方治療の実際》
      「羗活5、秦艽・黄蓍各3、防風2、升麻・甘草・麻黄・柴胡各1.5、藁本・       細辛・紅花各0.5」
★適応症及び病名(秦艽羗活湯)
     痔瘻:
       ☆《衆方規矩》の痔漏門に“秦艽羗活湯は、痔漏塊をなし下がり垂れて、        その痒に堪えざるを治す”とあり、私はこれを、痔核・痔瘻なでで、カ        ユミの有る者に用いる。《大塚敬節》
☆38歳男性。かって肺結核に罹ったことがある。昨年4月に外痔核の手        術をして後、カユミが始まった。医師の診断を受けたところ、手術の跡        が痔瘻になっていて、少しずつ膿が出ていると云われた。みると、針頭        大の孔があって、少しずつ分泌物が出ている。そこで秦艽羗活湯を用い        たところ、1週間後には、カユミがなくなった。3週間後には、分泌物        が減じた。2ヶ月後には孔が塞がった。しかし、腫痛・疼痛は無く、全        治のようにみられるので、服薬を中止した。《大塚敬節》




秦艽升麻湯《衛生宝鑑》《東醫寶鑑》
      「升麻・葛根・白芍・人参・甘草各1銭半、秦艽・白芷・防腐・桂枝各7分、       蓮根・葱白各3茎」水煎し食後服用。
◎風が手・足陽明経に的中して、口眼斜した者。
    ◎風寒が手足の陽明経に客し、口眼斜、風寒に見うを悪み、四肢拘急し、脉浮     緊なるを治す。《古今方彙》

 秦艽蒼朮湯[1-1]《東醫寶鑑》
      「秦艽・皀角仁(焼)・桃仁(泥)各1銭、蒼朮・防風各7分、黄柏(酒洗)5分、       当帰梢(酒洗)・沢瀉・檳榔末各3分、大黄2分」檳榔・桃仁・皀角を除い た外薬は切って1貼を作り、水3杯で煎じ、1杯2分ぐらいになったら滓       を去り、上記の3味を入れて、再煎し服用。
    ◎湿熱と風燥により痔となった者。

 秦艽蒼朮湯[1-2]《蘭室秘蔵》《古今方彙》
      「秦艽・蒼朮・皀角子・桃仁各1銭半、黄柏(酒製)・沢瀉・当帰尾・防風各1       銭、檳榔子5分、大黄(炒)」入れて1剤を作り、水2鍾にて8分を煎服。
    ◎腸風(腸出血)痔瘻にて大小便秘渋するを治す。


秦艽当帰湯[1]《東醫寶鑑》
      「大黄(煨)4銭、秦艽・枳実各1銭、沢瀉・当帰梢・皀角仁(焼)・白朮各5       分、紅花2分、桃仁20粒」煎服。
    ◎痔瘻で大便乾き、疼痛する者。

 秦艽当帰湯[2]《中薬臨床応用》
      「秦艽・当帰・白芍・釣藤鈎各9g、何首烏12g、桑枝15g、白藜6g」
    ◎脳卒中の後遺症で、半身不随、特に上肢の拘縮があり、血虚の者。

秦艽白朮丸《東醫寶鑑》
      「秦艽・桃仁(泥)・皀角仁各1両、当帰梢・沢瀉・枳実・白朮各5銭、地楡3       銭」作末し麺糊で実大の丸剤。丸薬をつやが出るまで焙って乾燥。白湯       で50~70丸飲む。
◎痔で大便が乾き、硬痛のとき。


秦艽扶羸湯《医学入門》
「秦艽・鼈甲・人参各1両半、当帰・半夏・甘草各1両、柴胡2両、地骨皮1       両半、紫菀1両、烏梅・大棗各1枚、生姜5片」
 ◎肺胆二経の虚熱及び肺痿骨蒸、已に労嗽となり、或いは寒、或いは熱、声嗄し     て出でず、体虚自汗し、四肢怠惰を治す。
    ◎按ずるに此方、本《聖済総録》に出ず。肺痿骨蒸、已に労嗽となり、或いは寒     熱、声唖して出でず、体虚自汗、四肢怠惰を治す。
◎此方は肺痿骨蒸の主剤とす。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎「秦艽甲湯」に比ずればやや虚候を見す者に宜し。但し彼は骨蒸壮熱、肌肉     消痩して咳嗽なき者に用いる。此方は熱強く咳きする症に用いる。
◎五蒸湯《外台秘要方》の症に似て羸痩甚だしき者に与えるべし。
    ◎熱労症のごときは:「大黄・黄芩・犀角・赤芍薬・青蒿・桃枝」《古今方彙》
     労瘧にも亦効あり。


 秦艽別甲湯《漢方治療の実際》
      「秦艽・青蒿・奪い・知母各2、当帰・土別甲・柴胡・地骨皮各3、生姜1.5」


 秦艽鼈甲湯《衛生宝鑑》
「秦艽・知母・当帰各半両、鼈甲・柴胡・地骨皮各1両、青蒿5葉、烏梅1       枚、生姜」水煎。
◎風労、骨蒸壮熱、肌肉消痩、舌紅、頬赤、気麁(麁=ソ、あらい)、困倦、盗汗     を治す。
◎此方は風労の主薬とす。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎虚弱の人、風が抜けそこねて、ぶらりと労熱になりたるを治す。
    ◎一時清熱の効あり。然れども、日を経て骨蒸の候を具し、肌肉消痩、唇紅、頬     赤の者に至っては、此方の治する処に非ず。これは柴胡桂枝乾姜湯鼈甲の場     合今一段熱強く、姜桂の熱薬の障りそうな処へ用いるべし。
    ◎性稟薄弱に、憂思遂けず、久鬱解せず、血液枯燥し、往来寒熱、盗汗咳嗽す。    《聖済総録》のいわゆる痃癖骨蒸と成るなり。秦艽鼈甲湯に宜し。《先哲医話》
    ◎按ずるに昔人謂う。此症、寒凉の薬を服すれば必ず死すと。愚おもえらく、      尽く然るにあらず、火盛んなるとき薪を抽く、権宜の計無からざるべからずと。     《雑病翼方》
    ◎風労にて骨蒸壮熱、肌肉消痩、舌紅頬赤、気困倦し、盗汗するを治す《古今     方彙》



秦艽鼈甲散《衛生宝鑑》
      「柴胡、鼈甲、地骨皮、秦艽、青蒿葉、当帰、知母、烏梅」


秦艽鼈甲散《衛生宝鑑》《漢方後世要方解説》
      「秦艽・知母・当帰各2.5、鼈甲・柴胡・地骨皮各3、青蒿・烏梅各1.5、生       姜1」
◎風労、骨蒸、壮熱、肌肉消痩し、唇紅頬赤、気麁(あら)く、四肢困倦、盗汗あ     るを治す。
◎黄蓍鼈甲散の症にして咳嗽無き者を治す《福井楓亭》
    ◎此方は小柴胡湯或いは柴胡桂枝乾姜湯等に類似して而もこれらの薬方の応ぜぬ     者によく奏功する。
     経験によれば、
      初期感冒を無理して遷延し、肺結核の症状を備え、
      骨蒸と称する発熱蒸々として続き、
      顔面特に頬部紅潮し
      胸部所見あるにも拘わらず咳嗽少なく、
      二便著変なく、
      脈細数或いは洪にして力なく
      盗汗あり
      腹力甚だしく衰えず、等を目標として用いられる。
    ◎秦艽=風湿を去り、虚労骨蒸を治す。
     知母=肺、胃の熱を瀉し、腎燥を潤し、蓐労、骨蒸を治す。
     鼈甲=陰を補い、熱を退か、骨蒸を治す。
     青蒿=熱を瀉し、骨蒸、労熱を瀉す。
     当帰=血を和し、
     柴胡=風熱を去る。
   ★適応症及び病名 (五十音順)
     胸膜炎:
        ☆熱退かざるもの。
     肺炎の遷延症
     肺結核:
        ☆空洞のみ存し、他に著変なきもの。




 秦艽鼈甲散《衛生宝鑑》《中薬臨床応用》
      「別甲・柴胡・地骨皮各39g、秦艽・知母・当帰各15g」作末し毎回15gづ       つを「烏梅1個、青蒿葉6g」と水煎服。
    ◎陰虚内熱
    ◎骨蒸潮熱




秦艽鼈甲散《東醫寶鑑》
      「乾葛1銭半、荊芥・貝母・前胡・天仙藤・青皮・柴胡・秦艽・鼈甲・甘草       各7分、白芷・羗活・肉桂各3分半、姜3」煎服。
◎虚労による熱・咳嗽。





 秦艽防風湯《蘭室秘蔵》《古今方彙》
      「秦艽・防風・当帰・白朮各1銭半、甘草・沢瀉各6分、黄柏5分、大黄(煨)       ・陳皮各3分、柴胡・升麻各2分、桃仁30個、効果(少許)」水煎。
◎痔瘻にて舞に津大便の時に疼痛を発するを治す。

 神異散《寿世保元》《古今方彙》
      「金銀花・括楼根・穿山甲・木子各2銭、甘草3分、大黄・皀角刺各3銭、       連翹・黄芩各8分、木香5分、山梔子7分」酒水で煎じ空心に温服。
◎魚口便毒を治す。

神応散《東醫寶鑑》
      「黄牛角顋(砕)1枚、蛇皮1枚、猪牙皀角7個、穿山甲7片、皮(細切)1       両」缶に入れ黄土泥で固く封をして火で焙り、赤くなったら細末して、就       寝時に胡桃仁1箇をかんで酒で送り込んで、ひと寝入りしたら前記の薬末       を温酒で調下する。
    ◎五痔を治す。




神奇散《東醫寶鑑》
      「当帰・川芎・白芍・生地黄(並酒炒)・陳皮・縮砂・半夏・白茯苓・白朮(土       炒)・香附子・枳実・烏梅肉・香・赤茯苓・檳榔・木通・猪苓・黄芩       (炒)・黄柏(人乳炒)・知母(人乳炒)・赤芍・天門冬・麦門冬・甘草各5分」      煎服。
◎噎膈と反胃による血虚を治す。

神奇散《万病回春》《古今方彙》
      「穿山甲3片、木子3個、牡蛎・黄各3銭、黄連・黄芩・黄柏筋敏か・       連翹各1銭半」酒水にて煎じ空心に温服。
◎魚口便毒を治す。


神亀滋陰丸《東醫寶鑑》
      「亀板(酥炙)4両、黄柏・知母(塩水炒)各2両、枸杞子・五味子・鎖陽各1       両、乾姜5銭」作末し酒糊で梧子大の丸剤。塩湯で70丸飲む。
◎美食家が湿熱に腎を犯され脚膝痿弱・無力の時。

神麹丸


神麹酒《東醫寶鑑》
      「神麹1塊」焼いて酒で飲み、仰臥していると治る。
    ◎挫閃腰痛。


 神芎湯《医学入門》《古今方彙》
      「升麻・川芎・人参・枸杞子・甘草・遠志・黄蓍・当帰・地骨皮・破故紙・       杜仲・白朮各4分、生姜、蓮肉」水煎温服。
◎遺精、久しく腎気下陥を経て玉門閉じず、時ならずして精を漏らすを治す。
    ◎此方は腎水を升提し源に帰すべし。
    ◎若し家に蓮肉なければ、蓮花鬚を以て之に代ゆ。

 神功丸《東醫寶鑑》
      「升麻1銭半、蘭香葉・当帰身・香・木香各1銭、黄連・縮砂各5分、        生地黄(酒洗)・生甘草各3分」作末し蒸餅で緑豆大の丸剤。白湯          で100丸呑む。
    ◎肉食の多い人の口臭、牙歯の疳蝕・脱落。

神功散《東醫寶鑑》
      「木香・青皮・陳皮・麦芽・枳穀・三稜・莪朮・神麹・白芍・白芷・肉桂・       延胡索・甘草各7分、畢澄茄・丁香各3分、姜4、棗2」水煎服。
    ◎一切の脾痛を治す。

 神功散《万病回春》《古今方彙》
      「黄蓍・人参・白芍薬・紫草・生地黄・紅花・牛蒡子各等分、前胡、甘草半       減」水煎。
◎痘出で毒気太く甚だしく血紅一片地界を分たずして蚊蚕種の如きを治す。
    ◎或いは諸失血
    ◎或いは吐瀉七日以前の諸症に服すべし。毒を解す。
    ◎熱甚だしければ:「黄連・黄芩」
    ◎未だ退飾る者:「大黄」
    ◎驚有る者:「蝉退」
    ◎頭粒淡黒の者:「肉桂」
    ◎腹痛む者毒盛んなれば之に宜し。
    ◎面紅退かず地界を分たざるには:「前胡倍加」
    ◎泄瀉の者は火盛んにして奔走するなり:「升麻」
    ◎嘔吐の者は之に宜し。

 



神効越桃散《東醫寶鑑》
      「山梔子(大)・良姜各3銭」作末し、米飲で2~3銭調服。
◎下痢で腹痛・腹が脹る。

神効黄蓍湯《東垣》
      「黄蓍・人参・芍薬各1銭、蔓荊子4分、橘皮・甘草各6分」水煎熱服。
    ◎頭面手足腑背腿脚、或いは遍身麻木不仁、及び面目羞明隠渋痛するを治す。
     《雑病翼方》
    ◎睛(眼球の前部、結膜と角膜)痛むを治す。《古今方彙》

 神効黄蓍湯《蘭室秘蔵》《東醫寶鑑》
      「黄蓍2銭、白芍薬・甘草(炙)各1銭半、人参1銭、陳皮7分、蔓荊子5分」       水煎服。
    ◎渾身のマヒを治す。
◎顔面神経麻痺
黄蓍桂枝五物湯は、色の白い水太りの婦人の顔面神経麻痺に効がある。またこのような患者には神効黄蓍湯を用いて著効をえたことがある(漢方診療医典)

 神効黄蓍湯《蘭室秘蔵》《古今方彙》
      「蔓荊子1銭、陳皮5分、人参8銭、黄蓍2両、甘草(炙)・白芍薬各1両」       毎服5銭。水煎し臥するに臨みて服す。
◎渾身の麻木婦人、或いは左右の身麻木し
    ◎或いは頭面・身臂・腿脚麻木不仁し、両目緊急縮少するが如し。
    ◎及び羞明して日を畏れ、
    ◎或いは隠渋して開き難く、     
    ◎或いは物を視るに力無く睛痛みて手を近づくるを得ず。
    ◎或いは目中熱して火の如き等の症を治す。



 神効瓜蔞散《東醫寶鑑》
      「黄瓜蔞(大)1箇の皮を去り焙って作末したもの、生甘草・当帰(酒浸)各5       銭、乳香・没薬各2銭」作末して混ぜ、酒3升と銀石器内に弱火で煎じ、1       升半になったら滓を去り、食後3回に分服。
   ◎乳癰・巖に特効。

神効丸《東醫寶鑑》
      「当帰・烏梅肉・黄連・阿膠」各等分。梧子大の蜜丸。空腹時に厚朴湯で30 ~50丸飲む。
◎休息痢で膿血の止まらない者。

神効散[1]《万病回春》
「黄蓍・人参・芍薬・地黄・牛蒡子・柴胡・紅花・紫根・甘草」
    ◎痘出出、毒喜はなはだ盛んに、血紅一片他界を分たず、蚊蚕種の如き、或いは     諸失血、或いは吐瀉を治す。
◎此方は痘瘡、気虚毒壅の主剤とす。膿漿充つること能わず、痘尖内陥するなり。     《勿誤薬室方函口訣》
     「毒壅」=血紅一片他界を分たず、或いは暗黒を帯びて、痒搨の勢あるを云う。
         痘瘡の疱疹は通常は充実して表面に光沢があるが、悪化すると表面に         シワが出来、色が汚くなる。
    ◎此方を以て解毒表托すべし。毒深き者は:「反鼻」《勿誤薬室方函口訣》

 神効散[2]《東醫寶鑑》
      「丁香1粒、全蝎・辰砂各1」作末し、男は左の中指の血、女は右手中指の       血を薬末にたらして乳児の唇にぬる。
◎慢驚風を治す。

 神効散[3]《東醫寶鑑》
      「荊芥穂・萆麻肉」等分を作末し皀子大の蜜丸。綿でくるんで含んで溶かし       て飲み込む。
    ◎喉痺で声が出ない者。

 神効散[4]《東醫寶鑑》
      「木香・青皮・陳皮・麦芽・枳殻・三稜・莪朮・神麹・白芍薬・白芷・肉桂       ・延胡索・甘草各7分、澄茄・丁香各3分、姜4、棗2」水煎服。
    ◎一切の脾痛を治す。     

神効参香散《東醫寶鑑》
      「陳皮・罌栗殻各1両2銭、肉豆・赤茯苓各4銭、白扁豆・人参・木香各2       銭」作末し、空腹時に米飲で調下する。
◎五色痢・噤口痢・疳蠱など、すべての下痢を治す。


 神効吹喉散《外科正宗》
      「薄荷、朴硝、白礬、青黛、白殭蚕、火硝、硼砂、黄連、豚胆汁」

 

神効湯[1-1]《万病回春》《古今方彙》
      「木香・呉茱萸・縮砂各7分、小茴香(酒)・甘草3分、延胡索・益智仁・香       附子・蒼朮・当帰・山梔子各1銭、川烏半減、生姜、燈心草」水煎。
◎一切の疝気を治す。
    ◎脹悶して痛む者:「乳香・枳実」
    ◎血ありて脹り痛む:「桃仁・川芎、益智仁・山梔子」
    ◎腎気上に注ぎ、心痛して悶え絶せんと欲する者:「沈香・枳実、益智仁・     山梔子」




 神効湯[1-2]《万病回春》《漢方後世要方解説》
      「蒼朮・香附子・当帰・木香・小茴香・延胡索・益智仁・烏薬・山梔子・砂       仁・甘草・生姜・燈心草各2、呉茱萸1」
    ◎一切に疝気を治す。多くは熱中に鬱し、寒外に来るなり。
    ◎此方は俗に疝気といわれ、腸神経痛ともいうべき腹中不和より来る疼痛を治す     る剤である。腹中に熱欝滞し、外寒気に触れて痛むもので、《大塚敬節》氏は     腹部切開後に癒着あって便秘し、腹痛を発するものに用いて奇験があるという。     桂枝加芍薬湯などにて効のない者に応用される。
     香附子・烏薬=気滞を順らす
     木香・砂仁=痰滞を散ず。
     当帰・甘草=血脈を和し、諸気を和す。
     益智=神気を安くす。
     梔子=欝熱を涼ます。
     呉茱萸・小茴香・延胡索=寒を去り、痛みを緩くす。



 神効湯[1-3]《漢方治療の実際》
      「蒼朮・香附子・当帰・木香・延胡索・益智仁・烏薬・山梔子・縮砂各2、       小茴香・甘草・生姜・燈心草・呉茱萸各1」
    ◎目標:《大塚敬節》
      腹が張ってよく腹鳴する。
足が冷える
      肩が凝ったり、背が張ったりする。
      大便が出そうで出ない。
      時に軽い腹痛がある。
    ★適応症及び病名(五十音順)
[1]疝気:
        ☆21歳の未婚の女性。数年間にわたって、肋膜炎と診断されたり、リ         ウマチと言われたり、神経痛と言われたり、腹膜炎と診断せられたり         して、病名一定せず、その上、近代医学的な治療は元より、鍼灸・マ         ッサージ・指圧・その他いろいろの民間療法を受けたが、ついに軽快         せず、最後に小生に治を乞うた。
患者は血色は悪いが、栄養はあまり衰えていない。患者の訴えは次         の通りである。
足が冷えてのぼせる。のぼせると顔で火が燃えているようになる。         便秘して、そのため腹が張って苦しい。食欲がない。ことに朝食は一         口ぐらいしか食べない。肩胛間部が凝って苦しく、右側が特にひどい。         腰から足がだるく夜もよく眠れない。ときどき右の胸背痛が起こる。         痔から出血することがある。月経が不順で、遅れ勝ちである。脈は沈         弦で、腹部は自覚的に膨満感を訴えているのに、腹診上では、ひどい         膨満はない。ただ臍の左右から下腹部にかけて圧痛がある。この圧痛         は右側がやや強い。聴診上、右の肩胛部から腋下にかけて呼吸音が微         弱である。
私は腹膜炎の後で癒着を起こして便秘していると診断した。そこで、         のぼせと便秘を目標に三黄瀉心湯を与えてみた。これを呑むと、のぼ         せはないが、便通はつかない。大黄を1日量2.0としたが、少し通じ         があるだけで腹満は良くならない。そこで大柴胡湯にしてみたが、か         えって腹が張って食べられなくなった。そこで桂枝加芍薬大黄湯にし         たが、これはよさそうだという。しかし1ヶ月ほど続けているうつに、         どうしても大便が快通せず、のぼせるという。そこで加味逍遥散にし         てみた。すると全然通じが止まり、ひどく肩が張り、かえって気分が         悪いという。いよいよ困って三和散にしたが、10日も続けて飲んで         いると、便秘がひどくなって、苦しくなってくる。こんな日が続いた         ある日、私は何気なく、《衆方規矩》を開いて読んでいるうち、疝気         門のところに出ている神効湯が眼に留まった。そして、これを用いて         みようと決心した。古人が疝気と呼んだ病気の中には、癒着による腸         の狭窄も含まれているので、この患者に試用してみることになった。         これは又驚くほどの効果で、今度の薬は、今まで呑んだどの薬よりも         はるかに気分が良く、大便は毎日快通し、食が進む様になったと喜ぶ。         そこで患者も私も、今度こそは治るという期待に燃えて、これを約1         0ヶ月飲み続けた。その間、10日くらい服薬を中止すると、便秘す         ることがあったが、この頃は、服薬を中止しても、大便は毎日快通し、         まったく別人のような元気になり、何を食べても平気で、腹も張らな         いし、背も凝らなず、夜もよく眠れ、血色も良くなった。《山田業広》
[2]便秘:
        ☆古人が疝気から来る便秘と呼んだものに用いる《大塚敬節》
        ☆大黄などの瀉下剤の効かない頑固な便秘に奏効し、快便が出て喜ばれ         ることがある。《大塚敬節》
        ☆腹膜炎の治った後、癒着が一部にあって腸が狭窄して便秘する者。胃         下垂症・胃アトニー症などがあって、便秘する者に用いる機会がある         《大塚敬節》
     [3]癒着:
        ☆子宮卵管等に癒着あって、寒冷時に疼痛を発すもの。
        ☆手術後癒着疼痛


 神効内托散[1-1]《外科正宗》《古今方彙》
      「当帰2銭、白朮・黄蓍・人参各1銭半、白芍薬・川芎・茯苓・陳皮・附子       各1銭、木香・甘草(炙)各5分、穿山甲8分、煨姜、大棗」水煎。
◎癰疽、脳項諸発等の瘡を治す。
    ◎十四日の後に至り腐潰し流膿の時に当たりて腐潰を作らず、兼ねて高腫せざる     者に用いる。


 神効内托散[1-2]《漢方治療の実際》
      「当帰4、朮・黄蓍・人参・芍薬・茯苓・陳皮・大棗各2.5、附子0.6、木香       ・甘草・川芎・穿山甲・乾姜各1」
    ◎内托散と呼ばれているものに、「千金内托散」と「神効内托散」とある。
      (参照→「内托散」「千金内托散」)




神効乳珠丹《東醫寶鑑》
      「明乳香」を細末にし、猪の血で実大の丸剤。朱砂で衣をして乾燥。毎回1       丸、冷酒で飲む。
◎催生に特効。
    ◎腹の中で胎児が死んで出ない。

神効明目湯《東醫寶鑑》
      「甘草2銭、葛根1銭半、防風1銭、蔓荊子5分、細辛2分」水煎し食後         服用。
    ◎目の周りがつれ、まつげが乾き、目の上下が腫れ、瞳が痛く、涙が流         れ、目が開けられない者。

神校黄蓍湯《東醫寶鑑》
      「黄蓍2銭、白芍・甘草(炙)各1銭半、人参1銭、陳皮7分、蔓荊子5       分」水煎服。
    ◎渾身の麻痺症を治す。

 神犀丹《温熱経緯》
      「犀角、石菖蒲、鮮地黄、金銀花、連翹、板蘭根、玄参、天花粉、           紫草、香」

 神授衛生湯《医宗金鑑》《古今方彙》
      「羗活8分、防風・白芷・穿山甲・沈香・紅花・連翹・石決明各6分、金銀       花・皀角刺・当帰尾・甘草(節)・括楼根各1銭、大黄(酒)2銭、乳香5分」       水煎、服後に髄って酒1杯飲む。
◎癰疽発して脳疽対口(項部に出来る癰)丹瘤(熱毒によって出来る赤い塊)、     瘰癧、悪毒疔瘡、湿痰流注あり及び
    ◎外科一切の瘡症を治す。
    ◎但し未だ成らざる者は即ち消え、已に成る者は即ち潰える。
    ◎脉虚にして大便利する者:「大黄」


 神授丸《三因極一病証方論》
      「蜀椒2斤」子並びに合口者を択び去り、炒って、汗を出す。
    ◎諸伝尸、労気を治し、殺虫する。

神授黄蓍湯


神授散《東醫寶鑑》
      「紅椒2斤」少し炒って作末し、毎回1銭、空腹時に米湯で服用。          服薬後にめまいがしたら、又酒糊で梧子大に丸め30~50丸、空腹          時に服用。
    ◎伝尸・虫を殺す。


神授衛生湯《医宗金鑑》
「大黄(酒にまぜて炒る)8g、皀角刺・当帰尾・金銀花・天花粉・          甘草節各4g、白芷3.6g、羗活3.2g 穿山甲(炒る)・防風           ・連翹・沈香・石決明・紅花各2.4g 乳香2g」
以上15味を水2椀で8分まで煎じる。病が上部にあれば、まず           酒1杯を飲み、その後に服薬する。病が下部にあれば、先に服薬           し、後に酒1杯を飲み、薬力をめぐらせる。もし、気虚で便通が           よい者は、大黄を除く。

 神授太乙散《東醫寶鑑》
      「赤芍・羗活・香・細辛・青皮・川芎・桔梗・枳穀・柴胡・陳皮・香附子       ・蒼朮・防風・藁本・甘草各7分、乾葛・升麻・紫蘇葉各3分、姜7、棗7、        葱白7」水煎服。
    ◎温疫の流行に、陰陽両感と頭痛・寒熱を治す。

 神授太乙散《済世全書》《古今方彙》
      「紫蘇葉、陳皮、香附子、川芎、白芷、乾葛、羗活、升麻、赤芍薬、枳殻、       甘草、生姜、葱白」水煎。
◎四時感冒、時令不正の気、頭疼身痛、発熱悪寒、咳嗽喘急、口乾渇を作し、并     びに傷寒、食を夾み、胸膈満悶、肚腹脹痛するを治す。
◎腹痛には:「白芍薬」
    ◎冷気痛には:「延胡索・呉茱萸」
    ◎咽喉痛には:「桔梗・牛蒡子」


神朮丸《東醫寶鑑》
      「蒼朮(細末)1斤、白脂麻5銭を水2盃で濾して汁を取る、大棗30枚を濃       く煮て皮・実を去り、麻汁に調合してねっとりした膏をつくった後、朮末       とまぜて梧子大の丸剤。毎日空腹時に温水で100~200丸飲む。はじめ飲       むと、胸膈が必ず焼け付くようになるが、山梔子散を一服するとなくなる。」
◎痰飲。胃部で振水音、酸水を嘔吐する者。
    

神朮散[1]《東醫寶鑑》
      「蒼朮2銭、荊芥・藁本・乾葛・麻黄・甘草(炙)各1銭、姜3片、葱白2茎」       水煎服。
◎傷寒・傷風に頭痛・身疼痛・悪寒し、汗のない者。

 神朮散[2]《東醫寶鑑》
      「蒼朮3銭、川芎・白芷・細辛・藁本・羗活・甘草各1銭、姜3、葱白2茎」       水煎服。
    ◎露霧と山嵐瘴気に中毒し、頭痛などある者。

 神朮散[3]《東醫寶鑑》
      「蒼朮2銭、羗活・川芎・白芷・細辛・甘草各1銭、姜3、葱白1」
       水煎服。
    ◎風にあたって頭痛・鼻閉・声が重く咳する者。

 神朮湯《陰症略例》《中薬臨床応用》
      「防風6g、蒼朮6g、甘草(炙)3g、葱白9g、生姜9g」水煎服。
    ◎寒湿の感冒
    ◎悪寒、無汗。

 神朮湯《和剤局方》《古今方彙》
      「藁本・羗活・細辛・白芷・川芎各1両、蒼朮5両、甘草1両、生姜、葱白」       水煎。
◎四時瘟疫、頭痛項強、発熱憎寒、身体疼痛、及び傷風、鼻塞声重、咳嗽昏眩等     の症を治す。

神助散《東醫寶鑑》
      「牽牛子末3銭、子(炒)2銭、椒目1銭半、猪苓・沢瀉・木香各1         銭」作末し、先に漿水1杯と葱白3茎を煎じて半杯になったら、          酒半杯を入れ薬末3銭を調合して、早朝に東向きで飲み、再び葱白          粥を煮て酒5合を入れ熱くして服用。
◎全身が水腫で喘息し、小便の出ない者。

神消散《東醫寶鑑》
      「山梔子(塩水炒黒)・橘核(炒)・茴香(塩水炒)各1両、茘枝核8銭、          益智仁(炒)7銭、檳榔5銭、青皮(油炒)3銭」作末し毎回2銭を、空         腹時に酒or塩湯で服用。
    ◎諸般の藺気リンキと外腎の腫痛を治す。

 神消散《証治準縄》
      「木賊、蝉退、穀精草、甘草、蒼朮、蛇蛻」

神聖散《東醫寶鑑》
      「麻黄・細辛・葛根(半生半炒)・香葉」各等分に作末し、毎回2銭          を荊芥薄荷酒で調服。
    ◎首と背筋が寒く、脳戸(穴名)が極端に冷える=脳風を治す。)

神聖代銭散《東醫寶鑑》
      「乳香・没薬・当帰・白芷・川芎・芫青(製)各1銭」作末し毎日1服する。
◎血積疝痛・諸疝の刺痛に。

 神聖復気湯《東醫寶鑑》
      「1日前に黄柏・黄柏と地黄(生)の酒で洗ったもの・枳殻各3分を水侵し、       又、細辛・川芎・蔓荊子の砕いたもの各2分を水侵、別に羗活・柴胡各1       銭、藁本・甘草各8分、半夏・升麻各7分、白葵花3つの芯を取って砕い       たもの、水5杯と同時に煎じて2杯になるまでにし、「黄蓍・草豆各1       銭、橘紅5分」を入れて煎じ、1杯になったら、前に浸けておいた両薬を       入れて再び煎じて、熱いうちに服用。
    ◎腎元と膀胱の陽気が不足し、胸脇と臍腹がひきつれ、冷えて痛む者を治す。


神仙烏雲丹《東醫寶鑑》
      「何首烏8両を砂鍋に入れて半日間豆と蒸熱して、豆は捨て酒に7日間浸し       て晒して乾燥し蒸熱すること7回したあと、破故紙4両を酒洗し砂鍋内で       炒って黄色くなったら旱蓮汁2両、槐角2両を作末し、胡桐涙1両を作末       て棗肉2斤とついて作末し梧子大の丸剤。空腹時に塩湯で50~70丸飲む。
◎髪を黒くし、若返りに効く。

神仙既済丹《東醫寶鑑》
      「黄柏(酒炒)4両、山薬(酒蒸)・牛膝(酒洗)各3両、人参・杜仲(姜汁炒)・       巴戟・五味子・白茯苓・枸杞子(酒洗)・茴香(塩水炒)・肉蓯蓉(酒洗)・山       茱萸(酒蒸)・遠志・甘草(水浸去骨)・石菖蒲・知母(酒炒)・生乾地黄(酒       炒)・熟地黄・麦門冬・兎絲子(酒製)・甘菊(酒洗)・梔子(炒)各2両・陳       皮(去白)1両」作末して搗いき、梧子大の蜜丸。空腹時に塩湯又は温酒で70       ~90丸飲む。
◎諸虚・百損・五労・七傷を治す。
    ◎延年福寿・精力増強の聖薬。

神仙巨勝子元《東醫寶鑑》
      「熟地黄・生乾地黄・何首烏各4両、巨勝子・枸杞子・兎絲子・五味子・酸       棗仁・柏子仁・破故紙・覆盆子・仁・木香・蓮花芯・巴戟・肉蓯蓉・牛       膝・天門冬・官桂・人参・白茯苓・楮実子・韭子・天雄・蓮肉・続断・山       薬各1両」作末し、春秋には煉蜜で作丸し、秋冬には棗肉・胡桃肉と蒸し       て薬末を入れ搗いて梧子大の丸剤。温酒又は塩湯で70~90丸飲む。
◎虚労の諸症。

神仙九気湯《東醫寶鑑》
      「香附子・片子姜黄・炙甘草」各等分。作末し、毎回2銭づつ塩湯で服用。
◎九気で痛む症。

 神仙解語丹《勿誤薬室方函口訣》
      「石菖蒲・遠志・天麻・附子・全蝎・僵蚕・独活・牛胆・天南星各1両、木       香半両」
◎風心脾に入り、言語蹇渋、舌強ばり転せず、涎唾溢盛を治す。
    

 神仙降益丹《東醫寶鑑》
      「香附米1斤を童便に漬けて洗い、夜露に一晩あて、再び露にあてて3回乾       かし、好醋に一晩漬けて煎じて乾燥し作末する。益母草12両を東流水で       洗って火で乾燥し作末する。香附子4両、艾葉1両を煎じて汁を取ったも       の3分、醋7分に前の薬末を混ぜ、梧子大の丸剤。空腹時に淡醋湯で70       ~90丸呑む。
  ◎不妊。

神仙散
「神授丸《三因極一病証方論》」を散にしたもの。《勿誤薬室方函口訣》

神仙聚宝丹《東醫寶鑑》
      「琥珀・当帰各1両、没薬・乳香各2銭半、辰砂・木香・麝香各1銭」
       を作末し、水で1両を15丸に作る。毎回1丸を温酒で呑む。
◎月経不順を治す。
    ◎血気が骨や腹を攻めて疼痛し、積聚が塊をなしたもの。
    ◎婦人の百病通治薬。


神仙退雲丸《東醫寶鑑》
      「当帰(酒洗)1両半、川芎・木賊(童便浸焙)・密蒙花・荊芥穂・地骨皮・白       藜・甘菊・羗活各1両、川椒(炒)7銭半、瓜蔞根・枳実・蔓荊子・薄荷       ・草決明(炒)・甘草(炒)各5銭、蛇蛻・蝉退・黄連各3銭」作末し蜜で丸       め毎回1両を10丸に作り、茶清or白湯で1丸づつ飲む。
    ◎膜・内外障が昏暗になる者。



神仙奪命丹(一名二豆回香丹)《東醫寶鑑》
      「百草霜(研)5銭、雄黄・硼砂各2銭、乳香1銭半、緑豆・黒豆各49粒を       作末し烏梅30個を水に漬け、種は捨て肉を薬末に混ぜて搗いて梧子大の       丸剤。朱砂2銭で衣をつけ、毎回1丸を溶かして飲み込み、吐かないとき       は、その薬が効いていることである。
◎気鬱・嘔吐・噎・食物の下らない者。

神仙沈麝元《東醫寶鑑》
      「甘草2両、没薬・血竭・沈香・麝香・朱砂各1両、木香5銭」作末し煮詰       めて、実大の丸剤。毎回1丸、姜塩丸湯で服用。
◎一切の耐えられない痛み。

神仙不酔丹《東醫寶鑑》
      「葛花・葛根・白茯苓・小豆花・木香・天門冬・縮砂・牡丹皮・人参・官桂       ・枸杞子・陳皮・沢瀉・白塩・甘草」各等分に作末し蜜で梧子大の丸剤。       毎回1丸、かんで熱酒で飲む。
    ◎酒病。

神仙不老丸《東醫寶鑑》
      「人参・巴戟(酒浸去心)・当帰(酒浸)・兎絲子(酒製)各3両、熟地黄・生乾       地黄(酒焙)各2両、牛膝(酒浸)・杜仲(麩炒)各1両半、柏子仁(去皮細末)       ・石菖蒲(浸)・枸杞子(酒浸)・地骨皮各1両」切って乾燥し弱火で焙っ       て細末、梧子大の蜜丸。毎回70~90丸温酒又は塩湯で1日3回飲む。
◎不老長寿に特効。

神仙碧露丹《東醫寶鑑》
      「東方巴豆(皮油を去り研)・南方官桂(末)・中央雄黄(別研)・西方白礬(別       研)・北方青黛(別研)各3銭」を5月5日早朝に調合し、それぞれ容器に       入れ、方位によって排定し、榛子大に丸め、1丸を綿でくるんで瘧が起き       た日、早朝に男は左、女は右の鼻中をふさぐ。
    ◎瘧を除く。



神通飲(一名木通湯)《東醫寶鑑》
      「木通2両」
       細かく切って長流水(高山から流れる水)で煮詰め、空腹時に服用。
◎歴節風を治す。



神秘湯[1-1]《外台秘要方》《勿誤薬室方函口訣》
      「麻黄、蘇葉、橘皮、柴胡、杏仁」
       右5、或いは厚朴、甘草を加う。
    ◎《外台秘要方》備急に、療久奔喘、坐臥不得、并喉裏呀声気絶方、又名神秘     湯と有るが原方にて、王碩の《易簡方》、楊人斎の《直脂方》、東垣の《医学     発明》にも同名の方有りて二三味づつの加減あれど、此方が尤も捷効あり。     ◎吾が門、厚朴を加ふる者は《易簡方》に一名降気湯に意ぬ本づくなり。

神秘湯[1-2]《外台秘要方》《漢方後世要方解説》
      「麻黄5、杏仁4・杏仁2、陳皮2.5、甘草・柴胡各2、蘇葉1.5」
    ◎久咳、奔喘、坐臥することを得ず、並に喉裏呀声、気絶するものを療す。
    ◎気管支喘息の一般の薬方である。
     麻杏甘石湯より石膏を去り、半夏厚朴湯より半夏、茯苓、生姜を去り、これを     合して柴胡、陳皮を加えたものである。
呼吸困難を主として痰少なく、気鬱を兼ねたものによい。
    ◎一般に腹力弱く、心下もそれほど緊張せず、喀痰少なくして呼吸困難を訴える     ものに用いる。

 神秘湯[1-3]《漢方治療の実際》
      「麻黄・蘇葉・橘皮各3、柴胡・杏仁各4」
    ◎浅田流ではこれに「厚朴3.0、甘草2.0」を加える。

神秘湯[1-4]《外台秘要方》《龍野ー漢方処方集》
    =備急療久奔喘云々方
      「麻黄・蘇葉・橘皮各3.0g、柴胡・杏仁各4.0g、厚朴2.5g、甘草2.0g」
    ◎気管支喘息で発作時座位呼吸、奔喘する者。
★適応症及び病名(神秘湯)
[1]イライラ(感情が不安定)
[2]咳嗽
☆精神的な要素が強い咳嗽《中医処方解説》
☆武藤敏文氏は、この方を用いて、却って、咳嗽が甚だしくなり、呼吸の苦しくなった2例を報告している。《大塚敬節》
[3]喀痰 <少>
[4]気欝
[5]気管支炎
[6]気管支喘息:
 ☆鶴牧候は数年哮喘(喘息)を患い、毎月必ず数回の発作があり、発作の時        は呼吸が苦しくて横になることが出来ず、冷汗が流れ、2、3日は何も        食べることが出来ない。清川玄道の父子が多年これの治療に当たってい        るが、良くならない。余はこれを診て云った。腹中に癖が無く、心下        に淡飲(水毒)も無い。ただ肺の機能が弱いから、その時の気によって閉        塞して呼吸が苦しくなるだけのことだと。そこで神秘湯厚朴杏仁(神        秘湯[1-4])を与え、発作のひどい時は、別に甘草麻黄湯を服用せしめた。        ところが、その後は、喘息が大いに減じ、発作は1ヶ月に1回となり、        2、3ヶ月に1回となり、発作の時も飲食を廃するようなことななくな        った。《橘窓書影》
       ☆細野史郎氏は、この方を気管支喘息の患者に与えたところ、呼吸困難が        ますますひどく、ついに人工呼吸を施して、やっと蘇生せしめたと言う。        《大塚敬節》
       ☆17歳男児、高校生。割合体躯の整った体格ではあるが、幼少の頃から        喘息に苦しめられてか顔色映えず神経質になっている。本人は勿論家族        の1日として安んずる日がないと、連れ添って来た母親の悲痛の言葉で        あった。
初診は昭和29年2/15。家族的には遺伝的疾患はないが、実兄は現在        紫斑病にて某病院に入院加療中と云う。これまで市内の病院は勿論、東        北大学病院の治療をも受け最後の最後の手段として自律神経の手術をし        たが、その後1年くらいは喘息の発作がなかったと云う。しかし時を経        るに随って再発し目下某病院にて毎日注射療法をしているが、発作は1        日2回は必ず起こり、しかも1回は必ず夜間に忽然として来襲し呼吸急        迫呀声気絶えんとして坐臥するを得ず、或いは母親の肩にすがり或いは        フトンを積み重ねて逋逼し、或いは柱に寄りかかかりてその苦を逃れん        とす。かくするうちに咳嗽と少量の喀痰を排出して発作が止む。しかし        胸膈清からずして軋(いあつ)音が残るがだんだん回復すると云う。
         所見。胸部を診するに気管支音である笛声、軋(いあつ)音著明、呼吸やや困        難である。腹部を診んとして仰臥させようとすると呼吸切迫して診断上        最も肝腎の腹部を診ることが出来なかった。食事はやや不振で膏梁肉食        を好む。
まず肉食を極力節制させ、主として野菜を食するように勧める。
         処方。神秘湯厚朴甘草の薬味の分量は、麻黄6、蘇葉2、柴胡2、        杏仁4、橘皮3、厚朴3、甘草4、以上7味で、甘草を比較的大量に用い        たことを大書せねばならない。なぜなら若し甘草を少量にすれば神秘湯        としての効果が半減するからである。(中略)他に頓服薬として麻黄甘        草湯を冷却して発作ある毎に少量ずつ徐々に嚥下させた。
経過。服薬後、立ちどころに効果が現れ、2日を過ぐるに、笛聴、軋(いあつ)        音も減少し、呼吸困難あるも、服薬前のような苦しみが無くなったとい        う。2ヶ月にしてほとんど全治した《高橋道史》
     [7]起座呼吸
     [8]胸脇苦満 <軽>
     [9]呼吸困難(激しい)
     [10]小児喘息:
       ☆呼吸困難を訴え、痰が少ない者。
       ☆腹力弱く、みぞおちのつかえもなく、胃内停水もない。
     [11]神経症
     [12]舌苔 <白苔>
     [13]喘鳴:
       ☆山田光照は、小児の感冒で咳が出て、喘鳴のある者に、著効があると云        っている《大塚敬節》
     [14]肺気腫
      [15]腹部軟弱無力
     [16]ゆううつ(抑鬱気分)
     
  

 神秘湯[2]《東醫寶鑑》
      「紫蘇葉・橘紅・桑白皮各2銭、人参・赤茯苓・半夏各1銭、木香5分、姜5       片」1日3回水煎服。
    ◎上気して喘急して寝られず、寝ると又起こる者。

 神秘湯[3]《済世全書》《古今方彙》
      「陳皮、桔梗、紫蘇葉、五味子、人参、生姜」水煎。
       一方に、五味子なく、茯苓・木香・桑白皮を加える。
    ◎上気喘急して臥するを得ざるを治す。



神秘左経湯《東醫寶鑑》
      「麻黄・桂心・黄芩・枳穀・柴胡・赤茯苓・半夏・羗活・防風・厚朴・厚朴       ・白姜・小草・防已・麦門冬・乾葛・細辛・甘草各5分、姜3、棗2」水       煎服。
◎風・寒・暑・湿が足陽経に流注して、脚膝がケイレンして腫痛する者。

 神品芍薬湯《済世全書》《古今方彙》
      「白芍薬3銭、肉桂1銭、甘草1銭」水煎。
    ◎肚腹の痛みを治す。
    ◎熱あれば:「黄芩・黄連」
    ◎大閉には:「枳殻・大黄」


神方験胎散《東醫寶鑑》
      「真雀脳芎1両、当帰7両」細末にし、2貼に分け、濃く煎じて好艾湯1杯       又は好酒で調下する。
◎妊娠の徴候があった時。

神保元《東醫寶鑑》
      「全蝎7個、巴豆10個(皮を去り細末)、木香・胡椒各2銭半、朱砂1銭(半 分は薬末、半分は衣に)」作末し、餅で丸剤。5~7丸づつ姜湯又は温酒 で飲む。
◎心膈痛・腹脇痛・腎気痛。

神芒導水丸《東醫寶鑑》
      「牽牛子(頭末)・滑石各4両、大黄2両、黄芩・川芎・薄荷各半両」作末し、       水で小豆大の丸剤。温水で10~15丸飲む。
◎二陽の熱の繁病症を治す。

 神明丸《青嚢秘録》
      「神授丸《三因極一病証方論》苦楝根」
    ◎労を治す。《勿誤薬室方函口訣》

神霊丹《東醫寶鑑》
      「五霊脂・蒲黄(炒)各1両、良姜5銭(を斑猫20個と焦がし猫は捨てる)、       防已5銭」細末にし醋糊で皀角大の丸剤。毎回1丸を醋湯で調下。         又は作末して毎回2銭、酒で呑む。
    ◎急心痛を治す。




人中黄丸《東醫寶鑑》
      「大黄・黄芩・黄連・人参・桔梗・蒼朮・防風・滑石・香附子・人中黄各等       分」作末し、神麹糊で梧子大の丸剤。毎回70丸を
       イ.気虚のときは四君子湯で、
       ロ.血虚には四物湯で、
       ハ.痰が多いときは二陳湯で呑む。
◎四季の疫癘を治す。

人馬平安散
「麝香・竜脳・雄黄・朱砂・硝石」
◎意識混迷・人事不省。

仁熟散《東醫寶鑑》
      「柏子仁・熟地黄各1銭、人参・枳穀・五味子・桂心・山茱萸・甘菊・茯神       ・枸杞子各7分半」水煎服。又は作末し温酒で2銭づつ服用。
◎胆虚。恐怖におののいて、一人で寝ていられない者。

 沈香飲子
      「香蘇散《和剤局方》沈香」
    ◎傷風を治す。《方読便覧》


 沈香豁胸湯《本朝経験》《雑病翼方》
      「沈香・砂仁各5分、香附子1銭、甘草・呉茱萸各2分、桑白皮8分、犀角3       分5厘、茯苓9分」
「豁胸湯《和田東郭》沈香降気湯生姜」
    ◎胸腫満し、気急息迫、喘咳する者を治す。《和田東郭》
    ◎脚気の人、毒気上衝し、心腹堅満、肢体浮腫する者《雑病翼方》


 沈香解毒散《松原家蔵方》
    =「伯州散沈香」
    ◎癰腫、一切瘡腫を治す。膿已にあると未だ成さざるとを問わず、此薬を与えれ     ば能く毒を解し、腫を消し、痛みを止め、膿を成し新肉を生じ、腐潰を止む。


沈香降気湯《峰普済方》《東醫寶鑑》
      「香附子4両、炙甘草1両2銭、縮砂5銭、沈香4銭」細末にし、毎回2銭       づつ蘇塩湯で服用。
◎気が昇降せず、上気・喘息する者。
◎事業などに失敗して腰痛になる:「調気散姜3・棗2」

沈香降気湯《和剤局方》
      「沈香6分、縮砂1銭半、莎草7銭半、甘草1分」
    【加減方】左金丸(黄連・呉茱萸)=「寧癇湯」
         豁胸湯(桑白皮・呉茱萸・茯苓・犀角)=「豁胸降気湯」
    ◎陰陽壅滞し、気升降せず、胸膈痞塞し、喘促、臥を嗜むを治す。
    ◎脚気上衝し、心腸堅満を治す。
    ◎此方は気剤の総目なり。陰陽升降せずと云うが目的にて、脾労の症、あるいは     一切の病、上衝強く、動悸亢ぶり、頭眩し、耳鳴り、気鬱する症に用いる。
◎脚気衝心に「桑白皮湯」あるいは「呉茱萸湯」の苦味を苦しみて嘔吐する者に     効あり。
    ◎「香蘇散」「正気天香湯」は気発を主とす。此方は降気を主とす。
    ◎七気の欝滞、心痛、ならびにシャックリを治す:「乳香」
    ◎もしその人、羸痩、津液乏少、心下動悸甚だしく、目下微腫し、耳鳴り、目眩、     頭暈する者は虚候に属する。沈香降気湯に宜し。《先哲医話》
◎もと脚気転筋を患うを治するに、「蒼朮・黄柏・木瓜」を以てして、能く癒     えると。此の証、気滞に因り、又湿熱を犯して下焦の気通ぜざるの故なり。


沈香降気湯加減《中薬臨床応用》
      「沈香末2.5g(沖服)、烏薬9g、木香3g(後下)、延胡索6g、香附子3g」水煎       服。
    ◎陽虚で血液循環が悪い
    ◎下腹部痛
    


 沈香交泰丸《東醫寶鑑》
      「呉茱萸・大黄(酒浸)各1両、厚朴5銭、沈香・白朮・陳皮各3銭、白茯苓       ・沢瀉・当帰・木香・青皮各2銭」作末し湯に浸した蒸し餅で梧子大の丸       剤。温水で70~80丸飲む。
    ◎濁気が上にあって脹になった者を治す。

 沈香琥珀丸《東醫寶鑑》
      「子(炒)・郁李仁・沈香各1両半、琥珀・杏仁・蘇子・赤茯苓・沢瀉各5       銭」作末し蜜で梧子大の丸剤。麝香で衣をつけ毎回30~50丸を蘿葡子煎       じ湯で飲む。 
    ◎水腫で小便が渋い者を治す。

 沈香散《証治準縄》《東醫寶鑑》
      「蘿葡子(炒研)2銭、沈香・木香・枳殻各1銭」剉作1貼し、姜3片入れ水       煎服。
    ◎腹脹と気喘で立っても座っても居られない者を治す。

沈香散《証治準縄》
      「沈香、子、枳殻、木香」


 沈香天麻湯《衛生宝鑑》《漢方後世要方解説》
      「独活・羗活・防風・半夏各3、天麻・益智仁・当帰・白殭蚕各1.5、沈香       ・甘草各1、附子0.5~1」
    ◎癇症或いは小児驚懼により、搦を発し、痰涎声あり、沫を吐し、舌を噛み、     目上視し、項背強直の者之を主る。
    ◎此方は元小児陰証の驚癇(ひきつけ)を治すが主である。大人でも平素肝気亢ぶ     り、腹攣急して上盛下虚、歩行荒く、性急にして怒りやすく、口眼斜(顔面     神経麻痺)するにも用いられる。また婦人多産又は屡々出血を繰り返し、肝気     亢ぶり、動気甚だしく、」眩暈して歩行する毎に高きより落ちんとする如く思     い、とかく驚き易き者に用いて奇効がある。
独活=頸項舒び難く、両脚湿痺諸風を除く
     羗活=風、除湿、身痛、頭疼、舒筋、活骨。
     天麻=驚癇、拘攣、頭眩を治す。
     白殭蚕=驚癇、湿痰、諸風を治す。
     沈香=降気、胃を暖め、邪を追う。
    ◎内熱あれば:「 治肝虚内熱云々方」《本草彙言》
    ★適応症及び病名
     [1]顔面神経麻痺
     [2]小児急癇
     [3]神経衰弱
     [4]中風
     [5]テンカン:
        ☆陰証の癲癇《矢数道明》
        ☆虚弱体質で、貧血気味の者。
        ☆ケイレン発作を起こし、泡をふき、舌をかみ、目を見開いたまま宙を         見つめてぼんやりし、頸から肩にかけて凝る者。
     [6]脳膜炎様の症状
     [7]ヒステリー




 沈香半夏湯《東醫寶鑑》
      「附子(炮)1、沈香と附子を等分にし、人参5銭、半夏(製)2銭、南星(炮)1       銭」粗末にし毎回3銭を「水2杯、姜10片」と同時に煎じて1杯になっ       たら、空腹時に服用。
    ◎中風の痰が盛んなとき。
    ◎痰をなくし、脾を起こし、気を和らげ、心を強くする。


 沈香百補丸《東醫寶鑑》
      「熟地黄3両、菟絲子2両、杜仲・肉蓯蓉・山薬・当帰各1両半、知母・黄       柏・人参各1両、沈香5銭」作末し酒糊で梧子大の丸剤。塩湯で70丸飲       む。
    ◎虚労を治し、血気を補い、陰を滋養する。

 沈香鼈甲散《東醫寶鑑》
      「鼈甲(醋炙)・附子(炮)・肉桂各1銭、当帰・熟地黄・羗活各7分半、沈香       ・木香・人参・巴戟・白茯苓・牛膝・黄蓍・柴胡・荊芥・半夏・秦艽各5       分、全蝎2分半、肉豆()1個」剉作し、1貼に「姜3、棗2、葱2本」       を入れて煎服。
◎諸虚・百損を治す。
    ◎一切の労傷を治す。

参黄散《傷科補要》
「桃仁・当帰尾各120g 赤芍・紅花・穿山甲各60g 参三七・川厚朴・枳実       ・欝金・延胡索・青皮各40g 柴胡24g 肉桂20g 大黄・甘草16g」作末       し、毎服4~12g、陳酒でのむ。

 参蓍救元湯《寿世保元》《古今方彙》
    =「参蓍五味湯」《済世全書》
      「黄蓍、人参、肝臓シャ、麦門冬(去心)、五味子」水煎し「朱砂(少許)」入       れ時に拘わらず服す。
◎腎水枯渇し運上する能わずして消渇を作し、癰疽を生ずるを恐るるを治す。

参蓍建中湯《東醫寶鑑》
      「当帰身1銭半、人参・黄蓍・白朮・陳皮・白茯苓・白芍・生乾地黄(酒炒)       各1銭、甘草5分、五味子3分、姜3、棗2」煎服。
◎虚損・少気・四肢がだるい・食欲不振。

参蓍湯[1]《万病回春》《東醫寶鑑》
      「黄蓍(蜜炒)・人参・白朮・白茯苓・当帰・熟地黄・白芍(酒炒)・酸棗仁        (炒)・牡蛎(炒)・牡蛎粉各1銭、陳皮7分、甘草2分、大棗2枚、小麦一       握り・烏梅1個」煎服。
    ◎自汗を治す。

参蓍湯[2]《東醫寶鑑》
      「人参・黄蓍・白朮・白茯苓・白扁豆・山薬・陳皮・葛根・半夏(麹)甘草       各1銭」水煎服。
◎盗汗を治す。

 参蓍湯[3]《万病回春》《東醫寶鑑》
      「人参・黄蓍(蜜炒)・白茯苓・当帰・熟地黄・白朮・陳皮各1銭、益智仁(研)       8分、升麻・肉桂各5分、甘草3分、姜3分、棗2枚」水煎し空腹時に服       用。老人は附子(炮)を加える。
    ◎気虚・遺尿を治す。
    ◎気虚し、遺溺失禁する者を治す。

 参蓍湯[4]《万病回春》《東醫寶鑑》
      「人参・黄蓍(蜜炒)・当帰・白朮・地黄(生)・白芍薬(酒炒)・白茯苓各1銭、      升麻・桔梗・陳皮・乾姜(炒)各5分、甘草(炙)3分」煎服。
    ◎肛門の虚寒と脱肛。
    ◎肺臓の虚寒には:「乾姜(炒)5分」《古今方彙》

 参蓍湯《万病回春》《古今方彙》
    =「補胃湯」
      「黄蓍1銭、青皮・人参各5分、甘草(炙)・蒼朮各1銭、当帰・柴胡・黄柏       (酒)・升麻各3分、神麹7分」水煎食遠に服す。
◎脾胃虚弱、元気不足、四肢沈重、食後昏沈するを治す。


 参蓍透肌散《古今方彙》
      「紫草、木通、人参、芍薬(酒)、黄蓍、升麻、葛根、甘草、大棗、生姜」水       煎。
    ◎気弱にて痘出でて尽きざるか、出でても速やかならざるも者を治す。

 参蓍補肺湯《医学入門》《古今方彙》
      「人参・黄蓍・白朮・茯苓・陳皮・当帰・山茱萸・山薬・麦門冬・五味子・       甘草(炙)各5分、熟地黄1銭、牡丹皮1銭、生姜、大棗」水煎。
◎肺痿にて咳喘短気、或いは腎水不足、虚火上炎、痰涎湧盛、或いは膿血を吐し     発熱し小便短渋するを治す。


参蓍鹿茸湯《万病回春》
「人参1銭厘、黄蓍1銭半、鹿茸3銭、当帰1銭半、甘草6分、生姜1片」
       或いは「反鼻」
    ◎痘色淡に、白疱尖せず、根に紅暈無き者を治す。
    ◎気虚にして血縮む者なり、膿を成さず。
    ◎此方は虚痘にてその色灰白、根に紅暈なく、膿漿を醸すこと能わざる者を治す。
    ◎又痘のみならず、諸瘡瘍、気虚して血縮む者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎一婦人、乳癰数年癒えず、膿水淋漓、長肉(肉芽形成)する能はず、頑肉突起、そ     の状、乳岩自潰の者に似たり、此方を与えること数日にして全癒す。《勿誤薬室方函     口訣》
    ◎蚊皮痘:「丁香、桂枝、白芷、芍薬」《方読便覧》

 参帰益元湯《寿世保元》《古今方彙》
      「人参5分、当帰・白芍薬(酒)・熟地黄・茯苓・麦門冬各1銭、知母割け分、       五味子7粒、黄柏(酒)・陳皮各7分、甘草3分、大棗肉、烏梅、炒米」水       煎。
◎注夏病を治す。
  ◎注夏病は陰に属す。血虚し元気不足するなり。夏の初め、春の末に頭疼み、眼     花し、腿酸み、脚軟、、食少なく躰弱く、五心煩熱、口苦舌乾、先進困倦無力、     好んで睡り、胸膈不利、形は虚怯の如く、脉数にして無力、是れ注夏と名づく。
◎飽悶には:「砂仁・白豆蔲」
◎悪心には:「烏梅・蓮肉・炒米」
    ◎には:「竹茹」
    ◎煩躁には:「辰砂・酸棗仁・竹茹」
    ◎瀉には:「白朮・山薬・砂仁・烏梅」
    ◎胃開かず、飲食を思わざるには:「厚朴・白豆蔲・益智仁・砂仁・蓮肉、     熟地黄・黄柏・知母」
◎腰痛には:「杜仲・破故紙・小茴香」
    ◎腿酸無力には:「牛膝・杜仲」
    ◎皮焦には:「地骨皮」
    ◎頭目眩暈には:「川芎」
    ◎虚汗には:「黄蓍・酸棗仁・白朮」
    ◎夢遺には:「牡蛎・山薬・辰砂・椿根皮」
    ◎虚驚煩熱には:「辰砂・酸棗仁・竹茹」
    ◎口苦舌乾には:「山梔子・烏梅・乾葛」


参帰丸《東醫寶鑑》
      「苦参4両、当帰2両」作末し酒糊で梧子大の丸剤。熱茶清で70~80丸服       用。
◎酒査鼻。

 参帰芍薬湯《万病回春》《古今方彙》
      「当帰2銭、茯苓・芍薬・白朮各1銭半、砂仁7分、山薬・人参・陳皮各1       銭、甘草5分、烏梅、燈心草、蓮肉」水煎。
◎痢久しきこと、十、二十日、痢多く止まざるに此を用いて気血を調えれば自ら     癒える。
    ◎噤口痢にて食せざるには:「黄連・人参・炒米」
    ◎腹痛し裏急後重するは積熱気滞なり。又虚ありて坐して大便に行かざる者は血     虚なり。若し「四物湯」の類にて之を治すには木香・檳榔子を加えて積気を和     消すれば則ち後重は自ら除く。
    ◎久痢にて後重除かざる者は虚気の墜下なり:「人参・当帰・芍薬・升麻」
    ◎痢にて痛みをなすには:「黄芩・芍薬(炒)」
    ◎痢の後に発熱し止まざるか或いは積少なくただ虚し、坐して力を努むる者:「芍     薬・地黄各倍加」
    ◎積中に紫血ある者は:「芍薬・紅花」
    ◎下痢が緑豆汁の如きには:「二朮」


 参帰升麻湯《万病回春》《古今方彙》
      「人参・当帰・生地黄・赤茯苓・猪苓・沢瀉・知母(酒)・枳殻・黄柏(酒)・       牛膝・山梔子各等分、甘草半減、升麻(少許)、燈心草」水煎し空心に服す。
    ◎虚人で小便通ぜざるを治す。

 


参帰鼈甲飲《東醫寶鑑》
「鼈甲(醋煮)1銭3分、黄蓍(蜜水炒)・青皮・当帰・白茯苓・白朮・厚朴・川芎・香附子各8分、人参・山楂子・枳実各5分、甘草3分を剉作し、貼に姜3、棗2、梅1を入れ水煎服。
◎老瘧で脇腹に塊が出来、瘧母になった者。

参帰鼈甲飲《万病回春》《古今方彙》
「人参・山楂子・枳実・砂仁各5分、黄蓍・当帰・茯苓・青皮・鼈甲・白朮・香附子・川芎・厚朴各8分、甘草3分、生姜、大棗、烏梅」水煎し食前に温服す。
丸薬を製するには、「阿魏」を(醋煮)し、前薬と和して作末し、水醋を糊にして梧桐子大の丸剤。毎服30丸を空心に米湯で飲む。
◎老瘧(慢性マラリヤ)にて腹脇に塊あり、瘧母(長時間の瘧のために起こる脾腫で脇下のシコリ)となるを治す。

参帰養栄湯《万病回春》《古今方彙》
「人参・当帰・茯苓・白朮・陳皮・砂仁・山薬・蓮肉・芍薬(酒)・熟地黄・甘草(炙)・厚朴各等分、大棗」水煎。
◎瘧疾截ちてやみたる後を治す。
◎此湯は血を調え気を養う。
◎瘧熱虚汗には:「黄蓍砂仁」

参帰養栄湯《万病回春》《古今方彙》
「当帰・人参・熟地黄・白朮・茯苓・陳皮・白芍薬(酒)・黄柏(酒)・知母(酒)・牛膝・杜仲(姜酒炒)・破故紙(酒)各等分、甘草半減」水煎。
◎痿症を治す。
◎肥人は気虚に属す。淡あれば:「半夏白芍薬」
◎痩人は血虚に属す。火あれば:「当帰・熟地黄各倍加」

参帰養栄湯《万病回春》《古今方彙》
「人参・当帰・川芎・白芍薬・熟地黄・白朮・茯苓・陳皮各等分、甘草半減、生姜、大棗」水煎温服。
◎一切の痙病を治す。
◎剛痙(痙病の重症。太陽病にして発熱はしているが発汗なく、反って悪寒するもの)にて無汗身熱、面赤脉緊なるには:「防風・羗活・柴胡・黄芩・乾葛、白朮」
◎柔痙にて汗あり、身は熱せず、手足冷え、脉沈細なるには:「附子・羗活」
◎身熱し、煩渇し脉数なるには:「麦門冬・知母・柴胡・黄芩・葛粉、川芎・白朮」
◎身熱し飽悶気急、痰を生じるには:「紫蘇子・括楼仁・枳実・黄芩・桔梗・柴胡・砂仁・竹瀝・姜汁、人参・白芍薬・川芎・熟地黄」
◎身熱し煩渇し、口禁咬牙し、手足攣急し、大便通ぜざるには:大黄・柴胡・黄芩・厚朴、人参・白朮・川芎・茯苓」
◎風痰の痙には:「羗活・防風・括楼仁・枳実・桔梗・黄芩・竹瀝・姜汁、人参・白朮・熟地黄」
◎破傷風の痙には:「白殭蚕・全蝎・防風・羗活・天南星・括楼仁・枳実・黄芩・桔梗・竹瀝・姜汁、人参・白朮・地黄」
◎汗吐瀉して多く痙を発する者は:「人参・白朮・当帰・生地黄・黄蓍各倍加、荊芥」


参帰養栄湯1《東醫寶鑑》
「人参・白朮・白茯苓・当帰・陳皮・縮砂・厚朴・山薬・蓮肉・白芍・熟地黄・甘草各8分・棗2」水煎服。
◎瘧疾を治療後、この薬で気血を調養する。

参帰養栄湯2《東醫寶鑑》
「人参・当帰・川芎・白芍・白茯苓・陳皮各1銭、甘草5分、姜3、棗2」水煎服。
◎破傷風の風痰・陰を治す。

参帰要子《東醫寶鑑》
「人参・当帰各5銭」猪心1個を割って、猪心血に水2椀をまぜ、先に猪心を1椀半まで煮て、前の2薬を入れて8分まで煎じ、猪心をちぎって清汁で飲む。」
◎心気が弱って、自汗する者。

参帰鹿茸湯《活幼心法》《古今方彙》
「鹿茸(酒炙・去毛)3銭、黄蓍(蜜炙)・当帰(酒洗)各1銭半、甘草(炙)6分、人参1銭2分、生姜1片、竜眼3個」煎じて滓を去り、好酒1盃を入れ温服。
◎痘色淡白にて疱尖らず、円根に紅暈無き者、気虚して血縮する者を治す。
◎必ず膿成らざるは急ぎ宜しく托膿妙方を用いるべし。
◎児が能く飲酒する者あらば、濃く煎じ薬汁と酒と相半ば和して服するも亦好し。
◎虚弱にして未だ甚だしからざる者は此の一二剤を服し、その痘即ち紅活に転じ漿を行らし、困倦、手足冷、飲食少なき者は:「木香3分、丁香・肉桂各5分」
◎寒戦咬牙する者は:「官桂3分、附子(炮)8分」
◎泄瀉には:「当帰白朮(麺炒)・白芍薬(酒炒)・白茯苓各8分、木香・丁香・肉桂各3分」

参橘湯(一名人参橘皮湯)《東醫寶鑑》
「橘皮・赤茯苓各1銭半、麦門冬・白朮・厚朴・人参・甘草各1銭」を剉作し、1貼に姜7片・青竹茹卵大を入れ煎服。

参姜湯《薛立斎十六種》《古今方彙》
「人参2両、生姜(煨熟)2両」水煎。
◎一儒者、秋に患い、寒熱し春に至りて未だ癒えず、胸痞し腹脹るを治す。
◎寒熱が止めば即ち、さらに「調中益気湯半夏・茯苓・炮姜」数剤を以て元気頓に復す。
◎又、瘧を截るに:「人参・白朮各1両、生姜4両」煎服。
或いは、大剤「補中益気湯煨姜」尤も効あり。

参香散

参合湯《万病回春》《古今方彙》
「陳皮・茯苓・烏薬・白殭蚕・川芎・白芷・麻黄・桔梗・紫蘇葉・香附子・半夏・羗活・蒼朮・乾姜各等分、甘草半減」水煎。
◎背心一点痛む者を治す。

参胡三白湯《傷寒蘊要》
「柴胡3匁、人参2匁半、芍薬・白朮・茯苓各1匁半」
◎傷寒、過経解せず、脈虚数、人弱く発熱し、或いは潮熱、口乾、舌燥を治す。
◎「愚魯湯」《嶺南衛生方》三白散なり《勿誤薬室方函口訣》
◎此方は、脈虚数、あるいは下利などありて、ややもすれば医王湯or真武湯の証に陥らんとして未だ升陽の位を出でざる者に用いる。《勿誤薬室方函口訣》



参胡三白湯《東醫寶鑑》
「柴胡1銭、芍薬1銭、枳実8分、黄芩1銭、生姜、知母1銭、人参1銭、地黄1銭半、麦門冬1銭、甘草」
◎霍乱後の煩熱・口渇・脈が小さい・頭痛する者。



参胡芍薬湯《医学入門》
「柴胡・白朮・白茯苓・白芍・当帰・陳皮・麦門冬・梔子・甘草各8分、人参5分、五味子10粒・棗2、梅1、灯心1団」煎服。
◎傷寒十餘日、外、余熱未だ解せず、脈息未だ緩ならず、大便不快、小便黄赤、或いは渇し、或いは煩し、安睡を得ず、飲食を想わざるを治す。これ邪気未だ浄からず、正気未だ復せず、当にその虚実を量って之を調うべし。
◎此方は「大柴胡湯半夏大黄知母・人参・生地黄・麦門冬・甘草」《勿誤薬室方函口訣》
◎此方の症は大柴胡湯に似たれども、其の脈腹、大柴胡湯ほどの実したる処なく、又、胸中に飲を畜ふる様子もなく、ただ熱長引き、数日を経て津液枯燥して解すること能わざる者に用いる。
◎小柴胡湯の証にして虚に属する者:補中益気湯


参胡芍薬湯《医学入門》《漢方治療の実際》
「柴胡5、芍薬・地黄・麦門冬各4、枳実・黄芩・知母・人参各2.5、甘草1.5、生姜3」
◎大承気湯の証にして虚に属する者:参胡芍薬湯



参胡芍薬湯《医学入門》《古今方彙》
「人参・柴胡・芍薬・黄芩・知母各1銭、生地黄1銭半、枳殻8分、麦門冬1銭、甘草、生姜」水煎温服。
◎傷寒十四日、外余熱未だ除かず、脉速未だ緩からず、大便快ならず、これ邪気未だ浄からず正気未だ復せざるを治す。当にその虚実を量り以て之を調えよ。
★適応症及び病名
  疫痢


参赭培気湯《衷中参西録》
「党参18g、代赭石(生)24g(打砕先煎)、天門冬12g、法半夏9g、淡蓉12g、知母15g、当帰身9g」:水煎し、服薬後に柿霜餅15gを服用する。
◎食道部の閉塞感があって飲食物が通過しにくい。


参仁丸《東醫寶鑑》
「麻子仁・大黄各3両、当帰身1両、人参7銭半」作末し、梧子大の蜜丸。空腹時に熱水で30丸飲む。
◎気壅による便秘。

参砂和平散《古今方彙》
「人参、砂仁、半夏、白朮、茯苓、香、陳皮、甘草、煨姜」水煎。
◎虚寒にて嘔吐病まざる者を治す。



参飲(一名却暑清健湯)《東醫寶鑑》
「白朮1銭半、人参1銭半、麦門冬・白芍・白茯苓各1銭、知母(炒)・陳皮・香各7分、甘草(炙)5分、黄芩(炒)3分、五味子10粒、姜3片」水煎服。
◎暑熱をはらい、元気が出る。
◎霍乱・吐瀉・痰の予防。

参萸丸《東醫寶鑑》
「六一散1両呉茱萸1両」作末し飯で丸めて服用。
◎呑酸下痢を治す。

参萸湯《済世全書》《古今方彙》
「呉茱萸、生姜、人参、大棗」水煎、食前服用。
◎冷涎嘔吐、陰症乾嘔を治す。

参朮飲《東醫寶鑑》
「四物湯の材料各1銭に、人参・白朮・半夏・陳皮各1銭、甘草5分」剉作、1貼に姜3片を入れ水煎服。
◎妊婦の胞がつまり、小便が出ない者。

参朮芎帰湯《寿世保元》《古今方彙》
「人参・白朮・川芎・当帰・升麻・茯苓・山薬・黄蓍・白芍薬各1銭、甘草5分、生姜」水煎。
◎瀉痢、産育、気虚の脱肛で脉濡にして弦の者を治す。


参朮健脾湯《東醫寶鑑》
「人参・白朮・白茯苓・厚朴・陳皮・山楂肉各1銭、枳実・白芍各8分、神麹・麦芽・縮砂・甘草各5分、姜3、棗2」水煎服。
◎脾を健壮にし、胃を育て飲食を消化させる。


参朮散[1]《東醫寶鑑》
「四物湯に「人参・白朮・半夏・陳皮・甘草各1銭、生姜3片、大棗2枚」水煎し空腹時に服用。
◎妊婦が転により小便が不通になった。

参朮散[2]《東醫寶鑑》
「人参・白朮・乾姜(炮)・白豆蔲・縮砂・丁香・橘皮・甘草(炙)各1銭、姜3片」水煎服。
◎虚弱者の心脾痛を治す。

参朮散
「人参、白朮、白茯苓、砂仁、甘草、薏苡仁」



参朮湯(一名参蓍湯)《東醫寶鑑》
「黄蓍2銭、蒼朮1銭、神麹7分、人参・陳皮・青皮・甘草各5分、升麻・柴胡・黄柏・当帰身各3分」水煎服。
◎脾胃が衰弱し、元気が心・肺を保養出来ず、四肢が重く、食後に昏悶する者。
◎食べ物が入ると、眠くなる。
(胃腸が弱く、四肢が重く、食後ねむい)

参朮調元膏《東醫寶鑑》
「雪白朮1斤と人参4両を切って鍋に入れ、浄水10椀を2椀になるまで煮て濾過し、又滓に水を注いで煎じ、2椀ぐらいに取って濾過して、前の汁と弱火で煎じ、2椀になったら蜜半斤を入れ再び煎じ、膏になったら土の中に2日間埋めておいて取り出し、1日3~4回、白湯で調服。
◎元気を出させ、脾胃を健壮にし、食欲を増進させ、肌を柔げる。

参朮調中湯《弁惑論》《東醫寶鑑》
「桑白皮1銭、黄蓍8分、人参・白朮・白茯苓・甘草各6分、地骨皮・麦門冬・陳皮4分、青皮2分・五味子20粒」水煎服。
◎解熱し、補気・止嗽し、喘息を鎮め、脾胃を和らげ、食欲を増進させる。

参朮調中湯《弁惑論》《古今方彙》
「白朮5分、黄蓍4分、桑白皮・甘草(炙)・人参各3分、麦門冬・青皮・陳皮・地骨皮・白茯苓各2分、五味子20個」水2盞で1盞まで煎じ滓を去り、温服。
◎熱を瀉し気を補い、嗽を止め、喘を定め脾を和し、胃は飲食を進める方なり。

参朮調中湯《弁惑論》《古今方彙》
「補中益気湯当帰・升麻・柴胡桑白皮・五味子・地骨皮・麦門冬・茯苓・青皮」生姜、大棗、水煎。
◎熱を瀉し気を補い、嗽を止め、喘を定め脾を和し、胃は飲食を進める方なり。


参朮半夏湯《東醫寶鑑》
「人参・白朮各2銭、半夏・天麻各7分、白茯苓・陳皮各5分、細辛・薄荷・甘草各2分、全蝎(炒)1枚を剉作し、1貼に姜3片を入れ水煎服。
◎慢驚風に、母子ともに呑む。

参朮茯苓湯《薛立斎十六種》《古今方彙》
「人参・白朮・茯苓・陳皮各1銭、釣藤鈎1銭、柴胡・升麻各7分、山梔子(炒)8分、甘草(炙)5分、生姜、大棗」水煎。
◎急驚風を治す。
 
参朮補脾湯《医学入門》《古今方彙》
「人参・白朮各2銭、黄蓍2銭半、茯苓・陳皮・当帰各1銭、升麻3分、麦門冬7分、桔梗8分、五味子4分、甘草5分、生姜」煎服。
◎肺癰にて脾気虚弱、膿涎を咳吐し、中満して食せず、凡そ肺癰にて膿血を見て久しく癒えざるを治す。


参茸補血丸【中成薬】
「人参・鹿茸・杜仲・巴戟天・黄蓍・当帰・竜眼肉・牛膝」
◎虚弱体質・疲労・胃腸虚弱・冷え症。


参蘇飲[1-1]《和剤局方》《漢方後世要方解説》
「半夏・茯苓各3、陳皮・葛根・桔梗・前胡各2、紫蘇葉・人参・枳殻・木香・甘草各1、大棗・生姜各1.5」
◎感冒発熱頭疼を治す。或いは痰飲凝節に因って兼ねて以て熱をなし、並びに宜しく之を服すべし。能く中を寛くし、膈を快くし、脾を傷ることを致さず、兼ねて大いに中脘痞満、嘔逆悪心を治す。胃を開き食を進むること、以て此に喩ゆることなし。小児童女亦宜しく之に服すべし
◎此方は肺経の外感を発散し、内傷を兼ねて脾胃調和せざる者を治すものである。四季の感冒にて発熱、咳嗽、痰飲を兼ね、飲食による内傷もあり、中脘痞満、     嘔吐、悪心等ある者によい。胸膈を利して飲食を進める。
葛根湯を嫌う者、亦、麻黄剤の用い難き者、小児、老人、虚人、妊婦等の感     冒、咳嗽によく用いられる。転じて気鬱、酒毒、悪阻等にも使用される。
桔梗・前胡・蘇葉・生姜=肺経を発散し、
     前胡・生姜・蘇葉・茯苓・葛根=組んで脾経の風を追う
     人参・茯苓・甘草=脾を補う
     陳皮・半夏=痰を除き嘔を止む
     枳殻・桔梗=膈を利し、
     木香=気を廻らす。


 参蘇飲[1-2]《和剤局方》《中薬臨床応用》
      「吉林参3g(別)、蘇葉9g、茯苓9g、葛根9g、前胡3g、姜半夏3g、陳皮3g、 枳殻3g、桔梗1.5g、木香1.5g(後下)、甘草1.5g、生姜1.5g、大棗2g」水       煎し、熱服して発汗させる。
    ◎気虚、陽虚の表証。

参蘇飲[1-3]《東醫寶鑑》
「人参・紫蘇葉・前胡・半夏・乾葛・赤茯苓各1銭、陳皮・桔梗・枳穀・甘草各7分、姜3、棗2」水煎服。
◎風・寒に感傷して頭痛・発熱・咳嗽する者。
◎七情による痰が起こり、胸が詰まり潮熱する者。


 
参蘇飲[1-4]《和剤局方》《古今方彙》
「十味芎蘇散川芎・柴胡前胡・人参・木香」
「紫蘇葉・桔梗・枳殻・陳皮・半夏・茯苓各1銭、前胡・乾葛各2銭、人参(熱咳の者は之を去る)7分、木香(気盛んなるのは之を去る)5分、甘草7分、生姜、大棗」水煎、食後に温服。
◎四時感冒、発熱頭痛、咳嗽声重、涕唾粘稠、中脘痞満、痰水を嘔吐するを治す。
◎此薬は大いに肌熱を解し、労倦及び妊娠感冒に宜し。
◎中を寛げ膈を快くし、脾を傷めず。
◎天寒くして感冒し、悪寒無汗、咳嗽喘促、或いは風に傷き汗無く、鼻塞り声重く咳嗽するには竝びて:「麻黄・杏仁・旋覆花」《万病回春》
◎感冒の初めで肺に熱多い:「杏仁・黄芩・桑白皮・烏梅」
◎肺寒にて咳嗽する:「五味子・乾姜」
◎心下痞悶或いは胸中煩熱或いは酒に停めて散らず、或いは嘈雑悪心するには:「黄連・枳実、乾葛・陳皮倍加」
◎胸満して痰多きには:「括楼仁」
◎気促喘嗽するには:「知母・貝母」
◎鼻衂には:「烏梅・麦門冬・白茅根」
◎心盛んにして発熱する:「柴胡・黄芩」
◎頭痛には:「川芎・細辛」
◎咳嗽して久しく血あるには:「升麻・牡丹皮・生地黄」
◎労熱咳嗽久しく癒えざる:「知母・貝母・麦門冬」
◎血を見るには:「阿膠・生地黄・烏梅・赤芍薬・牡丹皮」
◎吐血痰嗽には:「四物湯」=「茯苓補心湯」
◎妊娠傷寒には:「半夏香附子」

参蘇飲[1-5]《和剤局方》《漢方治療の実際》
「蘇葉・枳実各1、桔梗・陳皮・葛根・前胡各2、半夏・茯苓各3、人参・大棗・生姜各1.5、木香・甘草各1」


参蘇飲[1-5]《和剤局方》《龍野ー漢方処方集》
「紫蘇葉・桔梗・枳殻・陳皮・半夏・茯苓各3.0g、前胡・葛根各6.0g、人参・甘草・大棗各2.0g、木香1.5g、干姜1.0g」
◎感冒で発熱頭痛、咳痰、声重く鼻水が出、胃部がつかえ張り、或いは嘔吐する者。
◎胃腸が弱い人の感冒・気鬱・つわり。


★適応症及び病名(じんそいん)
[1]味がない
[2]胃腸炎
[3]胃部の膨満・不快感
[4]インフルエンザ:
☆流行性感冒の初期、咳嗽を伴う者《矢数道明》
[5]悪寒
[6]悪阻(妊娠悪祖)
☆「香附子2.0、砂仁1.0」《矢数道明》
[7]悪心
[8]嘔吐
[9]咳嗽
[10]喀痰(濃厚な痰)
[11]体がだるい・重い
[12]寒嗽
[13]感冒(かぜ):
☆小児、老人、虚人、妊婦のかぜ《矢数道明》
[14]感情が不安定
[15]気鬱:
☆胸内、胃部不快、嘔吐、悪心ある者《矢数道明》
[16]気管支炎:
☆汗の無い者:「桑白皮」《矢数道明》
[17]くしゃみ
[18]下痢(頭痛発熱、無汗、食欲不振、悪心嘔吐、胃部膨満感、脈沈数)
[19]元気がない
[20]肩背強急
[21]声がれ
[22]酒毒:
☆木香を倍用して酒気を発散し、順らす《矢数道明》
[23]小児の咳嗽
[24]小児の感冒
[25]小児の喘急
[26]食欲不振
[27]神経性不食症
[28]心下痞
[29]身体痛
[30]頭痛
[31]舌質<淡紅>
[32]舌苔<微白~白膩>
[33]だるい
[34]痰(タン)がよく出る(多痰)
[35]疲れやすい
[36]潮熱
[37]ノイローゼ
[38]肺炎:☆軽症
☆「薄荷1.0」《矢数道明》
[39]肺癰(はいよう)
☆結核の消耗盛熱には注意が必要《矢数道明》
[40]発熱
[41]鼻炎・鼻カタル
[42]鼻づまり=鼻閉
[43]鼻塞鼻痛
[44]鼻水
[45]風嗽
[46]二日酔い
[47]腹部膨満感
[48]慢性胃炎
[49]無汗
[50]抑鬱状態(抑鬱気分)
  



参蘇飲[2]《雞峰普済方》《勿誤薬室方函口訣》
「人参1両、蘇木2両」
      (一名:山査湯)
◎産後、面黒く、乃ち悪血肺に及び、喘を発し死せんと欲するを治す。
◎此方は血喘を主とす。《勿誤薬室方函口訣》
◎産後、瘀血衝心の者にも用いる。
◎産後、喘促し、口鼻黒気を起こすは、瘀血肺に入ると為す。不治なり。或いは「人参1両、蘇木3銭」水煎頓服す。もし厥冷自汗すれば必ず「通脈四逆湯」を用いる。《方読便覧》
◎《張氏医通》に曰く、臍腸墜断し、悪露胞に入り、脹大して出ずる能わざる者は、二味の参蘇飲なり。《雑病翼方》

参蘇温肺湯[1-1]《医学発明》《東醫寶鑑》
「人参・紫蘇葉・肉桂・木香・五味子・陳皮・半夏・桑白皮・白朮・白茯苓各1銭、甘草5分、姜3片」水煎服。
◎冷たいのを飲むと、肺が傷つき喘喝し、めまいがし、胸がやける者。

参蘇温肺湯[1-2]《医学発明》《古今方彙》
「人参・紫蘇葉・甘草・肉桂・五味子・木香各4銭、陳皮・白朮各6銭、半夏・茯苓各半両、桑白皮1両、左水1盞半、生姜3片」煎服。
◎形寒にして冷を飲みて肺を傷り喘嗽煩胸、満気動暢するを得ざるを治す。


参竹浸膏《西苑医院方》《中薬臨床応用》
「党参9g、玉竹15g」を1日量とし、エキスを2回に分服。
◎冠不全に狭心痛

参附再造湯《通俗傷寒論》
「高麗参・川桂枝各4g、綿蓍皮(酒洗)6g、 羗活・炙甘草・防風各3.2g、 淡附片2g、北細辛1.2g」

参附湯《世医得効方》《東醫寶鑑》
「人参5銭、炮附子1両」を3貼に剉作し、生姜3片を入れ煎服。
◎陽虚自汗を治す。

参附湯[1-1]《世医得効方》《古今方彙》
「人参1両、附子(炮)5銭」水煎。
◎真陽不足し、上気喘急、自汗盗汗、気短く頭暈等の症を治す。

参附湯[1-2]《正体類要》《中薬臨床応用》
「人参15g、熟附子片12g」水煎服。
◎ショック
◎呼吸が微弱

参附理陰煎加白朮《景岳全書》《古今方彙》
「熟地黄357銭、当帰23銭、炙甘草3銭、乾姜(炒黄)123銭、桂肉12銭、人参、附子、白朮各35銭、水2鍾」を煎じて7~8分とし熱服す。
◎一男子、年4旬をこえて、傷寒癒えたる後に足股腫脹し、之を按ずれば鼓の如くして且つく、「加減腎気湯」を服してもついに効を見ざる者を治す。之を服すること2~3剤にして足脛漸く消え、20余剤にして腹脹尽く退く。

参味合剤《中薬臨床応用》
「太子参エキス2‹、五味子チンキ1.5‹、酸棗仁チンキ3‹、シロップ3.5‹」混合して10‹とし、1日2回、5‹づつ湯で沖服する。
◎神経衰弱。

参栗湯《聖済総録》
「大半夏湯《金匱要略》白蜜陳栗米・生姜」
◎乾嘔、食下らざるを治す。


参苓元《東醫寶鑑》
「人参・石菖蒲・遠志・赤茯苓・地骨皮・牛膝(酒浸)各1両」作末し蜜で梧子大の丸剤。米飲で30~50丸飲む。
◎胃中に熱が溜まって良く食べ、消化しても血肉にならない者を治す。

参苓琥珀湯[1-1]《東醫寶鑑》
「川煉肉・甘草梢各1銭、延胡索7分、人参5分、赤茯苓4分、琥珀・沢瀉・柴胡・当帰尾・青皮・黄柏各3分」剉作し燈心を入れ煎服。
◎淋渋し茎中が痛い者。

参苓琥珀湯[1-2]《衛生宝鑑》《古今方彙》
「人参5分、茯苓4分、琥珀・柴胡・沢瀉各3分、当帰尾2分、延胡索7分、甘草梢・川楝子(肉)(少許)」水煎。
◎淋渋り、茎中痛み、脇下に相引きて痛み忍ぶべからざるを治す。。


参苓壮脾元《東醫寶鑑》
「人参・白茯苓・白朮・縮砂・神麹・麦芽・山薬・白扁豆・肉桂・乾姜・胡椒各1両」作末し弾子大の蜜丸。毎回1丸を白湯又は温酒でかみ下す。
◎脾胃が冷え、消化されず、顔色が黄色くしなびて、肢体がだるい。         ◎病気による気の衰え、食欲不振を治す。


参苓白朮丸《東醫寶鑑》
      「白朮(土炒)2両半、蓮肉・桔梗・薏苡仁各2両、人参・白茯苓・山薬(炒)       ・陳皮・半夏(製)・白扁豆・黄連(2味並姜汁炒)・当帰・香附子・遠志・       甘草各1両、縮砂・石菖蒲各5銭」を作末し、姜棗の煎じた湯に神麹末1       両を混ぜ梧子大の丸剤。白湯で100丸飲む。
◎病気が治った後、元気のない者に、この薬を飲んで脾胃を補う。



参苓白朮散[1-1]《和剤局方》
「白朮、人参・乾山薬(炒)・白扁豆(炒)・蓮肉(炒って心を去る)、茯苓・       炙甘草・陳皮・薏苡仁(炒)・桔梗・縮砂」を細末にし、毎回8~12gを、 棗湯又は重湯で服用。」
    ◎脾胃虚弱、飲食進まず、多困少力、嘔吐泄瀉するを治す。
    ◎心脾気弱、神昏躰倦、多困少力、飲食進まず、中満痞噎、心上喘、嘔吐瀉痢     等の症を治す。久服すれば気を養い神を育て脾を醒し胃を益し正を扶け邪     を辟く。《寿世保元》
    ◎此方は、脾胃の弱き人、食事進まず泄瀉し易き者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎故に半井家にては、平素脾胃の至って虚弱なる人、ややもすれば腹の下ると云     う者に常用にすと云う。
    ◎土佐道寿は、脾胃虚弱の候にて発熱悪寒の症ある者:「補中益気湯」。
     ただ労倦して飲食進まざるを「参苓白朮散」とした。
    ◎虚弱の人の噤口痢にて飲食下らざるを治す:「石菖蒲」or気あれば「木香」     《仁斎直指方》
    ◎此方の症にして下利一等重き者:「参苓白朮散《万病回春》」
    ◎泄瀉:
       ☆虚労にて痰嗽喘熱而して泄瀉する者はこれ脾の憊(つかれ)なり。
       ☆実症:大黄丸
       ☆虚症:参苓白朮散附子《方読便覧》


  参苓白朮散[1-2]《和剤局方》《中薬臨床応用》
      「党参12g、茯苓9g、白朮9g、陳皮5g、蓮子9g、山薬12g、薏苡仁9g、白 扁豆9g、縮砂3g、桔梗3g、甘草(炙)3g」水煎服。
    ◎食欲不振
    ◎消化不良
    ◎食後の嘔吐
    ◎食後の下痢


 参苓白朮散[1-3]《東醫寶鑑》
      「人参・白朮・白茯苓・山薬・甘草(炙)各3銭、薏苡仁・蓮肉・桔梗・白扁       豆・縮砂各1銭半」作末し毎回2銭、棗湯で点服。
    ◎内傷による脾胃の虚弱。
    ◎食べなくても吐く者。
    ◎大病後の脾胃を強めるのに。


 参苓白朮散[1-4]《漢方治療の実際》
      「白扁豆・蓮肉各4、桔梗・縮砂各2、薏苡仁5、人参・茯苓・朮各3、甘草       ・山薬各1.5」



参苓白朮散[1-5]《和剤局方》《漢方後世要方解説》
      「人参3、白朮4、茯苓4、山薬3、扁豆・蓮肉・桔梗・砂仁各2、薏苡仁5、       甘草1.5」
    ◎脾胃虚弱、飲食進まず、多困少力、中満痞噎、心気喘、嘔吐、泄瀉及び傷寒、     咳嗽を治す。此薬中和にして熱せず、久しく服すれば、気を養い、神を育し、     脾を醒ましめ、気を悦ばしめ、正を順し、邪を辟く。
    ◎此方は脾胃の虚を補い、湿を除き、滞を行らし、気を調える剤である。平常脾     胃虚弱にして食進まず泄瀉し易き者に効がある。熱無く疲労し不食の者や大病     後の疲労食欲不振にによい。また、陰虚火動の症に滋陰降火等苦寒の剤を用い     て脾胃虚耗し泄瀉するとき、速やかに此方を与える。転じて婦人帯下崩漏にも     妙効がある。
    ★適応症及び病名 (五十音順)
     [1]潰瘍性大腸炎
     [2]下痢:
☆5歳の男児。
「生まれつき胃腸が弱く、いつも下痢気味・大便は黄色くて粘液は出ない。ご飯をあまり食べなくて、お菓子が大好き。牛乳は嫌いではないが、飲むと、どうも良くない。
こういうお菓子ばかり食べていて、食事をあまりしない子はたいてい虚弱体質で、思い切ってお菓子の量を減らすようにしないと、丈夫な体質にはならない。参苓白朮散を飲み続けるうちに、だんだん胃腸も上部になって、下痢を全くしないようになった」《山田光胤》
☆啓脾湯と参苓白朮散の2方は同じような下痢に用いる。
下痢が長引き、栄養が衰え、皮膚に光沢がなく、枯燥し、貧血の傾向のあるものに用いる。この場合、裏急後重は無く、腹痛はあっても軽微である。真武湯を与えて、効の無いものに、此方で治るものがある(漢方診療医典)
     [3]消化不良:
        ☆発酵性消化不良
     [4]乳幼児下痢症
☆嘔吐は止んだが、下痢が続き腹にガスがたまり、いつまでも全快しないものに用いる(漢方診療医典)
     [5]病後の:
        ☆大病後の疲労、食不振、下痢し易い。《矢数道明》
     [6]腸結核の1症:
     [7]肺結核:
        ☆食欲が進まず、下痢し易い者《矢数道明》
☆炙甘草湯、滋陰降火湯などの苦寒の剤を投じて下痢、食欲不振を起こ         した時《矢数道明》
     [8]白帯下:
        ☆白帯下、子宮ガンで、羸痩、食が進まない者《矢数道明》
[9]バセドウ病
☆バセドウ病患者で下痢を訴える者(漢方診療医典)
     [10]崩漏:
        ☆胃腸虚弱にして貧血衰弱
     [11]慢性胃腸炎:
        ☆食欲なく、湯剤を飲んでも治らない者《矢数道明》






参苓蓮朮散《東醫寶鑑》
      「人参・白朮・白茯苓・山薬・蓮子・陳皮各1銭、縮砂・ 香・訶子・肉       豆・乾姜(炮)・甘草(炙)各5分、烏梅1個・灯心1」水煎服。
◎気虚の泄瀉。
     ◎(飲食が胃に入るとすぐ下痢して消化されず、脈弱)

 参連丸《春林軒丸散方》
      「呉茱萸・人参各2銭、黄連3銭」作末、糊丸。

 参連湯《朱丹渓》
      「人参5銭、黄連1両」水煎。
    ◎治下痢噤口不食者。
    ◎「連湯」参照。
    ◎終日時に之を呻(ノ)めば吐するが如く、再び強く飲み但だ一口を得て咽喉を呻     下(ノミクダ)せば即ち好し、蓮肉3銭を加え尤も妙なり。《万病回春》

 参連湯《医約》
      「黄連、人参、呉茱萸」
    ◎嘔吐、飲食進まず、或いは胃中虚熱し、悪心するを治す。《雑病翼方》


 参連湯《漢方治療の実際》
      「人参5、黄連・呉茱萸各3」

参連湯《東醫寶鑑》
      「黄連3銭、人参・石蓮肉各2銭」水煎服。
◎噤口痢で胃口の熱がひどい者。


 参連白虎湯《漢方治療の実際》
      「白虎湯人参3、黄連2」

半湯《香川修徳》
「半夏乾姜人参丸乾姜甘草」
    ◎嘔家に用いる。

熊湯《松原一閑斎》
「人参・黄連・熊胆」先ず2味を煮て、後に胆を入れ、溶かす。
    ◎卒倒・人事不省・胸心間の閉塞・大いに煩満する者。

連湯《撮要方函》
「人参・黄連・呉茱萸」
    ◎積気、癇となる者を治す。
    ◎此方は本、《朱丹渓》の《纂要附餘》に出て、方名無し。云う、下痢、噤口、     不食する者は脾胃熱甚だしと。その参連と名づくるは氏の《万病回春》に始     まる。今、呉茱萸を加うる故に《撮要》に従うなり。
    ◎此方は元《朱丹渓》噤口痢を治すと《医学入門》に見えたれども、今運用して、     諸気候、直視、煩悶に用いて即効あり。
    ◎又、吐血、心下痞硬の者に用いて奇験を奏す。
    ◎《閑斎家》では卒病(急激に起こった疾患)の要薬とす。
    ◎此方で効なければ「熊参湯」なり。
    ◎「参連丸」参照。

連湯《医貫》
      「連湯《撮要方函》姜汁糯米」
    ◎暑によって吐極、胃虚し、百薬入らず、粒米下らず、口に入れば即ち吐き、病     益々危篤となる者。《勿誤薬室方函口訣》




 心痛一方《万病回春》《古今方彙》
      「当帰・川芎・陳皮・茯苓・砂仁・官桂・延胡索各1銭、莪朮・檳榔子各2       銭、三稜1銭半、丁香5分、甘草5分」水煎温服。
◎心疼み、肚腹痛み、小腸気(陰嚢ヘルニアのこと)、積塊冷気あるを治す。

 心痛一方《寿世保元》《古今方彙》
      「梔子(姜汁炒)15枚、川芎1銭、香附子(便)1銭」水煎。
    ◎心気痛(気分の欝滞により心痛する)及び胃痛を治す。

 心痛一方《薛立斎十六種》《古今方彙》
      「山梔子(炒黒)、桔梗」煎服。
    ◎心腹痛み、諸薬の応ぜざるを治す。

 
心脾双補丸《中医治法与方剤》
      「西洋参、白朮、茯苓、甘草、生地黄、丹参、酸棗仁、遠志、五味子、麦門       冬、玄参、柏子仁、黄連、香附子、貝母、桔梗、竜眼肉」


真珠母丸《本事方》《東醫寶鑑》
      「真珠母7銭半、熟地黄・当帰各1両半、人参・酸棗仁(炒)・柏子仁・犀 角・白茯神各1両、沈香・竜歯各5銭」作末し、梧子大の蜜丸にして朱       砂で衣をつけ、毎回40~50丸を薄荷湯で、1日2回服用。
◎神魂の不安、驚悸不安、不眠症。

真人化鉄湯《東醫寶鑑》
      「三稜・莪朮・陳皮・青皮・山楂肉・神麹・香附子・枳実・厚朴・黄連・当       帰・川芎・桃仁・檳榔各5分、紅花・木香・甘草各3分、姜3、棗2」水       煎服。
◎五積・六聚・痃癖・を治す。

真人養臓湯[1-1]《和剤局方》
「罌栗殻・訶子・肉豆・木香・肉桂・当帰・人参・芍薬・甘草・白朮」
◎腸胃虚寒し、赤白を下痢し、脱肛して垂れ下がり、酒毒で便血する者。

 真人養臓湯[1-2]《東醫寶鑑》
      「罌栗殻1銭、甘草9分、白芍薬8分、木香・訶子各6分、肉桂・人参・当       帰・白朮・肉豆各3分」水煎し空腹時に温服。
    ◎赤白痢と痢疾を治す。

真人養臓湯[1-3]《和剤局方》《中薬臨床応用》
      「肉豆(煨)・罌栗殻(蜜炙)・訶子肉(煨)各5g、白芍・白朮・当帰各15g、       党参・甘草(炙)各8g、肉桂・木香各3g」粗末にし、毎回6gを「生姜6g、       大棗2g」を加えて水煎服。
    ◎脾腎陽虚に。

 真人養臓湯《和剤局方》《古今方彙》
      「肉桂8銭、人参・当帰各6銭、木香2両4銭、訶子1両2銭、甘草(炙)1       両6銭、芍薬(炒)1両6銭、罌栗殻(蜜炒)3両6銭、白朮6銭、肉豆(       煨)半両」水煎し食前服用。
◎大人、小児、冷熱調わず赤白を下痢し、或いは膿血は魚脳の如く、裏急後重し     て臍腹疼痛するを治す。或いは脱肛下墜し、酒毒便血を治す。
    ◎臓寒の者は:「附子」


真武湯[1-1]《傷寒論》
 「茯苓・芍薬・生姜各3両切、白朮2両、附子(炮去皮破8升)1枚」
右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服七合、日三服。
若痎者、加五味子半升、細辛一両、乾姜一両。若小便利者、去茯苓、若下利者、去芍薬、加乾姜二両。若嘔者、去附子、加生姜、足前為半斤。

◎太陽病発汗、汗出不解、其人仍発熱、心下悸、頭眩、身瞤動、振振欲擗地者、真武湯主之。

「太陽病を発汗したが、汗が出てもなお熱があり、みずおちの部で動悸し、めまいがし、筋肉がピクピクと虫の動くように痙攣し、フラフラと地に倒れそうになる者は真武湯の治するところである」《大塚敬節》

◎少陰病、二三日不已、至四五日、腹痛、小便不利、四肢沈重疼痛、自下利者、此為有水氣。其人或欬、或小便利、或下利、或嘔者、真武湯主之。

「少陰病にかかって、2、3日で治らず、4、5日目になって腹痛し、小便の出が悪くなり、手足が重くだるく痛み、下痢のある者は、水気のわざである。このような場合には、咳野で《類聚方広義》ことがあり、小便の出のよいこともあり、下痢することもあり、吐くこともあるが、いずれも真武湯の治す      るところである」《大塚敬節》




真武湯[1-2]《傷寒論》《中薬臨床応用》
 =「温陽利水湯」
「熟附子9g、白朮12g、白芍薬9g、茯苓12g、生姜9g」水煎服。
◎陰証の水腫。



真武湯[1-3]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》

=「玄武湯」「温陽利水湯」
「茯苓・芍薬各3.0g、白朮2.0g、附子(炮)0.3g(or白川附子1.0g)、干姜1.0g」
水320ccを以て120ccまで煮詰め3回に分服。
◎元の名を玄武湯といい、北方の守護神である玄武神の名をかりて名付けたものである。中国古代の思想では、北方は陰の象徴であり水にあたる。真武湯が陰の治剤であり、水を治める方剤であることを思うとき、この命名まことに、巧妙を極めたものである《大塚敬節》


 真武湯[1-4]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「茯苓5、芍薬・生姜・朮各3、附子0.6」

◎心下悸し、身動、振々として地にれんと欲し、腹痛、小便不利、或いは嘔     し或いは下利者を治す。《吉益東洞》

◎陰病、腹痛し、小便清少にして、四肢沈重疼痛し、自下利し、ぞの人或いは     し、或いは嘔する者は、真武湯之を主どる《医聖方格》

◎「真武湯」は少陰の裏水を治し、「附子湯」は少陰の表寒を主とす。一味の変     化妙と云うべし。《勿誤薬室方函口訣》

◎此方は内有水気と云うが目的にて、他の附子剤と違って、水飲の為に心下悸し、     身動すること振々として地に倒れんとし、或いは麻痺不仁、手足引きつるこ     とを覚え、或いは水腫、小便不利、その腫虚濡にして力なく、或いは腹以下腫ありて臂肩胸背羸痩、その脈微細或いは浮虚にして、、大いに心下痞悶して飲     食美ならざる者、或いは四肢沈重、疼痛、下利する者に用いて効あり。《勿誤薬室方函口訣》
    

◎「附子湯」との相違。《重校薬徴》
■附子湯=茯苓4、芍薬4、白朮5、附子、人参3
■真武湯=茯苓5、芍薬3、白朮3、附子、生姜3
*“附子湯は朮附を君薬となして悪寒、身体攣痛、骨節疼痛、心下痞鞕、下利、小便不利等の証を治し”
*“真武湯は茯苓、芍薬を君薬となして、心下悸、小便不利、頭眩、動、腹痛、下利、四肢沈重、疼痛、嘔等を治す”

《薬徴》
附子湯は証具らざるなり。此の方の真武湯と独り差(たが)ふもの1味。しかしてその方意におけるや、大いに逕庭あり。(「逕」はこみち、「庭」は広場の意で、隔たりの甚だしいこと。かけはなれていること。)
附子湯は朮附君薬にして、身体疼痛、或いは小便不利、或いは心下痞鞕の者を主る。
真武湯は、茯苓芍薬君薬にして、肉瞤筋惕・拘攣・嘔逆・四肢沈重疼痛の者を主る。

[四肢沈重疼痛]

四肢は上肢2本と下肢2本で、[手]という場合は、上肢の手首から先端をいい、[足]という場合は、下肢の足首から先端をいう。だから傷寒論で、四肢という場合と、手足という場合とでは内容が違ってくる。その四肢が重くいたむ。
    

◎真武は北方陰精の宿、職専ら水を司るの神なり。之を以て湯に名くるは、義を主水に取ると。又一説に曰く、此方、もと玄武と名く。蓋し方中の附子は、その色黒きを以て、之を四神中の玄武に擬するなりと。《奥田謙蔵》
◎仲景の真武における、特に発熱を言うは深意の存ずる有り《皇国名医伝》
    

◎目標:(真武湯)
●発熱・心下悸・頭眩・身がピクピク動く者。
●腹痛・尿利減少・四肢沈重・下痢、或いは咳し、或いは尿利普通の者。
●他覚的所見に比して、自覚症少なき者。或いは反対に多い者。

◎漢方医学では、新陳代謝の亢進を“熱”とし、新陳代謝の沈衰を“寒”とする。だから体温が40℃以上あっても、漢方の立場からいえば、“寒”の場合に真武湯を用いる。《大塚敬節》
  

【腹証】
 《腹診配剤録》
 “これ亦腹に力無く、心下痞して身動す”



 真武湯[1-5]《傷寒論》


適応症及び病名(真武湯)
[1]IgA腎症
☆虚証で顔色不良、冷え症で疲れやすく浮腫傾向がある(漢方診療医典)
[2]アテトーゼ
[3]朝のこわばり
[4]足に力が入らない:
☆痿躄病、腹拘攣し、脚冷えて不仁、小便利せず、或いは不禁の者を治す《類聚方広義》
[5]頭のふらつき
[6]胃アトニー
☆腹部が軟弱無力で、脈も沈弱、沈遅弱などで、血色がすぐれず、手足は冷え、下痢気味の者によい。
[7]胃液分泌過多
[8]胃腸炎(急・慢性)
[9]胃腸虚弱症:
[10]胃内停水
[11]萎縮腎
[12]遺尿
[13]イレウス(腸閉塞)
☆イレウスは腸の一部が閉塞して腸の内容が通過できないもの。多くは手術の適応であるが、漢方治療で回復することがある。
腸の狭窄があって、下痢、腹痛、蠕動亢進のある者に用いる。慢性腹膜炎や腸結核が治った後に狭窄を起こした者にも適する。
[14]運動機能失調
[15]栄養不足の浮腫(タンパク質の喪失)
[16]疫病:
☆およそ疫病で、大熱、煩渇、譫語などの症があり、熱は火の燃えるようで、渇は焼け石に水を注ぐようで、譫語は狂人が語るようで、たいていの医者がこれは白虎湯の証だといい、或いは承気湯の証だという。これはまことに当然のようだが、このような場合に、意外にも真武湯の証がある。《和田東郭》
[17]嘔吐:
☆少陰嘔逆、腹痛溺短を治す《医学実在易》
☆嘔する者には:「-附子、+生姜(ひね生姜)8.0gに」《龍野ー漢方処方集》
[18]顔色悪い:
☆胃中及び下焦虚寒なる者に宜し。《先哲医話》
[19]下垂体機能低下症
[20]脚気
[21]脚弱
[22]体がだるい・重い
[23]眼球振盪症
[24]眼瞼ケイレン
[25]眼底出血
[26]肝硬変
[27]関節リウマチ
[28]感冒:
☆ただ陰症の傷寒の服すべきのみならず、虚労の人、憎寒、壮熱、咳嗽、下利する者も、皆宜しく之を服すべし。《雑病翼方》
☆体温計で測ると体温は39℃もあるのに、蒼い顔をして、寒いような格好をして、のども渇かず、悪寒があり、手足が冷え、脈に力無く、尿も着色していない者には、真武湯を用いる。《大塚敬節》
☆6歳の少女。風邪気味であったから、隣の医師に診てもらった。その翌日は体温が39℃を越えた。医師は肺炎になるかもしれないと云った。2、3日服薬したが、熱はますますのぼり、体温は40℃を超えて、譫語を言うようになった。そこで5日目(25日)に、私が呼ばれた。
患者は右側を下にして、おとなしく寝ている。ときどき咳が出るが、痰は出ない。氷枕と氷嚢をあててているためか、顔色は熱病患者らしくない。体温39、8℃、舌に淡黄色の苔があり、湿っている。口渇はない。脈は浮弱で1分間120至。食欲がなく、1日に1、2回下痢している。夜になると、訳の分からない譫語を言うが、終日、だまりこくって、何の要求も、苦痛も、自らは訴えない。腹診してみると、ほとんど食事を摂らないのに、腹部は膨満していて、脱力していない。右背部に中等度のラッセルを聞き、その部にやや抵抗があるように思われる程度で、他に異常を発見しない。
小柴胡湯を与える。2日後に往診したが、変化がない。麻黄湯とする。11/30日に往診。病室に入るや否や、これはしまったと、私は心 の中でつぶやいた。患者は少しうつむき加減に、諸手を胸に当てて、嫌な体位をとっている。顔には浮腫がみられ、蒼白くて、全く死人の様である。脈は浮大弱で、ときどき結滞している。母親の語るところによると、この朝、水様の下利便を失禁したという。体温は39、6℃あるのに、全身にまったく熱感がない。
この患者は、はじめから真武湯で温めてやるべきだった。それを小柴胡湯で冷やし、更に麻黄湯で攻めたので、こんな状態になったのである。私はすぐ氷枕と氷嚢を除くように命じて、この患者が、漢方で言う“陰証”であって、体温は高くても、熱ではなく、寒であることをよく説明した。すると母親がいうのに、この児は始めから非常に寒がって、ちょっとでも蒲団を上げると嫌がり、便器にかかる時に、非常に寒そうにしていた。氷嚢をつけるのも嫌がったが、体温が高いので、無理に冷やしていたという。
初診時に、悪寒の有無について尋ねたとき、この話をしてくれたらと思ったが、もう遅い。とにかく、至急に真武湯(附子1回量0.4)を1時間ぐらいの間隔をおいて2貼のませて、しばらく様子をみると顔色も良くなり、元気も少し出てきた。そこで引き続き真武湯を与え、12/4まで、毎日往診した。この間、附子の量は1日1.6gを用いた。(この例は私が35歳頃の経験で、随分思い切って附子を用いている、今の私なら、0.5位以上は用いないだろう)12/3日の朝は体温が36、8℃に下がった。発病以来19日間、39℃以下にならなかった体温が急に平温になったのに、不安を感じたが患者はすこぶる元気になった。
ところが、その夕刻、悪寒を覚えて40、2℃に体温がのぼった。しかしこれは僅々3、4時間で、強い発汗とともに下降した。発病以 来初めての発汗であった。このように午前中は平温で、夕方悪寒と共に40℃内外に体温ののぼることが、12/29日まで続いた。しかしだんだん体温の上っている自汗が短縮し、悪寒が軽くなって、12/30日には、夕方になっても、体温は37℃を突破しなかった。その後翌年の1/12まで真武湯を飲み続けて全快した。
この患者は初めから悪寒が強く、体温は高いのに舌は湿り、脈は弱く、顔は蒼く、静かにおとなしく寝ていて何の訴えもなかった。この状態は《傷寒論》にいう少陰病で、附子を用いて温めねばならなかった症状なのである。それなのに体温計の魔術にかかって、この患者を熱と誤診して柴胡剤や麻黄剤を与えてしまった。《大塚敬節》
[29]気の上衝 <+>
 ☆痰飲上迫を治す:「呉茱萸・桑白皮」
[30]基礎体温が低い
[31]瘧(ぎゃく)
 ☆陰瘧の治法:「草果」
 ☆寒多熱少、小便調い、渇せず、脈遅にして小なる者は、陰邪の勝れるなり。宜しく辛温の剤を以てその寒を散ずべし、と。《雑病翼方》
[32]起立性調節障害
[33]筋肉リウマチ
[34]くしゃみ
[35]ケイレン
[36]頸部リンパ腺炎
[37]頸部リンパ腺結核
[38]下痢:(泥状~水様便)
☆少陰病の表証が去って裏証に陥ると、下痢嘔吐、腹痛、四肢の厥冷、脈沈微などの状を現す。このさいには四逆湯を用いる。また太陽病や少陽病で便秘している者を陽明裏実の便秘と誤診して下剤をかけると、太陰病となって腹痛、嘔吐、下痢などを起こすことがある、これには真武湯、または四逆湯を用いる。
        ☆大便の性状は、水様性のもの、泡沫状のもの、粘液や血液を混ずるも         のなどいろいろである。《大塚敬節》 
        ☆下痢性疾患にして、或いは喘し、或いは乾嘔し、腹部及び腰部痛み、         身体倦怠する証《奥田謙蔵》
        ☆下痢日に数行、身体疼重を覚え、尿利渋滞し、脈沈微の証《奥田謙蔵》
        ☆下痢久しく癒えず、或いは身体に微腫あり、常に寒冷を覚える証《奥         田謙蔵》
        ☆真武湯の下痢は2、3回~4、5回で、10数回に及ぶことはほとんど         無い。腹痛を伴うこともあるが、痛みは軽く、劇痛はまれである。《大         塚敬節》
        ☆裏急後重は少なく、まれに失禁する者がある。《大塚敬節》
        ☆水分の多い粘液便のこともある。
        ☆毒内攻して下利戦慄する者:「反鼻」
        ☆五更瀉の如き者、真武湯に宜し。《先哲医話》
        ☆脾労、下利して腹痛し、熱無く、心下水気あって喘し、或いは下部に         水気あり、腹痛下利する者を主る。《先哲医話》
        ☆裏を温め、水を逐い疝瀉を止む。《方読便覧》
        ☆腰疼、腹痛、悪寒して、下痢日に数行、夜間最も甚だしき者は、之を         疝痢と称す。此方に宜し。《類聚方広義》
        ☆久痢、浮腫を見はし、或いは咳し、或いは嘔する者も、亦良し《類聚         方広義》
        ☆鶏鳴瀉及び疝瀉を治す:「赤石脂」《勿誤薬室方函口訣》
☆鶏鳴瀉及び疝瀉を治す。《本朝経験》
        ☆胃虚下痢:「半夏・人参」
        ☆暑疫流行、或いは人、下利、煩渇甚だし。:「生脈散」《橘窓書影》
        ☆少陰の腎症、水飲と裏寒と合して、嗽を作し、腹痛下利する者を治す         :「干姜・細辛・五味子」《仁斎直指方》
        ☆産後下利、腰以下水気あり:「良姜」《済世薬室》
☆産後の下利、腸鳴り、腹痛し、小便利せず、肢体酸、或いは麻痺し、水気有りて悪寒、発熱し、咳嗽止まず、漸く労状と成る者は、尤も難治と為す。此方に宜し《類聚方広義》 癱らかい)
☆「芍薬、乾姜2.0g」《龍野ー漢方処方集》
☆真武湯で応じない者á「啓脾湯」を考える。
☆人参湯との鑑別は・・・人参湯の[下痢]項を参照。
☆25歳、男性。
「大学の研究室に勤務しているが、年がら年中下痢をしていて、見るからに顔色も悪く、痩せている。今まで、普通の下痢止めを飲んだことがあるが、一応下痢は止まっても、腹が張って気分が悪久那って止めてしまうという。大学病院で、神経性のものだろうと言われて精神安定剤をもらって飲んでみたこともあったが、このときの一旦止まったものの、いつの間にかまた下痢をするようになった。
診察をすると、腹がペチャンコで、みずおちのところを叩くと、水の音がする。胃下垂気味でもある。
そこで真武湯を処方して、飲んでみたところ、1ヶ月目頃から下痢をしない日がでてきた。目下。2ヶ月目だが、少しずつ良くなっている」《山田光胤》」
☆1日に2,3回~4,5回くらいの下痢で、それが長く続いて治らない者に用いる。
この処方の適する下痢は、腹痛を伴うことはあっても、軽く、裏急後重を呈することはマレである。
まれに大便を失禁することがある。
大便は水様のもの、泡沫状のもの、粘液や血液を混ずるものなどいろいろ。
腹部は軟弱無力で、振水音を証明することがあり、ガスがたまる傾向がある。
脈は沈弱、遅大弱のものが多く、足が冷える、疲れやすく、血色もすぐれず、舌は湿っていて、苔の無いものが多い。
下痢していても、食欲にはあまり変化も無いものが多いが、下痢を恐れて、食を減じているものがある(漢方診療医典)

[39]結核性腹膜炎:
☆結核性の腹膜炎の後で癒着を起こし、腹痛・下痢の止まない者に、真武湯を用いて軽快した。《大塚敬節》
[40]眩暈:
☆眩暈の証、発熱なくして但だ悪寒し、腹部微満し、神思欝塞して食欲なく、身体疼重を感ずる等の者《奥田謙蔵》
[41]元気がない
[42]口渇
口渇を、熱湯をのむことを好む者を陰証とし、冷水を好む者を陽証として分けられるが、陰証もその極に達すると、かえって冷水を欲し、陽証に似てくる。また、陽証もその激しいものは、かえって熱湯を好むことがある。
☆陰証の口渇には、附子の配合された真武湯、茯苓四逆湯などを用いる
[43]口乾
[44]高血圧症
[45]甲状腺機能低下症

[46]高熱
☆40℃近い体温が10日あまりもつづいたチフスの患者に、真武湯を与えて速治せしめたことがある。この患者は蒼い顔をしていて、フトンをめくると、ひどく寒がり、着物をぬぐと鳥肌となり、口渇を訴えず、脈は沈遅で、尿は水のような色をしていたので、「寒」と判断して真武湯を用いた。《漢方診療医典》
体温が上昇していても、患者に熱感が無く、かえって寒冷を訴え、脈が微沈遅であれば、これを寒とする。
[47]呼吸困難
[48]五更瀉:
☆古人が五更瀉とか、鶏明下痢とか呼んだ、夜明け頃の常習性の下痢に真武湯の効くものが多い。《大塚敬節》
[49]さむけ(寒気)がする(さむがり)
[50]四肢沈重・疼痛(重だるい)
[51]湿疹:
・冷え症で下痢しやすく、血色のすぐれない老人
・発疹らしい発疹ないのに、かゆみを覚える。
☆湿性の陰虚証の湿疹で、疲れやすく、貧血気味で、冷え症のもの。
☆浸出液は稀薄でかゆみを訴え、外見は著しい変化が無いもの。
[52]雀目
[53]褥瘡(ジョクソウ=とこずれ)
[54]消化不良:
☆食事の後ですぐ下痢する者にも、真武湯が効く例が多い。《大塚敬節》
[55]食欲に異常:
☆食欲には異常の無い者があり、逆に亢進する者もあるが、下痢を恐れて制限していることが多い。
[56]小児の自家中毒:
☆《橘窓書影》に9歳の女児が、久しく下痢が止まず、飲食が減じ、顔や手足に軽い浮腫があり、脈が沈小で、舌に苔がなくて乾燥するものに、真武湯人参を与えて、段々治った例を挙げている。この場合の人参は無くても良いと思う《大塚敬節》
[57]小便不利(尿色ー透明)
☆小便利する者:「茯苓」《龍野ー漢方処方集》
[58]小脳の疾患
[59]上腹部振水音
[60]自律神経失調症
[61]腎炎:
☆《尤胎》曰く、一種少陰の腎症、水飲と裏寒と合して、咳を作し、腹痛下利する者あり、真武湯に宜し。《雑病翼方》
☆腎炎の険症に:「反鼻」《済世薬室》
[62]腎不全
☆虚証で顔色不良、冷え症で疲れやすく浮腫傾向がある(漢方診療医典)
[63]神経衰弱
[64]心悸亢進
[65]心下悸
[66]心臓弁膜症
[67]心不全

[68]身体倦怠・瞤動
[69]振顫麻痺
[70]ジンマシン:
☆発斑が微細で、熱感なく、カユミ少ない者《大塚敬節》
☆55歳女性。40日ほど前からジンマシンが出るようになり、医者に注射20本してもらった。効無し。
この患者は蕁麻疹のほかに、夜間に咳があり、下痢もしている。それに食欲もなく、手足の冷える。脈は沈で、臍上の動悸が亢進している。
以上の状態であったので、真武湯を与えたところ、1週間の服用でジンマシンは出なくなり、下痢も咳も止んだ。《大塚敬節》
[71]錐体外路疾患
[72]頭重
[73]せき:
☆凡そ年高、気弱、久嗽を治するに通用す《仁斎直指方》
☆《陳念祖》曰く、水逆を鎮め、痰喘を定むるの神剤なり。
☆「五味子3.0g、細辛・乾姜各1.0g」《龍野ー漢方処方集》
[74]脊髄疾患による運動麻痺・知覚麻痺
[75]舌質 <淡白で胖大>
[76]舌苔 <白滑><痰黒色><湿潤>
☆熱のある患者で、苔が黒くなったものに、大承気湯で下してよいものと、四逆湯や真武湯で温補しなければならないものがある《漢方診療医典》
[77]帯状疱疹
☆長引いて疼痛がなかなか去らず、疲労してきたものに用いることがある。
[78]大腸炎:
☆赤痢・大腸炎で手足が冷え、脈が弱く、大便が失禁し、或いは尿量が減じて足に浮腫のある者に用いて良いことがある《大塚敬節》
[79]立ちくらみ
[80]多発性硬化症
[81]だるい・横になりたい
[82]血の道症:
☆疲れやすく、冷え症で脈弱、腹部軟弱で胃部をたたくと振水音あり、小便少なく、腹痛、下痢、めまい、心悸亢進する者。
[83]虫垂炎
☆第2次世界大戦の末期から敗戦後の数年間は本方を用いる虫垂炎が多かった。本方は腹痛が激しくて、下痢があり、粘液を下し、体温が高いのに、悪寒、足冷、脈微数などの状があって、一般状態が重篤な者に用いる。かって某医院に入院していたこじれた虫垂炎の患者に、本方を用いて、著効を得たことがあった。この患者は腹痛、腹満が止まず、体温は39℃を超し、全身からは強い発汗があり、しかも悪寒、手足の煩熱、口乾を訴え、脈弱であったので、本方を用いた(漢方診療医典)
[84]腸炎・腸カタル
[85]腸結核:
☆腸結核の下痢によく用いた。ストレプトマイシンなどまだ出来ない時代に、是で全治し、それから10数年後の今日、元気で働いているもある。《大塚敬節》
☆腸結核で罹患部を切除してストマイなどを使用しても、下痢の止まない者に、真武湯を用い、1ヶ月あまりで下痢の止んだ例もある《大塚敬節》
[86]疲れやすい(疲労倦怠):
☆冷え症で、気力が無く、手足がだるく、ただ何となく動きたくないという者《大塚敬節》
☆低血圧症の患者で、疲れやすく、よくめまいがして、気力のない者《大塚敬節》
☆疲労感が強く、足が冷えて下痢する者に用いる。
[87]手足厥冷(手足が冷える)
☆手足厥冷のある場合には、当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、真武湯、桂枝加附子湯、当帰芍薬散、附子理中湯などのような附子、乾姜、当帰、川などが入った処方をを用いることが多いが、下半身は冷えるが、上半身に熱感のある者には、温清飲、女神散、加味逍遙散、烏梅丸などを用いる。
[88]低血圧症
☆疲労しやすく、手足が冷え、たちくらみがあり、腹にも脈にも力のない者に用いる。
[89]低タンパク性浮腫
[90]泥状~水様便
[91]糖尿病性腎症
☆虚証で顔色不良、冷え症で疲れやすく浮腫傾向がある(漢方診療医典)
[92]]吐血
[93]内耳炎
[94]軟便
[95]乳幼児の下痢
☆腹痛はあっても軽く、裏急後重を呈するものは少ない。腹部は軟弱無力で、振水音を認めることが多い。
☆急性より慢性の下痢に用いることが多い。
☆真武湯は人参湯と比べ、胃からくる症状が少なく、下痢が主である。
☆腹痛はあっても軽く、裏急後重を呈するものは少ない、腹部は軟弱無力、振水音を呈することが多い、急性よりも慢性の下痢に用いることが多い。真武湯は人参湯と比べ胃からくる症状が少なく、下痢が主である(漢方診療医典)
[96]尿量減少
[97]ネフローゼ
☆虚証で顔色不良、冷え症で疲れやすく浮腫傾向がある(漢方診療医典)
[98]寝小便
[99]脳下垂体の機能低下
[100]脳出血後遺症
[101]肺炎
☆老人や虚弱な人の肺炎に用いる場合がある。また麻疹や百日咳に併発した肺炎に用いた例がある。
☆体温が高いのに患者には熱感が少なく、寒がり、脈が弱く、舌が湿っているような者に真武湯の証がある。このようなときには数日間便秘していても真武湯を用いるのがよい。
☆大葉性肺炎(クループ性肺炎)
30歳男性、体温は39℃、脈は遅くて弱い。これは附子剤を用いる目標であるが、、数日間便秘しているというので調胃承気湯を頓服として与えた(大黄は0.5g)、その夜は10数回の下痢があり、翌朝早く往診を乞われたので行ってみると体温は40℃を超し、脈は乱れて微弱となり眼球は上転し、呼吸促迫し、重篤な様相を呈していた。私は驚いて、これに真武湯を与えたところ、これで脈が整い一般状態が好転して命を取り留めた。
[102]肺結核:
☆衰弱して元気なく、心臓衰弱して、下痢傾向、咳嗽する者:「生脈散」
[103]半身不随
[104]]パーキンソン病
[105]パンヌス
関節リウマチ患者において、関節の滑膜細胞が増殖して形成された組織。軟骨や骨に浸潤し、関節破壊の誘因となる。
[106]冷え症
☆新陳代謝機能が衰えて生気に乏しく、疲れやすく、手足が冷え、悪寒を訴え、腹中に水分が停滞して、冷えると痛んだり、下痢する者によい。このような体質の者で、神経痛、リウマチなど手足に痛みを起こした者には附子湯を用いる。
[107]鼻炎・鼻カタル
[108]肥満症(基礎代謝の低い者)
[109]皮膚瘙痒症
☆老人や虚人で当帰に多く、皮膚に少しも異常が無く、カユミのみ訴える者に用いる。
☆69歳の婦人。慢性腎炎があり、初秋のことになると、背から腰にかけてカユミ、小さい発疹がでて、冬になるとひどくなり、5月頃には自然によくなるという。疲れてめまいがするという。真武湯によりカユミは大半減じ、3週間で発疹はすっかり治った
[110]貧血:
☆胃下垂症や胃アトニー症などのある虚弱な貧血性の患者に、真武湯症が多く現れる《大塚敬節》
[111]腹水
[112]腹痛
[113]腹部膨満・軟弱:
☆腹部は軟弱で力のないものが多いが、所々に圧痛を訴えることもある。また腹部に振水音を証明できる者が多い。ガスがたまる傾向がある。《大塚敬節》
[114]腹膜炎
☆慢性腹膜炎で下痢の傾向があるものに用いる。腹部の膨満感と腹痛を訴えるが、腹部は一体に軟弱で、しかも硬結と圧痛の部位があり軽度の癒着症状のある者に用いる。
☆腸結核の疑いがある者にも。
☆浸出液が溜まっているものにも用いる。
[115]腹鳴
[116]浮腫(特に下半身) 
☆《陳念祖》曰く、腫甚だしく、小便不利、気喘し、尺脈虚なる者、真武湯に宜し。
☆虚腫に用いる。《大塚敬節》
☆産後の浮腫《大塚敬節》
“産後の水腫は、多く産前の水腫が治らないで産後に及んだもので虚証で、治りにくい、これには真武湯が良い”《鳩峯先生病候記》
☆八味丸などの地黄剤を飲むと、食欲が減じたり、下痢したりする者 に良い《大塚敬節》
☆大病後の浮腫や、下痢の治ったあとの浮腫に良く効く《大塚敬節》
☆諸般の水腫にして、身体衰憊し、手足に著しく寒冷を覚え、脈微弱なる証《奥田謙蔵》
☆真武湯は水腫を治する効がある。脈は微弱で、舌に白苔があって、その表面が滑沢で、小便の色が澄んで水のような場合の浮腫に用いる。もし下痢していてもよいが、下痢の激しいときは芍薬を去って用いる。この方は虚腫を治する第一の処方である《水腫加言》
[117]不眠:
☆眠ることを得ざるは、皆陽盛んなりと為す。切に温剤を禁ず。惟だ汗吐下の後、虚煩し、脈浮弱なる者は、津液内に竭(=ケツ、つきる)くるに因る。則ち当に権に従い、真武湯を用いて之を温むべし《傷寒諸論》
[118]便秘
☆熱病で、大便が秘結し、脈が微弱で、腹にも弾力の無いものは、いくら便通が無くても、大黄や芒硝あんどの下剤の入った処方を用いない方がよい。もし誤って、これらのこれらの下剤を用いると、大便が通じても、ますます気力が無くなり、病勢は好転しない。このような患者には附子理中湯、四逆湯、真武湯などを用いて温めると、かえって、大便が開通して熱も下がるものである《漢方診療医典》
[119]片麻痺
[120]麻疹(はしか)
☆麻疹には附子剤を用いることはほとんど無いと古人は言っているが、筆者は急性肺炎と麻疹が合併した重症患者に、真武湯と四逆湯を用いて治したことがある。高熱がいつまでも続き柴胡剤で効のない時は附子剤を考えてみる必要がある(漢方診療医典)
[121]マラリヤ
[122]麻痺:
 ☆種々の麻痺性疾患にして、手足時々振顫し、脈沈なる証《奥田謙蔵》
[123]慢性胃腸炎:
☆新陳代謝機能が衰え、胃腸に水分がたまり、排尿が不十分で、腹痛、下痢、倦怠感があり、手足の冷える者。
☆慢性胃腸「カタール」等にして、常に手足に寒冷を覚える証《奥田謙蔵》
[124]慢性下痢:
☆慢性の下痢にこの方を用いると、下痢が止んでから、一旦浮腫の来ることがある。この場合は浮腫に驚かず、続けて真武湯を服用しておれば自然に浮腫は消失する《大塚敬節》
☆浮腫のある慢性下痢に用いても良い《大塚敬節》
☆急性より、慢性の下痢に使用することが多い《大塚敬節》
[125]慢性腎炎
☆虚証で顔色悪く、冷え症で疲れやすい浮腫傾向がある。慢性腎炎から腎不全に広く使われる。
[126]慢性腸炎
[127]メニエール病
☆体力の衰えた冷え症の人のメニエール症候群に用いる。陰虚症で内部の水気が動揺して上衝し、めまい、心悸亢進、嘔気を発し身体がフラフラして倒れそうになるものに。
[128]めまい:
☆身瞤動
☆目の前が暗くなるめまい。
☆グラッとくるめまい。
☆最高血圧が90内外というような、低血圧症の患者のめまいの用いる機会がある。しかし血圧が低いというだけで、これを用いるわけではなくて、次のような目標によって用いる。
疲れやすく、血色が悪い。脈は遅で弱い。手足が冷える・下痢しやすい。便秘しているような場合でも、時々下痢する。下剤に敏感で、大黄の入った処方を用いると、腹痛を起こし、快通しない。腹部にも弾力が乏しく、振水音を証明出来る場合が多い。しかし、腹直筋が強直していることもある。《大塚敬節》
☆36歳男性。背が高く、中肉、血色も悪くない。風に向かって歩くと、めまいがする。ひどく疲れる。仕事をする気力がない。脈は弱い。腹部には振水音を証明し、臍部で動悸を触れる。夏は足がだるく、冬は手足が冷える。血圧は92-56。
私は半夏白朮天麻湯にしようか、真武湯にしようかと迷った。もしこの患者が頭痛を訴えたとすれば、半夏白朮天麻湯を与えたであろうが、めまいと疲労感が甚だしいので、真武湯にした。これを1ヶ月ほど呑むと、何となく気力が出て、疲れが減じ、めまいも滅多にしなくなった。それに、いままで熟睡することが出来なかったが、この頃は安眠が出来て、朝起きるときのだるさをなくなった。《大塚敬節》
[129]網膜出血
[130]網膜剥離
[131]夜尿症
[132]幽門狭窄症
[133]リウマチ
[134]流感:
☆仮熱発躁し、微に渇し、面赤、泥中井中に座臥せんと欲し、脈来ること無力なる者:「生脈散」《本朝経験》
[135]裏急後重
☆軽い裏急後重に、真武湯証や胃風湯証がある《漢方診療医典》
[136]ルイレキ
[137]冷房病:
[138]老人性掻痒症:
☆冷え症で、血色のすぐれない老人の掻痒症に用いることがある、脈も弱く、生気がなく、発疹らしいものはないのに、カユミがある者《大塚敬節》   [139]肋膜炎



 真武湯《仁斎直指方》
「真武湯《傷寒論》干姜・細辛・五味子」
◎少陰の腎症、水飲と裏寒と合して、嗽を作し、腹痛下利する者を治す。


真武湯合理中湯《漢方治療の実際》
「真武湯人参・甘草各3、乾姜2」


辰砂益元散《東醫寶鑑》
「滑石6両、甘草・辰砂各1両」細末にし、毎回2銭を井水で、1日2~3回調服。
◎傷寒に熱が残って虚煩・狂言・譫語する者。

 


辰砂丸《東醫寶鑑》
「辰砂・阿魏各1両」切って混ぜ、稀米糊で角子大の丸剤。空腹時に人参湯で1丸服用。
◎久瘧を治す。


 辰砂丸《三因極一病証方論》《東醫寶鑑》
「辰砂・雄黄・赤石蜈蚣・続随子各1両、麝香2銭半」作末し糯米飯で芡実大の丸剤。毎回1丸を酒で飲む。
◎蠱毒が酒食のなかにまじって入ってきたのを治す。

 辰砂膏《東醫寶鑑》
 「信砒1銭、白礬2銭、蜜陀僧・辰砂各5銭」作末し、先に鍋底に信砒末をひろげて、その上に礬末をひろげ火をたいて煙が出なくなったら、蜜陀僧・辰砂末を白糕とまぜて小麦大にこしらえ、1粒を漏孔に入れる。
    ◎痔瘻の穴を埋めるときに。

辰砂五苓散《東醫寶鑑》
「沢瀉・赤茯苓・猪苓・白朮各2銭、肉桂・辰砂各5分」細末にし、 毎回2銭を沸騰湯で点服する。
◎傷寒に発熱し、狂言・譫語をいい、又治った後、熱が去らず虚煩する者。

 


辰砂散《東醫寶鑑》
「光明辰砂1両、酸棗仁(微炒)・光彩乳香各5銭」細末にし、患者の飲酒量で酔うまで温酒にまぜて、頓服する。
◎諸般の癲狂・狂言・妄想・不眠に。


辰砂寧志丸《東醫寶鑑》
「辰砂2両(酒2升に入れて2合になるまで煮る)、遠志(姜製)・石菖蒲・酸棗仁(炒)・乳香(炙)・当帰(酒洗)・白茯神各7銭、人参5銭」を作末し、猪心1個を入れてかきまぜ、薬末にまぜた後、辰砂酒と煮て緑豆大の丸剤。就寝時に棗湯で60~70丸服用。
◎心身の過度の疲労。驚悸・・夢寐で不安におびえ、いつも誰かが追ってくるような感じで、心疾・癲狂になるとき。


辰砂妙香散《東醫寶鑑》
「山薬・白茯苓・茯神・黄蓍・遠志(姜製)各1両、人参・桔梗・甘草各5銭、朱砂3銭、木香2銭半、麝香1銭」細末にし、2銭づつ温酒で服用。酒の飲めない人は蓮肉を漬けた水で服用。
◎心悸・驚悸・怔忡・恍惚・恐怖・憂鬱・惨滅・喜怒不常・虚煩・不眠症。

 

辰砂妙香散《和剤局方》《古今方彙》
「茯苓(去皮)・茯神(去皮木)各1両、人参・桔梗・甘草各半両、山薬・遠志 (去心炒)・黄蓍各1両、辰砂(別研)3銭、麝香(別研)1匁、木香(煨)2銭半」作末し毎服2銭、温酒にて調服。
◎男子・婦人、心気不足し、志意定まらず、驚怖悲憂、惨戚(いたみかなしむ)、虚煩、小睡、喜怒常ならず、夜盗汗多く、飲食味無く、頭目昏眩するを治す。


 

鍼砂丸《東醫寶鑑》
「鍼砂(炒紅醋雖淬)8両、香附子(童便製)・蒼朮各4両、神麹(炒)・茵蔯蒿(姜汁炒)・麦芽(炒)各2両、芍薬・当帰・生地黄・川芎・青皮各1両半、三稜と莪朮の醋煮・陳皮各1両、山梔子(炒)・姜黄・升麻・乾漆(炒)各5銭」作末し、醋糊で梧子大の丸剤。姜湯で60~70丸呑む。
◎穀疸・酒疸・湿熱・発黄。

 鍼砂丸《続名家方選》
「鍼砂湯《原南陽》を丸剤にしたもの。

 

鍼砂湯[1-1]《原南陽》
  「鍼砂4銭8分、牡蛎・茯苓各1銭3分、桂枝4分、人参2分、蒼朮5分、甘草1分」
「苓桂朮甘湯鍼砂牡蛎人参」
◎虚悸、短気、眩暈、虚煩、并びに黄胖を理す。
◎此方の運用は多端、専ら鎮墜を以て主と為すなり。
◎此方は黄胖或いは奔豚の症、動悸甚だしく、眩暈、短気の者を治す。
◎下血後の動悸にも用いる。
◎「連珠飲」とは症相近くして、鍼砂は胸動を主とし、地黄は水分の動を主とするなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎神気不定、胸膈動悸、眩暈、或いは臥不安、或いは多夢、短気を治す。黄胖、動悸甚だしき者。《方読便覧》

 
 鍼砂湯[1-1]《原南陽》《漢方治療の実際》
「牡蠣・朮各4、茯苓6、桂枝4、鍼砂1.5、人参2、甘草1.5」


 鍼砂湯[1-2]《原南陽》《漢方後世要方解説》
「牡蠣・桂枝・白朮各4、茯苓6、人参2、鍼砂・甘草各1.5」
◎此方は《原南陽》の創方による。苓桂朮甘湯に鍼砂、牡蠣、人参を加えたものである。

★適応症及び病名(鍼砂湯)
[1]高血圧症
[2]心臓弁膜症:
☆弁膜症にて代償機能障害を起こし、肺水腫、肝肥大、腹水を来たせる者には効がない。「木防已湯」が良い。
[3]心悸亢進:
☆心悸亢進があって、貧血の状のある者に用いる。
[4]動悸:
☆下血後の動悸。
☆鍼砂は鉄粉である。私も鍼砂湯を心臓弁膜症などで動悸・息切れのする者に用いたことがあるが、これを用いると、食欲を害するものが多いので、この頃はほとんど用いない《大塚敬節》
[5]動脈硬化:
☆心悸亢進、眩暈、呼吸促迫、顔面蒼白、浮腫等を目標とし、鎮墜を目的として動脈硬化、高血圧にも用いられる。
[6]貧血:
☆黄胖病と称する諸貧血、心臓弁膜症に用いられる。





新傷続骨湯《中薬臨床応用》
「自然銅(酢煆)12g、乳香3g、没薬3g、続断9g、骨砕補12g、当帰尾12g、䗪虫6g、丹参6g、沢蘭6g、延胡索5g、蘇木9g、桑枝12g、桃仁6g」水煎服。
◎新鮮な骨折に。

新製潤肺飲《医宗必読》《古今方彙》
「貝母・括楼根2銭、桔梗1銭、麦門冬・陳皮・茯苓各1銭半、生地黄2銭半、知母7分、甘草5分、生姜3片」水煎。



新製利金湯《医宗必読》《古今方彙》
「桔梗・貝母・陳皮各3銭、枳殻1銭半、茯苓2銭、甘草5分、生姜5片」水煎。
◎気壅の痰を治す。

 

新増拯陰理労湯《医宗必読》《古今方彙》
「生地黄(姜汁酒炒透)2銭、当帰・麦門冬・牡丹皮・陳皮各1銭、白芍薬7分、人参6分、薏苡仁・蓮肉各2銭、五味子3分、甘草4分、大棗1枚」徐々に服す、
◎陰虚火動、皮は寒く骨は熱し、食少なく痰多く、咳嗽短気、倦怠焦煩するを治す。
◎肺の脉を重く按じて力ある者:「人参」
◎血あれば:「阿膠・童便」
◎熱盛んなれば:「地骨皮」
◎泄瀉には:「当帰・地黄・山薬・茯苓」甚だしければ人参3銭。
◎燥痰には:「貝母・桑白皮」
◎湿痰には:「半夏・茯苓」
◎不寐には:「酸棗仁」


 新増拯陽理労湯《医宗必読》《古今方彙》
「黄蓍(酒炒)3銭、人参・白朮各2銭、当帰1銭半、陳皮1銭、肉桂7分、五味子4分、甘草5分、生姜、大棗」煎服。
◎労傷にて気耗し倦怠し、言語懶うく、喘乏を作し、表熱し自汗心煩、遍身痛み     を作すを治す。
◎煩熱して口乾するには:「生地黄」
    ◎気浮き心乱るるには:「丹参・酸棗仁」
    ◎咳嗽には:「麦門冬」
    ◎湿を挟むには:「茯苓・蒼朮」
    ◎脈沈遅には:「熟附子」
    ◎脈数実には:「肉桂生地黄」
    ◎胸悶には:「陳皮倍加、桔梗」
    ◎痰多き者:「半夏・茯苓」
    ◎泄瀉には:「升麻・柴胡」
    ◎口渇には:「乾葛」
    ◎夏月には:「肉桂」
    ◎冬月には:「乾姜」


新続命湯《有持桂里》
「石膏1銭、葛根3分、麻黄・桂枝・芍薬・羚羊角各2分、甘草1分」
「葛根湯大棗生姜石膏羚羊角」
◎小児、発壮熱・汗無く煩躁する者。
◎此方は小児一時壮熱甚だしく発する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎外感の発搐は痙病を同じことにて、「葛根湯」にてたいてい宜しけれども、大渇、煩躁する者は此方を宜しとす。
◎大人中風の熱症にも与えるべし。


新定加減錫類散《張山雷瘍科綱要》
「人中白(きれいな)・老月石各80g、明雄黄42g、鶏爪黄連40g、川貝・広欝金各32g、西牛黄20g、筋余炭24g」細末にして保存。

 

新定玉竹飲子《張氏医通》《古今方彙》
「葳蕤3銭、分苦2銭、甘草・桔梗・陳皮・紫菀各1銭、貝母3銭、生姜(同じく陳皮蜜煎)4銭」長流水にて煎じ、熱白蜜2匕分を入れ2服す。
◎痰火にて痰涎湧盛し、欬逆喘満するを治す。
◎気虚には:「人参2銭」
◎虚火には:「肉桂半銭」
◎客邪(客とは後の意、人体に侵入した病邪、留まるの意):「細辛3分。香豉3銭」
◎咽喉不利して膿血を唾く:「阿膠3銭、藕汁半盃」
◎頭額痛:「葱白2茎」
◎便溏には:「伏竜肝を水に代える」
◎気塞には:「服するに臨み沈香汁数匙」


新法半夏湯《東醫寶鑑》
「半夏(大)4両、明礬末1両を湯又は姜汁に1日漬けて、汁がなくなるまで煮る。それを焙って作末し、炙甘草2両、橘紅・縮砂・神麹(炒)・草果各1両、丁香・白豆各5銭」細末にし、毎回1銭を姜塩湯で服用。
◎脾胃に冷痰があって、嘔逆・悪心・食欲不振に。


滲湿湯[1]《備急千金要方》
「茯苓、乾姜、蒼朮、甘草、牛膝、附子、萆薢(or遺糧)」
右七味、或いは呉茱萸を加える。《勿誤薬室方函口訣》
◎脚気、腰以下冷痺、腫拘し、小便難なるを治す。
◎黴毒、累年解せず、又脚気に感じる者をして効を得たり。《高階枳園》
◎「苓姜朮甘湯附子牛膝萆薢」
◎此方は脚気下部に専らにして、腰以下冷痺し、或いは両脚微腫し、痿弱せんとする者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎大抵は、桂枝加朮苓附湯にて治すれども、虚候毒気を兼ねる者は此方に宜し。
◎人、雨湿にあえば則ち必ず腰痛する者、「滲湿湯」「除湿湯」に宜し《先哲医話》
「除湿湯」=「不換金正気散附子茯苓生姜」《古方選》

滲湿湯[2]《東醫寶鑑》
「赤茯苓・乾姜(炮)各2銭、蒼朮・白朮・甘草各1銭、橘紅・丁香各5分、姜3、棗2」水煎服。
◎寒湿にあたって身体が重く、水中に座っているようで、小便が渋く、大便はよく出る者。

滲湿湯[3]《万病回春》《東醫寶鑑》
「蒼朮・白朮・赤茯苓各1銭半、沢瀉・猪苓各1銭、香附子・川芎・縮砂・厚朴各7分、甘草3分、姜3、灯心一握り」水煎服。
◎一切の湿症を治す。

 

滲湿湯《万病回春》《古今方彙》
「陳皮・沢瀉・猪苓各1銭、香附子・川芎・厚朴・砂仁各7分、甘草3分、白朮・茯苓・蒼朮各1銭半、生姜、燈心草」水煎。
◎一切の湿症を治す。
◎脾虚して腫を発し、満気急喘嗽するには:「白朮・甘草大腹皮・枳殻・木香・紫蘇子・桑白皮・蘿葡子」
◎面目浮腫には:「川芎・沢瀉・厚朴・香附子山薬(炒)・芍薬、蒼朮倍加」
◎瀉止まざれば:「肉豆蔲・訶子・烏梅・乾姜」
◎嘔噦には:「厚朴・香附子・川芎山薬・炒米」
甚だしく止まざるには:「乾姜(煨)」
◎湿症にて身体重く、手足は痛み麻木酸軟腫痛し或いは枯細痿弱、筋脈拘攣するには:「香附子・厚朴・川芎・猪苓・沢瀉当帰・生地黄・芍薬・木香・乳香・肉桂・牛膝・黄芩(酒)・羗活・防風」
◎陰雨に遇い、久しく坐し、而して湿傷を発して腰痛むを治す:「杜仲・破故紙・木香・乳香・小茴香厚朴・川芎」



陣王丹《東醫寶鑑》
「大黄1両、石灰6両」炒って紫色になったら、搗いてつける。
◎折傷による出血を止め、止痛する。


尋痛元《世医得効方》《東醫寶鑑》
「草烏(生)・乳香・没薬・五霊脂各3銭、麝香(生)少し」酒糊で指先大に丸め、朱砂で衣をつけ、毎回1丸を薄荷湯と汁につけて服用。
◎すべての損傷による痛みを止め、気分を和らげ血を助けるのに特効あり。

審平湯《東醫寶鑑》
「遠志・紫檀香各1両半、天門冬・山茱萸各1銭2分半、白朮・白芍・甘草各1銭、姜5片」水煎服。
    ◎卯酉の歳の病気。



 信石水母(ホジュン《東醫寶鑑》
「砒霜1匁2分、塩2匁」を雨水1斤で弱火で煎じ、12両を取る。
◎砒素と雨水で作る瘧病を治す処方
◎信石水母を作るには、上等の信石1銭2分に塩2銭を加え、雨水1升と、とろ火で煮詰めて12両にすると、鹹と信石は融合し、両者とも分からなくなる。これが信石水母である。毎回、信石水母1両に清水12両を加え、1回1両、1日2~3回服用する。
薬液1両中に、信石は雨水の1/12000しか含まれていない.。この薬液は悪寒熱瘧の証を治し、大いに効験がある。《中薬大辞典》