【漢方も】
礞石滾痰丸《王隠君》
「礞石・沈香・大黄・黄芩・朴硝」
◎テンカン・ひきつけ・心悸亢進・便秘・苔黄・脈滑数
◎一切の頑痰の怪症。
礞石滾痰丸《丹渓心法附余》《中薬臨床応用》
「礞石30g、大黄240g、黄芩240g、沈香15g」細末にして丸とする。毎日5~9gを湯で服用。
◎驚きやすい
◎動悸
◎ケイレン
◎痰が多い
◎痰がつまる
◎便秘
◎意識障害
木蝴蝶湯《中薬臨床応用》
「木蝴蝶2.5g、胖大海9g、蝉退3g、甘草6g、氷砂糖適量」水煎服。
◎急性咽喉炎
◎急性気管支炎
◎乾咳、嗄声、咽喉痛。
毛冬青生脈散加味《中薬臨床応用》
「毛冬青60g(先煎)、党参9g、白朮12g、麦門冬18g、五味子6g、丹参15g、生地黄18g、山茱萸12g」水煎服。
◎急性心筋梗塞。
木瓜湯《仁斎直指方》
「木瓜9g、呉茱萸6g、小茴香9g、生姜9g、甘草(炙)6g」水煎服。
◎寒湿による腹痛
◎下痢
木香丸《東醫寶鑑》
「木香・青黛・檳榔・肉豆蔲各2銭半、麝香1銭半、千金子(炒)1両、蝦蟆(晒し乾燥)」作末し、蜜で緑豆大の丸剤。毎回3~20丸薄荷湯で飲む。
◎冷疳を治す。
木香枳朮丸《東醫寶鑑》
「白朮2両、枳実(麩炒)1両、木香1両」作末し荷葉でくるみ、ご飯で梧子大の丸剤。熟水で50~70丸飲む。
◎飲食を消化させ滞気を治す。
木香元《東醫寶鑑》
「黄連3銭、木香・厚朴・縮砂・夜明砂(炒)各2銭、訶子肉1銭」作末し飯で麻子大の丸剤。姜湯で15丸調下する。
◎疳痢を治す。
木香金鈴丸《東醫寶鑑》
「乳香・没薬・木香・附子(炮)・茴香(塩炒)・川煉肉・延胡索・全蝎(炒)・人参」各等分。作末し酒糊で梧子大の丸剤。空腹時に黄酒で100丸飲む。
◎諸疝気
◎外腎の腫脹痛に効く。
木香化滞湯《東醫寶鑑》
「半夏1銭半、草豆蔲・甘草各1銭、柴胡7分、陳皮・乾生姜・木香各6分、当帰尾・枳実各4分、酒紅花1分、姜5片」水煎服。
◎麺にあたって痞満・作痛する者。
木香化滞湯《内外傷弁惑論》《古今方彙》
「木香・陳皮各3銭、柴胡4銭、当帰・枳実各2銭、半夏1両、紅花5分、草豆蔲・甘草(炙)各5分、生姜」水煎温服。
◎憂気鬱結し、腹皮の裏が微しく痛み、心下痞満し飲食を思わず、之を食べれば散ぜず、常常痞気するを治す。
木香見哯丸《東醫寶鑑》
「荊芥・三稜・神麹各1両、石三稜・草豆蔲・各5銭、升麻・柴胡各3銭、木香2銭、巴豆霜5分」作末し蒸餅で緑豆大の丸剤。白湯で30丸飲む。
◎冷生であたり、心腹の満痛する者。
木香匂気散《東醫寶鑑》
「藿香・甘草(炙)各8銭、縮砂4銭、沈香・木香・丁香・白檀香・白豆蔲各2銭」粉末にし、毎回2銭に姜3片・紫蘇5葉・塩少々を入れて煎服。
◎気の欝滞を治す。
木香三稜散《東醫寶鑑》
「黒牽牛子(半生半炒・去頭末)5銭、大黄3銭、大腹子・檳榔・雷丸・錫灰(醋炒・三稜(煆)・莪朮(煆)・木香2銭」作末し毎回3銭、肉汁で呑み込み、蜜で調下する。
◎腹中に虫があって顔が黄色い者。
木香散[1]《東醫寶鑑》
「木香・破故紙(炒)各1両、良姜・縮砂・厚朴各7銭半、赤芍薬・陳皮・肉桂・白朮各5銭、呉茱萸・胡椒各2銭半、肉豆蔲(煆)4、檳榔1」作末にて毎回3銭に猪肝4両を塗り、薬漿水1椀に醋を少し入れて蓋をして煮た後、塩少々、葱白3茎、生姜弾子大を入れ同時に煮て水を飲み、滓は冷たくして食べる。
◎臓寒で滑泄し米穀が消化されず、上は熱く、下は冷え、口におできが出来、痩せる者。
木香散[2]《東醫寶鑑》
「甘草(炙)1両、木香・黄連(炒)各5銭、罌栗殻(炒)・生姜各5銭、麝香少し」作末し、空腹時に2銭調下する。
◎久痢と血痢を治す。
木香散[3-1]《東醫寶鑑》
「木香・丁香・桂皮・陳皮・半夏・赤茯苓・人参・訶子皮・大腹皮・前胡・甘草各3分、姜3片」水煎服。
◎痘瘡で腹脹し、渇いて下痢する者。
木香散[3-2]《万病回春》《古今方彙》
「木香・前胡・黄蓍・茯苓・白朮・厚朴・訶子・陳皮各1銭、肉桂8分、人参・丁香(雄)5粒」水煎。
◎痘瘡、灰白色黒陥し、嘔吐するを治す。
木香散[4]《東醫寶鑑》
「木香・大戟・白丑頭末」各等分を粉末にし、猪腰子を割って薬末2銭を入れて焼き、空腹時に温酒と飲み下す。
◎水腫を治す。
木香散[5]《東醫寶鑑》
「肉豆蔲・破故紙・白朮・白茯苓各1銭半、木香・甘草各7分、姜3、棗2」水煎服。
◎脾腎泄を治す。
木香順気飲
「木香・香附子・檳榔・陳皮・枳穀・厚朴・甘草・縮砂仁・蒼朮・生姜」
木香順気丸[1]《東醫寶鑑》
「黒牽牛子頭末・破故紙各2両、枳殻・陳皮・香附子各1両、木香・蘿葡子・大腹皮各5銭」粉末にし水で梧子大の丸剤。50丸を温水で服用。
◎あらゆる気が痞満して、刺すように痛いとき。
木香順気丸[2]《東醫寶鑑》
「大黄2両、黒丑頭末1両、青皮・檳榔各1両、木香5銭」作末し毎回4両に神麹1両3銭を加えて密で梧子大の丸剤。温水で40~50丸飲む。
◎温熱を治し、大小便を通す。
木香順気丸[3]《証治準縄》
「香附子、木香、檳榔子、青皮、陳皮、厚朴、蒼朮、枳殻、砂仁、甘草(炙)、生姜」
木香順気丸[4]【中成薬】
「木香・香附子・陳皮・青皮・枳殻・山楂子・麦芽・神麹・烏薬・檳榔子・茯苓・萊菔子・甘草」
◎腹痛、嘔吐、下痢。
木香順気散《東醫寶鑑》
「烏薬・青皮・香附子・陳皮・半夏(製)・厚朴・枳殻各1銭、木香・縮砂各5分、桂皮・乾姜・甘草(炙)各3分、姜3斤」水煎服。◎中気の治療薬。
木香順気散《万病回春》《古今方彙》
「木香・砂仁各5分、官桂・乾姜・甘草各3分、烏薬・香附子・青皮・陳皮・半夏・厚朴・枳殻各1銭、生姜」水煎。
◎中気にて運倒(めまい)するを治す。
◎怒気が肝を傷り、脇が刺痛する者。
木香順気湯《東醫寶鑑》
「厚朴・白茯苓・沢瀉・半夏各1銭、蒼朮8分、青皮・陳皮各6分、草豆蔲・人参・当帰各5分、益智仁・呉茱萸各3分、木香・乾生姜・升麻・柴胡・甘草各4分、姜3片」水煎服。
◎脹満に。䐜満に。
木香順気湯《医学発明》《古今方彙》
「木香3分、陳皮・草豆蔲・厚朴・青皮・益智仁・沢瀉・乾姜・茯苓・半夏・呉茱萸各2分、当帰・蒼朮各5分、升麻・柴胡各2分、白朮1銭」水煎し温服。
◎濁気上に在れば則ち䐜脹(胸膈満のこと)を生じ、清気下に在れば則ち飧泄(腹鳴を伴う下痢)を生ず、此方に宜し。
木香消脹元《東醫寶鑑》
「蘿葡子(炒)2両、陳皮・大腹子・枳殻・桑白皮・蘇子(炒)・香附子各1両、檳榔5銭、木香2銭半」作末し麺糊で梧子大の丸剤。姜湯で50~70丸飲む。
◎脹満を治す。
木香調気飲《漢方治療の実際》
「木香・檀香・白豆蔲・丁香各1、縮砂・藿香・甘草各1.5、生姜3、塩2」
木香調気散《万病回春》《古今方彙》
「木香(別研)・砂仁各5分、官桂・甘草各3分、烏薬・香附子・枳殻・青皮・厚朴・陳皮・川芎・蒼朮各1銭、生姜」水煎。
◎気鬱症を治す。凡そ気鬱の者は腹脇脹満、刺痛舒びずして脉沈なり。
木香調気散《東醫寶鑑》
「烏薬・香附子・枳殻・青皮・厚朴・蕪荑・陳皮・蒼朮・各1銭、木香・縮砂各5分、桂皮・甘草各3分、姜3片」水煎服。
◎気鬱を治す。
木香調気散《医方考》《古今方彙》
「木香・白檀・白豆蔲・丁香・砂仁・藿香・甘草(炙)・生姜・塩1撮」水煎。
◎中焦にて水穀が留滞し啘を発する者を治す。
木香湯《東醫寶鑑》
「木通・木香・当帰・白芍薬・青皮・茴香・檳榔・沢瀉・陳皮・甘草各7分、肉桂3分、姜5片」水煎服。
◎冷淋で小便が渋く、身体が清冷な者。
木香導気湯《東醫寶鑑》
「大黄1銭半、白芍薬・朴硝・黄連各1銭2分、厚朴・黄連各1銭、当帰尾・赤茯苓各8分」水煎服。
◎痢疾がはじめて起きたとき。
◎腹痛を繰り返し、発熱・口噤。
木香破気散《東醫寶鑑》
「香附子4両、烏薬・姜黄各2両、木香・甘草(炙)各5銭」細末にし毎回2銭、塩湯で服用。
◎気痛の治療薬。
木香檳榔丸[1]《張子和》
「木香・檳榔・青皮・陳皮・莪朮・黄連・黄柏・大黄・香附子・黒牽牛・枳穀・三稜・芒硝」
◎胸痞腹脹・大便秘結・痢疾の初期・裏急後重。
木香檳榔丸《衛生宝鑑》
「木香、檳榔、枳殻、青皮、陳皮、蓬莪朮、黄連、黄柏、香附子、大黄、黒牽牛子」
木香檳榔丸《儒門事親》《中薬臨床応用》
「木香3g、檳榔子・大黄各9g、陳皮・枳殻・青皮・莪朮・黄柏各6g、黄連・牽牛子各5g、香附子3g」水煎服。
◎消化不良のために胸や腹部が膨張し、大小便が出にくい。
木香檳榔丸[2]《東醫寶鑑》
「大黄4両、黒牽牛子末・黄芩各2両、木香・檳榔・黄連・当帰・枳殻・陳皮・青皮・香附子・莪朮・黄柏各1両」粉末にし水で梧子大の丸剤。温水で50 ~70丸づつ服用。
◎温熱がたまって刺すように痛む者。
木香檳榔丸[3]《東醫寶鑑》
「半夏(麹)・皀角(酥の皮を去る)・弦子・郁李仁(去殻作末)各2両、木香・檳榔・枳殻・杏仁・青皮各1両」粉末にし、皀角4両を別途に漿水で煮て膏を作り、滓を去り、蜜を少し入れて梧子大の丸剤。空腹時に姜湯で50~70丸飲む。
◎三焦を疎導し大小便を通利させ、快気・潤腸させる。
◎湿痰の溜まった症を降ろし、脹満がおのずと消えるのに最も効がある。
木香檳榔丸[4]《東醫寶鑑》
「麦芽7銭、枳実6銭、白朮・青皮各5銭、厚朴4銭、木香・檳榔各3銭」
作末し蒸餅で梧子大の丸剤。温水で50~70丸呑む。
◎食積で気が滞し、腹痛する者。
木香分気丸《東醫寶鑑》
「木香・檳榔・青皮・莪朮・乾生姜・当帰・姜黄・延胡索・白朮・枳殻・三稜・赤茯苓・陳皮・肉豆蔲」作末し麺糊で小豆大の丸剤。姜湯で30~50丸飲む。
◎脾胃が和らがず、腹・脇がふくれて痰嗽・喘急し、消化不良になる者。
木香分気湯《葉氏録験方》
「木香・茯苓各1両、沢瀉・半夏・枳実・蘇子・檳榔各半両、猪苓3分」
◎気滞り、腫満し、虚気上衝し、神思爽やかならざるを治す。
◎此方は気分腫を主とす。《勿誤薬室方函口訣》
◎「桂姜棗草黄辛附湯」、「枳実湯」にて大概は治すれども、気滞甚だしく虚気上衝して鬱塞する者は、此方に宜しきなり。
◎気留滞し、四肢腫満し、腹急中満し、胸脇膨急し、虚気上衝し、小便臭濁し、神思爽やかならざるを治す《雑病翼方》
木香保命丹《東醫寶鑑》
「木香・白附子(生)・桂皮・杜仲・厚朴・藁本・独活・羗活・海桐皮・白芷・甘菊・牛膝(花蛇酒炒)・全蝎(炒)・威霊仙(酒洗)・天麻・当帰・蔓荊子・虎骨(酒浸酥炙)・天南星(漿水煮)・防風・山薬・甘草(酥炙)・赤箭各5銭、朱砂7銭半(半分は衣ヲスル)、麝香1銭半」作末し蜜で梧子大の丸剤。朱砂で毎回1丸を咀嚼し、温酒で送下する。
◎中風の一切の諸症を治す。
木香流気飲《和剤局方》《古今方彙》
「木香6両・木通8両・半夏2両・青皮1斤・厚朴1斤・紫蘇葉1斤・甘草1 斤・陳皮2斤・肉桂6両・蓬莪朮6両・丁香皮6両・大腹皮6両・檳榔6両・麦門冬6両・草果仁6両・藿香5両・白芷5両・茯苓5両・白朮5両・木瓜5両・人参5両・石菖蒲5両」粉末に挽き、毎服4銭、生姜2片・大棗2個を加え、煎服。
◎憂思太過して諸気痞塞し、怔忪欝積、脚気風湿、聚結腫痛、喘満脹急、或いは肩背腹脇刺痛し、嘔吐食せず、胸膈膨脹、面目虚浮し、四肢腫満、口苦咽乾、大便閉、小便渋るを治す。
◎此薬は栄衛を調順し、血脈を流通し、及び三焦を快利し五臓を安和す尤も蠱脹を治す。《万病回春》
◎「-菖蒲根・藿香+沈香・枳殻大黄」=「二十四味流気飲」
◎肚腹腫れるには:「枳実、青皮陳皮倍加」
◎臍より脚に至り腫れる;「桑白皮」
◎腫満には:「牽牛子」
木香流気飲《東醫寶鑑》
「陳皮1銭、藿香・厚朴・青皮・香附子・麦門冬・白芷・沈香各7分半、白朮・肉桂・木通・檳榔・紫蘇葉各6分、草果・甘草各5分、大腹皮・木瓜・人参・莪朮・丁香皮・半夏製・赤茯苓・石菖蒲各3分、姜3、棗2」水煎し2回に分服。
◎あらゆる気の痛みと腫張を治す。
木香和中丸《東醫寶鑑》
「黒牽牛子頭末2両2銭、滑石2両、大黄1両2銭、木香・黄芩・青礞石・枳殻・檳榔・青皮・陳皮各5銭、沈香2銭」粉末にし水で梧子大の丸剤。姜湯or茶で50丸服用。
◎痰涎を化し、湿熱を除く。
木茱丸《備急千金要方》
「木瓜・呉茱萸各5分」
◎脚気腹に入り、困悶死せんとし、腹脹するを治す。
◎便秘する者:「大黄」
◎動気甚だしい者:「鉄粉」
木茱散《東醫寶鑑》
「木瓜・呉茱萸」食塩各5銭を炒って百沸湯3升に入れ、薬と煎じて2升にな ったら飲む。
◎霍乱・吐瀉で肢体の筋が痛く、冷える者。
木茱湯《東醫寶鑑》
「木瓜・檳榔各2銭半、呉茱萸1銭半」水煎服。
◎脚気が腹に入った者。
木通散《東醫寶鑑》
「木通・青皮・川楝子各6銭半、巴豆肉2銭半を同時に黄色くなるまで炒って、 巴豆は捨て、蘿葡子(炒)・茴香(炒)各5銭、莪朮・木香・滑石各2銭半」作
末し濃く煎じ葱白湯で3銭を調服する。
◎脇肋の苦痛を治す。
木通散《証治準縄》《中薬臨床応用》
「木通5g、紫蘇葉9g、桑白皮6g、猪苓6g、赤茯苓9g、檳榔子9g」作末し「生姜・葱白」を加え水煎服。
◎脚気の浮腫
◎腎炎の浮腫。
木通散《医方考》《古今方彙》
「木通・紫蘇葉・香薷・桑白皮各1銭、枳殻・檳榔子・黄芩各5分、訶皮・木香各3分」水煎。
◎妊娠して身体浮腫し、四肢脹急し、小便不利する者。
木鼈散《中薬臨床応用》
「木鼈子6g、山豆根6g、木香6g」作末し咽喉部に吹き付ける。
◎急性咽喉炎
◎扁桃炎で咽喉部に腫脹、疼痛。
木防已去石膏加茯苓芒硝湯《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「木防已・桂枝各2.0g、芒硝4.0g、人参・茯苓各4.0g」
水240ccを以て芒硝以外の薬を煮て80ccに煮詰め、芒硝を加えて少し加熱溶解し2回に分服。
証(心下痞堅云々、復与へて愈えざる者)《薬徴》
木防已去石膏加茯苓芒硝湯
“木防已去石膏加茯苓芒硝湯方は、是れ防已茯苓湯の、黄蓍・甘草を以て人参・芒硝に代ふるもの、しかして防已茯苓湯に四肢聶聶として動くの証あり。是れ黄蓍・甘草の主る証にあらずして、茯苓の主治するところなり。是れに由って之れを観るに、此の湯四肢動の証を脱するや明らかなり”
◎木防已湯の証にして、煩渇せず、小便不利、痞堅甚だしいきを治す。《吉益東洞》
◎此方は、水気久しく去らず、唇口その皮堅厚ぬして枯燥し、たとえば、枯れ木の潤沢なきが如く、心下痞硬、胸中不利、微しく喘気ある者を治す。ただし、木防已湯に石膏を去り、芒硝を加ふる者は、その邪已に散じて復聚るもには堅定の物有りて留って包裹(裹=カ、つつむ)するが故なり、故に芒硝を以てその堅定の物を耎(=ゼン、やわらかい)にするなり。茯苓は木防已に加援して、飲を引いて下行するなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎木防已湯証より実証の者。
★適応症及び病名(50音順)
[1]脚気:
☆脚気等にして、脈実なる証《奥田謙蔵》
☆脚気、一身、面目浮腫し、心下石の如く硬く、喘満、気息し、咽燥口渇し、二便利せず、胸動甚だしき者を治す。鉄砂煉、陥胸丸、蕤賓丸当を兼用す《類聚方広義》
[2]心臓弁膜症:
☆心臓弁膜症に因る代償機能障碍等にして、脈緊実なる証《奥田謙蔵》
[3]水腫:
☆水腫性疾患にして、実証に属する者《奥田謙蔵》
[4]喘息:
☆喘息等にして、心下部堅く、便秘して脈緊実なる証《奥田謙蔵》
[5]尿閉
木防已湯[1-1]《金匱要略》
「木防已3両、石膏(鶏子大)12枚、桂枝2両、人参4両」
右四味、以水六升、煮取三升、分温再服。
◎膈間支飲、其人喘満、心下痞堅、面色黒、其脉沈緊、得之數十日、醫吐下之不癒、木防已湯主之。虚者即癒、實者三日復發、復發不癒、宜木防已湯去石膏加茯苓芒硝湯主之。
木防已湯[1-2]《備急千金要方》《中薬臨床応用》
「木防已12g、党参12g、桂枝6g、石膏(生)18g(先煎)」水煎服。
◎水腫による呼吸促迫、身体が重い、呼吸困難。
◎心不全による水腫、喘息、胸水。
木防已湯[1-3]《金匱要略》
「木防已3.0g、石膏12.0g、桂枝2.0g、人参4.0g」
水240ccを以て煮て80ccに煮詰め2回に分服。《龍野ー漢方処方集》
◎水病、喘満し、心下痞堅し、煩渇して上衝する者を治す。《吉益東洞》
木防已湯条に曰く、心下痞堅、愈えて復発する者は、去石膏加茯苓芒硝湯之を主ると。これ人参・芒硝、心下痞硬と痞堅とを治するを分つ。是において、古人の用薬苟もせざるを見るべし。蓋し、その初め心下痞堅なお緩し、これを痞というも亦可なり。故に投ずるに人参を以てするなり。復発して愈えず、しかして病の堅や必せり。故に投ずるに芒硝を以てするなり。《薬徴》
◎此方は、膈間支飲ありて咳逆、倚息、短気、臥すること得ず、その形腫るるが如き者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
*「咳逆」=咳嗽して気上逆すること《傷寒雑病弁症》
*「短気」=息切れ。呼吸相接続せざるなり。喘に似て喘に非ず、呻吟に似て痛無し。《傷寒雑病弁症》
◎膈間の水気、石膏に非ざれば墜下すること能わず、越婢加半夏湯、厚朴麻黄湯、小青竜加石膏湯の石膏、みな同義なり《勿誤薬室方函口訣》
◎桂枝、人参を以て胃中の陽気を助けて心下痞堅をゆるめ、木防已にて水道を利する策、妙と云うべし。《勿誤薬室方函口訣》
◎水腫、下利するは悪侯と為す。先に水気有りて下利する者は木防已湯に宜し。《先哲医話》
◎喘満、心下部つかえ堅く面色黒味を帯び小便不利、脉浮緊の者。
◎主薬の防已は、末梢血管を拡張し、胸管リンパ流出を増大させる。
◎防已:一般に漢防已と呼ばれているオオツヅラフジの根を用いている。木防已と呼ばれているアオツヅラフジより優れている。《大塚敬節》
*「膈間」=胸膈をいう。
*「支飲」=“欬逆倚息、短気臥すを得ず其形腫の如し之を支飲と謂う”
*「倚息」=物によりかかって息をすること。
◎この方は心下堅満といって、上腹部が板のように堅く、浮腫と喘鳴があって、脈が沈緊である者を目標として用いる。ここに1つの口訣がある。それは皮膚が枯燥して潤いが無く、唇や舌なども乾くというのを目当てにする。虚の中に実を挟む者を、この方の証とする。《大塚敬節》
【腹証】《大塚敬節》
・心下痞堅に用いる。
・心下痞堅は、心下痞硬に似た腹証であるが、痞堅の場合は上腹部が一体にベニヤ板でも張ったように堅く、仰臥すると息苦しく、物に寄りかかって坐っていると楽だという状態。《大塚敬節》
木防已湯[1-4]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「木防已4、石膏10、桂枝・人参各2」
★適応症及び病名(五十音順)
[1]アジソン病
[2]足がむくむ
[3]イライラ
[4]鬱血性心不全
[5]咳嗽
[6]顔色が悪い:☆<黒ずんでいる>
[7]拡張型心筋症
☆劇的に症状の改善が見られることがある。浮腫の強いものには茯苓4.0を加え、喘鳴、呼吸促迫の強い場合は、紫蘇子、桑白皮、生姜を加えた増損木防已湯を用いる(漢方診療医典)
[8]喀痰
[9]脚気:《奥田謙蔵》
[10]からだが重だるい
[11]気の上衝
[12]気管支喘息:
☆気管支喘息には、証に由り桑白皮、蘇子、生姜を加味す《奥田謙蔵》
[13]起座呼吸:
☆(症状が激しいときー横になれない)
☆息苦しくて横臥することが出来ず、上半身を高くして坐っていると楽である者に用いる《大塚敬節》
[14]胸水症
[15]胸痛
[16]狭心症
[17]口渇
[18]呼吸困難:
☆参照→「変製心気飲」
☆参照→「増損木防已湯」
[19]呼吸促迫
[20]黒皮症
[21]実証:
<脈浮弱・衰弱傾向の者には使わない>
[22]小便不利
[23]心悸亢進
[24]心下痞堅:
☆桂枝、人参を以て胃中の陽気を助けて心下痞堅をゆるめる。《勿誤薬室方函口訣》
☆水病、喘満し、心下痞堅、上気して渇する者を治す。陥胸丸、或いは蕤賓丸を兼用す《類聚方広義》
[25]心臓弁膜症
☆心不全の徴候が見られるときに、最もしばしば用いられる処方で、腹証上では、心下痞堅があり、チアノーゼ、浮腫、喘咳、呼吸促迫、尿利減少のあるものを目標とする。
[26]心下部膨満
[27]心筋炎
[28]心筋梗塞
[29]心筋変性症
[30]心臓神経症
[31]心臓喘息:
☆心臓性喘息、およびその類証《奥田謙蔵》
☆喘満の症無き者は効少なし《類聚方広義》
[32]心臓弁膜症:
☆心臓弁膜症に因る代償障碍(証に由り、茯苓4.0を加える)《奥田謙蔵》
☆心臓弁膜症の肺水腫状態、肺循環の鬱血、鬱血肝、鬱血腎、浮腫、腹水に有効。《矢数道明》
☆患者は若い頃から心臓弁膜症があったが、最近までは百姓の仕事も出来ていたという。ところが、10ヶ月ほど前から、動くと息が切れるようになった私はこれに木防已湯を与えることにした。これだけでは何となく不安に思われたので、ジギタリス葉末0.2を1日量として兼用した。ところが、その結果は驚くべき奇効を奏し、2、3日の服用で尿量は増加し、2週間分を服用し終わった頃は、下肢に少し浮腫が残っている程度で、横臥もでき、安眠も出来るようになった。そして2ヶ月たった頃には、庭も歩けるようになった。ジギタリス葉末は0.1として連続服用した。その頃は、脈に結滞があったが、自転車にも乗れるようになった。
それから5年になる。この患者が今も木防已湯にジギタリス葉末0.1を時々思い出したように取りに来る。これを呑んでおれば、軽い百姓仕事も出来るという。《大塚敬節》
[33]心不全
☆EBM:心不全に対する木防已湯の効果
NYHA分類(2.3±0.5→1.6±0.7)とBNP値(168.7±75.1→92.0±61.2)では低下が観察された。自覚症状はやや改善まで含めると75%で改善を認めた。
[34]心膜炎:
☆A氏は某造船会社の課長であるが、原因不明の熱がいつまでも続き、2ヶ月ほどたってから某病院に入院した。ここでは遷延性心内膜炎という病名がついた。ところで診断ついた時は、もう命が危ない時で、どんな方法でも、したいことをした方がよいと言われたという。
そこで私が招かれた。
患者は仰臥すると息が苦しいので、蒲団を高くして、45度の角度で寝て、ゼイゼイとのどを鳴らしている。全身には浮腫があり、下半身の浮腫は、特に著しい。脈は乱れて沈濇で結滞している。肝臓は肥大して上腹部に広がり、その下縁は、右季肋下5横指あまりに及んでいる。聴診上、肺水腫の徴候があり、背部では水泡音が一面に聞こえる。体温はときどき38℃近くまで上がる。口が渇いて水を呑みたがるが、食欲は全くない。それに息苦しくて、ほとんど幾夜も眠らないので、意識が朦朧としていて、時々つじつまの合わないことを口走る。
心内膜炎から弁膜症となり、すでに代償機能も障害されている現状から、私にも、治せる自信は無かった。しかし漢方の診断では、木防已湯を与えるべきである。
私は患者に付き添っている夫人に言った。病気はたいへん重態です。しかし漢方には、こんな時に用いる薬があります。これを用いてみて、効力がなければ、他に打つ手はありませんと。
ところが何という幸運であろう。木防已湯を飲み始めて、3日目に、突然吐血があり、それは洗面器に半分もあったという。しかも、それを境にして、病勢は良い方へ急変し、呼吸は楽になり、仰臥して安眠出来るようになり、肝臓も日毎に縮小し、3週間後には、退院出来るほどに軽快した。この間、ずっと木防已湯を飲み続けた。
それから、もう8年になる。その後この患者は平常通り働いて、何の支障もないからだになっている。《大塚敬節》
[35]腎炎
[36]腎不全
[37]舌苔 <乾燥><微白苔~白苔~黄苔>
[38]喘息:
☆緩解期に連用することで、発作を予防する。
☆みずおち硬く、呼吸促迫してゼイゼイ、むくみがある者。
☆心臓性喘息、呼吸困難、起座呼吸
[39]喘鳴
[40]喘満
[41]たくさん食べられない」(少食)
☆食欲はあるが、食べると腹が張って苦しいから食べるのを控えている者に用いる《大塚敬節》
[42]チアノーゼ
[43]動悸:
☆この方は心臓弁膜症などで、動悸、息切れ、浮腫、喘咳などがあて、尿利減少する者に用いる。《大塚敬節》
[44]動脈硬化症
☆冠動脈の硬化があって、息切れ、動悸を訴え、胸部に圧迫感を覚えるものに用いる。腹診上、心下痞堅があるのを普通とするが、この腹証が著明でないものにも用いて良い。
木防已湯に紫蘇子5.0、桑白皮3.0生姜0.5を加えたものを増損木防已湯といい、喘鳴、呼吸促迫のあるものによい(漢方診療医典)
[45]尿量減少 <尿不利>
[46]妊娠腎
[47]ネフローゼ:
☆むくみ、呼吸促迫、心臓肥大があり、呼吸がゼイゼイして、みずおち硬く抵抗感がある者。
[48]肺水腫
[49]煩渇
[50]ふるえ
[51]腹水
[52]腹満
[53]浮腫:
☆(下肢の浮腫)
☆水腫性疾患《奥田謙蔵》
☆心臓弁膜症で代償機能の障害があって、尿の不利と浮腫のある者に用いる機会がある《大塚敬節》
[54]慢性腎炎:
☆心不全の徴候があって、浮腫、喘鳴、呼吸困難などを訴え、尿量減少する者《寺師》
☆顔面・口唇にチアノーゼがあり、腹診すると上腹部が板のように硬い
木瓜丸《東醫寶鑑》
「木瓜・麝香・檳榔・賦粉各2銭半」作末し麺糊で黍子大の丸剤。
甘草湯で1~2丸服用。
◎生まれたばかりの幼児が吐く症。
木瓜煎《東醫寶鑑》
「木瓜2箇の中身を取った後、没薬5銭、乳香2銭半を切って中に入れ、蓋をして竹筒に入れ、ご飯と3~4回蒸して膏を作り、毎回2~3匙づつ地黄酒で溶かして呑む。酒法は地黄汁半盃に好酒2盃を混ぜて温服。
◎筋が張って首が回らない者。
木瓜湯《東醫寶鑑》
「木瓜4銭、呉茱萸2銭、茴香(炒)1銭、甘草(炙)4分、姜3、紫蘇10葉、塩一握り、烏梅1個」煎服。
◎霍乱の転筋を治す。
木賊散《東醫寶鑑》
「木賊・木耳」焼いて等分に粉末にし、毎回2銭を熱い米汁で服用。
◎目に冷涙の多い者。
木萸湯《東醫寶鑑》
「木瓜・檳榔各2銭半、呉茱萸1銭半」剉作し水煎服。
◎脚気が腹に入り危険な者。
没薬丸《証治準縄》《中薬臨床応用》
「没薬15g、乳香15g、当帰15g、赤芍薬15g、川芎15g、蜀椒15g、桃仁30g(打砕)、自然銅()7.5g」作末し蜜60gで弾丸大の丸剤。1回1丸服用。
◎打撲捻挫。
◎関節の疼痛、腫脹。
没薬散[1]《銀海精微》
「没薬・血竭・大黄・朴硝」作末し、毎服2銭、食後清茶で服用。
没薬散[2]《東醫寶鑑》
「乳香・没薬・雄黄各1銭、軽粉半銭、巴豆霜少々」作末し塗る。
◎白口瘡を治す。
没薬散[3]《聖済総録》
「没薬、虎脛骨」
没薬散[4]《万病回春》《古今方彙》
「没薬・大黄・枳殻・桔梗各2銭、木香・甘草(炙)各1銭、生姜」水煎。
◎小児が風と熱が滞りて上焦に留蓄し、胸膈高く起こり、大便通ぜざるを治す。
没薬降聖円《東醫寶鑑》
「地黄(生乾き)・川芎各1銭半、自然銅を焼いて醋浸12回して別にし、川烏(生)・骨砕補・白芍薬・当帰・乳香・没薬各1銭」粉末にし、姜汁と蜜を等分に あえ、毎回1両を4丸にし、毎1丸を酒と水各半杯に蘇木1銭を煎じ蘇木は捨て、薬を調合して空腹時に熱くして服用。
◎打撲傷により筋が切れ、骨折して痛む者。
門冬飲子《東醫寶鑑》
「麦門冬2銭、五味子・人参・地骨皮・白茯苓・甘草各1銭、姜3」水煎服。
◎老人・虚人の消渇を治す。
門冬飲子《宣明論》《古今方彙》
「麦門冬・人参・知母各1銭、生地黄8分、茯神7分、五味子・括楼根・葛根各5分、甘草3分、竹葉7片」水煎。
◎心熱肺に移り、膈消(糖尿病の一種)、胸満、心煩、津燥き飲を引くを治す。
門冬清肺飲《内外傷弁惑論》《東醫寶鑑》
「紫菀耳2銭、黄蓍・白芍薬・甘草各1銭半、人参・麦門冬各1銭、当帰身6分、五味子15粒」水煎食後温服。
◎肺と胃が虚弱し、気促・気喘・吐血する者。